職場に知的障がいのある方が配属され、どう接すればよいか分からないまま日々が過ぎている。指示が思うように伝わらない。同じ確認が続く。自分の仕事が後ろに回っていく。そんな状態を、誰にも言えずに抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事は、ご本人を責めるためのものでも、とまどっている側を責めるためのものでもありません。国の調査や指針が示している事実をもとに、そのとまどいがどこから来ているのかを整理し、職場のどの仕組みに戻せばよいのかを、わかりやすくご説明したいと思います。
なお、指導担当者として教え方そのものを知りたい方は、知的障がいのある方への仕事の教え方で詳しく扱っています。
「どう接すればよいか分からない」と感じているのは、あなただけではありません
国の調査では、障がいのある方と同じ職場で働く方のうち、3人に1人程度が何らかの課題を感じていると答えています。支援者でも人事担当者でもない「隣で働いている人」に光を当てた調査は多くありません。まず、その結果から見ていきます。
同僚1,000人を対象にした国の調査があります
障害者職業総合センターは、資料シリーズNo.105「障害等により配慮が必要な従業員の上司・同僚の意識に関する研究」(2022年〈令和4年〉3月発行)を公表しています。2021年10月に実施されたwebモニター調査で、12,642名へのスクリーニングを経て、**配慮が必要な障がいのある方と同じ職場で働き、かつ採用に関わる立場にない1,000名**が対象となりました。
この調査で「障害者と働く上で課題に感じることはありますか」と尋ねたところ、「特になし」が64.9%でした。なお、この調査は障がいの種別ではなく、本人の状態像をもとに尋ねたもので、知的障がいのある方に限定した集計ではありません。
課題の内容について、回答者全体1,000人に占める割合は次のとおりでした(複数回答)。
- 困っている様子は見られるが、自分が何をすればよいかわからない … 14.8%
- 障害のある方のフォローのために自分の業務量が増える … 11.5%
- 日常的な接し方がわからない … **10.5%**
- 会社から受けた説明と、実際の障害のある方の状況が違う … 3.6%
「特になし」以外を選んだ方は351名で、回答者全体の35.1%にあたります。
障がい者雇用に関わる資格を持たない同僚も、多く回答しています
同じ調査では、回答者自身の背景も尋ねています。障害者雇用に関わる資格について「保有していない」と答えた方は95.6%でした。また、現在の職場以外で障がいのある方と関わった経験について「特になし」と答えた方も46.9%でした。
報告書は、この結果から、職場における障がいのある方への配慮に関する一般的な知識をあまりもたない回答者が一定程度含まれていると考えられる、と述べています。ただし、資格や経験の有無だけで、一人ひとりの知識の程度を判断することはできません。
それでも、障がいのある方と同じ職場で働く同僚のほとんどが、専門的な資格を持っているわけではないことは読み取れます。とまどいを、個人の勉強不足や心がけだけの問題として受け止める必要はないと考えられます。
この調査を読むときの3つの注意点
数値を引用するにあたって、その性質もあわせてお伝えしておきます。
第一に、先ほど触れたとおり、障がい種別ではなく状態像で尋ねた調査です。回答者は、同じ職場で働く障がいのある方1名を想定し、最も配慮が必要な内容を1つ選んでいます。最も多かったのは「歩行や階段の上り下りに障害や困難がある」(35.6%)でした。作業手順を覚えたり、課題を処理したりするのに時間がかかっている状態を選んだ回答は7.6%(76名)です。この選択肢は、就業支援ハンドブック(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)で知的障がいのある方の職業的課題として挙げられている項目を参考に作られていますが、回答は診断名による分類ではありません。この76名を「知的障がいのある同僚と働く人の人数」とみなすことはできません。
第二に、回答者のうち33.0%は、障がいのある方と「仕事上の関わりはない」と答えています。同じ職場ではあっても、関わりの度合いには幅があります。
第三に、webモニター調査であり、回答者は50代が41.6%と年代に偏りがあります。報告書自身も、結果を一般化することには留意が必要だと述べています。
とまどいを「仕事上の困りごと」に分けてみる
