令和7年(2025年)10月1日、障害者総合支援法に基づく新しい障害福祉サービスとして「就労選択支援」が施行されました。施行から半年余りが経ち、就労継続支援B型を新たに利用する方には、原則として事前に就労選択支援を利用する仕組みが運用されています。

ところが、名前の似ている「就労移行支援」との違いが分かりにくいというお声もよく耳にします。両制度は名前が似ているだけでなく、就労に関する支援という共通点もあるため混同しがちですが、目的・対象・期間など、多くの面で性格が異なります。

本記事では、「就労選択支援」と「就労移行支援」の違いを、目的・対象者・利用期間・賃金/工賃の有無・利用後の流れの5つの観点から、わかりやすくご説明したいと思います。

「就労選択支援」と「就労移行支援」の違い早見表

まず、両制度の違いを5つの観点で一覧にまとめました。それぞれの観点の詳細は、このあとのセクションで掘り下げてご説明します。まずは全体像を把握していただくと、続く各項目の理解がスムーズになります。

一覧で見る両制度の比較表

以下の表は、厚生労働省「就労選択支援について」(社会保障審議会障害者部会資料)などの一次情報をもとに、5つの観点で両制度を整理したものです。

観点就労選択支援就労移行支援
目的自分に合う働き方を主体的に選ぶ支援一般企業への就労に向けた訓練・支援
主な対象者就労系サービスの利用を希望/利用中の方原則18歳以上65歳未満で一般就労を希望する方
利用期間原則1か月(最長2か月)原則2年(最大1年延長可)
賃金・工賃原則なし原則なし(生産活動の収益による工賃の例外あり)
利用後の流れアセスメント結果をもとに次の支援を選択求職活動・就職、就労定着支援へ

(出典: 厚生労働省「就労選択支援について」、障害者総合支援法第5条第13項・第14項)

制度の目的の違い

就労選択支援と就労移行支援は、いずれも障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスです。しかし、目的が大きく異なります。一方は「自分に合う働き方を選ぶこと」、もう一方は「一般就労に向けて訓練し、就職すること」が中心となります。なお、就労選択支援は令和7年10月1日に施行された新しい制度である一方、就労移行支援は平成18年(2006年)から続く制度であり、両者の成り立ちにも時間差があります。

就労選択支援の目的

就労選択支援は、令和4年法律第104号による改正で創設され、令和7年(2025年)10月1日に施行された新しい制度です。

就労選択支援の目的は、障がいのある方ご本人が、自分の働き方を主体的に選ぶための支援を行うことです。具体的には、短期間の作業体験等を通じて、就労に関する適性・知識・能力を評価し、その方の意向や、就労にあたって必要な配慮を整理します。そのうえで、就労移行支援や就労継続支援A型・B型、一般企業など、どの働き方が合っているかを本人とともに検討する仕組みになっています。詳しくは就労選択支援とはの解説記事もあわせてご参照ください。

就労移行支援の目的

一方、就労移行支援は、一般企業への就労を目指す方を対象とした、訓練・就職活動支援のためのサービスです。

知識・能力の向上のために必要な訓練、求職活動の支援、職場定着のための相談などを一体的に提供することで、ご本人が一般就労にスムーズに移行し、定着できることを目的としています。「働く先を選ぶ前段階」である就労選択支援に対して、就労移行支援は「具体的な就労先を見つけ、そこに移行する段階」を支える制度といえます。制度の詳しい内容は就労移行支援の詳細の解説記事もご参照ください。

対象者の違い

両制度は、対象となる方の範囲も異なります。就労選択支援は幅広い方を対象としているのに対し、就労移行支援には年齢や就労意向の要件があります。「自分は利用できるのか」を確認する際は、この違いをまず押さえておくと整理しやすくなります。

就労選択支援の対象者

就労選択支援の対象者は、厚生労働省「就労選択支援について」によると、以下のとおりです。

  • 就労移行支援または就労継続支援(A型・B型)の利用を希望する方
  • 就労移行支援または就労継続支援を、現に利用している方

特別支援学校高等部や高等学校、中等教育学校の後期課程に在学中の生徒も、卒業後の進路選択を考えるためのアセスメントとして対象になり得ます(出典:厚生労働省「就労選択支援実施マニュアル」、令和7年3月)。なお、15歳以上18歳未満の生徒が利用する場合は児童相談所長の意見書が必要です。大学生など高等教育機関に通う方の取扱いについては運用差があり得るため、お住まいの市区町村の障害福祉窓口にご確認ください。年齢の上限は設けられておらず、就労系サービスの利用を視野に入れている方であれば、広く対象になり得る制度です。

