はじめに

令和7年(2025年)10月1日に「就労選択支援」が始まり、1年が過ぎました。

新たに就労継続支援B型(以下、B型)を利用する場合は、原則として先に就労選択支援を利用する仕組みになっています。

国の資料では、令和7年10月から令和8年4月までの半年で、利用者数が4倍以上に増えています(厚生労働省 第64回障害福祉報酬改定検討チーム資料)。

一方で、「手続きが増えるだけではないか」「近くに事業所がない」「進路を誘導されないか」といった不安の声もあります。

本記事では、就労選択支援のデメリットと制度の課題を、厚生労働省の通知・統計と、令和9年度に向けた国の見直し案をもとに、わかりやすくご説明したいと思います。

これから利用を考えている本人やご家族の方に向けて、デメリットごとに、いま用意されている例外や手当てもあわせてご紹介します。

就労選択支援のデメリットとは?利用する側から見た5つの負担

就労選択支援の主なデメリットは、B型を使い始めるまでに時間と手続きが増えることと、地域によって事業所が少ないことです。

このほか、1か月という期間の短さ、通う負担と費用、進路を誘導されないかという不安が挙げられます。

それぞれのデメリットについて、通知や報酬の仕組みなどで例外や手当てが定められています。

まず全体を表で示し、そのあと1つずつご説明します。

デメリット通知や制度で用意されている手当て詳しい記事
① B型を使い始めるまでに時間と手続きが増える50歳に達している人、障害基礎年金1級を受けている人などは、アセスメントなしでB型を利用できる対象者の記事
② 近くに事業所がない・待機がある近隣に事業所がない場合や待機期間が生じる場合は、就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経てB型を利用できる対象者の記事
③ 1か月では力を出し切れないことがある一定の事由がある場合に限り、一度のみ再度1か月、または当初から2か月の支給決定ができる期間と流れの記事
④ 通う負担と費用がかかる利用者負担には所得に応じた月額の上限がある。作業で工賃が発生した場合は支払って差し支えないとされている。在宅での働き方を希望する場合などに、支援員が自宅を訪問して行う方法も事例集で紹介されている期間と流れの記事
⑤ 進路を誘導されないか不安事業者は利用するサービスや事業所を判断・決定しない。サービスごとに同じ事業者への集中が8割を超えると減算がある事業所の記事

① B型を使い始めるまでに時間と手続きが増える

すぐにB型に通い始めたい方にとっては、就労選択支援を先に利用する分、時間がかかります。

新たにB型を利用する意向がある場合は、就労選択支援を予め利用することとされています(厚生労働省「就労選択支援の実施について」1(2)。以下「実施通知」)。

就労選択支援の支給決定期間は、原則1か月です(実施通知4(1))。

就労選択支援の支給決定を受けて利用したあと、B型などを使うときに、改めてそのサービスの支給決定を受ける流れになります。

実施通知は、このように市区町村が短期間で複数の支給決定を行う必要があることを踏まえ、短期間で変化が想定されない調査項目を簡略化するなど、工夫して差し支えないとしています(実施通知4(1))。

大阪府の資料でも、府内の市町村の課題として、支給決定などの事務が煩雑になっており、簡素化が必要だという点が挙がっています(大阪府「就労選択支援事業に係る大阪府内の状況」。以下「大阪府資料3」)。

一方で、50歳に達している人、障害基礎年金1級を受けている人、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人等は、アセスメントを行うことなくB型を利用できます(実施通知1(2))。

自分が例外に当たるかどうかは、市区町村の窓口で確認できます。

対象者と例外の詳しい内容は、就労選択支援の対象者の記事でご説明しています。

② 近くに事業所がない・待機がある

就労選択支援事業所の数には、地域によって差があります。

厚生労働省の第64回障害福祉報酬改定検討チームの資料(「就労系サービスに係る報酬・基準について≪論点等≫」令和8年9月28日。以下「第64回資料」)は、都道府県ごとに設置状況が異なり、特に地方部ではいまだ整備が十分に進んでいない状況にあるとしています(就労選択支援の論点3)。

