障がいのある子を一人で育てながら働くと、通院や療育の付き添い、放課後の預け先、学校からの急な連絡への対応を、ほかの家族と分け合いにくくなります。あわせて、「働いて収入が増えたら、手当が減ってしまうのではないか」という疑問も出てきます。
本記事では、ひとり親(母子家庭・父子家庭)で障がいのある子を育てながら働く方に向けて、受けられる手当、働いて収入が変わったときの手当の変わり方、仕事と両立するための制度や支援を、法令と国の資料をもとに分かりやすくご説明したいと思います。ここで扱う制度の多くは、母子家庭(シングルマザー)だけでなく父子家庭も対象です。
障がいのある子を育てる親の仕事全般については、障がい児の親の仕事|3つの壁と仕事を続けるための制度でまとめています。
障がいのある子を育てるひとり親の仕事は、3つの支えを組み合わせて考える
障がいのある子を育てるシングルマザー(ひとり親)の仕事は、勤務先の制度・預け先・手当と支援の3つで支えます。仕事を続けられるかは、子の状態や勤務先、地域の制度によって変わるためです。この章では、ひとり親家庭の就労の状況と、国の統計で分かることを確認します。
ひとり親家庭の親の就労状況
厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」(令和3年11月1日時点)によると、母子世帯の母の86.3%、父子世帯の父の88.1%が働いています。就業している人のうち「正規の職員・従業員」は、母子世帯の母で48.8%、父子世帯の父で69.9%です。
母子世帯の母自身の平均年間就労収入は236万円(令和2年の1年間)です。いずれも子の障がいの有無を問わない、ひとり親世帯全体の推計値です。公表されている結果では、令和3年度が最新です。
「障がいのある子の家庭は母子家庭が多い」は、国の統計では確かめられない
「障がい児の家庭は母子家庭が多い」「障がい児のシングルマザーは多い」という話を目にすることがあります。令和7年に国会でこの割合を問う質問主意書が出され、政府は答弁書で「お尋ねの『統計』の『保有』はしていない」と答えています。障がい児の出生や診断を契機とした離婚などについても、「実態調査を実施したこと」はないとしています(内閣衆質二一七第一二七号、令和7年4月8日)。
個別の調査では、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査(令和8年3月)で、放課後等デイサービス(以下、放デイ)を利用する児童の保護者の回答8,581件のうち、「ひとり親と子のみの世帯」が11.3%でした(図表2-236。祖父母と同居する場合は「三世代世帯」に含まれます)。ただし、事業所を通じたWeb調査で、対象は放デイを利用する家庭に限られます。全国の割合を示すものではなく、一般の家庭と比べて多いか少ないかは判断できません。
放デイを利用するひとり親家庭が、制度に期待すること
同じ調査では、「ひとり親と子のみの世帯」(970件)の39.1%が、放デイに制度として期待することに「保護者の子育てと就労の両立支援(就労継続)につながること」を選んでいます(最大3つまでの複数回答、図表2-311。回答者全体では35.7%)。同じ「ひとり親と子のみの世帯」(970件)では、子育てに関する困りごと(複数回答、図表2-305)として、28.2%が「子育て全般での経済的な負担」を、39.2%が「保護者自身の心身の疲れや時間のなさ」を挙げています(回答者全体では20.3%と32.9%)。
ひとり親が受けられる、障がいのある子に関わる3つの手当
障がいのある子を育てるシングルマザーなどのひとり親が対象になり得る手当には、ひとり親家庭の児童扶養手当と、障がいのある子に関する特別児童扶養手当・障害児福祉手当があります。3つは、受け取る人、対象となる子の状態、所得制限で判定される人が、それぞれ異なります。まず全体を表で確認し、そのあと1つずつご説明します。
3つの手当の違い
3つの手当の主な違いは、次のとおりです。申請の窓口は、いずれも住所地の市区町村です。
| 項目 | 児童扶養手当 | 特別児童扶養手当 | 障害児福祉手当 |
|---|---|---|---|
| 受け取る人 | ひとり親家庭の母または父など | 障がいのある子を家庭で監護・養育する父母など | 重度の障がいのある子本人 |
