はじめに

農福連携に取り組むときに使える国の支援には、農林水産省の交付金のほか、障がいのある方を雇用する場合の助成金や、福祉事業所向けに都道府県が行う事業があります。

名前が似ているうえ、事業名や上限額は年度ごとに変わるため、「結局いくらなのか」「自分の法人は対象なのか」がわかりにくいかもしれません。

令和8年(2026年)8月には、令和9年度予算の概算要求も公表され、交付金の整備事業の上限を引き上げる要求が示されました。

本記事では、農福連携の補助金について、令和8年度の内容と、令和9年度の概算要求で示された内容を分けて、わかりやすくご説明したいと思います。

主な読者として、就労継続支援事業所を運営する法人や農業法人など、農福連携に取り組む法人の担当者の方を想定しています。

申請できるかどうかは、その年度の公募要領と審査で決まります。

本記事は、制度の全体像をつかむための一般的な情報としてご覧ください。

農福連携の補助金はいくら?主な制度の早見表

農福連携の補助金の中心は、農林水産省の「農山漁村振興交付金(農福連携型)」です。

制度上の名称は「交付金」で、研修などのソフト事業と、施設を整備するハード事業に分かれています。

このほか、障がいのある方を雇用する場合の助成金や、福祉事業所向けに都道府県が行う事業もあります。

まずは、令和8年度の主な制度と上限額を一覧でご紹介します。

令和8年度の主な制度と上限の早見表

交付金の4つの事業の交付率と上限は、次のとおりです。

事業主な内容交付率上限
農福連携支援事業(農福連携の取組)〔ソフト〕技術習得の研修、作業工程のマニュアル化、ユニバーサル農園の開設、移動式トイレの導入など定額上限300万円(年標準額150万円)。整備事業を経営支援で取り組む場合は上限600万円(年標準額300万円)。作業マニュアルの作成等に取り組む場合は初年度において40万円加算可能
地域協議会の設立及び体制整備〔ソフト〕地域協議会による、農福連携を地域で広げるための取組定額上限600万円(年標準額300万円)
普及啓発・専門人材育成推進対策事業〔ソフト〕全国的な展開に向けた取組、専門人材の育成の取組など定額上限500万円等
整備事業(農福連携型)〔ハード〕生産・加工・販売施設、ユニバーサル農園施設、休憩所・トイレなどの整備1/2高度経営1,000万円、簡易整備200万円、経営支援2,500万円、介護・機能維持400万円

出典:農林水産省「令和8年度農山漁村振興交付金 地域資源活用価値創出対策のうち 地域資源活用価値創出推進・整備事業(農福連携型)」(以下「概要資料」)

交付金のほかに、次のような国の制度があります。

制度実施主体主な内容補助率・支給額
障害者作業施設設置等助成金独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)作業しやすいよう配慮した施設等の整備対象費用の2/3(1人につき450万円まで等)
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)厚生労働省ハローワーク等の紹介による雇い入れ障がいの程度・年齢・企業規模・労働時間で異なる(例:重度ではない45歳未満の身体・知的障がいのある方を短時間労働者以外で雇う場合、中小企業120万円・中小企業以外50万円)
雇用就農資金全国農業会議所就農を希望する49歳以下の障がいのある方を新たに雇用する農業法人等1名あたり最大75万円/年(最長4年間。同一年度内の3人目以降は助成額が異なる)
工賃向上計画支援等事業都道府県専門家の派遣、施設外就労のマッチング支援など国1/2

出典:法務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省「農福連携ガイドブック」(令和8年3月)p.15〜17、p.26、厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」、全国新規就農相談センター「雇用就農資金(雇用就農者育成・独立支援タイプ、新法人設立支援タイプ)」

