療育手帳を受け取ると、手帳の中に「A」「B1」「B2」といった記号が記載されています。インターネットで検索すると、「B2ならこの仕事が向いている」「B1は一般就労が難しい」といった情報が数多く見つかります。
しかし、その区分がどのような仕組みで決められているのかを説明した記事は、意外なほど多くありません。区分の意味が分からないまま働き方を決めてしまうと、本来であれば選べたはずの選択肢を、自分から外してしまうことにもなりかねません。
本記事では、療育手帳の区分(B2・B1・A)が何に基づいて決められているのか、そして働き方とどう関係するのかを、国の通知や自治体の基準といった一次情報に沿って、分かりやすくご説明したいと思います。
療育手帳の区分(A・B1・B2)とは?国が定めているのは2つだけ
療育手帳の区分のうち、国の通知が定めているのは「A(重度)」と「B(その他)」の2つだけです。
B1・B2は、各自治体が独自に設けた区分です。この点は、区分の意味を理解するうえでの出発点になります。まずは、療育手帳という制度がどのような根拠で運用されているのかから確認していきます。
療育手帳の根拠は、法律ではなく2本の通知です
障害者手帳には3つの種類がありますが、その根拠は同じではありません。身体障害者手帳は身体障害者福祉法第15条に、精神障害者保健福祉手帳は精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に、それぞれ法律上の規定があります。これに対して療育手帳には、法律に直接の根拠となる規定が置かれていません。
療育手帳は、昭和48年9月27日付で出された2本の通知に基づいて、都道府県知事および指定都市の長が実施しています。2本の通知は、それぞれ定めている内容が異なります。
| 通知 | 種別 | 主に定めている内容 |
|---|---|---|
| 「療育手帳制度について」厚生省発児第156号 | 厚生事務次官通知 | 別紙「療育手帳制度要綱」として、制度の目的、交付対象者、実施主体、手帳の記載事項など |
| 「療育手帳制度の実施について」児発第725号 | 厚生省児童家庭局長通知 | 障害の程度の判定、交付の手続など |
次官通知の要綱では、交付対象者を「児童相談所又は知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された者」、実施主体を「都道府県知事及び指定都市の長」と定めています(厚生労働省: 療育手帳制度について)。
なお、局長通知は制定後も改正が重ねられており、令和6年5月22日障発第3号による改正が最終改正となっています。
「A」は重度、「B」はその他。B1・B2は通知にない区分です
障害の程度の区分について定めているのは、局長通知の第3です。その第3の1は、次のように定めています。
障害の程度は、次の基準により重度とその他に区分するものとし、療育手帳の障害の程度の記載欄には、重度の場合は「A」と、その他の場合は「B」と表示するものとする。
つまり、国の通知が表示の仕方を定めているのは「A」と「B」の2つだけで、B1やB2という表記はこの通知に出てきません。
ただし、同じ第3には続きがあります。第3の2は、次のように定めています。
障害の程度の区分については、1に定める区分のほか中度等の他の区分を定めることもさしつかえないものとする。
国の通知は、A・Bの2区分のほかに区分を設けることを明示的に認めています(厚生労働省: 療育手帳制度の実施について)。B1・B2という区分は、この規定を根拠に各自治体が設けているものです。
したがって、「国が定めているのは2区分だけだから、B1・B2には意味がない」ということではありません。B1・B2は、国が認めた枠組みのなかで自治体が定めた、その自治体における正式な区分です。ここで押さえておきたいのは、その区分の内容が全国で共通しているとは限らない、という点です。
知的障がいのある方の働き方の全体像については、知的障がいのある方の仕事の記事で整理しています。
区分の名称・段階・基準は、自治体ごとに異なります
前の章で見たとおり、B1・B2といった区分は各自治体が定めたものです。そのため、区分の名称も、段階の数も、判定の基準も、自治体によって異なります。ここでは、国の調査で分かっているばらつきの実態と、実際の自治体の例をご紹介します。
2割前後の自治体は、「B」を細分化していません
厚生労働省の令和4年度障害者総合福祉推進事業「療育手帳その他関連諸施策の実態等に関する調査研究」(令和5年3月)は、手帳の交付主体である都道府県・指定都市・中核市を対象に調査を行い、59自治体から回答を得ています(回収率85.5%)。その結果は次のとおりです。
