
この記事を書いた人

アリのママ
社会福祉士・介護支援専門員・ヘルパー2級の資格を持ち、就労継続支援B型や生活介護などを併設した施設で、非常勤の支援員として約3年勤務。その後自身も就労継続支援A型事業所の利用者として利用後、支援員として勤務。
支援する側と支援される側の両方を経験したことで、両方の視点から見ることが出来ることが強み。
はじめに

アリのママです。
私は知的障がいのある方が通う、就労継続支援B型や生活介護などを併設した施設で、非常勤の支援員として約3年働いていました。
そのB型・生活介護での作業(プログラム)は、パン作りやアルミ缶回収でした。
その後、私自身がうつと診断され、のちに双極性障害(双極症)へ診断が変わりました。
就労継続支援A型なども、利用者として使ってきました。
支援する側と支援される側の両方の立場を経験して分かったことを書きたいと思います。
利用者になって助けられたのは、声かけより「工夫」だった

支援員のころは、新しく来た方に「わからないところは、何回聞いても大丈夫だよ」、頑張りすぎる方に「お茶タイムにしようか?」、作業をやり終えた方に「いいですね」と、よく声をかけていました。
ところが、A型を利用していたころの私は、判断力や集中力が落ちすぎていました。
声かけや手順書、自分のメモ、支援員さんの手本があっても、難易度の上がった作業ができないことがありました。
そんなとき支援員さんは、私から何も発しなくても、能力や適性に合わせた別の工程をひとりで任せてくれました。
声かけもあったのかもしれませんが、記憶にありません。
私を支えてくれたのは、声かけだけではなく、支援の工夫だったと感じています。
支援員の「当たり前」が、利用者側からは違って見えた

支援員のころは、開所時間より前に着き、利用者さんがいる間はずっと支援するのが当たり前でした。
一方、雇用契約を結んで働くA型の利用者になると、作業スペースにいる1分も、働いている時間だと感じました。
呼び方でも、感じ方が変わりました。
支援員のころは、「利用者さん」「○○さん」と呼ぶのが当たり前でした。
利用者として通った、A型とは別のある事業所では、「メンバーの皆さん」と呼び、名札にも「メンバー」と書かれていました。
望んで障がい者施設に来ているわけではない人や、障がいを受け入れるのが難しい人にとっては、この呼び方のほうがありがたいと、当事者として感じました。
スタッフとメンバーが、ひとつのチームのように感じられたのです。
「いいですね」が一人の支援員に集まる危うさ

支援員を退職する日、よく担当していた、通い始めたばかりのAさんから「アリのママさんに、ずっといてほしかった」と言われました。
在職中、Aさんの相談支援専門員さんとの面談を終えた上司から、「そんなに頻繁に声をかけなくていいよ」と提案されたこともあります。
ただ、急に接し方を変えると、利用をやめるきっかけになりかねないとも考えました。
「いいですね」と認めてもらえることは、とても励みになります。
でも、一人からばかり聞いていると、その人がいなくなったとき、認めてくれる人を失うことにつながります。
B型に通う方の中には、そこが唯一、人と関わる場所という方もいます。
ほかの職員に頼みづらくなれば、通える場所を奪うことにもなりかねません。
だから退職前に、私がいなくても同じ支援が続くよう、声かけの押し引きまで、引き継ぎ書に細かく書きました。
支援員として退職した後、ボランティアで関わった範囲では、Aさんは通い続けていました。
同じ声かけでも、誰が、どんな距離感や声のトーンで言うかで、受け取り方は変わります。
距離を詰めるときと少し離れるときの見極めは、本当に難しいと感じます。
利用者の声を形にしてもらえたとき、うれしかった

私がA型事業所で働いていた時、試作品について利用者としての率直な意見を取り入れてもらえたときは、実際の職場で意見が採用されたような感覚になりました。
計画書の目標に私の言葉がそのまま書かれていたときは、一言一言を受け止めてもらえたようで、以前は計画書を作る側にいた私だからこそ、なおさらうれしく感じました。
私がそうだったように、B型の利用者さんの中にも、一般の職場で働いた経験のある方がいると思います。
できることは、(その方の希望や能力、疲労感を見極めながら、できるところは)どんどん利用者さんに任せていいと思います。
ここからが支援員、ここからが利用者というはっきりした区別はなく、配慮と工夫で、事業所を支えるチームになれる気がします。
最後に

私が支援員と利用者の両方を経験して分かったのは、次の4つです。
- 判断力や集中力が落ちていたときの私を支えてくれたのは、過度な声かけでもなく失敗の指摘でもなく、その日の調子やそのままのわたしに合った作業を任せてくれる工夫でした。(今になって振り返っても、嫌だった言葉やプレッシャーにも感じなかったということは、それだけスムーズな役割の工夫や対応だったのだと思います。)
- 支援員にとって当たり前の時間の使い方や呼び方も、利用者の側からは違って見えます。
- 「いいですね」と認める言葉が一人の支援員に集まると、その人がいなくなったとき、通う場所を失うことにもなりかねません。
- 利用者の声を形にしていくと、支援員と利用者さんは、事業所を支えるひとつのチームになれると感じています。
利用者さんにとって事業所は、ぱっと立ち寄れる居場所のような存在です。
福祉の専門性と、福祉で働く方の心と健康を両立させながら、その場所をぜひ続けてほしいと願っています。