| 対象となる子 | 原則として18歳に達する日以後の最初の3月31日まで。政令で定める程度の障がいの状態にある場合は20歳未満 | 20歳未満で、この手当の障害等級(1級・2級)に該当する程度の障がいのある子 | 重度の障がいのため日常生活で常時の介護を必要とする、在宅の20歳未満の子 |
| 月額(令和8年4月分から) | 全部支給48,050円、一部支給48,040円〜11,340円。2人目以降の加算は全部支給11,350円、一部支給11,340円〜5,680円 | 1級58,450円、2級38,930円 | 16,560円 |
| 所得制限で判定される人 | 受給者本人、配偶者、受給者と生計を同じくする扶養義務者 | 受給者本人、配偶者、受給者と生計を同じくする扶養義務者 | 子本人、配偶者、子の生計を維持する扶養義務者(親など) |
| 支払月 | 1月・3月・5月・7月・9月・11月 | 原則4月・8月・12月(※) | 原則2月・5月・8月・11月 |
※特別児童扶養手当の12月に支払われる8月〜11月分は、受給者の請求があれば、前月の11月に支払われます(特別児童扶養手当等の支給に関する法律第5条の2第4項)。広島市は、4月・8月・11月に支給すると案内しています。実際の支払月と支払日は、市区町村の案内で確認できます。
(児童扶養手当法・同法施行令、特別児童扶養手当等の支給に関する法律・同法施行令、厚生労働省「特別児童扶養手当について」「障害児福祉手当について」をもとに作成)
児童扶養手当|子が政令で定める程度の障がいの状態にある場合は、20歳未満まで
児童扶養手当は、父母が離婚した子などを監護するひとり親家庭の母や父などに支給される手当です(児童扶養手当法第4条)。平成22年8月からは父子家庭も対象になっています。
対象となる「児童」は、原則として18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子です。子が政令で定める程度の障がいの状態にある場合は、20歳未満まで対象になります(同法第3条第1項)。この程度は同法施行令の別表第一に定められていて、障害者手帳の等級とは別のものです。障がいがあれば誰でも20歳まで延びるわけではないため、18歳の年度末が近づいたら、手続を市区町村に確認しておくと安心です。月額は物価の変動に応じて改定され、令和8年4月分からは全部支給で48,050円です(同法施行令第2条の2)。
特別児童扶養手当|ひとり親かどうかに関わらず、障がいのある子を家庭で監護する父母等に
特別児童扶養手当は、20歳未満で精神または身体に障がいのある子を家庭で監護・養育している父母などに支給されます(厚生労働省)。ひとり親かどうかに関わらず対象になる手当で、父母がともに監護している場合は、主として子の生計を維持する人に支給されます(特別児童扶養手当等の支給に関する法律第3条第2項)。
対象になるのは、この手当の法令が定める障害等級(1級・2級)に該当する程度の障がいのある子です。この等級は、身体障害者手帳などの等級とは別に定められたものです(同法第2条)。受け取るには、都道府県知事(指定都市では市長)の認定を受ける必要があります(同法第5条)。療育手帳の区分については、療育手帳の区分と働き方|B2・B1・Aの違いを行政書士が解説で説明しています。
障害児福祉手当|受け取るのは子ども本人
障害児福祉手当は、精神または身体に重度の障がいがあるため、日常生活において常時の介護を必要とする状態にある、在宅の20歳未満の方に支給されます(厚生労働省)。受け取るのは保護者ではなく、子ども本人です(特別児童扶養手当等の支給に関する法律第17条)。
障害児入所施設などに入所しているときや、障がいを支給事由とする給付で政令で定めるものを受けられるときは、支給されません(同条各号)。特別児童扶養手当とは要件も受け取る人も異なるため、両方の対象になるかは、それぞれ市区町村で確認します。
働いて収入が増えると、3つの手当はどう変わるか
3つの手当にはいずれも所得制限がありますが、収入が増えたときの変わり方は同じではありません。児童扶養手当は所得に応じて段階的に減り、特別児童扶養手当と障害児福祉手当は、所得制限にかかると支給されなくなります。判定に使われるのは前年の所得です。ここでは、子ども1人を扶養するひとり親の場合を例にご説明します。