就労移行支援の対象者

就労移行支援の対象者は、厚生労働省「就労移行支援について」によると、「一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者(65歳未満の者)」とされています。

つまり、原則として18歳以上65歳未満で、一般企業への就労を希望する方が対象です。ただし、65歳に達する前5年間継続して障害福祉サービスの支給決定を受けていた方など、一定の継続利用の例外も認められています。

サービス内容と利用期間・お金の違い

就労選択支援と就労移行支援は、利用できる期間の長さも、お金(賃金・工賃)の扱いも異なります。短期で集中的にアセスメントを受けるのか、長期で訓練を受けるのか、という性格の違いがそのまま反映されていると言えます。

サービス内容と利用期間の違い

就労選択支援の利用期間は、原則1か月とされており、必要に応じて最長2か月まで延長できます。

期間中は、利用者と協同で就労ニーズの把握を行い、データ入力やラベル貼りなどの短期間の作業体験を通じて、能力・適性や、就労にあたって必要な配慮を整理します。さらに、ハローワークや障害者就業・生活支援センターなどとケース会議を開催し、アセスメント結果を共有して、その後の支援につなげます。

就労移行支援の利用期間は、原則2年間です。必要が認められた場合に、最大1年間の延長ができます。期間中は、職業訓練、求職活動の支援、職場実習などを段階的に提供します。就職後の継続的な定着支援については、別サービスである就労定着支援が担う仕組みになっています。

賃金・工賃の有無

両制度とも、利用者と事業所の間に雇用契約は結ばないため、原則として賃金は発生しません。

就労選択支援については、目的がアセスメントにあるため、工賃の支払いは予定されていません。就労移行支援についても、訓練が中心であるため、賃金や最低賃金の対象には通常なりません。ただし、生産活動に従事する場合は、事業収入から必要経費を控除した額が工賃として支払われる場合があります(出典: 厚生労働省「就労移行支援について」)。

就労選択支援を先に利用する必要があるケース

令和7年10月の施行に合わせて、特定のケースでは就労選択支援を先に利用することが原則化されました。「自分は就労選択支援を必ず受けないといけないのか」と気になる方も多いと思いますので、現時点の運用と今後の予定を整理してご説明します。

B型新規利用者(令和7年10月から原則化済み)

令和7年10月以降、新たに就労継続支援B型を利用したいと希望する方は、原則として、事前に就労選択支援を利用することになりました(出典: 厚生労働省「就労選択支援について」)。B型のサービス内容については就労継続支援B型の詳細もあわせてご覧ください。

ただし、以下のいずれかに該当する方は、就労選択支援を経ずにB型を利用できる例外が設けられています。

  • 50歳以上の方
  • 障害基礎年金1級を受給している方
  • 就労経験があり、年齢や体力の面から一般企業での雇用が困難となった方 など

なお、地域に就労選択支援事業所が少なく、就労選択支援のアセスメントが速やかに受けられない場合の取扱いについては運用差があり得ますので、お住まいの市区町村の障害福祉窓口にご確認ください。

A型・就労移行支援の更新時(令和9年4月から予定)

就労継続支援A型を新たに利用する方、および就労移行支援を標準利用期間(2年)を超えて利用する方への就労選択支援の事前利用は、令和9年(2027年)4月から原則化される予定です(出典: 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料)。A型のサービス内容については就労継続支援A型の詳細もご参照ください。

就労移行支援の利用期間を超えて更新を希望される方のうち、面接や職場実習など、一般就労に向けた具体的な予定があり、事業所が明らかに就職可能性があると判断した方については、就労選択支援を経ない例外も整理されています。実際の取扱いは市区町村ごとの運用にも左右されるため、更新を予定されている方は、現在通われている事業所や市区町村窓口にも併せて確認することをおすすめします。

自分はどちらを利用すればよいか

ここまでの違いを踏まえても、「結局、自分はどちらを使えばいいのか」と迷われる方もいらっしゃると思います。判断の出発点となる視点を2つご紹介します。あくまで考え方の目安ですので、最終的には市区町村窓口や事業所と相談しながら決められるのが安心です。