とまどいを感じること自体は、否定する必要のない自然な反応です。ただ、気持ちのまま抱えていると、解決の糸口が見えにくくなります。ここでは、とまどいを仕事上の場面に分けて整理し、そのうえで「配慮」の範囲を誰が決めるのかを確認します。働き方の全体像については、知的障がいのある方の仕事もあわせてご覧ください。
よくある4つの場面に分ける
職場で起きていることを場面ごとに置き直すと、対応の相手が変わってきます。
| 起きていること | 確かめたいこと | 誰の領域か |
|---|---|---|
| 指示が思うように伝わらない | 抽象的な言い方になっていないか、一度に複数を伝えていないか | 伝え方・指示の出し方 |
| 同じ確認が繰り返される | 手順を目で見て確認できる資料があるか | 業務マニュアル・手順の整備 |
| 自分の業務量が増えている | 誰がどこまで担当するかが決まっているか | 職務設計・役割分担 |
| 日常的な接し方が分からない | 配属前に配慮事項の説明を受けているか | 会社からの情報提供 |
このように分けると、どれもご本人の資質の話ではなく、伝え方・手順・役割分担・情報提供という、職場の側で整えられる事柄に置き換わります。すべての困りごとがこの4つに収まるわけではありませんが、整理の出発点にはなると思います。
「配慮」の範囲を決めるのは、同僚ではありません
ここで押さえておきたいのが、合理的配慮の位置づけです。合理的配慮とは、障がいのある方と障がいのない方との均等な機会や待遇の確保、また能力の発揮の支障となっている事情を改善するために、事業主が講ずる必要な措置のことを指します。
雇用の分野における合理的配慮は、障害者雇用促進法に基づき、**平成28年(2016年)4月から事業主の義務**とされています。商品やサービスの提供などに関する障害者差別解消法の義務化(民間事業者は令和6年〈2024年〉4月)とは、適用される法律が異なります。
つまり、どのような配慮を行うかは、ご本人と事業主が話し合って決める事柄です。同僚が独断で増やしたり減らしたりする立場にはありません。
また、厚生労働省: 合理的配慮指針第5の2は、申出のあった措置が過重な負担に当たると判断した場合の取扱いを、次のように定めています。
> 事業主は、障害者から申出があった具体的な措置が過重な負担に当たると判断した場合には、当該措置を実施できないことを当該障害者に伝えるとともに、当該障害者からの求めに応じて、当該措置が過重な負担に当たると判断した理由を説明すること。また、事業主は、障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で合理的配慮に係る措置を講ずること。
断って終わりではなく、話し合いを続けることまでが求められている、という整理です。だからこそ、現場のとまどいを一人で背負い込む必要はありません。
同僚が会社に求めていたのは「配置前の説明」でした
「何をすればよいか分からない」の答えは、同僚個人の努力の中にはないのかもしれません。先ほどの調査では、課題を感じている方が会社に何を求めているかも尋ねています。その答えが、国の指針の内容と重なっていました。
調査で最も多かったのは「配置前に配慮事項を説明してほしい」
資料シリーズNo.105で、課題があると答えた351名に「課題を解決するために会社に求めることはありますか」と尋ねたところ、選択率は次のとおりでした(複数回答)。
- 職場の配置前に配慮事項についての説明をしてほしい … 37.0%
- 障害特性等について、専門家による研修をしてほしい … 25.1%
- 専門の職員を配置してほしい … 20.8%
- 特になし … 31.1%
情報提供に関する項目が上位に挙がっている、ということになります。
説明を受けていない方も4割近くいます
同じ調査で、回答者全体1,000名に「障害者と働くにあたって、会社等から何らかの説明があったか」を尋ねたところ、「あった」が**61.2%**、「なかった」が**38.8%**でした。
説明があったと答えた612名に内容を尋ねると、障害特性に関する説明が65.7%、働く上での具体的な配慮事項に関する説明が62.4%でした。ただし、**両方を選択した方は30.0%**にとどまっています。説明を受けた方のうち、特性と配慮事項の両方が揃っていた方は3割ということです。なお、説明を行ったのは「あなたの上司」が69.6%で、現場の管理職が主に担っていることも示されています。
