障がいのある子が特別支援学校の高等部や高校を卒業する時期は、子どもの日中の過ごし方だけでなく、親の働き方も大きく変わる時期です。この時期に起きる変化は「18歳の壁」と呼ばれています。制度の切り替わりによって生じる課題を表す通称です。
本記事では、18歳の壁が起きる仕組みを条文から確認したうえで、卒業後の日中活動と夕方の居場所、親が働き続けるための制度、準備の時期を、わかりやすくご説明したいと思います。障がいのある子を育てながら働く親の制度の全体像は、障がい児の親の仕事|3つの壁と仕事を続けるための制度で紹介しています。
18歳の壁とは|卒業で放課後等デイサービスが終わる仕組み
18歳の壁とは、障がいのある子の卒業で放課後等デイサービスが終わり、夕方の居場所や支援の仕組みが切り替わる問題です。背景には、放課後等デイサービスと卒業後の日中活動で根拠となる法律が異なることと、放課後等デイサービスが学校に通う子のためのサービスであることがあります。まずは制度の仕組みから順にご説明します。
放課後等デイサービスは児童福祉法、卒業後の日中活動は障害者総合支援法のサービス
放課後等デイサービスと、卒業後の日中活動の主な選択肢は、別の法律にもとづいています。
児童福祉法は、「児童」を「満十八歳に満たない者」と定めています(第4条第1項)。放課後等デイサービスや児童発達支援などの障害児通所支援は、この法律にもとづくサービスです。
一方、卒業後の日中活動の選択肢となる生活介護や就労継続支援などは、障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)にもとづく障害福祉サービスです。同法は「障害者」を18歳以上の方とする定義を置いていますが(第4条第1項)、「障害児」の定義もあり(同条第2項)、居宅介護や短期入所などは18歳未満の子も利用できます(第5条第2項・第8項)。
18歳の壁で問題になるのは、卒業前後に、日中活動の場と、それを支える支援の組み立てを見直す必要が生じることです。
放課後等デイサービスは「学校に通う子」のサービス|満20歳に達するまでの特例
放課後等デイサービス(以下、放デイ)が卒業とともに使えなくなるのは、サービスの定義に理由があります。
児童福祉法は、放デイを、学校(幼稚園と大学を除く)や専修学校等に就学している障がいのある子が、授業の終了後や休業日に通うサービスと定めています(第6条の2の2第3項。専修学校等は、市町村長が支援の必要を認める子に限る)。こども家庭庁の事務処理要領も、放デイの対象者を次のように示しています。
学校教育法第1条に規定している学校(幼稚園及び大学を除く。)又は専修学校等(専修学校及び各種学校をいう。)に就学しており、授業の終了後又は休業日に支援が必要と認められた障害児。
こども家庭庁「障害児通所給付費に係る通所給付決定事務等について」(令和8年3月版)
このため、放デイを利用できるのは、学校などに在学している間です。
年齢には特例があります。市町村が「引き続き放課後等デイサービスを受けなければその福祉を損なうおそれがあると認めるとき」は、満18歳に達した後も、満20歳に達するまで給付費を支給できます(同法第21条の5の13第1項)。申請は本人が行います。ただし、生活介護その他の支援を受けることができる場合は、この限りでないとされています。「放デイは20歳まで使える」と紹介されることもありますが、特例で延びるのは年齢の上限で、利用できるかどうかは市町村の判断によります。
特別支援学校高等部の卒業生の約6割が社会福祉施設等へ
卒業後の進路は、文部科学省の学校基本調査で確認できます。
令和7年度の調査によると、令和7年3月に特別支援学校の高等部を卒業した21,001人のうち、社会福祉施設等に入所・通所した人は13,025人(62.0%)でした。就職者等(自営業主等、無期・有期雇用の労働者、臨時労働者の合計)は6,263人(29.8%)です。
この調査の進路の区分は「社会福祉施設等入所・通所者」で、生活介護や就労継続支援などの利用者をまとめて数えています。また、この数値は特別支援学校の卒業者のものです。
18歳と20歳で変わること|サービス・手続・費用・手当
