障害者総合支援法は、正式には「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」と言います。(会社で障害福祉サービス事業を始める際の定款目的に書く場合は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」のように正式な法律名を書く必要があります)

平成24年(2012年)6月27日に公布され、平成25年(2013年)4月1日に施行されました(一部を除く)。

障害者総合支援法について

障害者総合支援法は、「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて、地域社会における共生の実現に向けて、障害福祉サービスの充実等障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するため、新たな障害保健福祉施策を講ずる」ことを趣旨として、障害者自立支援法を改正する形で創設されました。

よって、法律の題名は障害者総合支援法に変更されましたが、法律の基本的な構造は障害者自立支援法と同じです。

障害者総合支援法の目的

障害者総合支援法は、法の目的を「障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与すること」としています。

「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものである」ということを基本理念としています。

(目的)
第一条 この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)、知的障害者福祉法(昭和三十五年法律第三十七号)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)
第一条の二 障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと並びに障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律

対象範囲

法が対象とする障害者の範囲は以下の通りです。

障害者

以下の条件にあてはまる18歳以上の成人

障害児

以下の条件にあてはまる18歳未満の児童

  • 身体に障害のある児童
  • 知的障害のある児童
  • 精神に障害のある児童

「児童」に関しては「児童福祉法」に以下のように定義されています。 

第四条 この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。
一 乳児 満一歳に満たない者
二 幼児 満一歳から、小学校就学の始期に達するまでの者
三 少年 小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者

児童福祉法

政令で定める難病等により障害がある者

障害福祉サービス等の対象となる難病が、361疾病から366疾病へと見直しが行われました。(令和3年11月1日から適用

対象となる方は、障害者手帳をお持ちでなくても、必要と認められた支援が受けられます。

令和3年11月からの障害者総合支援法の対象疾病一覧(366疾病)

障害福祉サービスの種類

80項目に及ぶ調査を行い、その人に必要な支援の度合い6段階の区分(区分1~6:区分6の方が必要とされる支援の度合いが高い)を測ります。

これを「障害支援区分」といいます。

その度合いに応じたサービスが利用できるようになっています。

障害者総合支援法による総合的な支援は、自立支援給付と地域生活支援事業で構成されています。

※令和7年(2025年)10月から利用開始予定の「就労選択支援」は「就労選択支援とは」のページで詳しくご説明していますのでご参照ください。

自立支援給付

介護給付

  • 居宅介護(ホームヘルプ)※障害者・障害児利用可
  • 重度訪問介護
  • 同行援護 ※障害者・障害児利用可
  • 行動援護 ※障害者・障害児利用可
  • 重度障害者等包括支援 ※障害者・障害児利用可
  • 短期入所(ショートステイ)※障害者・障害児利用可
  • 療養介護
  • 生活介護
  • 施設入所支援

訓練等給付

  • 自立訓練
  • 就労移行支援
  • 就労継続支援(A型=雇用型、B型=非雇用型)
  • 就労定着支援
  • 自立生活援助
  • 共同生活援助(グループホーム)

相談支援

  • 計画相談支援 ※障害者・障害児利用可
  • 地域相談支援

自立支援医療

  • 更生医療 育成医療
  • 精神通院医療

補装具

地域生活支援事業

市町村

  • 理解促進研修・啓発
  • 自発的活動支援
  • 相談支援
  • 成年後見制度利用支援
  • 成年後見制度法人後見支援
  • 意思疎通支援
  • 日常生活用具の給付又は貸与
  • 手話奉仕員養成研修
  • 移動支援
  • 地域活動支援センター
  • 福祉ホーム
  • その他の日常生活又は社会生活支援

都道府県

  • 専門性の高い相談支援
  • 広域的な支援
  • 専門性の高い意思疎通支援を行う者の養成・派遣
  • 意思疎通支援を行う者の派遣にかかる連絡調整

障害児を対象としたサービス

障害児を対象とするサービスは、都道府県における「障害児入所支援」、市町村における「障害児通所支援」があります。

一部、障害者総合支援に基づくサービスを利用することも可能です。

障害児入所支援(都道府県)

福祉型障害児入所施設

施設に入所している障害児に対して、保護、日常生活の指導及び知識技能の付与を行います。

医療型障害児入所施設

施設に入所又は指定医療機関に入院している障害児に対して、保護、日常生活の指導及び知識技能の付与並びに治療を行います。

障害児通所支援

児童発達支援・医療型児童発達支援

児童福祉施設として位置づけられる児童発達支援センターと児童発達支援事業の2類型に大別されます。

様々な障害があっても身近な地域で適切な支援が受けられます。

①児童発達支援センター/医療型児童発達支援センター通所支援のほか、身近な地域の障害児支援の拠点として、「地域で生活する障害児や家族への支援」、「地域の障害児を預かる施設に対する支援」を実施するなどの地域支援を実施します。医療の提供の有無によって、「児童発達支援センター」と「医療型児童発達支援センター」に分かれます。

②児童発達支援事業通所利用の未就学の障害児に対する支援を行う身近な療育の場です。

放課後等デイサービス

学校就学中の障害児に対して、放課後や夏休み等の長期休暇中において、生活能力向上のための訓練等を継続的に提供します。

学校教育と相まって障害児の自立を促進するとともに、放課後等の居場所づくりを推進します。

居宅訪問型児童発達支援

重度の障害等により外出が著しく困難な障害児の居宅を訪問して発達支援を行います。

保育所等訪問支援

保育所等(※)を現在利用中の障害児、今後利用する予定の障害児に対して、訪問により、保育所等における集団生活の適応のための専門的な支援を提供し、保育所等の安定した利用を促進します。

2018(平成30)年4月の改正により、乳児院・児童養護施設に入所している障害児も対象として追加されました。

(※)保育所、幼稚園、小学校、放課後児童クラブ、乳児院、児童養護施設等

まとめ

いかがでしたでしょうか。

「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」の概要をご理解いただけたかと思います。

障害者総合支援法は3年に1度改正がおこなわれます。

2022年に改正されたものは2024年から施行されていきます。

就労選択支援のような新しいサービスが創設されることもありますので、定期的に改正内容を確認する必要があります。