はじめに
令和7年(2025年)10月に始まった就労選択支援は、特別支援学校の高等部などに在学中の生徒も利用できます。
卒業後に就労継続支援A型・B型(以下、A型・B型)や就労移行支援を使うことを考えている場合、在学中のどこかで利用の話が出てくる可能性があります。
国の通知は大まかな取扱いを示し、具体的な時期や進め方は、学校と市区町村がそれぞれ決めています。
そのため、何年生で使うのか、手続をどう進めるのか、学校を休む日が欠席になるのかは、地域や学校によって変わることがあります。
本記事では、文部科学省と厚生労働省の通知と、いくつかの市区町村・県の取扱いをもとに、在学中の就労選択支援の時期・手続・出欠の扱いをご説明したいと思います。
高等部や高校に通うお子さんの保護者の方に向けて、分かりやすく整理します。
特別支援学校在学中の就労選択支援とは|高等部・高校の1年から利用できる
就労選択支援は、特別支援学校高等部などに在学中の生徒も1年次から利用できる、働き方の選択を支える障害福祉サービスです。
令和7年12月サービス提供分の就労選択支援の利用者614人のうち、18歳未満は143人でした(厚生労働省 第64回障害福祉報酬改定検討チーム資料 P111。国保連データ)。
ここでは、在学中の利用の根拠となる通知と、対象になる学校・学年、在学中に受ける必要がある人とない人を順にご説明します。
就労選択支援の目的や支援内容の全体像は、就労選択支援とは|目的・支援内容・利用方法をわかりやすく解説でご説明しています。
根拠は文部科学省と厚生労働省の連名の通知
在学中の利用の取扱いは、文部科学省と厚生労働省が連名で出した通知にまとめられています。
正式な名称は「特別支援学校等における就労選択支援の取扱いについて」(令和7年5月15日 7初特支第1号・障障発0515第2号。以下「特別支援学校等通知」)です。
宛先は、都道府県・指定都市の教育委員会などの学校の担当課と、都道府県・指定都市・中核市の障害保健福祉の担当課です。
教育と福祉の両方の担当に向けて出されている点が、この通知の特徴です。
内容は、大きく次の3つに分かれています。
- 1 就労選択支援の概要:趣旨、内容、対象者、支給決定期間と実施期間、実施時期
- 2 特別支援学校等に在籍する生徒が利用するときの留意点:制度の周知、地域の連携体制、学校と事業者の連携、実習の場面を使った作業観察、出欠の取扱い
- 3 従来の就労アセスメントを経てB型を利用するときの留意点
本記事で「特別支援学校等通知1(5)」などと書いている番号は、この通知の項目番号です。
対象になる学校・学年と、中学部の扱い
通知がいう「特別支援学校等」には、特別支援学校の高等部のほか、高等学校と中等教育学校の後期課程も含まれます(特別支援学校等通知)。
通知は、就労選択支援を18歳以上の障害者向けのサービスとしたうえで、特別支援学校等の1年次から利用でき、在学中に複数回利用することもできるとしています(同1(5))。
中学部(中学生)については、厚生労働省の就労選択支援実施マニュアルのQ&Aに注記があります。
15歳以上の障害児のうち「満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者を除く」というものです。
15歳になった年度の末まで(多くは中学3年生の年度末まで)は、この注記により対象から除かれます。
在学中に受ける必要がある人・ない人
在学中に就労選択支援を受ける必要があるかは、卒業後に使うサービスによって変わります。
就労選択支援の対象は、就労移行支援または就労継続支援を利用する意向がある人と、現に利用している人です(特別支援学校等通知1(3))。
特別支援学校を卒業してすぐにB型を使う(いわゆる直B)場合は、原則として事前に就労選択支援を利用します(同)。
ただし、近隣に就労選択支援事業者がない場合や、待機期間が生じる場合は、就労移行支援事業所などによる従来の就労アセスメントを経てB型を利用できます(同)。
A型を新たに使う場合についても、令和9年4月以降は対象とする予定とされています(同)。
