「最近、利用者を集めるのが難しくなってきた」と感じる就労継続支援B型(以下、B型)事業所の経営者の方は少なくないと思います。事業所数の増加に加え、令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定、令和7年10月の就労選択支援の施行、令和8年度の臨時応急的な報酬見直しなど、B型を取り巻く環境はここ数年で大きく変化しました。
B型事業所の利用者の集め方とは、地域の関係機関・利用者・ご家族から「選ばれる事業所」になるための、内部基盤の整備と継続的な情報発信の組み合わせを指します。
本記事では、直近の最新環境を踏まえ、B型事業所の利用者の集め方について、行政書士の視点でわかりやすくご説明したいと思います。事業所の経営者・管理者の方を主な読者として想定し、即効性のある施策と中長期で取り組むべき施策を整理してお伝えします。
目次
就労継続支援B型事業所をめぐる現状の変化
B型事業所の利用者を集める方法を考える前に、まずは事業所をめぐる経営環境の変化を整理しておきましょう。事業所数の急増、そして令和6年度・令和7年10月・令和8年度と続いた制度変化が、利用者獲得の難易度に直接影響しています。
事業所数の急増と利用者獲得競争の激化
B型事業所の数は、ここ約10年で大きく増えています。
厚生労働省「就労継続支援B型に係る報酬・基準について(令和5年11月)」によると、B型事業所数は平成27年(2015年)の9,698ヶ所から、令和4年(2022年)の15,748ヶ所まで増加しています。約7年で1.6倍という増加ペースです。
直近の状況も増加傾向にあります。厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」では、工賃実績を報告したB型事業所数は18,245事業所に達しています。また、定義は異なりますが、国保連データの一月平均事業所数では令和6年度のB型事業所数は18,109か所となっており、いずれの統計も増加傾向を示しています。
事業所の選択肢が増えたことは利用者にとって望ましい変化ですが、運営側から見れば、待っていても利用者が集まる時代は終わったと言えます。自事業所の存在と魅力を、利用者・ご家族・関係機関に能動的に伝えていく姿勢が、これまで以上に重要になっています。
事業所数増加と工賃水準の動向については、就労継続支援B型事業所の現状と課題で詳しく解説しています。
直近3年の制度変化による集客環境の変化
事業所数の増加に加え、ここ3年でB型を取り巻く制度に3つの大きな変化がありました。
1つ目は、令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定です。 就労継続支援A型では生産活動の収益性がより重視される方向で報酬体系が見直されました。共同通信の全国自治体調査(令和6年8月公表)によれば、令和6年3〜7月で全国329事業所が閉鎖し、約5,000人が解雇・退職に至ったと報告されています。閉鎖した329事業所のうち4割強はB型事業所に移行しており、A型からB型へ利用者が移ってくる動きも生じています。B型側にとっては受け入れ機会が増えている状況とも言えます。
2つ目は、令和7年10月1日に施行された就労選択支援です。 B型を新規利用する方は、原則として事前に就労選択支援を経てアセスメントを受ける仕組みになりました(50歳以上、障害基礎年金1級受給者などの例外あり)。利用者の入り口が変わったことで、就労選択支援事業所との関係構築が、B型の新規利用者獲得にとって新たな重要ルートとなっています。
就労選択支援の仕組みや対象者については、就労選択支援とはで詳しくご説明しています。
3つ目は、令和8年度に実施された臨時応急的な報酬見直しです。 令和8年2月の障害福祉サービス等報酬改定検討チームで具体案が示され、4月以降施行されました。B型に関する主な見直し内容は以下のとおりです。
- 平均工賃月額の区分(一)〜(六)の下限が3,000円引き上げられました(令和6年度の計算方式変更でB型の費用が想定以上に増加したことへの対応)
- 令和8年6月以降に新規指定を受けるB型事業所については、基本報酬が1000分の984(▲1.6%)に引き下げられました(既存事業所は従来通り)
- 引き上げで報酬単価が減少する事業所に対しては、新たな区分(A)〜(F)を設けて減少幅を緩和する措置がとられています
新規開設を検討している事業者にとっては、初期の経営計画に直接影響する見直しです。集客戦略を立てる前に、自事業所が新規指定か既存指定かによって基本報酬の前提が変わることを必ず確認しておきます。詳細は厚生労働省・こども家庭庁「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定」関連資料でご確認ください。
