はじめに

うつ病などの心の不調で休職すると、いつ、誰の判断で職場に戻れるのかが見えず、不安を感じることもあると思います。

休職から復職までの流れは厚生労働省の手引きに示されていますが、この手引きは主に会社(事業者)に向けた資料です。

本記事では、手引きが示す5つのステップを休職しているご本人の側から読み直し、段階ごとにすること・確かめることを、分かりやすくご説明したいと思います。

あわせて、復職の判断基準、試し出勤、元の職場に戻るのか、リワークを使う時期、復職後の相談先も取り上げます。

ご家族や、復職を支える人事担当者・管理職の方にも参考にしていただける内容です。

なお、いつ復職できるかといった医学的な判断や、給与・休職期間などの個別の労務の判断は扱いません。

休職から復職までの流れとは?国の手引きが示す5つのステップ

休職から復職までの流れは、厚生労働省の手引きが、休業の開始から復職後のフォローアップまで5つのステップで示しています。

主治医、会社、産業医など、段階ごとに判断する人が変わる点が、この流れの特徴です。

ここでは、5つのステップの全体像と、手引きを読むときに知っておきたい前提をご説明します。

5つのステップと、本人がすること・判断する人

手引きの5つのステップを、休職しているご本人の側から整理すると、次のようになります。

ステップ主な内容本人がすること・出すもの判断・決定する人
第1 病気休業開始及び休業中のケア診断書の提出、休業中の情報提供と連絡病気休業診断書を出す。休職のルールや収入の支えを確かめ、療養に専念する休業が必要かは主治医の診断書による。休職の扱いは勤務先の規則による
第2 主治医による職場復帰可能の判断復職の意思表示と、復職可能の判断が書かれた診断書の提出会社に復職の意思を伝え、主治医の診断書を出す主治医(日常生活での回復の程度による判断が多い)
第3 職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成情報の収集と評価、復職できるかの判断、プランの作成面談で意思や希望を伝える。主治医からの情報収集について同意を求められる産業医などの産業保健スタッフを中心に会社が判断(職場環境は上司の意見も考慮)
第4 最終的な職場復帰の決定状態の最終確認、意見書の作成、決定と通知決定と配慮の内容の通知を受け、主治医にも伝わるようにする事業者(会社)
第5 職場復帰後のフォローアップ再発の有無、勤務状況、プランの実施状況の確認と見直し面談で、通院の状況や体調、仕事の状況を伝える上司と産業保健スタッフが主治医と連携して見直す

表の「本人がすること・出すもの」は、手引きが会社に求めている内容を、本人の側から言い換えたものです。

実際の手順や書類は、勤務先が定める規則(職場復帰支援プログラム)によって異なります。

リワークの種類と、この流れの中での使われ方は、リワークとは?5つの種類と期間・費用・使うまでの流れでご説明しています。

手引きは会社向けの資料で、休職のルールは会社ごとに決まる

手引きの正式名称は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」で、厚生労働省と独立行政法人労働者健康安全機構がパンフレットとして公開しています。

平成16年10月に公表され、平成21年3月と平成24年7月に改訂されています(同手引き)。

手引きは、職場復帰支援のための事業場向けマニュアルとして活用されてきたもので、事業者は手引きを参考にしながら、職場ごとに職場復帰支援プログラムを作ることが必要だとしています(同手引き)。

一方、休職そのものの決まりは、会社の就業規則などで定められます。

厚生労働省のモデル就業規則は、休職の定義、休職期間の制限、復職などについて、労働基準法に定めはないと説明しています(厚生労働省「モデル就業規則」令和7年12月版 第9条の解説)。

そのため、休職できる期間、休職中の給与、復職の手続きは、勤務先の就業規則や人事担当者に確かめる必要があります。

手引きの流れが前提にしていること

手引きは、心の健康問題で休業したすべての労働者を対象にしています(同手引き)。

ただし、第3ステップ以降は、医学的に業務に復帰するのに問題がない程度に回復した方を対象としています(同手引き 1(4))。

ここでいう回復とは、軽減または配慮された一定のレベルの職務を遂行でき、かつ、想定される仕事をすることが治療上の支障にならないと医学的に判断される状態のことです(同手引き 1(4))。

また、治療によって比較的短期に寛解するものを想定して書かれており、それ以外の場合は異なる対応が必要になることもあるとしています(同手引き)。

第3ステップ以降をそのまま当てはめにくい場合は、主治医と連携したうえで、地域障害者職業センターなどの職業リハビリテーションの活用を検討することが考えられるとしています(同手引き 付記3)。