群馬県が示した「特別支援学校における就労選択支援の流れ(ガイドライン)」(群馬県立前橋特別支援学校のサイトに別添として掲載)は、一般就労や生活介護を予定する生徒には原則として不要としています。
対象者の詳しい範囲と例外は、就労選択支援の対象者は?B型の前に必要な人・不要な人と例外でご説明しています。
何年生で使う?就労選択支援の利用時期と市区町村の例
在学中のいつ就労選択支援を使うかについて、特別支援学校等通知は「利用時期に定めはない」としています(2(2))。
そのため、実際の時期や進め方は、市区町村や学校が地域の事業所の状況に合わせて決めています。
ここでは、国が示している考え方、市区町村・県の例、受けた結果を卒業時まで使えるか、3年生でA型を考えている場合を順にご説明します。
国の通知が示している時期の考え方
国の資料が示している時期の考え方は、次のとおりです。
- 特別支援学校等の1年次から利用でき、在学中に複数回利用することもできる(特別支援学校等通知1(5))
- 夏期休業中に希望が集中して事業者が受け入れられなくなることも考えられるため、自治体・教育委員会・学校が連携体制をつくる(同2(2))
- 支給決定期間は原則1か月で、作業場面などを活用したアセスメントは2週間程度を想定し、個々の状況に応じて5日間程度の短期間でも行える(同1(4))
厚生労働省の実施マニュアルは、高等部の各学年で実施でき、職場実習のタイミングで行うこともできるとしています。
マニュアルには、高等部1〜3年の年間スケジュールの中のいずれかの時期に就労選択支援を行う例も載っています。
支給決定期間と1か月の中身は、就労選択支援の期間と流れ|原則1か月の中身・費用と4ステップでご説明しています。
市区町村・県が示している時期の例
時期の目安を示している市区町村・県の例は、次のとおりです。
| 自治体 | 時期・方法の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 京都市 | 原則として高等部2年生のときに受ける(職業学科と京都府立特別支援学校は、必要になった時点で受ける)。事業所が校内実習の場に出向く方法を基本と想定 | 京都市「就労継続支援B型の利用に係るアセスメント取扱いマニュアル(支援学校等在校生用:【就労選択支援】導入後)」令和8年4月(第1版)。令和8年度の高等部2年生から適用 |
| 福岡市 | 特別支援学校在学者が2年生で受けた結果で、卒業後のB型の支給決定を行える | 福岡市「特別支援学校在学者の就労継続支援B型の支給決定における取扱いについて」令和8年6月10日。令和8年度卒業生から適用 |
| 青森市 | 3年生以外の各学年でも利用でき、必要に応じて在学中に複数回利用することもできる | 青森市 事務連絡「特別支援学校等在学中における就労選択支援の支給決定に係る取扱いについて」令和7年9月17日 |
| 大阪市 | 1〜3年のどの学年でも受けられ、1・2年の結果で卒業年次にB型を申請することもできる。卒業予定者は連続する5日間程度でも実施できる | 大阪市 事務連絡「支援学校高等部等卒業(予定)者における就労選択支援の利用に向けた取扱い等について」令和7年8月26日 |
| 群馬県 | 高等部1〜3年のどの時期でも実施でき、特に1年生で利用すると進路指導に役立てられる | 群馬県「特別支援学校における就労選択支援の流れ(ガイドライン)」(群馬県立前橋特別支援学校のサイトに別添として掲載) |
| 沖縄県 | 高校1〜3年の在学中に利用でき、進路が確定する前の2年生などでの利用を勧めている | 沖縄県「就労選択支援のご案内(本人・ご家族向け)」(2026年10月28日確認) |
このように、2年生を目安にしている市区町村がある一方で、1年生での利用に触れている県もあります。
お住まいの地域の取扱いは、学校の進路担当の先生か、市区町村の障害福祉の窓口で確認してください。
受けた結果は卒業時まで使えるか
早い学年で受けた場合、その結果を卒業時のB型の支給決定に使えるかが気になる方もいらっしゃると思います。