このため、通える範囲に事業所がない、空きがなく待つ、ということが起こりえます。

この場合について実施通知は、次の2つの場合には、就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経たB型の利用を認めるとしています(実施通知1(2))。

  • 最も近い就労選択支援事業所であっても通所することが困難であるなど、近隣に就労選択支援事業所がない場合
  • 利用できる就労選択支援事業所の数が少なく、就労選択支援を受けるまでに待機期間が生じる場合

なお、事業所の数は指定権者(事業所を指定する自治体)ごとに公表されています。

県の指定が0でも、県内の指定都市や中核市が指定した事業所がある場合があります。

近くに事業所がないときの扱いと、地域の事業所の探し方は、就労選択支援の対象者の記事で詳しくご説明しています。

③ 1か月では力を出し切れないことがある

新しい場所や人に慣れるまでに時間がかかる方にとって、1か月は短く感じられることがあります。

体調に波がある方も、限られた日数で普段の力が伝わるか不安に思うかもしれません。

実施通知は、支給決定期間を原則1か月とし、延長は原則として想定していないとしたうえで、次の2つの場合(例外事由)を定めています(実施通知4(1))。

  • 進路に関する自己理解に大きな課題があり、その改善に向けて、1か月以上の時間をかけた継続的な作業体験を行う必要がある場合
  • 作業に対する集中力や体力の持続、意欲・作業態度の持続に加え、体調や精神面の安定等に課題があり、進路を確定するに当たり、1か月以上の時間をかけた観察が必要な場合

これらが支援開始後に明らかになった場合に限り、一度のみ再度1か月の支給決定ができます。

当初から明らかな場合に限っては、最初から2か月の支給決定ができます(この場合は延長できません)。

再度の支給決定や2か月の支給決定を行うのは、市区町村です。

慣れるのに時間がかかることは、利用の前に事業所や相談支援専門員に伝えておくとよいでしょう。

期間と1か月の中身は、就労選択支援の期間と流れの記事でご説明しています。

④ 通う負担と費用がかかる

就労選択支援は、主に事業所に通って作業体験や面談を受けるサービスのため、通所が負担になる場合があります。

アセスメントは、作業やコミュニケーションの様子の観察が重要なため、対面での実施が基本とされています(実施通知3(1))。

在宅での働き方を希望する場合などには、就労選択支援員が自宅を訪問し、作業の場面や環境を確かめながらアセスメントを行う方法が、厚生労働省の事例集(香川県の取組)で紹介されています(厚生労働省「就労選択支援事例集」P29)。

同じ事例集は、本人の状況によっては、事業所に通ってもらってアセスメントを行うことも必要になるとしています(同)。

自宅で実施できるかどうかは、市区町村や事業所に確認してください。

一方、ケース会議や結果の説明、事業者などとの連絡調整は、対面が難しい場合などに、必要に応じてオンラインで行ってもよいとされています(実施通知3(1))。

費用には、ほかの障害福祉サービスと同じく、所得に応じた月額の負担上限の仕組みがあります。

食事などにかかる費用は実費になる場合があり、交通費の扱いも事業所や自治体によって異なります。

工賃については、実施通知が、アセスメントの作業で工賃が発生した場合は支払って差し支えないとしています(実施通知2(4)ア)。

実際の扱いは事業所によって異なるため、契約の前に確認しておくと安心です。

自己負担額の決まり方は、期間と流れの記事で詳しくご説明しています。

⑤ 進路を誘導されないか不安

就労選択支援を実施できるのは、主に、過去3年以内に3人以上の利用者が一般企業などに雇用された実績のある就労移行支援や就労継続支援の事業者です(実施通知2(3))。