さらに、回答者が「障害がある」と判断した理由を見ると、「職場(人事や上司)から説明があった」が50.5%で最も多い一方、「普段の勤務の様子から判断した」も35.3%ありました。「職場から説明があった」「その方から聞いた」のいずれも選ばなかった回答者は**39.0%**で、報告書は、障がいの有無について正確な情報を得ないまま、普段の様子などから障がいがあると認識している回答者が4割程度いると述べています。
「他の労働者への説明」は、国の指針が挙げる配慮の例です
ここで注目したいのが、合理的配慮指針の別表です。別表は障がいの区分ごとに事例が整理されており、厚生労働省: 合理的配慮指針 別表の知的障害の欄には、採用後の配慮として次の5項目が挙げられています。
1. 業務指導や相談に関し、担当者を定めること
2. 本人の習熟度に応じて業務量を徐々に増やしていくこと
3. 図等を活用した業務マニュアルを作成する、業務指示は内容を明確にし、一つずつ行う等作業手順を分かりやすく示すこと
4. 出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること
5. **本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること**
5番目に挙げられているのが、まさに「周囲への説明」です。調査で同僚が最も多く求めていたことは、すでに国の指針に配慮の例として書かれている、ということになります。
厚生労働省の厚生労働省: 合理的配慮指針事例集【第六版】には、この項目について企業から集められた事例が掲載されています。事例集では、説明する相手・内容・方法のそれぞれについて、**本人の希望を踏まえることを前提**として例が示されています。
説明する内容の例としては、作業内容を習得するのに多少時間がかかること、2つのことが同時にできないこと、数字の処理が苦手であることなど、具体的で必要最小限の障害特性が挙げられています。本人が困っているときの声のかけ方や会話の仕方といった接し方、本人に対し行ってはならないことを説明した例も記載されています。なお、**これらは、ある職場が特定の方について説明した内容の例であり、知的障がいのある方に共通する特徴を示したものではありません。**
周囲に説明するときは、ご本人の希望を踏まえて、誰に、どの情報を、どのような方法で伝えるかを事前に確認することが大切です。診断名や障がいの詳しい内容を広く共有することを前提にせず、仕事を進めるうえで必要な配慮を中心に、必要な範囲で伝えます。事例集でも、説明する内容の例の一つとして、障がいがあることのみを説明するという取扱いが挙げられています。
説明の方法としては、就労支援機関や特別支援学校の職員とともに説明する、特性や必要な配慮事項を記載した資料を配付するといった例のほか、社内ポータルサイトに障がいのある社員を紹介するコーナーを設けた事例(500〜999人/製造業/軽作業)も掲載されています。これらも、本人の希望を踏まえた説明方法の例として示されているものです。
別表は、チェックリストではありません
ただし、この別表を「やるべきことの一覧」として読むのは正確ではありません。別表は「合理的配慮の事例として、多くの事業主が対応できると考えられる措置の例」と位置づけられており、注記には次のように示されています。
> 合理的配慮は、個々の障害者である労働者の障害(障害が重複している場合を含む。)の状態や職場の状況に応じて提供されるものであり、多様性があり、かつ、個別性が高いものであること。したがって、ここに記載されている事例はあくまでも例示であり、**あらゆる事業主が必ずしも実施するものではなく**、また、**ここに記載されている事例以外であっても合理的配慮に該当するものがある**こと。
この注記は両方向に開かれています。5項目に足りないから直ちに問題だ、とも言えませんし、5項目さえ満たせば十分だ、とも言えません。
なお、別表として公表されているPDFは指針の抜粋であり、手続や過重な負担、相談体制に関する定めは含まれていません。これらについては指針の全文を確認する必要があります。
一人で抱えないための、職場の仕組み
とまどいを会社に戻すといっても、どこに戻せばよいのかが見えなければ動きようがありません。先ほどの調査では、課題があると答えた351名のうち「特に何もしていない」が55.6%、「会社に相談した」は13.7%、「支援機関の支援を受けた」は6.3%でした。同じ351名のうち23.4%は、課題を感じつつ、解決のための行動もしておらず、会社に求めることも「特になし」と答えています。ここでは、職場の中にある受け皿を確認します。