厚生労働省「就労選択支援の実施について」(以下「実施通知」)は、ほかの機関がすでに行ったアセスメントを活用する場合について、原則として1年以内に実施されたものを活用するとしています(2(4)イ。令和7年9月30日改正後の項番)。
一方で、本人の置かれている環境が変わった場合や、病気や事故などで本人の能力や機能が大きく変わった場合、障害福祉サービスの利用を経て就労能力や就労に関する意向などが大きく変わった場合は、1年たっていなくても改めてアセスメントを行うとされています(同)。
卒業時の支給決定にどの時点の結果を使えるかは、市区町村が取扱いを示しています。
例えば福岡市は、アセスメントの有効期限を原則1年間としたうえで、2年生で受けた結果で卒業後のB型の支給決定を行えるとしています。
1年生で受けた場合に3年生で受け直す必要があるかどうかは、市区町村に確認しておくと安心です。
高等部3年生でA型を考えている場合
A型を新たに使う場合の事前利用について、特別支援学校等通知は令和9年4月以降の「予定」とし、取扱いは改めて示すとしています(1(3))。
令和8年9月28日の第64回障害福祉報酬改定検討チームでは、令和9年4月からA型を利用する予定の人(主に特別支援学校の現3年生)についての案が示されました。
令和8年度内の就労選択支援の利用を原則とせず、暫定支給決定を柔軟に運用するという案です。
暫定支給決定とは、そのサービスを続けて利用したいかという本人の最終的な意向と、そのサービスの利用が適切かどうかを確かめる期間を設けて行う支給決定です(厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)」最終改正 令和8年7月、第2のⅦ5(1)。以下「事務処理要領」)。
これは検討段階の案で、令和8年10月28日時点では決定した取扱いではありません。
福岡市も、令和9年4月以降にA型を利用する場合などの取扱いは、国の具体的な取扱いが示された後に改めて示すとしています。
第64回の見直し案は、就労選択支援のデメリット5つ|例外と令和9年度の見直し案でも紹介しています。
在学中に就労選択支援を使う手続の流れ
在学中に就労選択支援を使う場合も、市区町村に申請して支給決定を受ける点は、卒業後に使う場合と同じです。
違うのは、15〜17歳の生徒には児童相談所長の通知が必要になることと、学校が手続にかかわる場面が多いことです。
ここでは、申請から利用までの流れ、児童相談所長の通知、計画案の作り方、費用を順にご説明します。
申請から利用までの7ステップ
在学中に利用する場合の一般的な流れは、次のとおりです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 希望と時期の確認 | 本人・保護者と学校で、卒業後の見通しと、利用する時期・方法を確認する |
| ② 市区町村への申請 | 市区町村の障害福祉の窓口に、就労選択支援の支給を申請する。申請するのは生徒本人(15〜17歳も「障害者」とみなされるため本人が申請者になる) |
| ③ 児童相談所長の通知 | 15歳以上18歳未満の場合、児童相談所長から市町村長への通知が必要になる |
| ④ 計画案の提出 | サービス等利用計画案(相談支援事業所が作る計画、または本人・家族が作るセルフプラン)を出す |
| ⑤ 支給決定 | 市区町村が支給決定し、受給者証が交付される |
| ⑥ 契約 | 就労選択支援事業所と利用契約を結ぶ |
| ⑦ 利用 | 作業場面などを使ったアセスメント、ケース会議、結果の作成と共有 |
手続の順序や、学校がどこまでかかわるかは、市区町村によって異なります。
例えば京都市は、在校生の支給決定の際に認定調査と概況調査を不要としています。
一方で、大阪市は、流れの中に障がい支援区分認定調査員による認定調査(概況調査)を入れています。
事務処理要領は、就労選択支援などの訓練等給付では、必ずしも認定調査の調査項目による調査を行う必要はないとしつつ、市町村が必要な調査を行い、障がいの程度を含む心身の状況を把握するとしています(第2のⅠ3(15))。