児童扶養手当は、所得に応じて10円単位で段階的に減る
児童扶養手当には、全額を受け取る「全部支給」と、一部を受け取る「一部支給」があります。扶養親族等が16歳未満の子ども1人の場合、受給者本人の前年の所得が107万円未満なら全部支給、107万円以上246万円未満なら一部支給で、246万円以上になると支給されません(児童扶養手当法施行令第2条の4第1項・第2項)。前年の12月31日時点で子が16歳以上19歳未満の場合は、1人あたりの加算が38万円ではなく53万円になるため、限度額はそれぞれ122万円・261万円です。こども家庭庁は、収入ベースの目安として、子ども1人の場合の全部支給を190万円、一部支給を385万円としています。
一部支給の額は、所得が全部支給の限度額を上回った分に係数を掛けて計算され、10円単位で決まります(同条第3項)。令和8年度の係数(0.0264029)で計算すると、所得が限度額を10万円上回るごとに、本体の月額はおよそ2,640円ずつ減ります(2人目以降の加算は別の係数で計算)。一部支給の範囲では、所得が増えるにつれて、手当は少しずつ減っていきます。ただし、限度額の直前でも本体の月額は最低額の11,340円が残っていて、所得が一部支給の限度額(16歳未満の子ども1人の場合は246万円)に達すると、この額も支給されなくなります。
手当の判定に使う所得は、給与の額面や手取りの額とは異なります。働いて給与を受け取っている場合は、給与所得(給与収入から給与所得控除を差し引いた額)から、さらに10万円が差し引かれます(公的年金等に係る所得もある場合は、その合計額から。同法施行令第4条第1項)。そのうえで一律8万円が差し引かれ、障がいのある子について住民税の障害者控除を受けている場合は、1人につき27万円(特別障害者の場合は40万円)が差し引かれます(同条第1項・第2項)。一方、子の父または母から受け取った養育費は、その8割が所得に加えられます(同法第9条第2項、同法施行令第4条第1項ただし書)。働く時間を増やすときは、見込みの所得と手当の額を市区町村の窓口で確かめておくと安心です。
特別児童扶養手当・障害児福祉手当は、所得制限にかかると全額が支給されない
特別児童扶養手当の所得制限は、支給するかしないかを分ける基準です。受給者本人の前年の所得が限度額以上のときは、その年の8月から翌年の7月まで支給されません(特別児童扶養手当等の支給に関する法律第6条)。扶養親族等が1人の場合、限度額は所得で497万6千円、給与収入の目安で686万2千円です(厚生労働省。令和3年8月以降適用の額)。子が16歳以上19歳未満の場合は、1人あたりの加算が63万円になり、限度額は所得で522万6千円です(同法施行令第2条)。
障害児福祉手当は子ども本人が受け取る手当のため、親は「受給資格者の生計を維持する扶養義務者」として所得を判定されます(同法第21条)。扶養親族等が1人の場合、限度額は所得で653万6千円、給与収入の目安で858万6千円です。
つまり、収入が増えると先に児童扶養手当が減り、特別児童扶養手当と障害児福祉手当は、より高い所得まで支給の対象になります。
実家で暮らすときは、生計を同じくする家族の所得も判定される
実家で親と暮らす方もいます。前述の全国ひとり親世帯等調査では、親と同居する母子世帯は24.2%、父子世帯は34.3%でした。
実家で暮らす場合に確かめておきたいのが、扶養義務者の所得制限です。児童扶養手当は、受給者と生計を同じくする扶養義務者(民法第877条第1項に定める直系血族・兄弟姉妹。同居の親など)の前年の所得が限度額以上のときは、その年の11月から翌年の10月まで支給されません(児童扶養手当法第10条)。扶養義務者に扶養親族等がいない場合の限度額は所得で236万円で(同法施行令第2条の4第7項)、これ以上の場合は一部支給ではなく、手当の全部が支給されません。
特別児童扶養手当にも、生計を同じくする扶養義務者の所得制限があります(特別児童扶養手当等の支給に関する法律第7条)。児童扶養手当では、扶養義務者の所得により支給を受けないこととなる事由が生じたときは、14日以内に届け出ることとされています(児童扶養手当法施行規則第3条の2)。
