障害福祉サービスの大半は、ひとつの法律を根拠としています。それが「障害者総合支援法」です。

障害者総合支援法は、障がいのある方の日常生活と社会生活を支える根幹となる法律で、就労継続支援B型・A型、就労移行支援、就労定着支援といった就労支援サービスもこの法律に位置づけられています。

令和7年(2025年)10月には新サービスとして就労選択支援が施行され、対象となる難病も令和7年4月から376疾病へ拡大されるなど、現在も制度の見直しが続いています。

本記事では、障害者総合支援法の目的、対象者、サービス体系、就労支援サービスとの関係、そして令和6年4月から順次施行されている改正のポイントまで、わかりやすくご説明したいと思います。

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法とは、「障がいのある方の日常生活と社会生活を総合的に支援するための法律」です(平成25年4月施行)。

介護や就労支援、相談支援など多様なサービスを総合的に提供し、地域社会における共生の実現を目指しています。

ここでは、法律の正式名称や目的、自立支援法から改正された経緯について順にご説明します。

法律の正式名称と目的

「障害者総合支援法」は通称で、正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」です。

法律の目的は第1条で定められており、障がい者・障がい児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活・社会生活を営めるよう、必要な障害福祉サービス給付や地域生活支援事業などを総合的に行うこととされています。

加えて、障がいの有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し合える地域社会の実現に寄与することも目的とされており、福祉サービスを通じた共生社会の実現が法律の根本的な狙いと言えます。

障害者自立支援法からの改正経緯

障害者総合支援法は、平成24年(2012年)6月27日に公布され、平成25年(2013年)4月1日に施行されました(一部規定を除く)(厚生労働省: 障害者総合支援法が施行されました)。

それまでの「障害者自立支援法」を改正する形で創設された法律で、地域社会における共生の実現に向けて、障害福祉サービスの充実等を目的とした新たな施策を講ずることが趣旨とされています。

その後も施行3年ごとの見直しを基本に改正が重ねられており、平成26年(2014年)の重度訪問介護対象拡大、平成30年(2018年)の就労定着支援創設、令和6年(2024年)4月以降に順次施行されている改正へと続いています。

障害者総合支援法の対象者

「障害者総合支援法のサービスは誰が利用できるのか?」これは、サービス利用を考える方やそのご家族にとって最も基本的な疑問だと思います。

本法の対象は、身体・知的・精神(発達障がいを含む)の各障がい種別、そして政令で定める難病等のある方まで、幅広くカバーされています。

障害種別による対象(身体・知的・精神・発達)

障害者総合支援法の対象となる障がい種別は、大きく分けて以下の3つです。

  • 身体障がいのある方(身体障害者福祉法で定義)
  • 知的障がいのある方(知的障害者福祉法にいう知的障害者)
  • 精神障がいのある方(発達障がいのある方を含む。精神保健及び精神障害者福祉に関する法律で定義)

それぞれ根拠となる法律が異なる障がい種別ですが、本法によってサービス給付や地域生活支援事業の対象として一元的にカバーされる仕組みとなっています。

なお、障害児の場合は本法に基づくサービスに加えて、児童福祉法に基づく障害児通所支援・障害児入所支援も利用対象となります。

難病等の対象拡大

障害者総合支援法では、障がい者・障がい児に加えて「政令で定める難病等」のある方も対象とされています。

これは、平成25年(2013年)の本法施行時に新たに追加された対象範囲で、それまで障害者手帳の対象外で福祉サービスを利用しにくかった方々への支援を目的としたものです。

対象となる難病は数年ごとに見直しが行われており、令和3年11月から366疾病、令和6年4月から369疾病へと拡大されてきました。

令和7年(2025年)4月1日からは376疾病が対象となっています(厚生労働省: 障害者総合支援法対象疾病)。

これらの難病等のある方は、障害者手帳をお持ちでなくても、必要と認められた場合に本法に基づくサービスを利用できる点が大きな特徴です。

障害者総合支援法のサービス体系

障害者総合支援法に基づくサービスは、「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2本立てで構成されています。