18歳の壁は、夕方の居場所だけの問題ではありません。18歳で受給者証や計画、申請する人、利用者負担の決め方が、20歳で手当と年金が切り替わります。親が知っておきたい変化を一覧にしてご説明します。
18歳前後で切り替わる制度の一覧
18歳になり学校を卒業すると、主な日中サービスについて、次の点が切り替わります。
| 項目 | 18歳未満(在学中) | 18歳以上(卒業後) |
|---|---|---|
| 主な日中サービスの根拠法 | 児童福祉法 | 障害者総合支援法 |
| 主なサービス | 放課後等デイサービスなど(障害児通所支援) | 生活介護、自立訓練、就労系サービスなど(障害福祉サービス) |
| 受給者証 | 通所受給者証 | 障害福祉サービス受給者証 |
| サービスの計画 | 障害児支援利用計画(障害児相談支援) | サービス等利用計画(計画相談支援) |
| 支給決定のための調査・区分 | 放デイの支給決定では「5領域20項目の調査」を行う | 生活介護など、介護給付の多くで障害支援区分の認定が必要 |
| 申請する人 | 保護者(放デイの年齢の特例は本人) | 本人 |
| 利用者負担の所得を判断する世帯 | 保護者の属する住民基本台帳上の世帯 | 本人と配偶者(施設に入所する18・19歳を除く) |
※主な日中サービスの切り替わりを示した表です。18歳未満でも、障害者総合支援法にもとづく居宅介護や短期入所などを利用できます。
障害支援区分は、必要な支援の度合いを示す区分で、市区町村の認定調査と審査会を経て決まります。認定には一定の期間がかかるため、生活介護などを利用する予定があれば、申請の時期を早めに市区町村に確認しておくと安心です。
また、民法の成年年齢は18歳です(民法第4条)。申請や事業所との契約を本人が行うため、本人の意思の確かめ方や手続の支え方を、相談支援専門員と話し合っておきましょう。
18歳以降の利用者負担は、原則として「本人と配偶者」の所得で決まる
障害福祉サービスの利用者負担には、所得に応じた月ごとの上限額があります。上限額を決めるときの世帯の範囲が、18歳を境に変わります。
障がいのある子の場合は、保護者の属する住民基本台帳上の世帯で判断されます。18歳以上の方(施設に入所する18・19歳を除く)は、本人とその配偶者の所得で判断されます(厚生労働省:障害者の利用者負担)。
上限額の判定に親の収入が関わるのは、子が18歳未満の間と、施設に入所する18・19歳の場合です。ただし、手当には親などの所得で判定されるものがあります。
20歳で変わる手当と年金
20歳になると、子に関わる手当が対象年齢を過ぎ、本人を対象とする手当や年金が関わってきます。
| 制度 | 対象・受け取る人 | 20歳での変化 |
|---|---|---|
| 特別児童扶養手当 | 20歳未満で、この手当の障害等級(1級・2級)に該当する程度の障がいのある子を監護・養育する父母など | 対象外になる |
| 障害児福祉手当 | 重度の障がいのため常時の介護を必要とする、在宅の20歳未満の本人 | 対象外になる |
| 児童扶養手当 | ひとり親家庭の母・父など(子が政令で定める程度の障がいの状態にある場合は、20歳未満まで) | 対象外になる |
| 特別障害者手当 | 著しく重度の障がいのため常時特別の介護を必要とする、在宅の20歳以上の本人(月額30,450円。令和8年4月から) | 対象になり得る |
| 障害基礎年金(20歳前の、年金制度に加入していない期間に初診日がある障がい) | 年金の障害等級に該当する程度の障がいの状態にある本人(国民年金法第30条の4) | 20歳以降、対象になり得る(請求が必要) |
特別障害者手当は、所得制限にかかると支給されません。判定されるのは本人と配偶者、本人の生計を維持する扶養義務者(父母など)です(厚生労働省:特別障害者手当について)。20歳前の傷病による障害基礎年金は、年金の加入を要件としていないため、本人の所得が一定の額を超えると、全部または2分の1が支給停止になります(国民年金法第36条の3、日本年金機構:20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等)。初診日に厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金の受給要件に沿って確認します。