手当のほかに、収入で変わるもの|住民税・サービスの利用者負担・社会保険
収入が変わると、手当以外の負担も変わることがあります。
- 住民税:ひとり親は、前年の合計所得金額が135万円以下であれば、個人住民税が課されません(地方税法第24条の5第1項第2号・第295条第1項第2号)。
- 障害児通所支援の利用者負担:放デイなどの負担上限月額は、生活保護世帯と市町村民税非課税世帯が0円、課税世帯のうち所得割28万円未満が4,600円、それ以外が37,200円です(こども家庭庁「利用者負担の仕組み」)。所得を判断する世帯は「保護者の属する住民基本台帳での世帯」のため、実家で親と同じ世帯の場合は、親の課税の状況も関わります。前述の調査では、「ひとり親と子のみの世帯」の33.5%が負担上限月額0円でした(回答者全体では7.7%、図表2-258)。
- 社会保険・扶養:勤務先の社会保険への加入や被扶養者の基準は、障がい児の親の在宅ワーク・パート|辞める前に確かめる4つのことで説明しています。
税や社会保険の個別の判断は、税理士や社会保険労務士などの専門家に確認することをおすすめします。
仕事と子のケアを両立するために使える制度|勤務先と預け先
働き続けるには、休むための制度や子を預ける先も欠かせません。勤務先の制度と預け先の両方に、ひとり親であることを踏まえた配慮が定められています。ここでは、ひとり親に関係する部分を中心にご説明します。
勤務先の制度|ひとり親家庭の親への「望ましい」配慮
厚生労働省の両立指針は、会社が行うことが「望ましい」配慮として、次の2つを挙げています(指針第二の五の三(三))。
イ 労働者の子に障害がある場合や当該子が医療的ケアを必要とする場合であって、当該労働者が希望するとき 短時間勤務の制度や子の看護等休暇等の利用が可能な期間を延長すること。
ロ 労働者がひとり親家庭の親である場合であって、当該労働者が希望するとき 子の看護等休暇等の付与日数に配慮すること。
障がいのある子を育てるひとり親は、イとロの両方に当てはまり得ます。ただし、これは「望ましい」とされた配慮で、会社の義務ではありません。希望を伝えたうえで、会社の判断や就業規則を確認します。
子の看護等休暇は小学校3年生修了までの子が対象で、子の病気やけがの世話、予防接種・健康診断、感染症による学級閉鎖等に伴う世話、入園(入学)式・卒園式への参加のために使えます(育児・介護休業法第16条の2)。この年齢を過ぎたあとも、子が常時介護を必要とする状態であれば、介護休暇・介護休業などの対象になり得ます。くわしくは障がい児の介護休暇・介護休業|親が使える6つの制度と条件でご説明しています。
保育所・放課後児童クラブのひとり親への「特別の配慮」と、放課後の預け先
母子及び父子並びに寡婦福祉法は、市町村が保育所などの利用の調整を行う場合や、放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ。以下、学童)などを行う場合に、母子家庭の福祉が増進されるよう「特別の配慮をしなければならない」と定めています(第28条第1項・第3項。父子家庭にも準用)。具体的な配慮の方法は、市町村によって異なります。
学童の対象は、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学生などです。実施要綱は、「保護者が労働等」には保護者の疾病や介護・看護、障害なども含まれるとしています。学童と放デイ、日中一時支援などの組み合わせ方は、障がい児の夏休みと仕事|放デイで埋まらない朝と夕方の預け先でご説明しています。
帰宅が遅くなる日の支え|ひとり親家庭等日常生活支援事業とトワイライトステイ
ひとり親家庭等日常生活支援事業は、家庭生活支援員が乳幼児の保育や児童の生活・食事の世話などを行う事業です。実施要綱は、残業や出張などで一時的に必要な場合を対象としています。乳幼児または小学生を養育するひとり親家庭で、就業上の理由により帰宅時間が遅くなる場合(所定内労働時間の就業を除く)の定期的な利用も対象です。
子育て短期支援事業のトワイライトステイは、保護者が仕事などで平日の夜間や休日に不在となる家庭の子を、施設などで預かる事業です。実施要綱は、ひとり親家庭などから申請があった場合に「優先的に取り扱うなど特別の配慮をすること」としています。どちらも、実施の有無や障がいのある子を受け入れられるかは、自治体や実施施設によって異なります。