それぞれ給付主体や運用の柔軟さが異なり、両者を組み合わせることで、地域に応じた多様なニーズに対応できる設計となっています。

自立支援給付(介護給付・訓練等給付・相談支援等)

自立支援給付は、障がいの種類や程度などに応じて、個別に支給決定が行われる給付サービスです。主に以下のカテゴリで構成されます。

  • 介護給付: 居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所、施設入所支援など、日常生活上の介護を中心としたサービス群です。
  • 訓練等給付: 自立訓練、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、就労定着支援、就労選択支援、共同生活援助(グループホーム)など、自立や就労を目指す方向けの訓練・就労系サービス群です。
  • 相談支援(計画相談支援・地域相談支援): サービス等利用計画の作成や、地域移行・地域定着のための支援を行います。詳しくは相談支援事業所についての解説記事もご参照ください。

このほか、自立支援医療(精神通院医療等)、補装具費の支給なども自立支援給付に含まれます。

地域生活支援事業

地域生活支援事業は、市町村および都道府県が主体となって実施する事業です。

国から大まかな枠組みが示されますが、具体的な運用ルールは自治体の創意工夫に委ねられている点が特徴です。

市町村事業: 相談支援、意思疎通支援(手話通訳・要約筆記等)、日常生活用具給付、移動支援、地域活動支援センター機能強化事業などが含まれます。地域住民に身近なサービスとして位置づけられています。

都道府県事業: 専門性の高い相談支援、広域的な対応が必要な事業、人材育成などを担当します。市町村事業を補完する役割を果たすものです。

地域生活支援事業は、自治体ごとにサービス内容や利用条件が異なる可能性があるため、利用を検討される場合は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口でご確認いただく必要があります。

なお、相談支援の中核機関である基幹相談支援センターも、本事業の枠組みに位置づけられています。

就労支援サービスと障害者総合支援法の関係

就労支援サービスに関心を持って本法を調べている方も多いのではないでしょうか。実は、就労継続支援B型・A型・就労移行支援・就労定着支援、そして令和7年10月に施行された就労選択支援は、いずれも障害者総合支援法の訓練等給付に位置づけられた就労系サービスです。

就労継続支援B型・A型・就労移行支援・就労定着支援

障害者総合支援法に基づく就労支援サービスは、就労選択支援を含めて現在5種類あります。

まず従来からの主な4類型を整理した上で、令和7年に施行された就労選択支援を別項でご説明します。

  • 就労継続支援B型: 雇用契約を結ばずに作業を行う場で、工賃が支給されます。一般就労やA型就労が困難な方が対象で、利用期間に制限はありません。
  • 就労継続支援A型: 雇用契約を結んで働く形態で、最低賃金が保証されます。一般就労が難しいものの、雇用契約による就労が可能な方が対象です。
  • 就労移行支援: 一般就労を目指す方への訓練・支援サービスで、利用期間は原則2年間です。
  • 就労定着支援: 一般就労した方の職場定着を支えるサービスで、利用期間は最長3年間です。平成30年(2018年)4月に創設されました。

就労選択支援(令和4年改正法で創設、令和7年10月施行)

令和7年(2025年)10月1日、新サービスとして「就労選択支援」が施行されました(厚生労働省: 就労選択支援実施マニュアル)。

本制度は、令和4年法律第104号(障害者総合支援法等の一部改正法)により創設されたものです。

これは、就労を希望する方の適性・能力・意向を客観的に評価し、本人にとって最適な就労先や働き方の選択を支援する新サービスです。

短期間の作業体験や面談等を通じてアセスメントを行う制度で、支給決定期間は原則1か月とされています。

新たに就労継続支援B型を利用する方は、原則として事前に就労選択支援を利用する仕組みとなっています。ただし、

50歳以上の方や障害基礎年金1級受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった方など、一定の例外も設けられています。