それぞれの要件は、このあとのセクションでご説明します。

「上限300万円(年標準額150万円)」の読み方

交付金のソフト事業の上限額には、読み違えやすい書き方があります。

「上限300万円(年標準額150万円)」は、1年あたりの標準額150万円を、交付の対象となる年数分合計した額です。

実施要領は、「助成額の上限額は、事業実施主体当たり助成単価(年標準額150万円)に交付対象の事業年数を乗じた額とする」と定めています(農林水産省「農山漁村振興交付金(地域資源活用価値創出対策)実施要領」別記5)。

交付金による支援は最大2年間のため、150万円×2年で上限300万円になる、という読み方です。

整備事業の経営支援と併せて実施する場合は、年標準額が300万円とされています(同)。

地域協議会の「上限600万円(年標準額300万円)」も、同じ考え方で定められています(同)。

ハード事業の整備事業は、「ハードの総事業費の1/2以内または各上限額のうちいずれか小さい方」とされています(概要資料 p.4)。

例えば総事業費600万円の簡易整備なら、1/2は300万円ですが、上限が200万円のため、計算上は200万円が限度です。

国の制度のほかに、自治体独自の補助もある

都道府県や市町村が、独自に農福連携の補助を設けている場合があります。

農林水産省は「令和8年度 農福連携支援施策(地方自治体)」の一覧を公表しています(農林水産省「農福連携に関する支援制度」)。

例えば神奈川県は、県(農業振興課)主催の農福連携の研修を受講した(または受講が確実に見込まれる)農業経営体などを対象に、作業場や休憩場所の環境整備、障がいのある方が利用しやすい仮設トイレの設置などの費用を補助しています(神奈川県「神奈川県農福連携推進事業補助金」)。

補助率は事業費の1/3以内、補助上限額は100万円で、整備内容ごとに30万円以上(複数の区分を組み合わせて30万円以上とすることも可能)であることなどの条件があります(同)。

令和8年度の第2回の募集期間は、令和8年10月1日(木)〜10月29日(木)と案内されています(同ページ、2026年10月1日更新)。

市町村では、例えば愛知県みよし市が、市内の農地を耕作する農業者を対象に、市内の福祉事業所に農作業を依頼したときの工賃や交通費などを補助しています(「みよし市お試しノウフク事業補助金交付要綱」第4条・第6条)。

補助金の額は補助対象経費の10分の10で、1者につき合計5万円が上限です(同 第7条)。

対象は、この補助金の交付を以前に受けていないことなどの要件を満たす農業者で、要綱は令和9年3月31日限りで効力を失うとされています(同 第4条、附則)。

対象や受付の時期は自治体ごとに異なるため、農地や事業所のある自治体の窓口で確認が必要です。

農山漁村振興交付金(農福連携型)の内容|令和8年度

令和8年度の正式名称は「農山漁村振興交付金 地域資源活用価値創出対策のうち 地域資源活用価値創出推進・整備事業(農福連携型)」です。

予算は、農山漁村振興交付金全体の令和8年度予算概算決定額7,045百万円(前年度7,389百万円)の内数とされています。

農林水産省は平成29年度から、農福連携に取り組もうとする方を対象に、交付金事業を設けています(農林水産省「農福連携に関する支援制度」)。

ここでは、4つの事業の内容と主な要件を順にご説明します。

農福連携支援事業(農福連携の取組)

障がいのある方などが農林水産業に携わるための、技術や体制づくりを支援するソフト事業です。

概要資料では、対象になる取組の例として次のものが挙げられています(p.7)。

  • 生産・加工・販売技術の習得のための研修、先進的な団体の視察
  • 分業体制の構築、作業マニュアル作成
  • 6次産業化商品の商品開発、商品デザイン・パッケージの作成・改良、販路開拓のための取組
  • 農業分野への就業を希望する障害者等に対し、農業体験を提供するユニバーサル農園の初期運営
  • リースまたはレンタルの移動式トイレ(車載トイレ等)の導入
  • 農福連携が経営に与える影響の分析(経営分析)