特別児童扶養手当の障害等級は、この手当の基準による等級で、療育手帳などの手帳の区分とは別のものです。療育手帳の区分と、区分が変わったときに影響が出る可能性のある制度は、療育手帳の区分と働き方|B2・B1・Aの違いを行政書士が解説で整理しています。
障害年金の請求については、社会保険労務士へのご相談をおすすめします。ひとり親家庭の手当は、障がい児のシングルマザーの仕事|収入で変わる3つの手当と支援でご説明しています。
卒業後の日中活動の選択肢と、在学中から使える就労選択支援
卒業後の日中の過ごし方には、生活介護、自立訓練、就労系サービス、一般企業への就職などの選択肢があり、どれが合うかは一人ひとり異なります。ここでは、それぞれの違いと生活介護の提供時間、在学中から使える就労選択支援をご説明します。
生活介護・自立訓練・就労系サービス・一般就労の違い
主な選択肢は次のとおりです。利用できる時間や送迎の有無は、事業所ごとに異なります。
| 進路 | どんな場か | 対象の考え方 |
|---|---|---|
| 生活介護 | 入浴・排せつ・食事などの介護や、創作的活動・生産活動の機会を提供する | 常時介護を要する方。障害支援区分が区分3以上(50歳以上は区分2以上)など |
| 自立訓練(生活訓練) | 一定の期間、生活能力の維持・向上のための訓練を行う | 厚生労働省は対象の例に「特別支援学校を卒業した者」を挙げている |
| 就労継続支援B型 | 雇用契約を結ばずに、生産活動などに取り組む | 新たに利用する場合は、原則として先に就労選択支援を利用する(例外あり) |
| 就労継続支援A型 | 雇用契約を結んで働きながら支援を受ける | 令和9年4月以降、新たに利用する場合も就労選択支援を経る予定 |
| 就労移行支援 | 一般企業への就職に向けた訓練や求職活動の支援(標準利用期間は原則2年) | 就労を希望する65歳未満の方で、一般企業への雇用が見込まれる方 |
| 一般就労 | 企業などに雇用されて働く | 障がいのある方を対象とした求人のほか、一般の求人もある |
各サービスの詳細は、就労継続支援B型とは、就労継続支援A型とは、就労移行支援とはの各記事でご説明しています。知的障がいのある方の就職先の傾向は、知的障がいのある方の仕事|データで見る就職先と3つの働き方で紹介しています。
生活介護の提供時間と、令和6年度報酬改定
卒業後の夕方に関わるのが、日中活動の提供時間です。
生活介護の基本報酬は、それまでの営業時間による設定から、令和6年度の報酬改定で、障害支援区分と利用定員規模に加えてサービス提供時間別に設定されるようになりました。区分は8時間以上9時間未満までで、延長支援加算は所要時間9時間以上の支援を評価します(施設入所者は算定不可。令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要)。
令和6年12月時点では、6時間以上7時間未満の区分を算定する事業所の割合が最も大きく、延長支援加算を算定した事業所は284でした。同じ資料の生活介護事業所数は12,973です(第47回報酬改定検討チーム資料3。国保連データ)。令和9年度改定に向けた論点(案)には、「障害児から障害者への移行にあたり、障害児支援施策から障害者支援施策への円滑な接続・移行等を促進するための検討が必要ではないか」との項目があります(第62回資料2)。
就労選択支援は高等部・高校の1年から使える
働くことを考える場合は、令和7年10月に始まった就労選択支援を在学中から利用できます。
利用の対象は、就労移行支援または就労継続支援を利用する意向がある方と、現に利用している方です。短期間の作業体験などを通じて、本人の希望や適性、必要な配慮を整理し、働き方を選ぶ手助けをします。