収入を上げたいときに使える、ひとり親の就業支援
資格を取って収入を上げたい、働き方を変えたいときは、ひとり親家庭向けの就業支援があります。相談の窓口と、訓練中の生活を支える給付金があり、いずれも父子家庭も対象です。
相談の窓口|ひとり親家庭等就業・自立支援事業と母子・父子自立支援員
都道府県・市・福祉事務所設置町村は、「ひとり親家庭等就業・自立支援事業」として、就業相談から就業支援講習会の実施、就業情報の提供までを一貫して行っています(こども家庭庁。母子福祉団体などへの委託も可能)。窓口の名前は自治体によって異なり、こども家庭庁が「ひとり親家庭支援センター等」の一覧を公開しています。
また、都道府県知事や市長などが委嘱する母子・父子自立支援員は、ひとり親の相談に応じて自立に必要な情報提供や指導を行い、職業能力の向上や求職活動に関する支援も行います(母子及び父子並びに寡婦福祉法第8条)。
資格を取るための給付金|自立支援教育訓練給付金と高等職業訓練促進給付金
資格の取得を支える給付金として、次の2つがあります(こども家庭庁)。
- 自立支援教育訓練給付金:対象の教育訓練を受講・修了した場合に、経費の60%(上限は講座により最大20万円、または修学年数×40万円で最大160万円)が支給されます。専門実践教育訓練の講座を修了し、1年以内に資格を取得して就職などした場合は85%(上限は修業年数×60万円、最大240万円)です。雇用保険の教育訓練給付金を受けられる人は、その額との差額が支給されます。母子・父子自立支援プログラムの策定等を受けていることなどが対象者の要件で、受講前に都道府県などから講座の指定を受ける必要があります。
- 高等職業訓練促進給付金:看護師、准看護師、保育士、介護福祉士などの資格を目指して、養成機関で6か月以上修業する期間に、月額10万円(住民税課税世帯は70,500円)が支給されます。最後の1年間は4万円増額されます。児童扶養手当を受給しているか、同等の所得水準(子ども1人の場合、年間収入385万円未満)であることなどが要件です。所得水準を超えた場合も、1年に限り引き続き対象とされています。
受給中に子が20歳になった場合も同等の給付金を受けられる「高等職業訓練促進継続給付金」もあります。自立支援教育訓練給付金と高等職業訓練促進給付金は、制度を設けていない自治体に住んでいる場合は対象になりません。
ハローワークの窓口
ハローワークには、子育てと両立しやすい仕事探しを支援するマザーズハローワーク・マザーズコーナーや、職業訓練(ハロートレーニング)があります。内容は、障がい児の親の在宅ワーク・パート|辞める前に確かめる4つのことの「また働くときの公的な窓口」で説明しています。
働けない時期や、生活が苦しいときに確かめる制度
子の状態によっては、働く時間を減らしたり、一時的に仕事を離れたりすることもあります。そのときに確かめたい、児童扶養手当の一部支給停止の仕組みと、生活に困ったときの相談先をご説明します。
児童扶養手当の一部支給停止と、子の介護で働けないときの届出
児童扶養手当には、支給開始から5年、または支給要件に該当してから7年を経過すると、手当の一部(2分の1が上限)を支給しない仕組みがあります(同法第13条の3第1項)。認定の請求をした時点で3歳未満の子を監護していた場合は、その子が3歳になった月の翌月から5年で数えます。
ただし、就業している、求職活動をしている、受給者本人が一定の障がいの状態にある、病気やけがで就業が困難である、といった事由に当てはまる場合は、届出をすればこの仕組みは適用されません(同条第2項、同法施行令第8条)。その事由の一つとして、施行規則は次のように定めています(第24条の5第3項第2号)。
受給資格者が監護する児童又は受給資格者の親族が障害の状態にあること又は疾病、負傷若しくは要介護状態にあることその他これに類する事由により受給資格者がこれらの者の介護を行う必要があり就業することが困難であること。
この場合の届出には、医師の診断書など、子に介護が必要であることと、受給者が介護する必要があることを明らかにできる書類を添えます(同規則第3条の4第1項第3号ロ)。働いている方も、就業していることを事由として届出が必要です。引き続き適用を受けるには、毎年8月1日から31日までの間に届け出ます(同条第2項)。