- 重度(A)について2区分以上を設けている自治体は71.2%(59自治体中42自治体)、1区分のみは25.4%(15自治体)
- その他(B)について2区分以上を設けている自治体は78.0%(46自治体)、1区分のみは18.6%(11自治体)
- 判定にあたって知能指数の上限を設定している自治体は86.4%(51自治体)で、その平均値はIQ75.5、中央値はIQ75.0(n=50)
(厚生労働省: 療育手帳その他関連諸施策の実態等に関する調査研究)
つまり、回答した59自治体のうち2割前後は、「B」をB1・B2のように分けていません。「B2」という表記そのものが存在しない自治体があるということです。また、どこまでを手帳の対象とするかの目安となる知能指数の上限にも、自治体ごとに幅があります。
なお、厚生労働省が社会保障審議会障害者部会(令和7年6月26日)に示した資料では、平成30年度の調査結果として「障害程度区分の数:2〜7区分」という整理も紹介されています。ただし同資料には設問ごとの回答数が示されていないため、本記事では区分の幅を示す参考として扱います(厚生労働省: 療育手帳の在り方の検討状況について)。
主な自治体の区分の例
実際に、いくつかの自治体の区分を並べてみます。
| 自治体 | 手帳の名称 | 障害の程度の区分 |
|---|---|---|
| 東京都 | 愛の手帳(東京都療育手帳) | 1度・2度・3度・4度 |
| 大阪府 | 療育手帳 | A(重度)・B1(中度)・B2(軽度) |
| 千葉県 | 療育手帳 | Ⓐ(最重度。18歳以上はⒶの1・Ⓐの2)・Aの1/Aの2(重度)・Bの1(中度)・Bの2(軽度) |
| 埼玉県 | 療育手帳(みどりの手帳) | Ⓐ(最重度)・A(重度)・B(中度)・C(軽度) |
| 香川県 | 療育手帳 | 〇A(最重度)・A(重度)・〇B(中度)・B(軽度) |
香川県は「〇A(マルエー)」「〇B(マルビー)」という表記を用いており、B1・B2という区分を使っていません。埼玉県では軽度に「C」が用いられ、手帳には「みどりの手帳」という愛称があります。東京都に至っては、記号ではなく「度」という数字で表されます。
つまり、「B2」という同じ表記であっても、それが軽度を指すのか、そもそもその自治体に存在するのかは、お住まいの地域によって変わります。ご自身の手帳の区分が何を意味するかは、お住まいの自治体の公式ページでご確認いただくのが確実です。
「B2は知能指数51〜75」と言い切れない理由
インターネットで療育手帳の区分を調べると、「A=35以下」「B1=36〜50」「B2=51〜75」といった知能指数の数値表がよく見つかります。この数値がどこから来ているのかを確認すると、「A」の部分と「B1・B2」の部分では、根拠の性質が違うことが分かります。
国の通知が数値で定めているのは「重度」の基準だけです
局長通知の第3の1は、重度の基準について、年齢に応じて別の通知を参照する形をとっています。18歳以上については、昭和43年7月3日児発第422号(「重度知的障害者収容棟の設備及び運営について」)が参照先とされています。
この児発第422号には、次の数値が示されています。
標準化された知能検査によって測定された知能指数がおおむね三五以下(肢体不自由、盲、ろうあ等の障害を有する者については五〇以下)と判定された知的障害者
あわせて、日常生活における基本的な動作(食事、排泄、入浴、洗面、着脱衣等)が困難であって個別的指導及び介助を必要とする者、あるいは失禁・異食・興奮その他の問題行為を有し常時注意と指導を必要とする者、という条件が示されています(厚生労働省: 重度知的障害者収容棟の設備及び運営について)。知能指数の数値だけで決まる仕組みにはなっていません。
局長通知の第3に付された次の注は、このうち身体障がいを併せ持つ場合について補足したものです。
(注)前記通知の解釈にあたっては、知能指数が50以下とされている肢体不自由、盲、ろうあ等の障害を有する者の身体障害の程度は、身体障害者福祉法に基づく障害等級が1級、2級又は3級に該当するものとする。
この注が自治体の区分としてどう実装されているかは、千葉県の例が分かりやすいでしょう。千葉県では「Aの2」について、知的障がいが中度であって肢体不自由・視覚障害・聴覚障害による身体障害者手帳の1級から3級をお持ちで、日常生活において常時の介助を必要とする程度の状態にある方、と説明されています(千葉県: よくある質問(Q&A)-知的障害)。国の通知の「肢体不自由、盲、ろうあ等」という限定が、自治体の区分にそのまま引き継がれています。
つまり、「おおむね35以下」という数値は、国の通知が示した重度(A)の基準です。よく見かける数値表のうち、「A」の行はここに由来します。