実施マニュアルは、指定特定相談支援事業所と自治体の担当者が学校に出向き、事前説明・申請・面談・計画案の作成までをまとめて行う工夫も紹介しています。
各ステップの詳しい内容は、就労選択支援の期間と流れの記事でご説明しています。
15歳以上18歳未満は児童相談所長の通知が必要
就労選択支援は、障害者総合支援法の「障害者」(18歳以上)が使うサービスです(第5条第13項・第4条第1項)。
そのため、15〜17歳の生徒が使うには、特別な手続があります。
児童相談所長は、15歳以上の児童について、障害福祉サービスを利用することが適当であると認めるときは、市町村長に通知することができます(児童福祉法附則第63条の2・第63条の3)。
第63条の2は身体障害者手帳の交付を受けた児童について、第63条の3は15歳以上の児童について定めた規定です。
通知を受けた生徒は、支給決定や利用者負担などの規定の適用について「障害者」とみなされます(障害者総合支援法附則第2条)。
事務処理要領は、この場合の支給申請は、障害者とみなされる生徒本人が行うとしています(第2のⅡ1(1))。
保護者が申請書の提出などを代わりに行うこと(申請の代行)はできますが、申請者は生徒本人です(同1(2))。
特別支援学校等通知も、15歳以上18歳未満の生徒が利用する場合は、この通知が必要としています(1(5))。
高等部3年生などで18歳になっていれば、障害者総合支援法の「障害者」に当たるため、この手続の対象ではありません(同法第4条第1項)。
実施マニュアルは、この通知を「意見書(通知)」と呼んでいます。
あわせて、自治体が学校から利用を希望する生徒を把握して名簿をつくり、児童相談所長にまとめて依頼する工夫を紹介しています。
群馬県の同ガイドラインも、学校が名簿と生徒・保護者の同意書を集め、市町村が児童相談所に意見を求める流れを示しています。
保護者は、学校や市区町村から同意書などの提出を求められることがあります。
計画相談支援・セルフプラン・障害児相談支援の関係
支給決定の前には、サービス等利用計画案を出します。
相談支援事業所の相談支援専門員に作ってもらう方法(計画相談支援)と、本人・家族が作るセルフプランがあります。
京都市は、在校生の計画案はセルフプランを基本と想定し、計画相談支援も利用できるとしています。
大阪市は、放課後等デイサービスなどの障がい児通所支援を利用している生徒は障がい児相談支援の対象、利用していない生徒は18歳未満でも計画相談支援の対象としています。
どの方法を使うかは、お住まいの市区町村の案内に従ってください。
費用(利用者負担)
就労選択支援の自己負担は、1か月のサービス費用の1割と、所得に応じて決まる負担上限月額のうち、低いほうの額です(障害者総合支援法第29条第3項)。
15〜17歳の生徒が利用する場合の負担上限月額の区分や、所得を判断する世帯の範囲は、お住まいの市区町村に確認してください。
群馬県の同ガイドラインも、生徒によって自己負担の有無などの状況が異なるとしています。
通所の交通費や昼食などの実費がかかることもあるため、契約の前に事業所に確認しておくと安心です。
就労選択支援の日は学校の欠席になる?出欠の扱い
在学中に就労選択支援を使う場面には、夏休みなどの長期休業中、授業日に事業所へ通う日、学校の実習の場に事業者が出向く日の3つが考えられます。
このうち、授業日に事業所へ通う日の出欠の扱いは、校長の判断によります(特別支援学校等通知2(5))。
ここでは、それぞれの場面の扱いを順にご説明します。
授業日に事業所へ通う日は、校長の判断で「出席停止・忌引等の日数」にできる
生徒が授業日に就労選択支援を受けるために登校できない日について、通知は、校長の判断で「出席停止・忌引等の日数」に計上できるとしています(特別支援学校等通知2(5))。
これは、高等学校(全日制・定時制の課程)と特別支援学校高等部の指導要録の「出欠の記録」にある欄です。
この欄に合算する日数の一つとして、次の区分が定められています。
選抜のための学力検査の受検その他教育上特に必要な場合で,校長が出席しなくてもよいと認めた日数