B型事業所に利用者が集まらない6つの原因
利用者を集めるための施策を打つ前に、まずは「なぜ集まらないのか」という原因を構造的に整理することが重要です。原因を曖昧にしたまま施策だけ実行しても、効果は限定的です。ここでは、B型事業所に利用者が集まらない代表的な6つの原因を整理します。
原因①:事業所の存在が知られていない
新規開設の事業所はもちろん、運営数年の事業所でも、地域の関係機関や利用希望者に存在を認知されていないケースが少なくありません。情報発信が不足していると、選ばれる土俵にすら立てません。
原因②:自事業所の強み・特徴が言語化できていない
「他の事業所と何が違うのか」を運営者自身が言語化できていないと、見学者にも紹介機関にも伝わりません。差別化要素が不明瞭なままでは、競合との比較で選ばれません。
原因③:利用者・ご家族の不安を取り除く情報が不足
作業内容、工賃、送迎、初日の流れなど、利用者・ご家族が知りたい情報が事業所側から十分に提供されていないと、安心して選ぶことができません。
原因④:相談支援専門員・関係機関との関係が希薄
B型の新規利用者は、相談支援専門員・特別支援学校・医療機関などからの紹介によって決まることが多いのが実態です。これらの関係機関とのつながりが薄ければ、紹介の選択肢に入りません。
原因⑤:利用者本人の本音に応えられていない
人間関係への不安、作業内容の合う合わない、職員の対応など、利用者本人の本音に応える運営ができていなければ、見学・体験で離脱されたり、利用開始後に通所が続かなかったりします。
原因⑥:適正な工賃水準・支援の質が確保できていない
工賃の水準や支援の質に課題があると、口コミや紹介機関の評価を通じて利用者は集まりにくくなります。短期的な集客より、まず内部体制を整える視点も欠かせません。
利用者本人の悩みについては就労継続支援B型の利用者の悩みで、通所が続かない背景については「B型事業所に行きたくない」と思うときに考えたいことで詳しくご説明しています。
利用者を集める前に整える4つの基盤
具体的な集客施策を打つ前に、事業所内部で整えておくべき基盤があります。基盤が整っていない状態でいくら情報発信をしても、見学・体験の段階で離脱されるか、利用開始後にミスマッチが顕在化します。ここでは、施策の前提となる4つの準備を整理します。
自事業所の強みと差別化ポイントを言語化する
まず取り組みたいのが、自事業所の強みを文章として言語化することです。
「丁寧な支援」「アットホームな雰囲気」といった抽象的な言葉では、他の事業所と差別化できません。具体的な作業内容(例:カフェ運営、農作業、軽作業、PC作業、製造)、職員体制、平均工賃、就労実績、地域とのつながりなど、数字や事実に基づいて強みを整理します。
例えば、内装やインテリアで就労意欲を高める工夫をしているおしゃれなB型事業所の事例や、音楽活動を取り入れたB型事業所の事例のように、具体的な特色がある事業所は、利用者・ご家族にとって選ぶ理由が明確になります。
利用者・ご家族が知りたい情報を一通り整理する
利用希望者とご家族が知りたい情報は、ある程度パターン化されています。
具体的には、サービス内容と作業の流れ、平均工賃、利用料金、送迎の有無と範囲、開所時間、休日、職員の人数と専門性、就労実績などです。これらをパンフレット・ホームページ・SNSのいずれでも答えられるように整理しておきます。
利用者の不安要素に応える情報を準備する
利用希望者の多くは、「人間関係がうまくいくか」「作業についていけるか」「初日に何をするのか」といった不安を抱えています。これらに先回りして答える情報を、見学会の説明資料や個別相談の準備として揃えておきましょう。
関係機関に渡せる事業所紹介資料を整える
相談支援専門員や特別支援学校に訪問する際、口頭の説明だけでは伝わりません。事業所の概要、強み、受け入れ可能な障がい特性、空き状況などをA4・1〜2枚程度にまとめた紹介資料を用意します。写真や図を活用し、視覚的に分かりやすく伝える工夫もポイントです。
利用者を集めるためのオフライン施策4選
基盤が整ったら、いよいよ具体的な集客施策に入ります。B型事業所の利用者は、依然としてオフライン経路で決まることが多いため、ここでの4施策が中核となります。地域の関係者と顔の見える関係を築くことが、安定した利用者獲得につながります。
見学会・体験利用の開催
見学会と体験利用は、利用希望者に事業所を直接知ってもらう最も効果的な機会です。
定期的な見学会の開催に加え、随時受け入れの体制を整えておくと、利用希望者の都合に合わせやすくなります。当日は、施設の案内、作業内容の説明、職員・利用者との交流時間を組み合わせ、見学後には必ず個別相談の時間を設けて、不安や疑問に丁寧に応える流れを作ります。
体験利用は、1〜数日程度の作業体験を通じて、利用者本人が「ここで続けられそうか」を確かめる機会となります。本人にとっても事業所側にとっても、ミスマッチを防ぐ重要なステップです。