生活保護では、手当などほかの制度を先に活用する
生活保護は、世帯の収入が厚生労働大臣の定める基準で計算した最低生活費に満たない場合に、その差額が保護費として支給される制度です。厚生労働省は「年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用してください」と案内しています。障害者加算など、世帯の状況に応じた加算もあります。相談・申請の窓口は、住んでいる地域の福祉事務所です。
生活困窮者自立支援制度の相談窓口
仕事や暮らしに困ったときは、生活困窮者自立支援制度の相談窓口も利用できます。都道府県や市などが行う事業で(生活困窮者自立支援法第5条)、支援員が相談者と一緒に支援プランを作成します(厚生労働省)。
相談できる窓口
ひとり親で障がいのある子を育てていると、困りごとによって相談先が分かれます。主な窓口を内容別にまとめます。名前は自治体によって異なるため、迷ったときは市区町村の窓口で、どこに相談すればよいかを確認します。
| 困りごと | 主な窓口 |
|---|---|
| 児童扶養手当・特別児童扶養手当・障害児福祉手当の申請、所得制限 | 住所地の市区町村の窓口 |
| ひとり親家庭の生活や仕事の相談 | 母子・父子自立支援員、ひとり親家庭支援センター等 |
| 放デイなど障害福祉サービスの組み合わせ | 障害児相談支援事業所の相談支援専門員 |
| 勤務先の両立支援制度、制度の利用を理由とする不利益な扱い | 勤務先の相談窓口、都道府県労働局雇用環境・均等部(室) |
| 仕事探し、職業訓練 | ハローワーク、マザーズハローワーク・マザーズコーナー |
| 生活費が足りない | 福祉事務所(生活保護)、生活困窮者自立支援制度の相談窓口 |
| 養育費の取決め、離婚の手続 | 法務省の情報、弁護士などの専門家 |
| 子が20歳以降の障害年金 | 社会保険労務士 |
相談支援専門員の役割は、相談支援事業所とは|3つの種類と利用の流れ・探し方で説明しています。
令和8年4月1日に施行された改正民法では、「法定養育費」の制度が設けられました(民法第766条の3)。養育費の取決めをせずに離婚した場合に、離婚の時から引き続き子の監護を主として行う親が、取決めをするまでの間など、子ども1人あたり月2万円をもう一方の親に請求できる制度です(令和7年法務省令第56号第2条)。政府広報オンラインは、この制度を「養育費の取決めをするまでの暫定的・補充的なもの」と説明しています。
令和8年3月31日以前に離婚した場合には、法定養育費の制度は適用されません(民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)附則第3条第2項)。その場合に養育費の支払いを求めるには、父母の協議や家庭裁判所の手続で、養育費の額を取り決める必要があります(政府広報オンライン)。個別の取決めや請求は、弁護士などの専門家にご確認ください。
よくある質問
障がいのある子を育てるシングルマザー・ひとり親の手当と仕事について、よくある疑問にお答えします。制度の詳しい条件は、それぞれの章もあわせてご覧ください。
Q1. 児童扶養手当と特別児童扶養手当は、両方受け取れますか?
特別児童扶養手当の認定を行う指定都市の一つである広島市は、「児童扶養手当との併給は可能です」と案内しています。法令上も、児童扶養手当法で支給が調整される「公的年金給付」(第3条第2項)に、特別児童扶養手当は含まれていません。ただし、それぞれの要件と所得制限に当てはまる必要があるため、両方を受け取れるとは限りません。障害児福祉手当は子ども本人の手当で、受け取る人が異なります。
Q2. 療育手帳がB(軽度)でも、特別児童扶養手当の対象になりますか?
特別児童扶養手当の1級・2級は、この手当の法令で定められた等級で、療育手帳や身体障害者手帳の区分・等級とは別のものです(特別児童扶養手当等の支給に関する法律第2条第5項、同法施行令別表第三)。対象になるかどうかは、この手当の基準にもとづく認定で決まります(同法第5条)。申請は住所地の市区町村の窓口で行います。
Q3. 働き始めた年に、すぐ手当が減りますか?