「働き方の希望や見通しが定まっている」場合

「一般企業で働きたい」「○○系の仕事に就きたい」など、ある程度ご自身の働き方の方向性が定まっている方は、就労移行支援が候補になりやすいと考えられます。

就労移行支援は、職業訓練・求職活動・職場定着までを2年間という比較的長い期間で支えるサービスです。就労支援施策の対象となる障害者数等に関する厚生労働省の統計によれば、就労移行支援から一般就労への移行率は近年上昇傾向で、令和6年(2024年)は60.2%と報告されており(出典: 厚生労働省「就労支援施策の対象となる障害者数/地域の流れ」、社会福祉施設等調査・国保連データ等を基に作成)、具体的な就労ゴールがある方にとっては有力な選択肢の一つとなり得ます。

「自分に合う働き方が分からない」場合

一方、「働く意欲はあるが、自分にどんな働き方が合うかまだ分からない」「就労継続支援も検討しているが迷いがある」という方は、就労選択支援がフィットしやすい場面が多いと考えられます。

就労選択支援では、短期間の作業体験と多機関連携によるケース会議を通じて、ご自身の強みや必要な配慮を客観的に整理してもらえます。アセスメント結果をもとに、就労移行支援・A型・B型・一般就労など、複数の選択肢を比較できる点が、迷いを抱えている方にとっての利点といえるでしょう。どこで就労選択支援を受けられるかについては、就労選択支援事業所はどこがやるのかもあわせてご参照ください。

よくある質問

両制度について、ご利用を検討されている方からよくいただく質問を4つ取り上げます。詳細は、お住まいの市区町村の障害福祉窓口や、利用予定の事業所にもご確認ください。

Q1: 就労選択支援と就労移行支援は併用できますか?

両制度を同時並行で利用することは、原則として想定されていません。

就労選択支援は、就労移行支援などを選ぶ前段階のアセスメントを行う制度です。就労選択支援を経て、適性に応じて就労移行支援などの利用に進む、という時系列での組み合わせが基本的な流れとなります。

Q2: 利用料はかかりますか?

両制度とも、サービス費用の1割が原則的な自己負担となります。ただし、世帯の所得に応じて月額の負担上限額が定められており、生活保護世帯や市町村民税非課税世帯は0円です。

なお、18歳以上の障がいのある方の場合、所得を判断する世帯範囲は原則として「本人と配偶者」とされています(出典: 厚生労働省「障害者の利用者負担」)。

Q3: 障がい者手帳がなくても利用できますか?

障がい者手帳の有無が、利用可否を直接決めるものではありません。難病等を含む障害者総合支援法の対象に該当し、市区町村が必要性を認めれば、手帳がない場合でも利用できる場合があります(令和7年4月時点で対象難病は376疾病、出典: 厚生労働省「障害者総合支援法対象疾病」)。

Q4: 就労選択支援を経ずに直接B型を利用することはできますか?

令和7年10月以降、新たに就労継続支援B型を利用する方は、原則として事前に就労選択支援を利用することになりました。

ただし、50歳以上の方、障害基礎年金1級を受給している方、就労経験があり年齢や体力面で一般企業での雇用が困難となった方などについては、就労選択支援を経ずに直接B型を利用できる例外が設けられています。ご自身が例外に該当するかどうかは、お住まいの市区町村窓口にご確認ください。

まとめ

最後に、本記事の要点を簡潔に整理します。

就労選択支援と就労移行支援は、いずれも障害者総合支援法に基づく就労系サービスですが、目的・対象者・期間・お金の扱い・利用後の流れの5つの観点で、性格が大きく異なります。就労選択支援は、自分に合う働き方を選ぶための短期(原則1か月)のアセスメントです。一方、就労移行支援は、一般就労を目指して訓練と求職活動を行う長期(原則2年)のサービスです。

令和7年10月以降、新たに就労継続支援B型を利用する方は原則として就労選択支援を先に利用する仕組みとなっており、A型や就労移行支援の更新時についても令和9年4月から事前利用が原則化される予定です。例外規定もありますので、ご自身が対象になるかどうかは、お住まいの市区町村窓口や検討中の事業所にご確認ください。


※本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。

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