このほか、同等の就労支援の経験・実績があると都道府県知事が認める事業者も実施できます(同)。

そのため、自分の法人のサービスに誘導されるのではないか、という不安を持つ方もいます。

実施通知は、この点について次のように定めています。

就労選択支援事業者が本人の就労の可否や利用すべき就労系障害福祉サービス、利用する事業所等を判断・決定するものではないことに留意すること(実施通知2(4)エ)

アセスメント結果は、利用者本人と協同して作成し、今後必要と考えられる支援の在り方や、想定される就労先・働き方などを書くこととされています(同)。

アセスメント結果に事業所名が書かれる場合も、今後の支給決定に向けた参考情報に過ぎず、事業者があっせんを行うものではないとされています(同)。

報酬の面では、特定の事業者に利用者が集中した場合の減算があります(特定事業所集中減算)。

前6か月間に実施したアセスメントを踏まえて利用者が使った就労移行支援・A型・B型のそれぞれについて、同じ事業者が提供した割合が100分の80を超えていると、正当な理由がない限り、1日200単位が減算されます(第64回資料P109、実施通知3(2))。

利用するサービスを選ぶのは本人で、支給決定は市区町村が行います。

中立性を担保する仕組みは、就労選択支援事業所とはでも詳しくご説明しています。

施行1年の利用状況|国の統計と地域の調査

施行から1年がたち、国や自治体の資料で利用の状況が少しずつ見えてきました。

ここでは、事業所数と利用者数の推移、利用者の年齢や障がいの種類、国の目標、地域の調査の例を順にご紹介します。

数字は統計ごとに時点や数え方が異なるため、それぞれの出典と時点をあわせて記載します。

事業所数と利用者数の推移

国民健康保険団体連合会(国保連)のデータでは、就労選択支援の事業所数と利用者数は、施行後に増え続けています。

国保連は障害福祉サービス費の審査・支払を行う機関で、このデータは報酬が請求された事業所と利用者を数えたものです。

サービス提供月事業所数利用者数
令和7年10月104227人
令和7年11月220487人
令和7年12月297614人
令和8年1月331702人
令和8年2月407991人
令和8年3月419995人
令和8年4月4521,033人

(出典:第64回資料P110。国保連データ)

一方、指定を受けた就労選択支援事業所の数は、令和8年6月末時点で965か所です(厚生労働省「就労選択支援事業所数(令和8年6月末日現在)」)。

指定を受けた事業所の数と、国保連の請求データにあるサービス提供月ごとの事業所数は、数え方も時点も異なる別の統計のため、そのまま比べることはできません。

利用者の年齢と障がいの種類

利用者の年齢を見ると、若い世代が多くなっています。

令和7年12月の利用者614人のうち、18歳未満が143人(23.3%)、18歳以上20歳未満が209人(34.0%)でした(第64回資料P111)。

20歳未満が、全体の半数を超えています。

障がいの種類別では、知的障がいが337人(54.9%)、精神障がいが213人(34.7%)、身体障がいが45人(7.3%)でした(同)。

このほか、「障害児」の区分が18人、「難病等対象者」の区分が1人でした(同)。

就労選択支援は、特別支援学校の在校生なども在学中に利用できます。

在学中の利用については、就労選択支援の対象者の記事のよくある質問(Q6)で触れています。

在学中の方の手続きや学校の出欠の扱いは、別の記事で扱う予定です。

国が掲げる目標

国は、令和8年3月31日に告示した基本指針(第8期障害福祉計画・令和9〜11年度)で、就労選択支援に関する成果目標を新たに設けました。

協議会(障害者総合支援法に基づき、地域の関係者が集まって課題を話し合う場)の設置圏域ごとに、就労選択支援事業所を1か所以上設置することを基本としています(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針。令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第4号)。

そのうえで、「令和十一年度の就労選択支援を利用する障害者の数を八万二千人以上とする」としています(同)。

この目標は年度単位で示された人数で、前の表は月ごとの利用者数のため、そのまま比べることはできません。

地域の例:大阪府の事業所調査

都道府県が、地域の利用状況を調べた例もあります。

大阪府は、令和8年6月1日時点で指定を受けていた府内の就労選択支援事業所95か所を対象に調査を行い、90事業所が回答しました(大阪府資料3。令和8年8月27日 大阪府障がい者自立支援協議会就労支援部会)。