文部科学省と厚生労働省の通知には、「特別支援学校等の1年次から利用可能であり、また、在学中に複数回実施することも可能としている」とあります。特別支援学校等には、特別支援学校の高等部のほか高等学校なども含まれます。15歳以上18歳未満の生徒が利用する場合は、児童相談所長が障害福祉サービスを受けることが適当と認め、その旨を市町村長に通知(意見書)することが必要です(同通知。根拠は児童福祉法附則第63条の2・第63条の3)。
厚生労働省の実施通知は、満18歳未満の子が特別支援学校に出席する代わりに日中に就労選択支援を利用し、夕方に放デイを利用する例を、支援内容・報酬が重ならず同じ日に併給できる例として挙げています。併給は、市町村が必要性を判断し、特に必要と認める場合に妨げないとされています。
就労継続支援B型を新たに利用する場合は、原則として就労選択支援を先に利用します。50歳に達している方や障害基礎年金1級を受給している方などは例外です。近くに就労選択支援事業所がない場合などは、就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経てB型を利用できます(同実施通知)。卒業後すぐにB型を考えている場合は、在学中の利用を進路の計画に組み込んでおくとよいでしょう。
A型を新たに利用する場合も、令和9年4月以降は就労選択支援を経ることが予定されています。令和8年9月28日の障害福祉報酬改定検討チーム(第64回)では、令和9年4月からA型を利用する予定の人(主に令和8年度に特別支援学校の3年生の生徒)について、進路活動に支障が生じないよう、令和8年度内の就労選択支援の利用を原則とせず、暫定支給決定(サービスが合うかをあらかじめ評価するための期間の支給決定)を柔軟に運用する案が示されています。取扱いは今後示されるため、学校の進路担当や市区町村に確認してください。
就労選択支援の詳細は、就労選択支援とは、就労選択支援事業所とは、「就労選択支援」と「就労移行支援」の違いの各記事でご説明しています。
夕方以降の居場所|日中一時支援・移動支援と自治体の独自事業
卒業後の日中活動は、夕方の早い時間に終わることがあります。例えば東京都練馬区は、就労継続支援や生活介護のサービスが午後3時30分から4時ごろに終わると説明しています。そのため、保護者の終業前に利用者が帰宅する状況があるとしています(練馬区プレスリリース、令和8年6月16日)。ここでは、夕方に使える可能性のあるサービスと、自治体の独自の取組をご説明します。
日中一時支援と移動支援は、市町村ごとに内容が違う
夕方の居場所の候補になるのが、市町村が実施する地域生活支援事業です。市町村が地域の実情に応じて行う事業のため、内容は市町村ごとに異なります。
日中一時支援は、市町村が実施するかどうかを判断する任意事業です。厚生労働省の実施要綱は、目的を「障害者等の日中における活動の場を確保し、障害者等の家族の就労支援及び障害者等を日常的に介護している家族の一時的な休息を目的とする」としています。令和6年度の実施率は85.5%(1,488市町村)です(厚生労働省:日中一時支援の概要)。対象や利用時間、料金、送迎は市町村ごとに決められ、利用している時間はほかの障害福祉サービスを利用できないとされています。
移動支援は、市町村が実施しなければならない必須事業で、外出の際の移動を支援します。通所に使えるかどうかは、市町村の判断です。
このほか、自宅で介護する人の病気などの理由で利用する短期入所や、障害支援区分4以上で一定の条件を満たす方が使える重度訪問介護もあります。組み合わせ方は、相談支援専門員と一緒に考えることができます。在学中の夏休みの預け先については、障がい児の夏休みと仕事|放デイで埋まらない朝と夕方の預け先でご説明しています。
東京都の新規事業と練馬区の例
18歳の壁について、自治体が独自の事業を始める例も出ています。
東京都は令和8年度予算で、「長期休暇期間中の障害児や成人期の障害者の居場所づくり」により、家族の就労継続などの課題に取り組む区市町村を支援する方針を示しました。新設の「区市町村障害者の居場所づくり促進事業」(予算額約10億円)は、障がいのある方の社会参加や家族の就労継続などのニーズに取り組む区市町村を支援するものです。費用は都が4分の3、区市町村が4分の1を負担します(東京都福祉局:令和8年度 障害者施策推進部 予算案のポイント)。