事業実施期間は3年間で、このうち交付金による支援は最大2年間、残る1年間は自主取組の期間です。

原則として整備事業(ハード)と併せて行いますが、条件を満たす場合はソフトだけでも実施できます。

概要資料は、障害者等が作業に携わる「場」がすでに確保されている例として、施設外就労の受入れ先が確保されている場合を挙げています(p.3)。

ソフトだけで実施する場合は、作業に携わる障害者等の雇用・就労者数を、3年目の目標年度までに3名以上増やすことが要件です(p.7)。

地域協議会の設立及び体制整備

市町村、農林水産業経営体、社会福祉事業者等で構成する地域協議会が、地域で農福連携を広げるための取組を支援する事業です。

活動内容の検討、調査、先進地視察、意見交換会、ワークショップの実施、活動計画の策定などに必要な経費が対象です。

交付率は定額で、上限は600万円(年標準額300万円)とされています。

事業実施主体は地域協議会のみで、事業計画書の提出までに設立されている必要があります(概要資料)。

事業実施3年目までに、地域協議会に参画して新たに農福連携に取り組む主体を3主体以上増やし、地域の活動計画を策定することが要件です。

普及啓発・専門人材育成推進対策事業

農福連携の全国的な展開に向けた取組や、農福連携の定着に向けた専門人材の育成を支援する事業です。

事業期間は1年、交付率は定額で、上限は「500万円等」とされています。

このうち、農福連携技術支援者の育成・派遣などを支援する「都道府県専門人材育成支援事業」は、事業実施主体が都道府県のみです(概要資料)。

全国向けの普及啓発等推進事業は、地域向けの事業とは別に公募されています。

整備事業(農福連携型)

障がいのある方などが作業に携わる施設の整備を支援する、ハード事業です。

助成の対象は、農林水産物生産施設(簡易な農園整備を含む)、農林水産物加工・販売施設(高度経営・経営支援のみ)、機械器具の購入、給排水施設、休憩所・トイレなどです(概要資料 p.4)。

一方で、次の経費や施設は助成の対象外とされています(概要資料 p.4)。

  • 用地の買収、貸借等に要する費用、補償費、既存施設の取壊しや撤去に係る経費
  • 既存施設の単純更新
  • 自力または他の助成によって、工事を実施中の施設等や、すでに完成した施設等
  • 簡易な整備のうち、障害者が直接作業に従事しない農地の整備、用地の造成

自走できる機械や持ち運びが可能な機械・農機具も、他の目的での利用が可能であることから、補助の対象外とされています(農林水産省「農福連携に関する支援制度」Q6)。

主な要件は次のとおりです(概要資料 p.3・p.5)。

  • 原則として、農福連携支援事業(農福連携の取組)と併せて行うこと(条件を満たす場合は整備事業単独での実施も可能)
  • 整備した施設で作業に携わる障害者等を、事業開始年度から起算して3年目の目標年度までに5名以上増やすこと
  • 費用対効果分析を行い、投資効率が1.0以上であること
  • 交付対象とする施設等は、原則として耐用年数が5年以上のもので、共同利用施設とすること(個人所有の施設、専ら個人が使用する施設は対象外)
  • 加工・販売施設で加工または販売する農林水産物は、事業実施主体が生産に携わるものと、事業実施主体と連携して生産を行う者が生産するものを合わせて、過半を占めること

上限2,500万円の「経営支援」には、従前から農林水産業を営んでいること、経営分析を行うことなどの追加要件があります。

事業期間は2年以内で、基本は1年間とされています(農福連携ガイドブック p.28)。

対象になる「障害者等」と申請できる法人・団体

交付金の要件にある「障害者等」には、障がいのある方のほか、要介護認定を受けた高齢者や生活困窮者なども含まれます。

また、申請できるのは法人や地域協議会などで、個人への助成はできないとされています。

ここでは、対象者の定義と、事業実施主体を確認します。

「障害者等」の定義と人数の要件

概要資料では、取組の対象者を次のように定めています(p.3)。

  • 障害者:18歳以上の障害者
  • 高齢者:要介護認定を受けた65歳以上の者
  • 生活困窮者:就労に向けた支援計画(プラン)が作成されている者
  • ひきこもりの状態にある者:ひきこもり支援機関の確認を受けた者
  • 犯罪をした者:刑務所出所者等(保護観察対象者又は更生緊急保護対象者)として、保護観察所長の確認を受けた者

