令和4年(2022年)12月16日に「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律」が公布され、公布から3年以内の政令で定める日に「就労選択支援」という新しい制度が創設されることになりました。(詳しくは『就労移行支援とは』のページをご参照下さい)

この「就労選択支援」という新しい制度と「就労移行支援」は何が違うのかと思われている方もいらっしゃると思います。

このページでは「就労選択支援」と「就労移行支援」の違いに関して分かりやすくご説明したいと思います。

「就労選択支援」と「就労移行支援」の目的の違い

まずは「就労選択支援」と「就労移行支援」のそれぞれの目的の違いをみてみましょう。

就労選択支援の目的

就労選択支援は、障がいがある方を「適切な障害福祉サービスに繋げること」と「次のステップに支援すること」という現状の課題を解決することを目的としています。

  • 働く力と意欲のある障害者に対して、障害者本人が自分の働き方を考えることをサポートする。
  • 就労継続支援を利用しながら就労に関する知識や能力が向上した障害者には、本人の希望も重視しながら、就労移行支援の利用や一般就労等への選択の機会を適切に提供する。

就労移行支援の目的

就労移行支援は障がいのある人々が就労に必要なスキルや習慣を身につけ、一般企業へ就労することを目的としています。

  • 知識及び能力の向上のために必要な訓練
  • 求職活動に関する支援
  • 適性に応じた職場の開拓
  • 職場への定着のために必要な相談等の支援

これらのサポートによって、障がいのある方々が社会や一般の職場にスムーズに移行し、自立した生活を送るための自信と能力を養うようになり、移行後の職場での定着を図ることを目的とします。

「就労選択支援」と「就労移行支援」の目的の違う点

就労選択支援は、障がいがある方を「適切な障害福祉サービスに繋げること」と「次のステップに支援すること」が目的なので、就労選択支援A型、B型、就労移行支援、一般就労など、利用者にとってどの就労形態が最適なのかを考え選択することをサポートするサービスです。

就労移行支援は、障害がある方が社会や一般の職場にスムーズに移行し定着を図ることが目的ですので、そのための知識・能力向上に必要な訓練や求職活動支援、定着のための相談などをおこなうサービスです。

「就労選択支援」と「就労移行支援」の対象者の違い

次に、「就労選択支援」と「就労移行支援」の対象者の違いをみてみましょう。

就労選択支援の対象者

2023年6月の障害者部会で示された省令の具体的内容案において、就労選択支援の対象者は以下のとおりとされています。

  • 新たに就労継続支援又は就労移行支援を利用する意向がある障害者
  • 既に就労継続支援または就労移行支援を利用しており、支給決定の更新の意向がある障害者

※詳しくは『就労移行支援とは 就労選択支援の対象者』をご参照下さい。

就労移行支援の対象者

厚生労働省の資料では以下のように定義されています。

一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者(65歳未満の者)

就労移行支援について

つまり、「65歳未満で一般就労を希望されている障害者の方」が対象者となります。

「就労選択支援」と「就労移行支援」の対象者の違う点

就労選択支援を利用できる方は、新たに就労継続支援又は就労移行支援を利用する予定の障害者の方や既に就労継続支援または就労移行支援を利用していて更新を予定されている障害者の方です。

つまり、就労選択支援を利用される方は、一般就労を希望されている障害者の方とは限りません。

就労移行支援を利用される方は、一般就労を希望されている障害者の方になります。

「就労選択支援」と「就労移行支援」のサービス内容の違い

就労選択支援のサービス内容

就労選択支援では、障がいのある方を適切な障害福祉サービスに繋げて次のステップに支援するために、以下のようなサービスを提供します。

  • 強みや特性の整理
  • 自己理解を促す
  • アセスメントの結果の活用
  • 情報提供、助言・指導等
  • 雇用支援機関との連携、連絡調整

就労選択支援サービスのそれぞれの詳しい内容に関しては『就労選択支援とは 就労選択支援の具体的なサービス内容』をご参照ください。

就労移行支援のサービス内容

就労移行支援では一般就労等への移行に向けて、以下のようなサービスを提供します。

  • 事業所内や企業における作業や実習
  • 適性に合った職場探し
  • 就労後の職場定着のための支援等を実施

「就労選択支援」と「就労移行支援」のサービス内容の違う点

就労選択支援は、障がいのある方がご自身の強みや特性を把握して、最適な就労形態を選択するための支援です。

就労移行支援は、一般就労等に向けての知識や能力の向上支援、求職支援、職場定着支援です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

就労選択支援と就労移行支援の違いをご理解いただけたかと思います。

障がいのある方ご本人やその支援者が、障がいのある方が「どんな仕事をどれくらいできるか」といった「就労能力」や「一般就労の可能性」について十分に把握できていないケースがあります。

就労選択支援では、適切な障害福祉サービスを利用してもらえるように支援をして、就労移行支援では、一般就労等を希望された場合に、一般就労のための支援をします。

どちらも、障がいのある方が就労をする上で大切なサービスになります。