一方で、「B」の内側をどう分けるか(B1・B2)については、これらの通知に数値の定めが置かれていません。 置かれているのは、前の章で見た第3の2「中度等の他の区分を定めることもさしつかえない」という委任の規定だけです。
したがって「B1=36〜50」「B2=51〜75」という数値は、国が定めた全国共通の基準ではなく、各自治体が独自に設けた基準ということになります。なお18歳未満の重度の基準についても、局長通知は別の通知(平成24年8月20日障発0820第3号)を参照する形をとっています。
同じ知能指数でも、区分が分かれることがあります
では、自治体の基準はどうなっているのでしょうか。大阪府は「療育手帳に関する規則」第6条に基づく判定基準を公表しており、その内容を確認できます。
大阪府の判定基準では、知能指数に加えて、次の2つの要素を併せて評価することとされています。
- 社会生活を営む能力(食事・着脱衣・排泄等の動作、意思交換、学業・家事職業等の能力)
- 行動及び医療保健(こだわり、多動、パニック、睡眠障がい、不適切な行動、自傷他害行動、てんかん等の疾患)
この仕組みのため、知能指数が「おおむね51以上75以下」の範囲にある方でも、社会生活を営む能力や行動面の状況によって、区分がA・B1・B2のいずれになるかは分かれることになります(大阪府: 療育手帳に関する規則第6条に規定する判定基準)。
東京都も、知能指数だけで愛の手帳の区分を決めているわけではありません。東京都心身障害者福祉センターは、18歳以上の場合の目安として、1度はおおむね19以下、2度は20から34、3度は35から49、4度は50から75という知能指数を公表しています。
ただし同センターは、これらを「判定基準の一部分について例示したもの」とし、「最終的には総合判定により障害の程度が決められます」と説明しています。判定は、知能検査や発達検査に加えて、日常生活の状況や行動観察なども含めて総合的に行われます。なお児童については、年齢に応じて異なった基準で度数を決定するため、同じ度数でも年齢によって状態が異なるとされています(東京都心身障害者福祉センター: 対象者(愛の手帳Q&A)、同: 判定について)。
知能指数の目安が示されている自治体もありますが、それだけで区分が決まるわけではない、ということになります。
療育手帳に「2級」という区分はありません
療育手帳について調べていると、「2級」という言葉を目にすることがあります。しかし、国の通知および本記事で確認した自治体では、療育手帳の区分に「級」という表記は用いられていません。「2級」という言葉が出てきた場合、それは療育手帳とは別の制度を指している可能性があります。
「2級」が指している可能性のある3つの制度
「2級」という表記が使われているのは、主に次の3つです。
- 障害年金の等級(障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級・2級・3級)
- 精神障害者保健福祉手帳の等級(1級・2級・3級)
- 東京都の愛の手帳の「2度」(「級」ではなく「度」ですが、読み方が似ているため混同されることがあります)
重要なのは、これらはそれぞれ判定や審査の基準が異なる、という点です。療育手帳の区分がAだから障害年金が1級になる、B2だから対象外になる、といった対応関係があるわけではありません。ひとつの制度の等級から、別の制度の等級を導くことはできません。
なお、障害年金の等級や受給の可否については、個別の事情によって判断が分かれる領域です。ご自身のケースについて詳しく知りたい場合は、社会保険労務士へのご相談をおすすめします。
愛の手帳の「2度」は、雇用の場面では重度として扱われます
東京都の愛の手帳をお持ちの方について、ひとつ補足があります。
障害者雇用の統計や制度のうえでは、愛の手帳の「1度」および「2度」は、他の自治体の療育手帳における「A」に相当するものとして扱われます。この点は、次の章で詳しくご説明します。
手帳の区分と、雇用制度上の「重度」は一対一では対応しません
療育手帳の「重度(A)」と、障害者雇用の場面で使われる「重度知的障害者」は、まったく無関係ではありません。手帳のA判定は、雇用制度上の重度を確認する資料として使われます。ただし、手帳がB区分であっても雇用制度上は重度と判定される場合があるため、両者は一対一では対応しません。この章では、その関係を整理します。
障害者雇用率制度でいう「重度知的障害者」とは
障害者雇用の制度では、療育手帳の重度判定をもとに、重度知的障害者であることを確認できます。厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査は、「重度知的障害者」を次のいずれかに該当する方と定義しています。