整備事業の「5名以上」、ソフトだけの場合の「3名以上」を数えるときは、注意点があります。

生活困窮者、ひきこもりの状態にある者、犯罪をした者の増加を見込む場合は、障がいのある方との組み合わせで、過半数が障がいのある方であることが必要です(概要資料 p.2・p.5)。

障がいのある方ではなく高齢者の増加を見込む場合は、その施設を利用する高齢者の数を、目標年度までに5名以上増やすことが要件です(概要資料 p.5)。

ソフトだけで実施する場合は、障害者等と高齢者のどちらの人数要件も、「5名以上」を「3名以上」と読み替えるとされています(実施要領 別記5)。

申請できる法人・団体と、個人への助成

農福連携支援事業と整備事業の事業実施主体は、農林水産業を営む法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人、医療法人、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人、地域協議会、民間企業などです(概要資料 p.2)。

概要資料には「個人に対する助成はできません」と明記されています。

地域協議会は、市町村のほか、農林水産業経営体と社会福祉事業者等を構成員とし、目的や意思決定の方法など7つの事項を定めた規約等に、各構成員が同意している団体とされています(概要資料 p.3)。

農林水産業を営む法人が障がいのある方を直接雇用する場合のほか、福祉事業所の施設外就労として作業を委託する場合も補助の対象になると、農林水産省のQ&Aで示されています(農林水産省「農福連携に関する支援制度」Q1)。

施設外就労は、福祉事業所が農業者と農作業の請負契約を結び、利用者が支援スタッフと一緒に農場へ出向いて作業する形です(農福連携ガイドブック p.9)。

ガイドブックは、施設外就労の相手を探す方法の一つとして、地域の共同受注窓口の活用を挙げています。

対象にならない経費と、福祉事業所向けの国の支援

福祉事業所の側から交付金を検討するときは、「何に使えないか」を先に確認しておくと、計画を立てやすくなります。

また、厚生労働省の工賃向上計画支援等事業は、都道府県が実施主体で、福祉事業所は都道府県(または委託先)が行う支援を利用する形です。

ここでは、農林水産省のQ&Aと、厚生労働省の事業を順にご説明します。

農林水産省のQ&Aで示されている、対象にならない経費

農林水産省は、交付金の対象にならない主な経費を、Q&Aで次のように示しています(農林水産省「農福連携に関する支援制度」、概要資料 p.9〜10)。

  • 福祉事業所の利用者に支払う賃金や工賃
  • 福祉事業所そのものの建築(農林水産物の加工施設・販売施設の事務室も対象外)
  • 福祉事業所の運営費などの経常的な経費や、事業所の運営に関わる人件費(ただし、交付金事業の取組に伴う新たな業務のために臨時で雇用する方の賃金は対象)
  • 利用者が使う、自走・持ち運びが可能な機械や農機具、作業服
  • 協議会を構成する団体の経常的運営に要する経費(協議会構成員や通年雇用する事務補助職員の人件費等)
  • ソフト事業での運転資金、初期投資費用(事業完了後も使用する備品、調度品等)、汎用性の高い物品