文部科学省「〔別紙3〕高等学校及び特別支援学校高等部の指導要録に記載する事項等」(「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」平成31年3月29日 30文科初第1845号)
指導要録では、「出席しなければならない日数」を、授業日数から出席停止・忌引等の日数などを差し引いて記入します。
欠席日数は、この「出席しなければならない日数」のうち、生徒が欠席した日数です。
そのため、この欄に計上された日は、欠席日数には入りません。
水戸市のウェブページは、学校長が教育上必要と認めた場合は「出席停止・忌引等の日数」に含めることができると案内しています。
沖縄県のパンフレットも、校長の判断で欠席扱いにせず「出席停止等」として扱えるとしています。
扱いは校長が判断するため、利用の日程が決まったら学校に確認しておきましょう。
学校の教育活動に位置付けて「出席」とする場合
通知は、校長の判断によって、就労選択支援を学校の教育活動に位置付け、出席として扱うことも妨げないとしています(特別支援学校等通知2(5))。
その場合は、就労選択支援での生徒の活動が、学校の教育課程の目標・内容に沿うものであることを確認したうえで、出席として扱う必要があります(同)。
つまり、通知は授業日の扱いとして、「出席停止・忌引等の日数」とする方法と、「出席」とする方法の2つを示しています。
どちらの方法を取るかは、学校によって異なります。
校内実習・現場実習の場に事業者が出向く場合
就労選択支援のアセスメントは、生徒が事業所に通う方法のほかに、学校の実習の場面でも行えます。
学校の教育課程に位置付けられた校内実習や、作業現場などでの実習の場面に、就労選択支援事業者が出向いて作業を観察することができます(特別支援学校等通知2(4))。
この場合、生徒は学校の授業に出席しながら、同時に障害福祉サービスを利用する形になります(同)。
京都市は、在校生のアセスメントをこの方法で行うことを基本と想定しています。
夏休みなど長期休業中に利用する場合
夏休みなどの長期休業中に事業所へ通う場合は、授業日ではないため、出欠の扱いは問題になりません。
ただし、夏期休業中は希望が集中し、事業者が受け入れられない場合も考えられるとされています(特別支援学校等通知2(2))。
夏休みに利用する場合は、放課後等デイサービスなどの予定との組み合わせも含めて、早めに日程を調整しておくと安心です。
夏休みの預け先の組み合わせ方は、障がい児の夏休みと仕事|放デイで埋まらない朝と夕方の預け先も参考になります。
学校・事業所・家庭の連携と、放課後等デイサービスとの同日利用
在学中の就労選択支援は、学校、就労選択支援事業所、家庭、市区町村、相談支援事業所がかかわって進みます。
ここでは、学校が協力すること、放課後等デイサービスとの同じ日の利用、進路を決めるのは誰かをご説明します。
最後に、保護者が確認しておきたいことをまとめます。
学校が協力すること|個別の教育支援計画の共有とケース会議
在学中の利用では、学校が持っている情報をアセスメントに生かすことが想定されています。
通知は、学校と就労選択支援事業者が連携し、本人や保護者の同意を得たうえで、学校の個別の教育支援計画を共有するなどの情報提供に協力するよう求めています(特別支援学校等通知2(3))。
事業者からケース会議への参加を求められた場合に、必要に応じて学校が協力することも示されています(同)。
ケース会議は、アセスメントの結果をもとに、本人と関係機関が今後の支援の方向性などを話し合う会議です。
特別支援学校などがすでに行ったアセスメントがある場合は、就労選択支援で活用できることがあります(実施通知2(4)イ)。
京都市は、学校が先に「1次アセスメント」を行い、その結果を就労選択支援事業所に渡す流れにしています。
学校などが行うアセスメントと就労選択支援の関係は、就労アセスメントとは?4つの違いとアセスメントシートの様式でご説明しています。
放課後等デイサービスと同じ日にも使える(市町村が必要と認めた場合)