- 療育手帳で程度が「A」とされている者(「愛の手帳」の場合は「1度」及び「2度」)
- 各機関から療育手帳の「A」に相当する判定書をもらっている者
- 障害者職業センターで重度知的障害者と判定された者
(厚生労働省: 令和5年度障害者雇用実態調査 主な用語の定義)
ここから分かることが2つあります。
ひとつは、療育手帳で「A」とされている方は、その判定によって雇用制度上の重度知的障害者として確認できる、ということです。東京都の愛の手帳では「1度」および「2度」がこれに当たります。自治体ごとに表記は違っても、雇用の制度のうえでは重度かどうかという1つの線で整理されています。
もうひとつは、手帳の区分が「A」以外であっても、判定機関による「A」に相当する判定書や、障害者職業センターの判定によって、雇用の制度上は「重度知的障害者」として扱われる場合がある、ということです。手帳の区分だけで自動的に決まるわけではありません。
なお、雇用率制度における算定の人数は、週の所定労働時間によって異なります。重度知的障害者の場合、週30時間以上であれば1人を2人として算定し、週20時間以上30時間未満であれば1人として算定します。週10時間以上20時間未満の場合は、令和6年度から1人を0.5人として算定できることになりました(この区分について、就労継続支援A型事業所の利用者は算定の対象外とされています)。
このように、雇用率を計算するための算定人数は、実際に雇用されている人数と一致しない場合があります。統計を見るときは、その数値が雇用率算定上の人数なのか、実人数なのか、あるいは就職件数なのかを確かめる必要があります(JEED: 障害者雇用率制度)。障害福祉サービス全体の枠組みについては、障害者総合支援法とはの記事もご参照ください。
ハローワークの公表統計では、B1・B2別の就職件数は分かりません
「B2の人はどんな仕事に就いているのか」を知りたいとき、国の統計を見れば分かりそうに思えます。しかし、引用できる統計にはかぎりがあります。
厚生労働省「令和7年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況等」によれば、知的障害者の就職件数は22,215件で、そのうち重度は3,303件と公表されています。差し引きすると、18,912件が「重度以外」ということになります。
この資料では、療育手帳のB1・B2といった区分別の就職件数は公表されていません。 内訳として示されているのは「重度」と「重度以外」までです。
さらに、ここでいう重度・重度以外は、前の節で見たとおり雇用制度上の区分であり、手帳の区分とは別のものさしです。手帳がB区分の方でも、判定によって重度の側に入っている場合があります。そのため、18,912件という数値を手帳のB区分の方の人数として読み替えることはできませんし、この資料からB1・B2それぞれの就職件数や職種の内訳を読み取ることもできません。
区分ごとに向いている職種を紹介している記事もありますが、その根拠として示されている統計には、知的障がいのある方全体を対象としたものが含まれます。区分ごとの内訳ではない点にご注意ください。
あわせて、この統計を読むうえでの注意点を挙げておきます。
- ハローワークを通じた年間の新規の就職件数を数えたものであり、現在働いている方の状況を示すものではありません
- 就職件数には、就労継続支援A型事業所への就職が含まれます(A型は産業分類上「医療、福祉」に該当します)
(厚生労働省: 令和7年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況等)
軽度の判定を受けた方の仕事の選び方については、軽度知的障がいのある方の仕事の記事で詳しく扱っています。
区分で働き方は決まりません。確かめたい4つのこと
ここまで見てきたとおり、療育手帳の区分は自治体が定めたものであり、雇用の制度とも一対一では対応していません。「B2」という区分だけで、向いている職種を決めることはできません。では、代わりに何を確かめればよいのでしょうか。ご本人の得意・不得意や希望に加えて、次の4つを具体的に確かめることが大切です。
仕事の内容と、1日の流れ
同じ「軽作業」という言葉でも、実際の中身は職場によって大きく異なります。ひとつの作業を繰り返すのか、複数の作業を切り替えるのか。手順が決まっているのか、その日の状況で変わるのか。
求人票の職種名だけでは、この違いは分かりません。職場見学や実習の機会があれば、1日の流れを実際に見せてもらうことで、判断の材料が増えます。
勤務時間と休みの取り方
週に何日、1日に何時間働くのかは、体力面だけでなく、受けられる制度にも関わります。