回答事業所の利用者は477人で、利用前に支援学校に所属していた人が120人(25.2%)でした(同)。

利用前にB型を希望していた人は331人です(同)。

その331人のアセスメント結果(複数選択あり)は、B型が247件、一般就労が29件、就労移行支援が28件、A型が24件でした(同)。

B型を希望して利用した人にも、B型以外の選択肢が示された例があったことがわかります。

アセスメントの日数は事業所や利用者によって異なり、5日以下が117人、6〜10日が225人、11〜15日が83人、16日以上が46人、未回答が6人でした(同)。

これは大阪府内の95事業所を対象にした調査で、全国の状況を示すものではありません。

制度の課題と、令和9年度に向けた国の見直し案

就労選択支援には、利用する側の負担とは別に、制度の運用についての課題も指摘されています。

厚生労働省は、令和8年9月28日の第64回障害福祉報酬改定検討チームで、令和9年度の報酬改定に向けた論点と検討の方向性を示しました。

示された内容はいずれも「〜してはどうか」という案の段階で、決定したものではありません。

資料には、議論を踏まえてさらに論点を追加する予定とも書かれています(第64回資料P108)。

第64回資料には、就労選択支援についての論点と、就労系サービス全体にかかわる「横断的事項」の論点があり、本記事では区別して書いています。

令和9年4月から新たにA型を利用する人などを対象とする予定についても、予定どおり進める案が示されています(横断的事項の論点9)。

A型・就労移行支援の令和9年4月からの扱いは、対象者の記事でご説明しています。

ここでは、主な課題と、それに対応する見直し案を組み合わせてご紹介します。

地域差と事業所の不足 → 離島などへの支援を評価する案

1つ目は、事業所の数の地域差です。

第64回資料は、地方部で整備が十分に進んでいないことに加え、事業所が設置されていない地域に向けて、離島や遠隔地へ出向いて支援する事例では負担が大きいという指摘を紹介しています(就労選択支援の論点3)。

そのうえで、就労選択支援を特別地域加算の対象とする案が示されました(同)。

特別地域加算は、移動費用が相当程度必要となることを踏まえた加算で、離島振興対策実施地域や特別豪雪地帯、過疎地域などが対象地域とされています(第64回資料P121)。

関係団体のヒアリングでは、地域間で事業所数や支援資源の格差が大きいという意見や、従来の就労アセスメントによる運用が整備や利用促進の足かせになっているという意見が出ています(第64回資料P124、全国就労移行支援事業所連絡協議会)。

同じ団体は、この従来の就労アセスメントによる運用を終えて、就労選択支援に一本化する時期を示すよう求めています(同)。

大阪府の市町村向けの調査でも、指定の要件を満たす事業所が少ない、または管内に事業所がないため利用が進んでいないという課題が挙がっています(大阪府資料3)。

中立性(自法人への誘導)→ 禁止行為と集中減算の見直し案

2つ目は、特定の事業所への誘導を防ぐ仕組みです。

現行の特定事業所集中減算は、サービスごとに同じ事業者への集中が8割を超えた場合に適用されますが、この基準は緩いのではないかという指摘があります(就労選択支援の論点2)。

第64回資料は、減算だけでなく、本人に比較できる選択肢を示して意思を確かめること、選択に至った過程を記録すること、指定権者が必要に応じて実態を確認することを、制度として担保する方向を示しました(同)。