第1・第2ステップ:休業の始まりから「復職可能」の診断まで

第1ステップと第2ステップは、休業を始めてから、主治医が「職場に戻ることが可能」と判断するまでの段階です。

この間は療養が中心で、復職の時期は、主治医と会社の判断を経て決まっていきます。

ここでは、休業中に確かめておくこと、リワークを使う場合の位置づけ、主治医の判断の意味を順にご説明します。

第1ステップ:休業の始まりと、休業中に確かめておくこと

休業は、主治医が作成した診断書(病気休業診断書)を、本人が上司などに提出するところから始まります(同手引き)。

手引きは、この診断書に、必要な療養期間の見込みを書いてもらうことが望ましいとしています。

手引きは、休業中の本人に会社が情報を提供する項目として、次のものを挙げています(同手引き)。

  • 傷病手当金などの経済的な保障
  • 不安、悩みの相談先の紹介
  • 公的または民間の職場復帰支援サービス
  • 休業の最長(保障)期間など

ご本人の側では、次の点を勤務先に確かめておくと、療養中の見通しを立てやすくなります。

  • 休職できる期間と、期間が終わるときの扱い
  • 休職中の給与の扱いと、傷病手当金の申請の手順
  • 会社との連絡の窓口と、連絡の頻度・方法
  • 復職するときの手続き(診断書の提出先、面談の有無など)

休業中の本人と会社が実際に接触するときは、必要な連絡事項(個人情報の取得のために本人の了解をとる場合を含む)などを除き、主治医と連絡をとったうえで行うとされています(同手引き 3(1)ウ)。

接触のタイミングは、診断書や傷病手当金申請書の提出のタイミングに合わせると、本人の負担が軽くなることがあるともしています(同手引き 3(1)ウ)。

休業中にリワークを使う場合の位置づけ

リワークは、休職中の方の職場復帰を支援する取り組みの総称で、行う機関によって費用の出どころや利用を判断する人が異なります。

手引きも、公的なサービスの例として、地域障害者職業センターのリワーク支援を挙げています(同手引き 6(7))。

あわせて、民間の医療機関やいわゆるEAP(従業員支援プログラム)などが、有料で復職支援プログラム、リワークプログラム、デイケアなどの名称で復職を支援する場合があり、提供するサービスの内容や目標は多様であるとしています(同手引き 6(7))。

当サイトでは、リワークを次の5つに分けてご説明しています。

障害者職業総合センターの上場企業調査(2019年)では、リワークやEAPなど社外の支援(事業場外資源)を利用した企業のうち150社に、利用した社員が最も多かった支援をいつ使ったかを尋ねています(調査研究報告書No.156「職場復帰支援の実態等に関する調査研究」 図表3-1-52。複数回答)。

多かったのは、「社員が希望したとき(または上司や産業医が勧めた時)」64.7%と、「主治医から復職準備の許可が出た後」48.0%でした。

どの機関のリワークを、いつから使うかは、病状を踏まえて主治医と相談し、勤務先とも話し合いながら決めることになります。

精神科のリワークに半年間通った方の体験は、福祉の仕事をしていても、自分の不調は見えなかったで紹介しています。

第2ステップ:主治医の「復職可能」の判断と診断書

復職したい気持ちを会社に伝えると、会社は、主治医による職場復帰可能の判断が書かれた診断書(復職診断書)の提出を求めることになります(同手引き)。

手引きは、この診断書に、就業上の配慮についての主治医の具体的な意見を含めてもらうことが望ましいとしています。

注意したいのは、主治医の「復職可能」という判断の意味です。

手引きは、主治医の診断は日常生活での病状の回復の程度によって判断していることが多く、職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らないとしています(同手引き)。

そのため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容などについて、産業医などが精査したうえで、採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要とされています(同手引き)。

手引きは、職場で必要な業務遂行能力などを、会社があらかじめ主治医に伝えておくことが望ましいとしています。

ご本人も、どのような仕事に戻るのかを主治医に伝えておくと、復職の時期について相談しやすくなります。

厚生労働省の「こころの耳」は、働く方に向けて、「もう働ける」と感じても主治医の意見に耳を傾け、普段の様子を見ている家族の意見も参考にするよう呼びかけています(厚生労働省「こころの耳」職場復帰のガイダンス(働く方へ))。