判断に迷う経費は、取組地域を所管する地方農政局等に事前に確認するよう案内されています(同 Q7)。

概要資料のソフト事業の説明にも、雇用・就労する障害者等の賃金や法人運営費に対する助成はできないと注記されています(p.2)。

農作業の収入を工賃や賃金にどうつなげるかは、交付金とは別に、事業所の生産活動の計画として考える必要があります。

B型の工賃とA型の賃金の仕組みは、就労継続支援B型と就労継続支援A型の解説記事で紹介しています。

一方、厚生労働省の助成を受けている福祉事業所でも、取り組む内容が重複する補助でなければ、交付金の実施主体となり得るとされています(同 Q8)。

福祉事業所向けの厚生労働省の事業

厚生労働省には、福祉事業所の農業分野への参入と、工賃の向上を支援する「工賃向上計画支援等事業(農福連携による障害者の就労促進プロジェクト)」があります。

実施主体は都道府県で(社会福祉法人等の民間団体へ委託して実施することも可能)、国の補助率は1/2です(農福連携ガイドブック p.26)。

都道府県が行う内容として、次の6つが挙げられています。

  1. 農業の専門家の派遣等による農業技術の指導・助言
  2. 6次産業化への取組支援
  3. 農福連携マルシェの開催支援
  4. 好事例の収集やセミナー開催等の意識啓発
  5. 伴走型コーディネーターを活用するなど、農業者と障害者就労施設による施設外就労とのマッチングや、事業の立ち上げ、事業実施の支援
  6. 障害福祉分野と農業分野の関係者の相互理解の促進

実施の有無や内容は都道府県ごとに異なり、ガイドブックには令和7年度にこのプロジェクトを活用している都道府県の一覧が掲載されています。

また、社会福祉法人やNPO法人等が、障がいのある方が働く福祉事業所を新たに立ち上げる場合は、「社会福祉施設等施設整備費補助金」で施設整備の経費の一部を支援できるとされています(農福連携ガイドブック p.27)。

負担割合は、国が1/2、都道府県等が1/4、設置者が1/4とされています(同)。

B型事業所の数や経営の状況は、就労継続支援B型の現状と今後でまとめています。

障がいのある方を雇用する場合の助成金

農業法人や企業が障がいのある方を直接雇用する場合は、雇用に関する助成金の対象になり得ます。

支給額は、対象となる方の障がいの程度や年齢、企業の規模、労働時間などによって変わります。

ここでは制度の概要にとどめます。

なお、雇用関係の助成金の申請手続きの代行は、社会保険労務士の業務です。

厚生労働省・JEEDの助成金

農福連携ガイドブックでは、雇い入れや職場環境の整備に使える主な助成金として、次の制度が紹介されています(p.15・p.17)。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、ハローワーク等の紹介により障がいのある方を雇用する事業主に支給される助成金です。

支給額は、障がいの程度や年齢、企業の規模、週の所定労働時間によって異なります。

短時間労働者以外として雇い入れる場合、「重度障害者等」(重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者及び精神障害者)は、中小企業が240万円(助成対象期間3年)、中小企業以外が100万円(同1年6か月)です(厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」)。

重度障害者等を除く身体障がい・知的障がいのある方(重度ではなく、45歳未満の方)は、中小企業が120万円(同2年)、中小企業以外が50万円(同1年)です(同)。

支給額は、支給対象期ごとに、対象労働者に支払った賃金額が上限とされています(同)。

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)は、ハローワーク等の紹介により、就職が困難な障がいのある方を一定期間雇用する事業主に支給されます。

支給額は1人につき月額最大4万円で、支給期間は最長3か月です。

精神障がいのある方を雇用する場合は、月額最大8万円を3か月、月額最大4万円を3か月の、最長6か月間とされています(厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」)。

JEEDの障害者作業施設設置等助成金は、作業を容易に行えるよう配慮した施設等の設置・整備に対し、対象費用の2/3を助成する制度です。

作業施設、附帯施設、作業設備の合計で、対象となる障がいのある方1人につき450万円まで(作業設備の場合は150万円まで)とされています。

いずれも一定の要件があるため、厚生労働省・JEEDの最新の案内で確認が必要です。

雇用就農資金(農林水産省)