詳しくは就労選択支援の詳細についての解説記事もご参照ください。

令和6年(2024年)4月以降の改正の6つのポイント

令和4年(2022年)に成立し、令和6年4月から順次施行されている障害者総合支援法等の改正法は、関連法令の一部改正と一体で施行されたもので、6つの大きな柱で構成されています。

就労支援の現場にも影響が及ぶ重要な改正です。

就労支援に関する改正

就労支援関連の改正で最も大きいのが、新サービス「就労選択支援」の創設です。

本人の希望や能力に合った就労先・働き方の選択を、本格的なアセスメントを通じて支援する仕組みが整備されました。

また、障害者雇用促進法の改正により、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度身体障がい・重度知的障がい・精神障がいのある方について、特例的に実雇用率に算定できる仕組みが令和6年4月から導入されました。

これにより、短時間勤務でも障害者雇用としてカウントできるようになり、就労機会の拡大が期待されています(厚生労働省)。

加えて、ハローワークが就労選択支援のアセスメント結果を職業指導に活用する連携の仕組みも導入され、雇用と福祉の連携強化が制度的に位置づけられました。

その他の主な改正点

就労支援以外の改正点も多岐にわたります。

  • 地域生活支援の充実: グループホーム(共同生活援助)の支援内容に「一人暮らし等を希望する方への支援」が明記されました。
  • 相談支援体制の整備: 各市町村における地域生活支援拠点等の整備が努力義務化されました。
  • 精神保健に関する相談支援: 精神保健の相談支援を受けられる対象者が、メンタルヘルス課題のある方全般に拡大されました。
  • 難病患者・小児慢性特定疾病児童への支援: 登録者証の発行や、難病相談支援センターと福祉・就労支援者との連携強化が図られています。

サービス利用の流れと利用料

障害者総合支援法のサービスを利用するには、申請から実際の利用開始までいくつかのステップがあります。

また、利用にあたっての費用負担にも一定の仕組みがあるため、概要を押さえておくことが大切です。

申請から利用開始までの流れ

サービス利用の流れは、概ね以下のステップで進みます。

  • 市区町村窓口への申請: お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口でサービス利用を申請
  • 障害支援区分の認定(介護給付の場合): 介護給付を利用する場合、80項目の認定調査と審査会により区分1〜6を判定。なお、訓練等給付(就労継続支援B型・A型、就労移行支援等)は原則として障害支援区分の認定が不要です
  • サービス等利用計画案の作成: 指定特定相談支援事業者が作成、本人・家族の意向を反映
  • 支給決定とサービス利用開始: 受給者証交付後、事業者と契約してサービス利用開始

利用するサービスによって手続きの一部が異なる場合があり、また個別の手続きの詳細は自治体ごとに運用が異なる部分もあるため、申請前に管轄の窓口でご確認いただくことをおすすめします。

利用者負担の仕組み

障害者総合支援法のサービス利用料は、原則としてサービス費用の1割が利用者負担となります。

具体的には、所得に応じて4区分(生活保護・低所得・一般1・一般2)の月額負担上限が設定されており、生活保護世帯と市町村民税非課税世帯(低所得)は0円、それ以外は所得に応じた上限額が定められています(厚生労働省: 障害者の利用者負担)。

このため、サービス利用量が増えても、月額の自己負担が一定額を超えない仕組みとなっており、利用しやすさへの配慮がなされています。

まとめ

障害者総合支援法は、障がいのある方の日常生活と社会生活を総合的に支える根幹となる法律です。

身体・知的・精神(発達を含む)の各障がい種別と難病等(令和7年4月時点で376疾病)のある方を対象に、自立支援給付と地域生活支援事業の2本立てでサービスが提供されています。

就労継続支援B型・A型、就労移行支援、就労定着支援、そして令和7年10月に施行された就労選択支援など、就労支援サービスの根拠法でもあります。

令和6年4月以降に順次施行されている改正により、就労支援の枠組みも拡充されており、本法は施行3年ごとの見直しを基本としているため、今後も定期的な改正が予定されています。最新動向のキャッチアップが、事業者・利用者双方にとって重要と言えます。

※本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。

よこぜき行政書士事務所