第3ステップ:復職できるかの判断基準と職場復帰支援プラン

第3ステップは、会社が情報を集めて復職できるかを判断し、復職の段取りを決める段階です。

手引きは、この段階を職場復帰支援の手続きの中心と位置づけ、本人・上司・産業保健スタッフが十分に話し合いながら進めるとしています(同手引き)。

ここでは、会社が集める情報、判断基準の例、職場復帰支援プランの中身を順にご説明します。

会社が集める情報と、本人の同意

手引きは、復職できるかを判断するために、会社が次のような情報を集めて評価するとしています(同手引き)。

  • 本人の復職の意思と就業意欲
  • 主治医からの情報や意見(本人の同意を得たうえで、産業医などが集める)
  • 治療の状況と業務遂行能力(睡眠と目覚めのリズム、昼間の眠気、注意力・集中力、安全に通勤できるかなど)
  • 今後の働き方についての本人の考え(希望する復帰先、希望する配慮の内容や期間など)
  • 可能であれば、家族からの情報
  • 職場の環境(業務との適合性、職場の支援の準備状況など)

リワークなど社外の復職支援サービスを使っている場合は、その状況も有効な情報になるとされています(同手引き)。

主治医や家族から健康情報などを集めるときは、あらかじめ利用目的と必要性を明らかにして本人の承諾を得るとともに、これらの情報は本人から提出を受けることが望ましいとされています(同手引き 5(1))。

健康情報などを第三者に提供する場合も原則として本人の同意が必要で、これらの同意は、包括的・黙示ではなく、個別に明示で得ることが望ましいとされています(同手引き 5(1))。

面談では、希望する復帰先や配慮を、ご自身の言葉で伝えておくことが大切です。

手引きの判断基準の例と、企業の復職条件の実際

手引きは、定型的な判断基準を示すことは困難で、一人ひとりの状況に応じて総合的に判断するとしています(同手引き 6(2))。

そのうえで、判断基準の例として、次のようなものを挙げています。

  • 職場復帰に対して十分な意欲を示している
  • 通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる
  • 会社が設定している勤務日に、勤務時間の就労が継続して可能である
  • 業務に必要な作業(読書、コンピュータ作業、軽度の運動など)をこなすことができる
  • 作業などによる疲労が翌日までに十分回復している
  • 適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間の眠気がない
  • 業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している

あわせて手引きは、復職するときの業務遂行能力が病前のレベルまで完全には戻っていないことも考慮し、職場の受け入れの制度や体制と組み合わせて判断するとしています。

試し出勤制度などや、社外の復職支援サービスが使える場合は、それらを利用することで、より実際的な判断ができることが多いとされています(同手引き 6(2))。

また手引きは、病気を理由に休職した労働者の復職の可否についてはさまざまな判例が出ているとして、会社に対し、トラブルを防ぐためにも法律の専門家などと相談し、適切に対応することを求めています(同手引き 6(2))。

企業の実際の条件については、障害者職業総合センターが2019年に国内の上場企業を対象に行った、メンタルヘルス不調による休職についての調査があります(有効回答465社)。

この調査でいう休職制度等は、年次有給休暇以外で、メンタルヘルス不調を伴う私傷病の社員に適用し得る、連続して1か月以上の休暇・休職・休業・欠勤等の規定や慣行のことです(障害者職業総合センター「うつ病等の休職者に対する復職条件、企業の措置、復職率」)。

休職制度等がある457社のうち、過去3年間に連続1か月以上の療養を必要とする社員が「いなかった」と答えた58社を除く399社の97.2%が、「復職判断には条件がある」と答えています(調査研究報告書No.156)。

条件は、復職の意思、生活リズム、意欲・思考の回復、試し出勤、試し勤務、医師の判断、その他(職場の受入体制など)の7種類に分けられ、多くの企業が2種類以上を挙げていました(同報告書)。

報告書は、これらの条件は企業が組織として最終的な判断を下す際の前提となる必要条件であり、必ずしも十分条件ではないとしています(同報告書)。

「復職の条件が厳しい」と感じるときは、勤務先の就業規則や復職の規程に書かれた条件を、人事担当者に確かめるとよいでしょう。

職場復帰支援プランに書かれること

復職できると判断されると、会社は一人ひとりの職場復帰支援プランを作ります(同手引き)。

手引きは、プランで検討する内容として、次のものを挙げています。

  • 職場復帰日(本人の状態と職場の受け入れ準備の両方から判断する)
  • 上司による就業上の配慮(業務でのサポートの内容や方法、業務の内容や量の変更、残業・交替勤務・深夜業務などの制限または禁止、就業時間の短縮、診療のための外出の許可など治療上必要な配慮)
  • 人事上の対応(配置転換や異動の必要性、勤務制度の変更など)
  • 産業医などの医学的な意見
  • フォローアップの方法と、配慮を見直す時期
  • その他(本人が自ら責任を持って行うこと、試し出勤制度の利用、社外の復職支援サービスの利用の検討)