具体的には、次のような案です。

  • 自法人の事業所の利用を実質的に指定する、他の事業所の情報を意図的に提供しない、見学先を自法人の事業所に限定するなど、本人の選択肢を不当に狭める行為を運営基準等で禁止する
  • 就労移行支援や就労継続支援の事業所の情報を提供するときは、所在地と通所方法、定員と空き状況、支援内容、訓練や生産活動の内容、一般就労への移行実績、工賃または賃金、利用時間、支援体制を伝える
  • 本人の最終的な希望と実際の利用先が異なる場合は、その理由を記録する
  • 特定事業所集中減算を見直し、適用する水準(同一法人への移行率)を引き下げる(例:現行8割→3割)、適用の単位を関連法人まで広げる、減算の割合をほかの減算制度も参考に見直す

利用する側にとっては、比べるための情報を受け取りやすくなる方向の案です。

例外に当たるかの判断が難しい → チェックリストと基準の案

3つ目は、例外に当たるかどうかの判断です。

第64回資料は、市町村において、就労選択支援の利用が必要な場合の判断や、すでにB型を利用している人の更新の可否の判断が難しいと指摘しています(横断的事項の論点5)。

関係団体からも、就労経験がある人の取扱いに自治体ごとの運用の差が生じているという意見が出ています(第64回資料P55、全国就労移行支援事業所連絡協議会)。

これに対して、特にB型の利用申請の際に、市町村が支給決定の適否をチェックリストで判断する案が示されました(横断的事項の論点5)。

このチェックリストは、明らかに適切ではないと思われる事例について、市町村が必要な判断をできるようにすることを想定したものとされています(同)。

あわせて、アセスメントなしでB型を利用できる「就労経験がある者」を、「企業等との雇用契約に基づく就労経験がある者」と明示する案も出ています(同)。

この案のとおりになれば、例外に当たるかどうかの基準が、今よりはっきりする可能性があります。

地域との連携の実効性 → 協議会への説明・報告と情報公表の案

4つ目は、地域の関係者との連携を実際に機能させることです。

実施通知は、指定権者が必要と認める場合に、指定申請にあたって協議会や市区町村に運営方針などを説明して評価を受けることや、協議会への定期的な参加などを示しています(実施通知5(2)・2(5)イ)。

第64回資料は、これらを技術的助言として示しているとしたうえで、実効性を担保する必要性が指摘されているとしています(就労選択支援の論点1)。

見直し案では、指定基準に公平性や中立性に関する事項を加えたうえで、次のような仕組みを設けることが検討されています(同)。

  • 指定申請の際に、原則として圏域の協議会(難しい場合は市区町村など)に運営方針や活動内容を説明して評価を受け、その内容を指定権者に提出する
  • 原則として年1回以上、協議会や市区町村に事業の運営状況を報告し、要望や助言を聞くことを義務とする(令和10年度から。指定権者が前倒しすることも可)
  • アセスメントを終えた利用者数、就労移行支援などの各事業につながった利用者数、同一法人への移行率を、情報公表制度で公表する

あわせて、市町村長が認めた人をコーディネーターとして就労選択支援事業所に配置する仕組みを目指す方向も示されています(同)。

1か月の期間とアセスメントの質への懸念(大阪府の調査から)

5つ目は、期間の長さとアセスメントの質です。

大阪府の事業所調査では、事業所が感じる課題として、1か月では実習の調整や多機関連携、報告書の作成までの時間が不足することや、共通のツールや判断基準が不足し、事業所や支援員の間で質がばらつくことが挙げられました(大阪府資料3)。

B型など進路ありきの利用や手続きの遅れによって、本来の目的が達成されないのではないかという懸念も示されています(同)。

国の案では、コーディネーターの業務の例として、就労選択支援事業所における適切なアセスメント実施体制の構築支援が挙げられています(就労選択支援の論点1)。

アセスメントの方法や日数は事業所によって異なるため、どのような作業体験を何日程度行うのかを、利用の前に確認しておくと安心です。

アセスメントで整理する項目と方法は、就労アセスメントとはでご説明しています。

「B型を減らすための制度?」という声と、データで見るB型

インターネット上では、就労選択支援を「B型潰し」と呼ぶ言い方も見られます。

ここでは、そうした声が出る理由と、制度の目的、B型の事業所数・利用者数のデータを確認します。

制度の評価を断定するのではなく、確認できる事実を並べてご説明します。

そう言われる理由

大きなきっかけは、B型を新たに使うときの流れが変わったことと考えられます。

令和7年10月から、B型の利用対象は「就労選択支援事業者によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者」とされ、新たにB型を利用する場合は、例外に当たる人を除いて就労選択支援を先に利用することになりました(実施通知1(2))。