雇用就農資金は、就農を希望する49歳以下の障がいのある方を新たに雇用する農業法人等に対して助成する制度です(農福連携ガイドブック p.16)。

ここで紹介するのは、雇用就農資金のうち「雇用就農者育成・独立支援タイプ」です(全国新規就農相談センター「雇用就農資金」)。

新規雇用就農者1名あたり最大75万円/年を、最長4年間助成するとされています。

通常は最大60万円/年で、新規雇用就農者が障がいのある方の場合に、最大15万円/年が加算される仕組みです。

1週間の所定労働時間は、原則として年間平均35時間以上が必要ですが、障がいのある方の場合は20時間以上で構わないとされています(同)。

1経営体当たりの新規採択人数は同一年度内5人までで、3人目以降の助成額は年間最大20万円となります(同)。

特定求職者雇用開発助成金との併給は認められていません(農福連携ガイドブック p.16)。

募集は全国農業会議所が行い、申請や問合せは各都道府県農業会議等で受け付けています。

公募の時期と申請の流れ|令和9年度の見通し

交付金は年度ごとに公募が行われ、審査で選定された提案が、その後の手続きを経て交付の対象になります。

令和8年度の当初公募の期間は約3週間で、支援の対象は交付決定日以降の取組のため、流れを事前に知っておくことが大切です。

ここでは、令和8年度の公募の実績と申請の流れ、令和9年度の概算要求で示された内容をご説明します。

公募の時期(令和8年度の実績)

農林水産省は、例年1回目の公募を2月頃に実施しており、年度によっては2回目以降の公募もあるとしています(概要資料 p.11)。

令和8年度の公募期間は、次のとおりでした(農林水産省「農福連携に関する支援制度」)。

  • 当初公募(地域向けの農福連携支援事業及び整備事業、全国向けの普及啓発等推進事業):令和8年1月23日(金)〜2月12日(木)
  • 追加公募(全国向けの普及啓発等推進事業):令和8年5月11日(月)〜5月29日(金)
  • 追加公募(地域向けの農福連携支援事業及び整備事業):令和8年6月15日(月)〜7月2日(木)

公募の結果は、例年、ソフト事業のみの提案は締切のおおむね1か月後、ハード事業を含む提案は締切から2〜3か月後とされています(同 Q9)。

申請から交付までの流れ

概要資料では、ハード事業を含む場合のおおよその流れが次のように示されています(p.15)。

  1. 事業構想や事業要件について、地方農政局等へ事前に相談する(推奨)
  2. 公募期間中に提案書を提出する
  3. 審査を経て、交付金交付先の候補者に選定されたか、されなかったかが通知される
  4. 選定から1か月以内に、地方農政局長等あてに事業実施計画の承認を申請する
  5. 計画の承認と割当額の内示を受けて、交付金の交付を申請する
  6. 交付決定の通知を受けてから、事業に着手する(原則)
  7. 実績報告などを経て、交付金が支払われる

公募期間中は、公平性確保の観点から個別相談に応じられないとされています(同 p.15)。

概要資料は、支援の対象を「交付金の交付を決定した日以降の取組」としています(p.12)。

交付等要綱は、事業の着手(機械の発注を含む)は原則として交付決定の通知を受けて行うものとし、やむを得ない事情により交付決定前に着手する必要がある場合は「交付決定前着手届」を提出するとしています(農林水産省「農山漁村振興交付金交付等要綱」第10第3項)。

届出の様式には、交付決定を受けるまでに事業に損失が生じても事業実施主体が負担することなどの条件が書かれており、概要資料の流れ図には「着手日の遡りは不可」と示されています(同 別記様式第14号、概要資料 p.15)。

交付決定前の着手を検討する場合は、着手する前に地方農政局等へ相談し、必要な手続きを確認しておくことが大切です。

支払いは原則として年度ごとの精算払いのため、1年分の取組に要する費用の全額を事前に用意する必要があるとされています(概要資料 p.12)。

令和9年度の概算要求で示された内容

農林水産省の令和9年度予算の概算要求(令和8年8月)では、農山漁村振興交付金の要求額は9,970百万円(前年度7,045百万円)で、農福連携型はその内数です(農林水産省「令和9年度予算概算要求の概要」)。