プランには、元の働き方に戻すまでの段階と、各段階で求められる水準(定時勤務、職場内での意思疎通、顧客との折衝など)も書くこととされています。

手引きは、本人の希望だけでプランを決めることが、円滑な復職につながるとは限らないともしています(同手引き)。

希望は面談で伝えたうえで、主治医や産業医の意見を踏まえて決まっていくものと考えておくとよいでしょう。

試し出勤と復職後の働き方:元の職場に戻る?

職場復帰支援プランを作る段階では、試し出勤制度を使うかどうかや、復職後にどの職場でどう働くかも検討されます。

手引きには、試し出勤などの3つの形と、「まずは元の職場への復帰」という原則が示されています。

ここでは、この2つと、復職直後の配慮の例をご説明します。

試し出勤制度等の3つの形

手引きは、正式な復職の決定の前に、社内制度として設けられている「試し出勤制度等」の例として、次の3つを挙げています(同手引き 6(3))。

形内容
模擬出勤勤務時間と同じ時間帯に、デイケアなどで模擬的な軽作業やグループミーティングを行ったり、図書館などで過ごしたりする
通勤訓練自宅から職場の近くまでふだんの通勤経路で移動し、そのまま、または職場の近くで一定時間過ごしてから帰宅する
試し出勤復職の判断などを目的に、本来の職場などに、試験的に一定期間続けて出勤する

こうした制度があると、より早い段階で復職を試みることができ、本人が職場の状況を確かめながら準備できるとされています。

一方で手引きは、制度を使うにあたって、産業医なども含めて必要性を検討し、主治医から療養の支障にならないとの判断を受けることが必要だとしています(同手引き)。

試し出勤は、判断などの目的に必要な範囲に限り、いたずらに長期にわたることは避けるべきだとされています。

試し出勤中の処遇やけがをしたときの対応などは、労使であらかじめ十分に検討し、一定のルールを定めておく必要があるとされています(同手引き 6(3))。

あわせて手引きは、会社が作業について指示を与えたり、作業の内容が業務に当たったりする場合などには、労働基準法などが適用される場合があるとしています(同手引き 6(3))。

けがをした場合は労災保険の給付が支給される場合があることや、賃金などについて合理的な処遇を行うべきことにも、留意が必要だとしています。

制度があるかどうか、試し出勤中の扱いがどうなっているかは、勤務先の規程と人事担当者に確かめてください。

原則は「まずは元の職場への復帰」

休職前の職場に戻るのかどうかは、気になる点の一つだと思います。

手引きは、元の職場(休職が始まったときの職場)へ戻す「まずは元の職場への復帰」を原則としています(同手引き 6(4)ア)。

新しい環境に慣れるには時間と心理的な負担がかかり、その負担が再燃・再発につながる可能性が指摘されているためです(同手引き)。

ただし、異動などをきっかけに不調になった場合は、以前の職場に戻すことや、ほかの職場への異動を考えたほうがよい場合があるとしています。

このほか、次のような場合も、本人・職場・主治医などから十分に情報を集め、配置転換や異動の必要性を総合的に判断するとされています(同手引き 6(4)ア)。

  • 職場の要因と本人の要因が合っていない可能性がある場合
  • 運転や高所作業など、一定の危険がある業務に就く場合
  • 元の職場の環境や同僚が大きく変わっている場合

厚生労働省のモデル就業規則の規程例も、休職事由がなくなったときは原則として元の職務に復帰させ、困難または不適当な場合はほかの職務に就かせることがある、としています(モデル就業規則 第9条第2項)。

復職直後の就業上の配慮の例

手引きは、数か月休業していた方に、いきなり発病前と同じ質と量の仕事を期待することには無理があるとし、復職後の負担を軽くして段階的に元へ戻す配慮が重要だとしています(同手引き 6(4)イ)。

配慮の例には、短時間勤務、軽作業や定型業務への従事、残業・深夜業務の禁止、出張の制限、交替勤務の制限、危険作業・運転業務・高所作業・窓口業務・苦情処理業務などの制限、フレックスタイム制度の制限または適用、転勤についての配慮があります。