放課後等デイサービスを使っている生徒も、市町村が必要と認めれば、同じ日に就労選択支援を使えます。
実施通知は、支援内容と報酬が重ならず同じ日に併給できる例として、次の場合を挙げています(4(2)①)。
満18歳未満の障害児が、日中に特別支援学校に出席する代わりに就労選択支援を利用し、夕方に放課後等デイサービスを利用する場合です。
ただし、同じ日の利用は、市町村が必要性を判断し、特に必要と認める場合に認められるという前提があります(同。事務処理要領 第2のⅦ4(1))。
事務処理要領は、就労選択支援を利用する場合には、放課後等デイサービスなど障がい児向けのサービスを併せて利用していても、そのサービスについて「障害者とみなす」扱いはしないとしています(第2のⅡ1(1))。
つまり、就労選択支援のために「障害者」とみなされても、放課後等デイサービスはこれまでどおり障がい児向けのサービスとして利用できます。
京都市のQ&Aも、同じ趣旨を在校生向けに説明しています。
一方で、京都市のQ&Aは、ほかの障害福祉サービスを利用するには別に「みなす」手続が必要で、その場合は原則として児童福祉法のサービスは利用できないとも説明しています。
進路を決めるのは本人。就労選択支援事業者は判断・決定しない
就労選択支援の結果で、行ける進路が決められてしまうのではと心配される方もいらっしゃると思います。
実施通知は、就労選択支援事業者が本人の就労の可否や、利用すべきサービス、利用する事業所などを「判断・決定するものではない」としています(2(4)エ)。
アセスメントの結果は、本人と協同して作るものとされています(同)。
卒業後に使うサービスは、本人の申請にもとづいて、改めて市区町村が支給決定します。
就労選択支援で気をつけたい点は、就労選択支援のデメリットの記事でまとめています。
保護者が学校と市区町村に確認しておきたい6つのこと
在学中の就労選択支援は、市区町村と学校の取扱いによって進め方が変わります。
次の6つを、学校の進路担当の先生や市区町村の窓口に確認しておくと、準備を進めやすくなります。
- 卒業後の見通しから見て、就労選択支援を受ける必要があるか
- 何年生の、どの時期(夏休みか授業日か、実習の場か)に受けるか
- 申請の窓口と、15〜17歳の場合の児童相談所長の通知の段取り(申請者は生徒本人)
- 計画案を相談支援事業所に頼むか、セルフプランにするか
- 授業日に利用する場合の出欠の扱い
- 受けた結果を卒業時の支給決定に使えるか、費用はどうなるか
よくある質問
在学中の就労選択支援について、保護者の方から寄せられることの多い質問にお答えします。
Q1. 中学部(中学生)でも利用できますか?
特別支援学校等通知が在学中の利用の対象としているのは、特別支援学校の高等部、高等学校、中等教育学校の後期課程です。
実施マニュアルのQ&Aも、15歳以上でも、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの人を除くと注記しています。
中学部のうちは、卒業後の見通しについて学校と話し始めておくとよいでしょう。
Q2. 在学中に何回まで受けられますか?
特別支援学校等通知は、在学中に複数回利用することも可能としています(1(5))。
就労選択支援の支給決定の有効期間は原則1か月(最長2か月)のため、時期をあけて再び利用するときは、改めて申請して支給決定を受けることになります(事務処理要領 第2のⅦ9(1))。
例えば大阪市は、1〜3年次に複数回利用することもできるとしています。
2回目以降の利用を考えている場合は、市区町村に扱いを確認しておくと安心です。
Q3. 特別支援学校ではなく高校に通っています。利用できますか?
在学中の利用の取扱いは、高校に通う生徒も同じです。
特別支援学校等通知の「特別支援学校等」には、高等学校と中等教育学校の後期課程も含まれています。
ただし、卒業後に就労移行支援や就労継続支援を使う意向があることが前提で、利用には市区町村の支給決定が必要です。
Q4. 卒業後すぐにB型を使うには、在学中に必ず受ける必要がありますか?