たとえば年次有給休暇は、週所定労働時間が30時間未満で、かつ週所定労働日数が4日以下(または年間の所定労働日数が216日以下)の場合に、所定労働日数に応じた日数が付与される仕組みになっています(労働基準法第39条・同法施行規則)。週4日勤務でも1日8時間であれば週32時間となるため、比例付与ではなく通常の付与日数になります。日数だけで判断しない点にご注意ください。
この通常の付与は、雇入れの日から6か月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合に10日から始まり、その後は継続勤務年数に応じて増えていきます。10日が毎年の上限というわけではありません。
指示の伝え方と、職場で受けられる配慮
雇用の分野における合理的配慮は、障害者雇用促進法に基づき、平成28年(2016年)4月から事業主の義務とされています。募集・採用時と採用後の両方が対象です。
厚生労働省の合理的配慮指針の別表には、知的障害の欄の事例として「業務指導や相談に関し、担当者を定めること」「本人の習熟度に応じて業務量を徐々に増やしていくこと」「図等を活用した業務マニュアルを作成する、業務指示は内容を明確にし、一つずつ行う等作業手順を分かりやすく示すこと」などが挙げられています(厚生労働省: 合理的配慮指針 別表)。
ただし、この別表には注記があり、「あくまでも例示であり、あらゆる事業主が必ずしも実施するものではなく、また、ここに記載されている事例以外であっても合理的配慮に該当するものがあること」とされています。固定のチェックリストではなく、どちらの方向にも幅があるものとして読む必要があります(厚生労働省: 合理的配慮指針)。
職場で教える側がどのような工夫をしているかは知的障がいのある方への仕事の教え方で、同じ職場で働く同僚の側の受け止めについては知的障がいのある同僚と働くときで扱っています。
困ったときに相談できる相手
働き始めてから困りごとが出てきたとき、どこに相談できるかをあらかじめ知っておくと安心です。働き続けることが難しいと感じたときの考え方は、知的障がいのある方の仕事が続かないときで整理しています。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)は、就業面と生活面の相談に一体的に対応する機関で、令和8年4月現在、全国に340センターが設置されています(厚生労働省: 障害者就業・生活支援センターについて)。地域障害者職業センターでは、職業評価や職業準備支援、ジョブコーチによる支援などを受けられます。
適性や希望を評価する制度が「就労選択支援」です
「自分に向いている仕事は何か」を確かめたいという思いに対して、制度の側から用意された答えが就労選択支援です。令和7年10月1日に施行され、現在実施されています。手帳の区分とは別の仕組みで、ご本人の適性・能力・意向を評価します。
誰が利用できる制度なのか
就労選択支援の対象は、厚生労働省の資料で「就労移行支援又は就労継続支援を利用する意向を有する者及び現に就労移行支援又は就労継続支援を利用している者」とされています。
つまり、仕事を探している方が誰でも条件なく利用できる適職診断のような制度ではありません。利用にあたっては、市区町村による支給決定が必要です。
ここで押さえておきたいのは、療育手帳の区分は利用の要件になっていない、という点です。B2だから使える、Aだから使えないといった線引きはありません。
なお、就労継続支援B型を新たに利用する場合は、令和7年10月から原則として事前に就労選択支援を利用する仕組みになっています(50歳以上の方、障害基礎年金1級を受給している方などの例外があります)。就労継続支援A型を新たに利用する場合と、就労移行支援で標準利用期間を超えて支給決定の更新を希望する場合については、令和9年4月からの原則化が予定されています。
どのようなことをするのか
就労選択支援では、短期間の作業体験や面談などを通じてアセスメントを行い、ご本人の希望や強み、必要な配慮を整理します。
その結果を踏まえて、ご本人・ご家族・関係機関などが参加するケース会議が開かれます。支給決定期間は原則1か月とされていますが、自治体によって例外的な取扱いがある場合もあります。
紙の上で区分を見て考えるよりも、実際の作業や面談を通じて確かめられる点が、この制度の特徴です。制度の詳細は就労選択支援とは、就労移行支援との違いは就労選択支援と就労移行支援の違い、どこで受けられるかは就労選択支援事業所とはの各記事で扱っています。
よくある質問
療育手帳の区分と働き方について、よくいただく疑問を4つ取り上げます。制度の運用は自治体によって異なる部分があるため、個別の取扱いについてはお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
B2でも障害者雇用枠で働けますか