短時間勤務にする場合は、生活リズムの観点から、始業時間を遅らせるより終業時間を早めるほうが望ましいとされています。

一方で手引きは、同僚に比べて過度に業務を軽くされることが、かえってストレスを高めることもあるため、業務の負荷の調整が必要だとしています(同手引き 6(4)イ)。

ケースによっては、復職の当初からフレックスタイム制度などの特段の措置をとらず、本来の勤務時間で働くほうがよい結果になることもあるとしています(同手引き 6(4)イ)。

どの配慮をどの順序で適用するかは、主治医に相談するなどして、慎重に検討することが望ましいとされています。

上場企業の調査では、休職制度等がある457社に、復職時や復職後に行った措置を尋ねています(調査研究報告書No.156。複数回答)。

多かったのは、「残業や休日勤務の制限または禁止」67.6%、「就業時間の短縮」61.9%、「定期的な面談」60.2%でした。

第4・第5ステップ:復職の最終決定と復職後のフォローアップ

第4ステップで会社が復職を最終的に決め、第5ステップでは、復職した後の状況を確かめながら支援が続きます。

手引きは、復職した後のフォローアップまでを、職場復帰支援の一連の流れとして示しています。

ここでは、最終決定の仕組み、フォローアップの中身、困ったときの相談先をご説明します。

第4ステップ:復職を最終的に決めるのは会社

復職は、主治医の診断書が出たことや、本人の希望だけで決まるものではありません。

手引きは、第3ステップの判断とプランの作成を経て、事業者が最終的な職場復帰の決定を行うとしています(同手引き)。

決定の前には本人の状態を最終確認し、産業医などが就業上の配慮をまとめた「職場復帰に関する意見書」を作ります。

会社は決定を本人に通知し、就業上の配慮の内容もあわせて通知することとされています。

手引きは、この決定は本人にとって極めて重要で、私法(契約法)上の制約も受けるため、社内の手続きに従って適正に行われるべきだとしています。

会社の対応や配慮の内容は、本人を通じて主治医に的確に伝わるようにすることが重要とされています。

復職をめぐって勤務先と意見が分かれ、個別の判断が必要になった場合は、弁護士や、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどに相談する方法があります(厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」)。

第5ステップ:復職後のフォローアップ

復職した後は、上司による観察と支援に加え、産業医などの産業保健スタッフによるフォローアップが行われます(同手引き)。

確認する内容には、病気の再燃・再発や新しい問題の有無、勤務状況と業務遂行能力、プランの実施状況、治療の状況、プランの評価と見直し、職場環境の改善、上司や同僚への配慮が挙げられています。

手引きは、フォローアップの期間の目安を定め、その期間内に通常のペースに戻す目標を立てること、期間は主治医と連携して柔軟に定めることが望ましいとしています。

通院の状況や今後の見通しは、主治医の意見を本人から聞く形で確かめるとされているため、面談では体調や仕事の状況を率直に伝えることが大切です。

復職後に困ったときの相談先

社内では、上司、人事担当者、産業医などの産業保健スタッフが相談先になります。

社外の公的な支援として、手引きは、地域障害者職業センターのリワーク支援を終えた後のフォローアップや、ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援を挙げています(同手引き 6(7))。

障がいのある方の就業と生活の相談には、障害者就業・生活支援センターもあります。

利用の対象や方法はセンターごとに確かめる必要があります。

休職中に障害福祉サービスによる復職支援を使った方については、国の資料のイメージ図に、復職後の流れが示されています(厚生労働省「一般就労中の就労系障害福祉サービスの一時的な利用(復職支援)について」社会保障審議会障害者部会 第159回 資料3)。

復職した日から6か月間は利用していた事業所が定着支援を行い、その後は就労定着支援につなぐ流れです。

厚生労働省の「こころの耳」には、電話・SNS・メールの相談窓口もあります。

休職から復職についてよくある質問

休職から復職について、検索されることの多い質問にお答えします。

期間や確率、リワークが必要か、休職中のお金、公務員の場合、福祉サービスが使えるかを取り上げます。

いずれも、本記事でご説明した手引きと調査の内容をもとにしています。

Q1. 休職から復職までの期間はどのくらいですか?

休職から復職までの期間は、一律に決まっているものではありません。

手引きは、休業開始時の診断書に療養期間の見込みを書いてもらうことが望ましいとしていますが、実際にいつ復職できるかは、主治医と会社の判断を経て決まります。

休職できる期間の上限は、勤務先の就業規則などで決まります。

リワークを使う場合の期間は、リワークの種類ごとに異なります。

区分ごとの期間の目安は、リワークとは?5つの種類と期間・費用・使うまでの流れでご説明しています。

Q2. 休職から復職できる確率はどのくらいですか?