卒業後すぐにB型を使う場合は、原則として在学中に就労選択支援を利用します。
ただし、近隣に就労選択支援事業者がない場合や、待機期間が生じる場合は、就労移行支援事業所などによる従来の就労アセスメントを経てB型を利用できます(特別支援学校等通知1(3)・3)。
例えば福岡市は、こうした場合に特別支援学校在学者が「就労選択支援特例申出書」を区に出し、適当と認められれば、従来の就労アセスメント(学校意見書を含む)を添えてB型を申請できるとしています。
対象者と例外の詳細は、就労選択支援の対象者の記事でご説明しています。
Q5. 結果は、卒業後に使う事業所やハローワークに伝わりますか?
アセスメントの結果は、本人や相談支援事業所に共有し、支給決定を行う市区町村にも共有することが望ましいとされています(実施通知2(4)エ)。
ハローワークなどの関係機関に結果を共有するときは、本人の同意を得ることとされています(同2(5)ア)。
京都市は、アセスメント結果票などを家庭で大切に保管するよう案内しています。
まとめ
特別支援学校の高等部や高校に在学中の生徒も、1年次から就労選択支援を利用でき、在学中に複数回使うこともできます。
在学中の利用対象となるのは、卒業後に就労移行支援や就労継続支援を利用する意向がある生徒です。
卒業後すぐにB型を利用する場合は、例外に当たる場合を除き、原則として事前に就労選択支援を利用します。
何年生で受けるか、手続の進め方、計画案の作り方は、市区町村と学校の取扱いによって変わります。
15〜17歳の生徒が使う場合は、児童相談所長から市町村長への通知が必要で、申請者は生徒本人です。
授業日に事業所へ通う日について、通知は、校長の判断で「出席停止・忌引等の日数」とする方法と、出席とする方法を示しています。
校内実習の場に事業者が出向く方法なら、授業に出席しながら利用できます。
就労選択支援事業者は進路を決めず、卒業後のサービスは本人の申請にもとづいて市区町村が支給決定します。
卒業後の日中活動の選択肢や、親の働き方の変化については、18歳の壁とは|障がい児の卒業後の日中活動と親の働き方でご説明しています。
障がいのある子を育てながら働く親が使える制度は、障がい児の親の仕事|3つの壁と仕事を続けるための制度にまとめています。
制度は改正される可能性があるため、最新の取扱いは厚生労働省「就労選択支援について」とお住まいの市区町村でご確認ください。
参考資料
本記事の作成にあたり、次の資料を参照しました(2026年10月28日確認)。
- 文部科学省・厚生労働省「特別支援学校等における就労選択支援の取扱いについて」(令和7年5月15日 7初特支第1号・障障発0515第2号)
- 厚生労働省「就労選択支援の実施について」(令和7年3月31日 障障発0331第3号)、同 改正(令和7年9月30日 障障発0930第3号)の新旧対照表
- 厚生労働省「就労選択支援実施マニュアル」
- 厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)」(最終改正 令和8年7月)
- 厚生労働省 障害福祉報酬改定検討チーム 第64回(令和8年9月28日)資料「就労系サービスに係る報酬・基準について≪論点等≫」
- 厚生労働省「就労選択支援について」
- 文部科学省「〔別紙3〕高等学校及び特別支援学校高等部の指導要録に記載する事項等」(「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」平成31年3月29日 30文科初第1845号)
- e-Gov法令検索「児童福祉法」「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」
- 京都市「就労継続支援B型の利用に係るアセスメント取扱いマニュアル(支援学校等在校生用:【就労選択支援】導入後)」(令和8年4月 第1版)
- 福岡市「特別支援学校在学者の就労継続支援B型の支給決定における取扱いについて」(令和8年6月10日 福障施第000121号)
- 青森市 事務連絡「特別支援学校等在学中における就労選択支援の支給決定に係る取扱いについて」(令和7年9月17日)
- 大阪市 事務連絡「支援学校高等部等卒業(予定)者における就労選択支援の利用に向けた取扱い等について」(令和7年8月26日)
- 水戸市「就労選択支援」(2025年10月1日更新)
- 群馬県「特別支援学校における就労選択支援の流れ(ガイドライン)」(群馬県立前橋特別支援学校のサイトに別添として掲載。発行日の記載なし)
- 沖縄県「就労選択支援のご案内(本人・ご家族向け)」
※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。
よこぜき行政書士事務所