練馬区は、日中活動系事業所のサービス提供時間後の夕方に、障がいのある方が過ごせる居場所を提供する事業所等を支援する「障害者の居場所づくり促進事業」を実施しています。区のページには、令和8年10月1日時点の実施事業所として6か所が掲載されています。利用の対象は、社会参加や家族の就労などにより居場所を必要とする障がいのある方(原則として日中活動サービスを利用している方)で、曜日や時間は事業所ごとに異なります(練馬区:障害者の居場所づくり促進事業、令和8年9月30日更新)。
お住まいの市区町村に同じような事業があるかどうかは、障害福祉の担当課や相談支援専門員に確認してみてください。
親が働き続けるために|子が18歳を過ぎても使える勤務先の制度
育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)の育児のための制度は、子の年齢に応じて順に終わります。一方、介護の制度は、対象となる家族の年齢に関わらず、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態であれば利用できます。ここでは、子が18歳を過ぎても使える可能性のある制度と、勤務先への伝え方をご説明します。
介護休業・介護休暇・介護のための短時間勤務等は、18歳以上の子にも使える場合がある
子が、負傷、疾病または身体上・精神上の障がいにより、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にあれば、18歳や20歳を過ぎていても、介護の制度の対象になり得ます(育児・介護休業法第2条第3号、同法施行規則第2条)。
判断に使われるのは、厚生労働省の「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」(令和7年4月1日適用)です。「障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合を含む」と明記されています。判断の方法は、①12の項目のうち状態「2」が2つ以上または「3」が1つ以上該当し、その状態が継続すると認められること、②介護保険制度の要介護2以上であること、の2つです。介護保険の被保険者は40歳以上のため、子の場合は通常①で判断します。厚生労働省は、基準に厳密に従うことにとらわれず、柔軟に運用することが事業主に望まれるとしています。
子が判断基準に当てはまる場合に使える主な制度は、次のとおりです(育児・介護休業法)。
- 介護休業:対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取得できる
- 介護休暇:1年度に5日(対象家族が2人以上なら10日)。始業時刻から連続する時間、または終業時刻まで連続する時間であれば、時間単位でも取得できる
- 介護のための所定労働時間の短縮等の措置:短時間勤務など会社が設ける措置を、連続する3年以上の期間に2回以上利用できる
- 所定外労働・時間外労働・深夜業の制限
勤務の途中で休んで仕事に戻る「中抜け」については、両立指針が、始業の時刻から連続せず、かつ、終業の時刻まで連続しない時間単位での取得を認めることなどにより、制度を弾力的に利用できるよう会社に配慮を求めています(指針第二の二(四))。中抜けで取得できるかは、勤務先の制度を確認してください。
介護休暇で行う世話は、「介護」と「通院等の付添い、介護サービスの提供を受けるために必要な手続きの代行その他の必要な世話」です(同法施行規則第38条)。進路先の見学などで休む場合は、年次有給休暇や勤務先独自の制度もあわせて確認しておきましょう。雇用形態による要件や労使協定による除外もあるため、詳しい条件は障がい児の介護休暇・介護休業|親が使える6つの制度と条件でご確認ください。
卒業前に勤務先に伝える|個別周知・意向確認と指針の配慮
介護の制度を使うには、勤務先に申し出ることが出発点になります。