業務指導や相談の「担当者」を定めること
別表の1項目めに挙げられているのが、業務指導や相談に関する担当者を定めることです。事例集には、本人の混乱を避けるため指示や相談対応を行う者を限定している例や、業務指導を行う者と相談対応を行う者を分けている例が掲載されています。
同僚の立場から見て参考になるのが、担当者が不在のときに他の同僚も同じように対応できるよう、作業の手順を示す資料を作成・共有し、所属部署全体でフォローできるようにしているという事例です。担当者を決めることと、特定の一人に全部を背負わせることは、同じではありません。
いま、結果として自分がその役を一人で引き受けていないか。そこを確かめることが、最初の一歩になります。
障害者職業生活相談員という法律上の仕組み
配慮の例示とは別に、法律上の仕組みもあります。障害者の雇用の促進等に関する法律第79条第2項は、次のように定めています。
> 事業主は、厚生労働省令で定める数以上の障害者である労働者を雇用する事業所においては、その雇用する労働者であつて、資格認定講習を修了したものその他厚生労働省令で定める資格を有するもののうちから、厚生労働省令で定めるところにより、障害者職業生活相談員を選任し、その者に当該事業所に雇用されている障害者である労働者の職業生活に関する相談及び指導を行わせなければならない。
この「厚生労働省令で定める数」は5人とされています。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構: 障害者職業生活相談員の説明によれば、この5人は、障がいの程度や労働時間の長短にかかわらず、常時雇用している障がいのある労働者の**実人数**で判断します。判断の単位は会社全体ではなく事業所ごとで、選任したときは管轄のハローワークに選任届を提出することとされています。
ここで区別しておきたいのは、別表が挙げる「業務指導や相談に関する担当者」は合理的配慮の例示であり、この選任義務とは**別の仕組み**だという点です。また、指針第6は、障がいのある方からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備として、相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知すること、相談者のプライバシーを保護する措置を講ずること、相談したことを理由に不利益な取扱いを行わない旨を定めて周知・啓発することを挙げています。こちらは事業所の規模を問わず求められる措置です。
困りごとを会社に伝えるときの整理のしかた
会社に伝えるときは、「困っています」だけでは状況が伝わりにくいことがあります。次のような形で整理しておくと、組織として判断しやすくなります。
- どの業務で、どのような場面で起きているのか
- いつごろから続いているのか
- これまで自分はどのように伝えてきたのか
- 自分の業務にどのような影響が出ているのか
- 現場だけでは判断が難しいと感じる点はどこか
感情ではなく事実の形にしておくと、個人間の相性の話ではなく、職場の設計の話として扱われやすくなります。
職場の外にある、事業主が使える支援
職場の中だけで解決しにくい場合もあります。合理的配慮指針が挙げる過重な負担の考慮要素には「公的支援の有無」も含まれており、外部の支援を前提に検討するという考え方が示されています。ここでは、事業主が使える公的な支援を見ていきます。
地域障害者職業センター(事業主への支援)
地域障害者職業センターは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が各都道府県に設置している機関です。障がいのある方への職業評価や職業準備支援に加えて、**事業主に対して**、雇用管理上の課題の分析、雇用管理に関する助言、障害者のための職務の切り出し、ジョブコーチの派遣などを行っています(厚生労働省「合理的配慮指針事例集【第六版】」参考2)。
このうち「職務の切り出し」は、現場のとまどいに直結する支援です。当サイトの運営者も、一般企業の側から就労継続支援B型事業所に作業を発注する際、工程をどこで分ければ任せやすくなるかを考えてきました。任せる仕事を工程単位で切り分けるという発想は、社内で一緒に働く場面にも通じるところがあります。
ジョブコーチと、障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