3つの手当の所得制限は、いずれも前年の所得で判定されます。児童扶養手当はその年の11月から翌年の10月まで、特別児童扶養手当と障害児福祉手当はその年の8月から翌年の7月までの支給に反映されます(児童扶養手当法第9条・第10条、特別児童扶養手当等の支給に関する法律第6条・第7条・第20条・第21条)。たとえば令和8年に収入が増えた場合、影響するのは令和9年8月分(特別児童扶養手当・障害児福祉手当)、令和9年11月分(児童扶養手当)からです。
Q4. 子どもが18歳・20歳になると、手当はどう変わりますか?
児童扶養手当は、原則として、子が18歳に達する日以後の最初の3月31日までが対象で、政令で定める程度の障がいの状態にある場合は20歳未満まで対象です。特別児童扶養手当と障害児福祉手当は、20歳未満が対象です。20歳以降は、本人が障害基礎年金や特別障害者手当の対象になる場合があります。障害年金については、社会保険労務士へのご相談をおすすめします。放デイの年齢など、18歳の壁と卒業後の日中活動については、18歳の壁とは|障がい児の卒業後の日中活動と親の働き方でご説明しています。
まとめ
障がいのある子を育てるシングルマザー・ひとり親の仕事は、勤務先の制度、預け先、手当と支援の3つを組み合わせて考えることになります。本記事の要点は、次のとおりです。
- 対象になり得る手当は児童扶養手当・特別児童扶養手当・障害児福祉手当の3つで、受け取る人と所得制限で判定される人が異なる
- 収入が増えると、児童扶養手当は段階的に減り、特別児童扶養手当と障害児福祉手当は所得制限にかかると支給されない。判定は前年の所得で行われ、限度額は子の年齢などによって変わる
- 実家で親と生計を同じくすると、児童扶養手当・特別児童扶養手当では親の所得も判定される
- 両立指針は、ひとり親家庭の親が希望するときに子の看護等休暇等の付与日数に配慮することを「望ましい」としている(義務ではない)
- 子の介護で就業が困難な場合は、児童扶養手当の一部支給停止の適用除外を届け出られる
制度や手当額は、改正・改定されることがあります。最新の情報は、こども家庭庁・厚生労働省のサイトや市区町村の窓口でご確認ください。障がいのある子を育てる親の仕事の全体像は、障がい児の親の仕事|3つの壁と仕事を続けるための制度でまとめています。
参考資料
- e-Gov法令検索「児童扶養手当法」「児童扶養手当法施行令」「児童扶養手当法施行規則」
- e-Gov法令検索「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」「特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令」
- e-Gov法令検索「母子及び父子並びに寡婦福祉法」「地方税法」「生活困窮者自立支援法」「民法」「育児・介護休業法」
- こども家庭庁「児童扶養手当について」「児童扶養手当制度の概要」(令和8年4月8日更新)、「『児童扶養手当』に関する大切なお知らせ」(令和6年7月31日掲載)
- 厚生労働省「特別児童扶養手当について」「障害児福祉手当について」
- 広島市「特別児童扶養手当」(2026年4月1日更新)
- 衆議院「障害児家庭における母子家庭の割合に関する質問主意書」「同答弁書」(内閣衆質二一七第一二七号、令和7年4月8日)
- 厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要」
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「放課後等デイサービス等における利用ニーズ及び支援提供の実態把握に関する調査研究【報告書】」(令和8年3月)
- 厚生労働省「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針」(平成21年厚生労働省告示第509号)。令和8年厚生労働省告示第53号による改正(令和8年10月1日適用)の対象は第二の十四で、本文で引用した第二の五の三は改正されていません
- こども家庭庁「利用者負担の仕組み」(障害児支援)
- こども家庭庁「ひとり親家庭等就業・自立支援事業について」「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業について」「高等職業訓練促進給付金のご案内」「ひとり親家庭等日常生活支援事業について」「子育て短期支援事業実施要綱」(令和8年4月8日)
- こども家庭庁「放課後児童健全育成事業実施要綱」
- 厚生労働省「生活保護制度」「生活困窮者自立支援制度」
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」
- e-Gov法令検索「民法第三百八条の二の規定による子の監護費用の先取特権に係る額の算定等に関する省令」(令和7年法務省令第56号)
- 政府広報オンライン「法定養育費 取決めがなくても請求できる暫定的な養育費」
※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。
よこぜき行政書士事務所