さらに第64回資料は、本来は一般就労やA型、就労移行支援を利用することが適当と考えられる人がB型を利用し、そのまま長期化していることが指摘されているとしています(横断的事項の論点5)。

そのうえで、B型の利用申請の際に市町村がチェックリストで支給決定の適否を判断する案や、すでに就労継続支援を利用している人の更新について、将来的に就労選択支援のアセスメントを受けた人を対象とする案を示しています(横断的事項の論点5・論点9)。

このチェックリストは、明らかに適切ではないと思われる事例への判断を想定したものとされています(横断的事項の論点5)。

こうした動きから、B型を使いにくくするための制度ではないかと受け止める声があると考えられます。

制度の目的とB型のデータ

実施通知は、就労選択支援の目的を次のように示しています。

障害者本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援するもの(実施通知1(1))

国保連のデータでは、B型の一月平均の事業所数は令和6年度の18,109か所から令和7年度の19,615か所に、利用者数は374,626人から411,668人に増えています(第64回資料P78)。

令和8年4月の実績は、20,401事業所・432,419人です(同P14)。

令和7年度には施行前の期間も含まれるため、これらの数字から就労選択支援の影響を判断することはできません。

B型の事業所数の推移と今後の動きは、就労継続支援B型の現状と今後でご説明しています。

すでにB型を使っている人は

すでにB型を利用していて支給決定の更新等を考えている人は、本人の希望に応じて就労選択支援を利用できるとされています(実施通知1(2))。

更新や事業所の変更を検討するために利用する場合は、利用中の事業所と同じ法人が運営する就労選択支援は、原則として利用できません(近隣に別の法人が運営する就労選択支援事業所や就労移行支援事業所がない場合を除く。実施通知4(3))。

将来的に、更新の際も就労選択支援のアセスメントを受けた人を対象とする案は、第64回で示された検討の方向性で、時期を含めて決まったものではありません。

利用前に確認しておきたい5つのこと

デメリットの多くは、利用の前に確認しておくことで小さくできます。

次の5つは、市区町村の窓口や相談支援専門員、事業所に確かめておきたい点です。

運用は市区町村ごとに異なるため、お住まいの地域の扱いを確認してください。

確認すること主な確認先確認のポイント
① 自分が例外に当たるか市区町村50歳に達している人、障害基礎年金1級を受けている人、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人などは、アセスメントなしでB型を利用できる
② 通える範囲の事業所と空き市区町村・相談支援専門員近隣に事業所がない場合や待機期間が生じる場合の扱い
③ 期間と通う日数・時間事業所作業体験の内容と日数、体調に合わせた配慮ができるか
④ 費用市区町村・事業所負担上限月額の区分、食費などの実費、交通費の扱い
⑤ 情報提供と結果の共有事業所・相談支援専門員複数の事業所の情報を受け取れるか、アセスメント結果を誰と共有するか

①については、例外に当たる場合でも、本人が希望すれば就労選択支援を利用できます(実施通知1(2))。

②では、お住まいの市区町村の外にある事業所を利用できるかも、あわせて確認しておくとよいでしょう。

④の負担上限月額の区分は所得で決まり、18歳以上の方は、原則として本人と配偶者の所得で判断されます。

15歳以上18歳未満の方が利用する場合の区分や世帯の範囲は、お住まいの市区町村に確認してください。

⑤については、第64回資料の見直し案で、事業所の情報を提供するときに伝える項目(所在地と通所方法、定員と空き状況、工賃または賃金など)が示されています。

案の段階ですが、どのような情報を求めればよいかの参考になります。

計画相談支援を利用している場合、特定相談支援事業者は原則としてケース会議に参加するとされています(実施通知2(4)ウ)。

計画相談支援の仕組みは、計画相談支援とはでご説明しています。

就労選択支援を利用したあとにハローワークなどの関係機関を利用することが想定される場合は、本人の同意を得たうえで、アセスメント結果をその機関に共有することとされています(実施通知2(5)ア)。

よくある質問

就労選択支援のデメリットに関連して、よく検索されている質問にお答えします。

Q1. 就労選択支援のメリットは何ですか?