参考になるのは、企業ごとに休職者の復職の状況を尋ねた調査です。

障害者職業総合センターの上場企業調査(2019年)は、メンタルヘルス不調で休職した社員について、過去3年間の休職者等のうち復職できた方の割合を尋ねています(調査研究報告書No.156 図表3-1-27)。

設問では、復職後すぐの退職は復職に含めないこととされています(障害者職業総合センター「うつ病等の休職者に対する復職条件、企業の措置、復職率」)。

回答した399社のうち、「全員復職できた」は11.3%、「ほとんど全員(9割程度以上)」は22.6%、「7〜8割程度」は24.1%、「4〜6割程度」は20.1%でした。

一方、「全員復職しなかった」と答えた企業も6.5%ありました。

この数字は上場企業の回答を企業ごとに集計したもので、一人ひとりの復職の見込みを示すものではありません。

Q3. リワークを受けずに復職できますか?

手引きでは、社外の復職支援サービスの利用は、職場復帰支援プランを作るときに「検討」する項目の一つとされています(同手引き)。

リワークの利用を復職の条件にしているかどうかは、勤務先の制度によって異なります。

勤務先の就業規則や復職の規程を、人事担当者や産業医に確かめてください。

リワークが必須かどうかや、会社から勧められたときに確かめたいことは、リワークは意味ない?しんどい時に確かめる5つのことと相談先でもご説明しています。

Q4. 休職中の給料や傷病手当金はどうなりますか?

休職中に給与が支払われるかどうかは、勤務先の就業規則などによって異なります。

給与が支払われない間の支えとして健康保険の傷病手当金がありますが、受けられるかどうかは、加入している健康保険の保険者が判断します。

本記事では、個別の受給の可否は扱いません。

確かめる先は、勤務先の人事担当者と、加入している健康保険の保険者(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合など)です。

リワーク中の給料と傷病手当金の仕組みは、リワークの費用はいくら?5種類の自己負担と傷病手当金でご説明しています。

Q5. 公務員も同じ流れですか?

国家公務員については、人事院が、心の健康の問題による長期病休者の職場復帰のための職員向け手引きと担当者向けマニュアルを作成しています(人事院「心の健康の問題による長期病休者の職場復帰のための職員向け手引き・担当者向けマニュアルを作成しました」令和7年5月23日)。

地方公務員の場合は、所属する自治体などの制度によります。

なお、地域障害者職業センターのリワーク支援は、雇用保険適用事業所である民間企業・団体とその休職者を対象とし、国や地方公共団体などとその職員は対象外としています(JEED 東京障害者職業センター「リワーク支援(メンタルヘルス不調により休職している方の職場復帰)」)。

所属先の人事担当部署で、職員向けの復職の制度を確かめておくとよいでしょう。

Q6. 休職中に就労移行支援などの福祉サービスは使えますか?

就労移行支援などの障害福祉サービスは、企業などに雇用されている障がいのある方が休職している場合に、復職のために一時的に使えることがあります。

ただし、国の通知が示す3つの条件を満たし、市区町村が支給決定した場合に限られます(厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」)。

条件の一つは、勤務先や地域の就労支援機関、医療機関による復職支援が見込めない、または困難であることです。

3つの条件、必要な書類、利用できる期間は、休職中に就労移行支援は使える?3つの条件・書類と期間を解説でご説明しています。

まとめ

休職から復職までの流れは、国の手引きが5つのステップで示しています。

本記事の要点は次のとおりです。

  • 第1ステップでは、休職できる期間、給与と傷病手当金、連絡の窓口を勤務先に確かめておく
  • 主治医の「復職可能」は、職場で求められる業務遂行能力まで回復したとの判断とは限らない
  • 第3ステップで会社が情報を集めて判断し、職場復帰支援プランを作る。判断基準は一律ではなく、条件は勤務先ごとに異なる
  • 試し出勤制度があるかは勤務先による。復職後の職場は「まずは元の職場への復帰」が原則だが、異動がきっかけの不調などでは別の判断もある
  • 復職を最終的に決めるのは会社で、復職した後もフォローアップが続く

リワークをいつ使うか、いつ復職するかは、主治医や勤務先と話し合いながら決めることになります。

本記事の内容は、令和8年11月8日時点で確認した国の資料に基づいています。

参考資料

※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。

よこぜき行政書士事務所