令和7年4月から、家族の介護に直面したことを申し出た労働者に対し、会社は介護休業などの制度を個別に知らせ、利用の意向を確認することが義務になりました(育児・介護休業法第21条第4項)。通達は、この申出に、障害児・者や医療的ケア児・者が常時介護を必要とする状態にある場合を含むとしています。
育児の側では、妊娠・出産等の申出時と、子が3歳になる前の時期に、会社が仕事と育児の両立について労働者の意向を聞き、配慮することが義務になっています(同法第21条第2項・第3項、第23条の3第5項・第6項)。厚生労働省の両立指針は、この配慮について、「労働者の子に障害がある場合や当該子が医療的ケアを必要とする場合であって、当該労働者が希望するとき」は、短時間勤務の制度や子の看護等休暇等の利用が可能な期間を延長することが「望ましい」としています(指針第二の五の三(三)イ)。義務となる時期のほかに、「労働者から申出があった際等にも」意向を確認することが望ましいともしています(同(一))。いずれも義務ではないため、子が18歳を過ぎてから延長されるかどうかは、会社の判断や就業規則によります。
判断基準の見直しを検討した厚生労働省の研究会(第1回、令和6年12月27日)でも、「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」が「学校卒業後の壁(『18歳の壁』)」として、子どもが午後3時30分や4時には帰宅する状況を説明しています。会社の担当者が障がいのある子の介護に詳しいとは限らないため、判断基準を手元に置いて話し合うと進めやすくなります。
働き方を変える前に確かめること
勤務先の制度を使っても両立が難しく、働き方を変える場合は、収入が変わると何が変わるかを先に確かめておきましょう。
18歳以降の子(施設に入所する18・19歳を除く)の障害福祉サービスの上限額は、本人と配偶者の所得で決まります。一方、特別児童扶養手当(子が20歳未満の間)は、受給者である父母などと配偶者、生計を同じくする扶養義務者の所得で判定されます。特別障害者手当(20歳以降)も、本人のほか、生計を維持する扶養義務者(父母など)の所得で判定されます。辞める前に確かめたいことは、障がい児の親の在宅ワーク・パート|辞める前に確かめる4つのことで整理しています。
医療的ケアが必要な子の18歳の壁|令和9年4月1日施行の法改正
医療的ケアが必要な子は、卒業後に看護職員がいる通所先などが見つかるかどうかが、親の働き方に関わります。医療的ケア児支援法(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律)は令和8年に改正され、令和9年4月1日から支援の対象が広がります。ここでは、今の法律と改正の内容、生活介護の報酬改定での見直しをご説明します。
令和9年3月31日までの法律(現行法)は、「医療的ケア児」を、18歳未満の者と、18歳以上で高等学校等に在籍する者としています(第2条第2項)。ただし、医療的ケア児支援センターの相談の対象には、卒業などの後も医療的ケアを受ける方が含まれます。雇用や障害福祉サービスの利用に関する相談支援を必要とする方です(第14条第1項第1号)。
令和8年7月31日に公布された改正法(令和8年法律第77号)は、令和9年4月1日から施行されます。「医療的ケア児等」と「重症心身障害者」が対象に加わります。医療的ケア児等には、医療的ケア児であった方で、恒常的に医療的ケアが不可欠な方なども含まれます。目的の「その家族の離職の防止に資し」という文言は、「家族の離職の防止を図り」に改められます。
改正後の第11条は、一時的な預かりや通学等の移動の支援、重度訪問介護などを受けられるよう、国と地方公共団体が必要な措置を講ずるものとしています。就労の支援(第11条の3)も新たに定められます。これらは国と自治体の責務を定めたもので、個々のサービスの内容は今後の施策によります。施行の際に指定を受けているセンターは、改正後の「医療的ケア児等支援センター」とみなされます(附則第2条)。