自分の強みや課題、働くうえで必要な配慮を、作業体験を通じて整理できることです。

アセスメント結果は本人と協同して作成され、本人や相談支援事業所などと共有されます(実施通知2(4)エ)。

次のサービスや就職活動で、自分のことを伝える材料にもなります。

協議会への参加などで集めた地域の就労支援の社会資源や雇用事例などをもとに、進路選択に役立つ情報提供も受けられます(実施通知1(3))。

制度の全体像は、就労選択支援とはでご説明しています。

Q2. 就労選択支援に効果はありますか?

第64回資料が示しているのは、主に事業所数・利用者数・費用額と、加算の算定状況などの利用状況です(P110〜113)。

関係団体からは、就労選択支援サービス費の見直しは、制度開始から間もないため現時点では慎重に行うべきだという意見が出ています(第64回資料P123、全国就労移行支援事業所連絡協議会)。

同じ意見は、まずは利用状況や運用実態を把握・分析したうえで、効果や課題について十分な検証を行う必要があるとしています(同)。

大阪府の調査では、B型を希望して利用した人のアセスメント結果に、B型以外の選択肢が示された例がありました。

Q3. 就労選択支援を受けずにB型を使うことはできますか?

50歳に達している人、障害基礎年金1級を受けている人、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった人などは、アセスメントを行うことなくB型を利用できます(実施通知1(2))。

近隣に事業所がない場合や待機期間が生じる場合は、就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経てB型を利用できます(同)。

詳しくは、就労選択支援の対象者の記事をご覧ください。

Q4. 就労選択支援の期間中に工賃はもらえますか?

実施通知は、アセスメントの作業で工賃が発生した場合は支払って差し支えないとしています(実施通知2(4)ア)。

支払いの有無や金額は事業所によって異なるため、契約の前に確認してください。

費用と工賃の扱いは、期間と流れの記事でもご説明しています。

Q5. アセスメントの結果に納得できないときはどうすればよいですか?

アセスメント結果は、本人と協同して作成し、本人が就労先・働き方を選択・決定することを支援するためのものです(実施通知2(4)エ)。

就労選択支援事業者が、利用するサービスを判断・決定するものではないとされています(同)。

納得できない点は、ケース会議の場や、担当の相談支援専門員、事業所に伝えることができます。

実際に利用するサービスは、本人の申請にもとづいて、市区町村が支給決定を行います。

まとめ

最後に、本記事の要点を整理します。

就労選択支援のデメリットは、主に次の5つです。

  • B型を使い始めるまでに時間と手続きが増える
  • 近くに事業所がない、待機がある地域がある
  • 1か月では力を出し切れないことがある
  • 通う負担と費用がかかる
  • 進路を誘導されないかという不安がある

それぞれのデメリットについて、例外や期間の延長、判断・決定しない旨の定めなど、通知や報酬の仕組みで手当てが定められています。

制度の課題については、第64回障害福祉報酬改定検討チームで、誘導を防ぐ仕組みの強化や地域との連携、離島などへの支援が案として示されました。

いずれも決定したものではないため、最新の情報は厚生労働省のページやお住まいの市区町村で確認してください。

利用を考えている方は、例外に当たるか、通える事業所があるか、費用はどうかを、まず市区町村の窓口や相談支援専門員に確認してみてください。

参考資料

本記事で参照した主な資料です。

※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。

よこぜき行政書士事務所