職場適応援助者(ジョブコーチ)には、地域障害者職業センターに所属する配置型、社会福祉法人等に所属する訪問型、企業に所属する企業在籍型の3つの類型があります。ジョブコーチは、ご本人だけでなく事業主の側にも助言を行います。事例集にも、本人にとって困難な作業工程について担当者とジョブコーチが相談し、作業工程の簡素化・単純化を行った例(100〜299人/製造業/製造工)が掲載されています。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)は、就業面と生活面の相談に一体的に対応する機関で、事業主に対する雇用管理上の助言も行っています。厚生労働省: 障害者就業・生活支援センターについてによれば、令和8年4月現在で340センターが設置されています。
就労支援機器の無料貸出
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、事業主等に対して就労支援機器の無料貸出を行っています。貸出期間は原則6か月以内で、同機構が特に必要と認めた場合に、同一の対象者について1回に限り6か月の延長ができるとされています。対象は、貸出しを受けた機器が有効な場合に同種の機器を整備する意思を有する事業主等です(国・地方公共団体・独立行政法人等は対象外)。知的障がいのある方などに向けた機器としては、パーテーション、タイムエイド、ノイズキャンセラー、イヤーマフなどが挙げられています(JEED: 就労支援機器の貸出しの概要)。
判断に迷いやすい3つの場面
ここまでは仕組みの話でした。最後に、現場で判断に迷いやすい場面を3つ取り上げます。いずれも、個人の感覚だけで線を引くと苦しくなりやすいところです。気持ちそのものを否定する必要はありません。そのうえで、どこに判断を戻せばよいのかを見ていきます。
仕事のことを注意してもよいのでしょうか
業務上必要な確認や改善点は、具体的に伝えることができます。ただし、本人に求める業務の内容や量、習熟までの進め方などは、本人の状況と合理的配慮の内容を踏まえて、会社と本人が話し合って調整することがあります。
実際、指針の別表は、知的障害の欄で「本人の習熟度に応じて業務量を徐々に増やしていくこと」を配慮の例に挙げています。また、厚生労働省: 障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第三版】は、合理的配慮として特定の職務を切り出し、障がいのある方に担当してもらうことは、法が禁止する差別には当たらないとしています(Q3-3-2)。合理的配慮は、伝え方の工夫だけに限られるものではありません。
同僚の立場では、まず会社が決めた方針を確認したうえで、何をどう改善してほしいのかを分かりやすく伝えることが基本になります。伝え方については、別表が「図等を活用した業務マニュアルを作成する、業務指示は内容を明確にし、一つずつ行う等作業手順を分かりやすく示すこと」を挙げており、事例集にも、一つの指示を出し、終わったことを確認してから次の指示を出すようにしているという例が掲載されています。「ちゃんとやってください」ではなく、何を、どこまで、いつまでにを具体的に伝える。その切り替えが、双方の負担を減らすことにつながると考えられます。
どこまで手伝えばよいのでしょうか
手伝うこと自体は悪いことではありません。ただ、肩代わりが続いている場合は、善意の問題としてではなく、職務設計の問題として会社に共有できる場面だと考えられます。
事例集には、通常は1部屋を1人で清掃するところ、本人が不得意な作業が含まれていたため2人体制にし、本人が得意な作業を中心に担当してもらった例(10〜49人/宿泊業/清掃員)が掲載されています。誰かが黙って引き受けるのではなく、担当の分け方そのものを変えたという事例です。
ご本人の側が働きづらさを感じている可能性もあります。その場合は、仕事が続かないと感じているときの視点もあわせてご覧ください。
不公平に感じたときはどうすればよいのでしょうか
不公平だと感じる気持ちは、無理に打ち消す必要はありません。資料シリーズNo.105でも、配慮に対して多くは肯定的である一方、不公平を感じる人もいることが先行研究で示されている、と述べられています。
なお同調査では、「その他」を除くすべての配慮項目で、その項目について回答した方の8割以上が、「適切な配慮が提供されている」と評価していました。これは、周囲の人が配慮をどのように受け止めているかを示した結果であり、個々の配慮が適切かどうかを判断したものではありません。