相談支援専門員・相談支援事業所への訪問営業
B型の新規利用者の多くは、相談支援専門員からの紹介を経て決まります。相談支援専門員に自事業所を知ってもらうことは、利用者集めの中核施策と言えます。
訪問にあたっては、事前のアポイント取得が基本です。相談支援事業所では月初に給付管理業務が集中するため、1日から10日頃の訪問は避けるのが基本です。事業所により業務サイクルは異なりますが、午前10時前後、午後3時以降が比較的訪問しやすい時間帯と言われています。
紹介資料を持参し、自事業所の強み、受け入れ可能な障がい特性、空き状況などを簡潔に伝えます。一度の訪問で終わらせず、空き状況の更新や行事の案内など、継続的にコミュニケーションを取ることで関係性が深まります。
相談支援専門員にも得意領域があります。就労系サービスへの紹介を多く扱う事業所を優先的に訪問するのが効率的です。
相談支援専門員の業務実態や課題感については相談支援専門員が抱える理想と現実を、相談支援事業所の役割や種類については関連記事をご参照ください。
特別支援学校・医療機関との関係構築
特別支援学校(高等部)の卒業生の進路として、社会福祉施設等の入所・通所は一定の割合を占めています(出典:文部科学省「学校基本調査」)。ただし、学校基本調査の進路区分は児童福祉施設・障害者支援施設・医療機関などの合計として集計されており、就労継続支援B型に分解した割合までは学校基本調査だけでは確認できません。地域別のより詳細な動向は、自治体の進路状況調査や厚生労働省資料を併せてご参照ください。
職場実習が行われる春・秋の時期だけでなく、日頃から学校との関係を築いておくことが大切です。進路相談会への参加、職場実習の受け入れ、学校訪問による情報交換などを継続的に行います。
また、精神科クリニックや病院のソーシャルワーカーは、退院後・通院中の患者さんに就労支援先を紹介することがあります。地域の医療機関にも紹介資料を届け、関係性を作っておきます。
自治体・地域の福祉関係機関との連携
市区町村の障がい福祉担当課、基幹相談支援センター、障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)など、地域の福祉関係機関にも情報を届けます。
これらの機関は、利用者からの相談を直接受ける窓口でもあるため、事業所の最新情報や空き状況を定期的に共有しておくことで、紹介の機会が生まれます。
利用者を集めるためのオンライン施策3選
オフライン施策が中核ではあるものの、利用希望者やそのご家族の多くは、最初に事業所をインターネットで調べます。オンライン上で適切な情報が見つかるかどうかが、見学申し込みにつながるかの分かれ目です。ここでは、優先順位の高い3つの施策をご紹介します。
ホームページの整備(地域名+B型のSEO)
ホームページは、事業所の信頼性を示す基盤です。事業所名、所在地、連絡先、サービス内容、職員紹介、活動の様子の写真、利用までの流れなど、基本情報を網羅的に掲載します。
検索対策(SEO)としては、「地域名+就労継続支援B型」「地域名+B型事業所」などのキーワードで上位表示を目指すことが現実的です。地域名を含む見出し・本文を意識的に配置し、地域に密着した活動の様子を継続的に発信していきます。
更新が止まったホームページは、かえって信頼性を下げます。利用者の活動の様子、行事報告、職員からのメッセージなど、月1回程度は更新できる体制を整えます。
Googleビジネスプロフィールの活用(MEO対策)
Googleビジネスプロフィールの登録は、無料で取り組める施策の中で最も費用対効果が高いものの1つです。
事業所名、所在地、営業時間、写真、サービス内容を正確に登録することで、Googleマップ検索や「近くのB型事業所」といった検索に表示されやすくなります。利用希望者が地域の事業所を探す際の入り口となるため、必ず登録・最適化を行いましょう。
口コミ機能については、自然に集まる範囲で対応する姿勢が安全です。報酬や物品で口コミを依頼する行為は、Googleの規約違反となるだけでなく、後述する誇大広告とも関係するため避けます。
SNSでの情報発信
SNSは、事業所の雰囲気や日々の活動を伝えるのに適したツールです。Instagramは写真中心で活動の様子を伝えるのに向いており、Xはイベント情報の拡散、Facebookは地域住民や保護者世代との関係構築に向いています。
利用者の写真を掲載する際は、本人の同意を原則として、肖像権・個人情報保護に配慮して運用します。未成年の利用者、成年後見等の事情がある場合、または事業所の運用上必要な場合は、保護者・法定代理人・ご家族の同意も併せて確認するのが望ましい対応です。
集客時にやってはいけない3つの落とし穴