通所先の側では、生活介護の令和6年度報酬改定で、「医療的ケアが必要な者に対する体制や医療的ケア児の成人期への移行にも対応した体制を整備するため」、常勤看護職員等配置加算が看護職員の配置人数に応じて評価されるようになりました。サービス提供時間別の基本報酬についても、医療的ケアが必要な方など、障害特性等により利用時間が短時間にならざるを得ない方への配慮として、個別支援計画に定めた標準的な支援時間で算定することを基本とするなどの配慮が設けられています(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要)。
在学中の医療的ケア児の預け先は、障がい児の夏休みと仕事でもご説明しています。
18歳の壁に備える時期別チェックリストと相談先
18歳の壁にどう備えるかは、子どもの進路と親の仕事を、時期に分けて考えると整理しやすくなります。手続の時期は市区町村によって異なるため、目安としてご覧ください。あわせて、相談できる窓口をまとめます。
中学生から20歳までの準備
子どもの進路と、親の仕事の準備を時期ごとに並べると、次のようになります。
| 時期 | 子どものこと | 親の仕事のこと |
|---|---|---|
| 中学生〜高等部1年 | 進路説明会に参加し、相談支援専門員と卒業後の見通しを話し始める。就労選択支援は高等部1年から利用できる(18歳未満は、児童相談所長が市町村長に通知(意見書)することが必要) | 就業規則と、介護の制度の判断基準を確認する |
| 高等部2年 | 実習や事業所の見学・体験で、合う日中活動を探す | 卒業後の送迎や帰宅時刻を想定し、働き方の選択肢を整理する |
| 高等部3年 | 進路先を決め、障害支援区分の認定や支給申請、サービス等利用計画の準備を進める。夕方の居場所を確認する | 介護に直面したことを勤務先に申し出て、介護休業・介護休暇・短時間勤務などを相談する |
| 卒業後〜19歳 | 通い始めは、慣れるまで利用日数や時間を調整することもある | 判断基準に当てはまる場合は、介護休業などを使い、生活を整える期間をつくる |
| 20歳 | 特別児童扶養手当・障害児福祉手当が終わる。特別障害者手当・障害基礎年金、国民年金の手続を確認する | 手当の所得制限で判定される人が変わることを確認する |
相談先
相談したい内容によって、窓口が異なります。
- 学校の進路担当:実習、進路先の情報
- 相談支援専門員:サービスの組み合わせと計画づくり。18歳以降のサービス等利用計画は、計画相談支援の事業所に作成を依頼できる
- 市区町村の障害福祉担当課・基幹相談支援センター:支給申請、障害支援区分、地域生活支援事業
- 医療的ケア児支援センター:医療的ケアが必要な方の卒業前後の相談
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):介護休業などの制度、勤務先とのトラブル
- 市区町村の国民年金の窓口・年金事務所・社会保険労務士:障害基礎年金。日本年金機構は、請求書の提出先を住所地の市区町村役場の窓口としています(初診日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、年金事務所など)
相談支援の窓口については、相談支援事業所とは、基幹相談支援センターとはでご説明しています。
よくある質問
卒業前後の制度について、よくある疑問にお答えします。
Q1. 児童養護施設などでいう「18歳の壁」と同じ意味ですか?
同じ言葉は、児童養護施設などで暮らす子が、18歳を境に自立を迫られる問題を指して使われることもあります。この分野では、令和4年の児童福祉法改正(令和6年4月1日施行)で、児童自立生活援助事業の年齢による一律の利用制限が弾力化されました。本記事は、障がいのある子の卒業後の支援と親の働き方を扱っています。
Q2. 放課後等デイサービスは20歳まで使えると聞きました。卒業後も通えますか?
放デイは、学校などに就学している子が授業の終了後や休業日に通うサービスと定められています。満20歳に達するまでの特例は、市町村が必要と認めた場合に年齢の上限を延ばすもので、生活介護その他の支援を受けることができる場合は対象になりません。卒業後の夕方の居場所は、日中一時支援などを含めて市区町村に確認してみてください。
Q3. 児童福祉法の改正で、18歳の壁はなくなりますか?