合理的配慮は、全員をまったく同じに扱うことではなく、働く上での支障を減らすための調整です。そして、その内容を決めるのはご本人と事業主です。もし現場に不公平感が生じているのであれば、それ自体が会社に伝えるべき情報だと考えることができます。
よくある質問
ここまでの内容を踏まえ、現場でよく挙がる疑問を4つ取り上げます。いずれも、個人の判断だけで答えを出そうとすると迷いやすいものです。制度や公的資料で確認できる範囲に絞って整理します。
**Q1. 障がいのことを、本人に直接聞いてもよいですか**
指針が挙げる配慮の例は「本人のプライバシーに配慮した上で」という前提に立っており、事例集でも、周囲への説明は本人の希望を踏まえて行う形で例示されています。個人的に問いただすのではなく、会社が本人の希望を確認したうえで共有する情報を受け取るのが基本になります。事例集では、説明を行う際に就労支援機関や特別支援学校の職員が同席した例も紹介されています。
**Q2. 何度も同じことを聞かれて疲れてしまいます**
口頭で覚えてもらうことを前提にすると、確認は繰り返されやすくなります。事例集には、図や写真を活用したマニュアル、ふりがな付きのマニュアル、タブレットで写真付きの手順を確認できるようにした例などが掲載されています。手順を目で見て確認できる形にしている企業の事例が、実際に集められているということです。
**Q3. その人に合った仕事かどうかは、誰が判断するのですか**
制度としては、就労選択支援があります。令和7年(2025年)10月1日に施行された制度で、就労に関する適性・能力・意向を評価し、働き方の選択を支援するものです。ただし利用対象は、就労移行支援または就労継続支援を利用する意向がある方および現に利用している方とされており、市区町村による支給決定も必要です。誰でも受けられる適職診断ではない点にご注意ください。職場の側で職務の内容を見直す場合は、地域障害者職業センターの助言が窓口になります。なお、障がいの程度と働き方の関係については、軽度の判定を受けた方の仕事でも扱っています。療育手帳の区分については、別記事で改めて扱う予定です。
**Q4. 関係がこじれてしまったときは、どこに相談できますか**
まずは社内の相談窓口や管理職が入口になります。職場の外では、なかぽつや地域障害者職業センターが事業主への助言を行っています。現場での具体的なつまずきと対応策をまとめた資料としては、京都府: 知的障害者と共に働くあるあるガイドブックも参考になります(京都府が作成した資料です)。なお、解雇や処遇をめぐる個別の労務上の問題に発展している場合は、社会保険労務士や弁護士など、それぞれの専門家にご確認いただくことになります。
まとめ
知的障がいのある同僚と働くうえでのとまどいについて、国の調査と指針をもとに整理してきました。要点を振り返ります。
障がいのある方と同じ職場で働く同僚1,000名を対象とした調査(知的障がいに限定したものではありません)では、3人に1人程度が何らかの課題を感じていると答え、課題の内容として最も多く選ばれたのは「困っている様子は見られるが、自分が何をすればよいかわからない」でした(回答者全体の14.8%)。また、会社から何らかの説明を受けていない方が38.8%いることも示されています。
そして、課題を感じている方が会社に最も多く求めていたのは、配置前に配慮事項を説明してほしいということでした。その「他の労働者への説明」は、合理的配慮指針の別表が、知的障がいのある方への採用後の配慮の例として挙げている項目でもあります。ただし、何を、誰に、どのように伝えるかは、ご本人の希望を踏まえて決めるものです。
合理的配慮は、伝え方の工夫だけでなく、業務量の調整や職務の切り出しを含めて、ご本人と事業主が話し合って決めるものです。現場のとまどいは、個人の心がけの問題である前に、職場の情報共有と役割分担の問題として扱うことができます。一人で抱えず、職場の仕組みと、外部の支援機関に戻していく。その道筋は、制度の側にすでに用意されています。
制度は改正されることがありますので、最新の情報は厚生労働省: 雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮等でご確認ください。
※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。
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