集客に力を入れる中で、つい踏み込みやすい不適切な手法があります。これらは指定基準違反や障害者差別解消法違反につながり、行政指導・指定取消などの重大なリスクを伴います。行政書士の視点から、特に注意したい3つの落とし穴をお伝えします。
誇大広告・虚偽表示
「必ず就職できる」「全員が高工賃」など、事実に反する、あるいは誇張した表現は誇大広告にあたります。
指定障害福祉サービスの基準では、広告内容を虚偽又は誇大なものとしてはならない旨が定められており、B型にもこの規定が準用されます。実際の支援内容・工賃・就労実績を、根拠のある範囲で正確に伝えることが基本です。
障がい種別・障がい特性による不当な選別
利用希望者を、特定の障がい種別・障がい特性のみで受け入れ拒否することは、障害者差別解消法および障害福祉サービスの運営基準に反する可能性があります。
事業所の専門性に応じた受け入れ範囲の説明は問題ありませんが、「精神障がいの方は受け入れていません」といった一律の排除表現は避けます。
紹介料・斡旋料の授受
利用者を紹介してもらった対価として、相談支援事業所や個人に金銭を支払う行為は、指定障害福祉サービスの基準における利益供与等の禁止規定に抵触し得ます。短期的な集客のために金銭インセンティブを用いる発想は、長期的に事業所の信用を損ないます。
また、令和7年10月に施行された就労選択支援との関係でも、注意が必要な減算があります。就労選択支援事業所側では、正当な理由なく利用先の障害福祉サービス事業所が特定の事業者に過度に集中した場合(集中割合が一定の基準を超えた場合)に、特定事業所集中減算の対象となる場合があります。これは就労選択支援事業所側に課される減算であり、B型側に直接かかるものではありませんが、関係する就労選択支援事業所の運営に影響を及ぼし、結果として紹介ルート全体の信頼を損なうおそれがあります。
関係機関との関係構築は、あくまで支援の質と情報提供の誠実さで行うべきものです。
よくある質問
最後に、B型事業所の利用者集めについて、よくいただく質問を3つご紹介します。
Q1. 利用者を集めるのに最も効果的な施策は何ですか?
A. 単独で効果が出る魔法のような施策はなく、オフラインとオンラインを組み合わせた継続的な取り組みが基本です。特に新規開設の事業所では、相談支援専門員への訪問営業と、ホームページ・Googleビジネスプロフィールの整備を最初の3〜6か月で集中的に行うことが効果的と言えます。
Q2. 工賃が低い事業所でも利用者は集められますか?
A. 工賃は利用者選択の重要な要素の1つですが、すべてではありません。作業内容の特性、人間関係の良さ、職員の支援の質、通所のしやすさなど、複数の要素で選ばれます。ただし、令和6年度の全国平均工賃月額は24,141円(対前年比106.6%)で、対象事業所数は18,245事業所です(出典:厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」)。これを大きく下回る場合は、工賃改善の取り組みも並行して進めることをおすすめします。
Q3. 新規開設の事業所は最初にどの施策から始めるべきですか?
A. 開設前後の準備期間に、自事業所の強みの言語化と紹介資料の整備を済ませた上で、開設後すぐに地域の相談支援専門員・特別支援学校・医療機関への挨拶回りを始めるのが基本です。並行してホームページとGoogleビジネスプロフィールを整え、見学会の受け入れ体制を整えます。なお、令和8年6月以降に新規指定を受ける事業所は基本報酬区分が見直されているため、収支計画と集客計画を併せて再点検することをおすすめします。
まとめ
本記事では、直近の最新環境を踏まえ、B型事業所の利用者の集め方について、8つの施策を中心にお伝えしました。
B型事業所をめぐる経営環境は、事業所数の増加、令和6年度報酬改定、令和7年10月の就労選択支援施行、そして令和8年度の臨時応急的な報酬見直しという連続した変化により、ここ数年で大きく動いています。「集める」発想だけでなく、利用者・ご家族・関係機関から「選ばれる」事業所であるための内部基盤整備と、地域との顔の見える関係構築が、これからのB型運営の中核になると考えられます。
当サイト運営者の横関は、自身も会社経営者として実際にB型事業所に仕事を発注した経験があります。発注者の視点から見ても、活動の様子をホームページやSNSで継続的に発信している事業所、地域行事への参加が見える事業所は、印象に残りやすく、信頼を寄せやすいと感じています。
制度や運営の詳細については、最新の情報を厚生労働省・こども家庭庁サイト等でご確認いただくとともに、個別具体的な指定基準・運営基準のご相談は、管轄の自治体窓口へお問い合わせください。
※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。
よこぜき行政書士事務所