令和4年の児童福祉法改正では、障害児入所施設の入所児童などについて、地域生活などへの移行の調整の責任主体を明確化し、22歳までの入所継続を可能としました。令和9年4月1日には改正医療的ケア児支援法が施行されます。ただし、卒業前後に日中活動の場を組み直す必要は続くため、在学中からの準備が大切です。
Q4. 卒業してすぐに就労継続支援B型に通えますか?
B型を新たに利用する場合は、原則として就労選択支援を先に利用します。特別支援学校の高等部や高校では1年生から利用でき、在学中に複数回利用することもできます(18歳未満の場合は、児童相談所長の通知(意見書)が必要です)。近くに就労選択支援事業所がない場合などは、就労移行支援事業所等による就労アセスメントを経て利用する方法もあります。
まとめ
18歳の壁は、制度の切り替わりと学校の卒業が重なることで生じます。子どもの日中の過ごし方と親の働き方を、在学中から一緒に考えておくことが大切です。
- 放デイは就学している子のサービスで、満20歳に達するまでの特例は、生活介護その他の支援を受けることができる場合は使えない
- 18歳以降の利用者負担は本人と配偶者の所得で判定され(施設に入所する18・19歳を除く)、20歳では手当と年金が切り替わる
- 就労選択支援は在学中(高等部・高校の1年)から利用でき(18歳未満は児童相談所長の通知が必要)、夕方の居場所は市区町村の事業を確認する
- 介護休業などの介護の制度は、子が18歳を過ぎても使える場合がある
制度は改正される可能性があるため、最新の情報は厚生労働省・こども家庭庁のサイトやお住まいの市区町村でご確認ください。制度の全体像は、障がい児の親の仕事|3つの壁と仕事を続けるための制度もあわせてご覧ください。
参考資料
- e-Gov法令検索「児童福祉法」(第4条、第6条の2の2、第21条の5の13、附則第63条の2・第63条の3)、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(第4条、第5条)、「民法」(第4条)
- e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(第2条、第21条、第23条の3)、同法施行規則(第2条、第38条)
- e-Gov法令検索「国民年金法」(第7条、第30条の4、第36条の3)、「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」(第20条、第21条、第26条の5)
- e-Gov法令検索「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(現行・令和8年法律第77号による改正後)
- こども家庭庁「障害児通所給付費に係る通所給付決定事務等について」(令和8年3月版)
- 文部科学省「学校基本調査」(令和7年度)
- 厚生労働省「障害福祉サービスの内容」「障害者の利用者負担」「特別障害者手当について」
- 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日)、第47回(令和7年6月25日)資料3
- 障害福祉報酬改定検討チーム 第62回(令和8年8月27日)資料2「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)」、第64回(令和8年9月28日)資料「就労系サービスに係る報酬・基準について」
- 文部科学省・厚生労働省「特別支援学校等における就労選択支援の取扱いについて」(令和7年5月15日)
- 厚生労働省「就労選択支援の実施について」(障障発0331第3号、令和7年3月31日。最終改正 障障発0930第3号、令和7年9月30日)
- 厚生労働省「地域生活支援事業等実施要綱」「日中一時支援の概要」
- 東京都福祉局「令和8年度 障害者施策推進部 予算案のポイント」
- 練馬区「障害者の居場所づくり促進事業」(令和8年9月30日更新)、プレスリリース「障害児者の『居場所づくり促進事業』を開始します」(令和8年6月16日)
- 厚生労働省「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」(解釈通達 別添1)、両立指針(令和7年10月1日適用版。令和8年厚生労働省告示第53号による改正(令和8年10月1日適用)は第二の十四のみで、本記事の引用箇所は改正なし)
- 厚生労働省 介護休業制度等における「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」の見直しに関する研究会(第1回、令和6年12月27日)資料4
- 厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」
- 日本年金機構「障害基礎年金を受けられるとき」「障害年金」「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」
※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。
よこぜき行政書士事務所