ソフト事業の上限は、令和8年度と同じ書き方で示されています。

整備事業の上限は、高度経営1,500万円、経営支援3,000万円、介護・機能維持400万円の3つの区分で示されています。

令和8年度の上限(高度経営1,000万円、経営支援2,500万円)と比べると、2つの区分で引き上げが要求されています。

令和8年度にあった簡易整備(上限200万円)の扱いは、令和9年度の公募要領で確認する必要があります。

概算要求は予算の要求であり、内容は年末の政府予算案と、その後の国会の審議を経て決まります。

令和9年度の内容は、公募要領が公表された時点で改めて確認が必要です。

よくある質問

農福連携の補助金について、よく検索されている質問にお答えします。

Q1. 農福連携の補助金はいくらですか?

中心となる農林水産省の交付金では、令和8年度の場合、ソフト事業の農福連携支援事業は年標準額150万円で、支援を受ける期間(最大2年間)全体の上限が300万円です。

ハード事業の整備事業は総事業費の1/2以内で、区分に応じて上限200万円〜2,500万円です。

金額は年度や事業の区分で変わり、採択は審査によります。

Q2. 個人の農家でも申請できますか?

交付金は、概要資料に「個人に対する助成はできません」と明記されています。

個人の農業者が関わる方法としては、法人として申請するほか、地域協議会の構成員(農林水産業経営体)として地域の取組に参加する形が考えられます。

地域協議会の取組で交付金を受けるのは地域協議会で、整備事業では個人所有の施設は対象外とされています(概要資料)。

雇用に関する助成金は、制度ごとに対象となる事業主が定められています。

Q3. 施設外就労(農作業の請負)でも対象になりますか?

農林水産業を営む法人が、福祉事業所の施設外就労として作業を委託する場合も、補助の対象になるとされています(農林水産省「農福連携に関する支援制度」Q1)。

Q4. 交付金を利用者の工賃に使えますか?

交付金の対象外とされています。

農林水産省のQ&Aは、「利用者に支払う賃金や工賃を補助の対象にすることはできません」としています(同 Q5)。

Q5. 厚生労働省の補助と併用できますか?

福祉事業所が厚生労働省の助成を受けていても、取り組もうとする内容が重複する補助でなければ、交付金の実施主体となり得るとされています(同 Q8)。

なお、雇用就農資金と特定求職者雇用開発助成金は、併給が認められていません(農福連携ガイドブック p.16)。

Q6. 令和9年度の公募はいつですか?

例年、1回目の公募は2月頃とされています(令和8年度の当初公募は1月23日から)。

令和8年度の公募は、農林水産省の「農福連携に関する支援制度」のページで案内されました。

まとめ

農福連携の補助金は、3つの種類に分けて考えると整理しやすくなります。

1つ目は農林水産省の交付金、2つ目は障がいのある方を雇用する場合の助成金、3つ目は福祉事業所向けに都道府県が行う事業です。

中心となる交付金は、令和8年度の場合、ソフト事業の農福連携支援事業が年標準額150万円(支援期間全体で上限300万円)、ハード事業が総事業費の1/2以内で、区分ごとに上限があります。

対象となる「障害者等」には、18歳以上の障害者のほか、要介護認定を受けた高齢者や生活困窮者なども含まれます。

事業実施主体は法人や地域協議会で、概要資料は「個人に対する助成はできません」としています。

交付金の対象は交付決定日以降の取組で、利用者の工賃・賃金や福祉事業所の運営費は対象外とされています。

令和9年度は、整備事業の上限の引き上げが概算要求で示されていますが、内容が決まるのは年末の政府予算案と、その後の国会の審議を経てからです。

公募は例年2月頃のため、年内に事業計画と連携先を整理し、地方農政局等の事前相談の機会を確認しておくと、準備を進めやすくなります。

農福連携の取り組み方やメリット・課題は、農福連携とはの記事で解説しています。

制度は年度ごとに変わるため、最新の内容は農林水産省・厚生労働省・JEED・各自治体の資料でご確認ください。

参考資料

本記事で参照した主な資料は次のとおりです。

※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。

よこぜき行政書士事務所