区分を理由に対象から外れることはありません。障害者雇用率制度の対象となるかどうかは、手帳の区分ではなく、療育手帳を所持しているか、または判定機関による判定を受けているかで判断されます。
あわせて押さえておきたいのは、求人の区分(一般求人か障害者専用求人か)と、障がいを開示するかどうかは別の問題であるという点です。一般求人に、障がいを伝えたうえで応募することもできます。
厚生労働省のQ&Aでは、障害者手帳の所持者を一般求人の対象から外して障害者専用求人でのみ受け付ける取扱いは、差別禁止指針において禁止される差別に該当するとされています(厚生労働省: 障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A)。
区分が変わると、働き方も変わりますか
区分が変わったからといって、働き方が自動的に変わるわけではありません。
局長通知の第3の3では、障害の程度について交付後も確認する必要があるとして、次の判定年月を指定することとされています。確認の時期は原則として2年後ですが、障害の状況からみて2年を超える期間の後に確認を行ってさしつかえないと認められる場合は、その時期を指定できるとされています。実際の更新の運用は自治体によって異なります。
区分が変わった場合に影響が出る可能性があるのは、雇用率制度上の取扱いや、利用できる福祉サービス・手当などです。就いている仕事そのものが区分によって決まるわけではありません。
手帳の区分は、今後変わる可能性がありますか
療育手帳の判定基準を統一する方向で、検討が進められています。
厚生労働省の資料によれば、令和4年度から6年度の厚生労働科学研究で「ABIT-CV」と呼ばれる判定ツールが開発され、令和7年度から9年度にかけて、モデル自治体における試行等を実施することとされています。現在はその期間にあたります。方向性としては、ICD-11における「知的発達症」の診断基準を参考とした「知的機能」および「適応行動」による2軸評価が示されています。
ただし、統一後の区分がどうなるかについては、現時点で公表されている資料では示されていません。今後の動向は、厚生労働省やこども家庭庁のサイトでご確認ください。
区分によって障害年金は決まりますか
決まりません。療育手帳の判定と、障害年金の等級の審査は、それぞれ別の基準に基づいて行われます。
療育手帳がAだから障害年金が受給できる、B2だから受給できない、といった対応関係があるわけではありません。また、働きながら障害年金を受給している方もいらっしゃいます。
障害年金の請求は社会保険労務士の業務領域であり、個別の事情によって判断が分かれます。ご自身のケースについては、社会保険労務士へのご相談をおすすめします。
まとめ
療育手帳の区分と働き方について、本記事で確認してきた要点を整理します。
国の通知が表示の仕方を定めている区分は「A(重度)」と「B(その他)」の2つだけで、B1・B2は「中度等の他の区分を定めることもさしつかえない」という規定を根拠に各自治体が設けた区分です。そのため区分の名称も段階の数も判定の基準も自治体によって異なり、交付主体を対象とした調査では、2割前後の自治体が「B」を細分化していませんでした。国の通知が知能指数で示しているのは「重度」の基準(おおむね35以下、身体障がいを併せ持つ場合は50以下)だけで、よく見かける「B1=36〜50」「B2=51〜75」という数値は各自治体が定めたものです。
また、療育手帳に「2級」という区分はありません。「2級」は障害年金や精神障害者保健福祉手帳の等級、あるいは東京都の愛の手帳の「2度」を指している可能性があり、それぞれ審査の基準が異なります。
手帳の区分と、雇用制度上の「重度」も一対一では対応しません。手帳のA判定は雇用制度上の重度を確認する資料として使われますが、手帳がB区分でも判定によって重度として扱われる場合があります。そのため、ハローワークの公表統計にある「重度」3,303件と「重度以外」18,912件(令和7年度・知的障害者の就職件数22,215件の内訳)を、手帳の区分別の就職状況として読み替えることはできません。
区分は、ご本人を説明する情報の一部ではありますが、働き方を決めるものではありません。確かめたいのは、仕事の内容と1日の流れ、勤務時間と休みの取り方、指示の伝え方と職場で受けられる配慮、そして困ったときの相談先です。適性や希望を制度のなかで評価する仕組みとしては、令和7年10月に施行された就労選択支援があります。
制度は改正される可能性があるため、最新の情報は厚生労働省やお住まいの自治体のサイトでご確認ください。
※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。
よこぜき行政書士事務所

