令和6年(2024年)4月1日に「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律」が施行され、「就労選択支援」という新しい制度が創設されました。
就労選択支援とは「障害者本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援するサービス」です。
本記事では「就労選択支援」とは、どのような制度なのかを分かりやすくご説明したいと思います。
目次
就労選択支援の目的
就労選択支援の主な目的は、障がいのある方が自分に合った働き方を見つけることです。
障がいのある方が自分に合った働き方を見つけることは、障がいのある方の自己成長と自己実現のために非常に重要です。
障がいのある方を「適切な障害福祉サービスに繋げること」と「次のステップに支援すること」という現状の課題を解決するために、以下の事を目的として就労選択支援が創設されました。
- 働く力と意欲のある障害者に対して、障害者本人が自分の働き方を考えることをサポートする。
- 就労継続支援を利用しながら就労に関する知識や能力が向上した障害者には、本人の希望も重視しながら、就労移行支援の利用や一般就労等への選択の機会を適切に提供する。
就労選択支援は、障害のある人が自分の希望や能力、適性に合った仕事や支援機関を選択できるようにサポートするサービスとも言えます。
※このページの内容は随時更新していきます。
就労選択支援はいつから始まるの?
就労選択支援の利用開始は令和7年(2025年)10月から予定されていますが、「新たに就労系福祉サービスを利用する意向がある方」と「既に就労系福祉サービスを利用していて、支給決定の更新の意向がある方」で利用時期がことなります。
また、「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」「就労移行支援」のどのサービスを利用しているかによっても異なります。
新たに就労系福祉サービスを利用する意向がある方
新たに就労系福祉サービス利用する意向がある方は、どのサービスを利用しているかによって、就労選択支援の利用時期が異なります。
以下に、サービスごとに利用できる時期をご説明します。
就労継続支援A型
新たに就労継続支援A型を利用する意向がある方は、支援体制の整備状況を踏まえつつ、令和9年4月以降から、利用申請前に原則として就労選択支援を利用します。
就労継続支援B型
新たに就労継続支援B型を利用する意向がある方は、就労先や働き方を選択するに当たって、支援の必要性が高いと考えられることから、施行当初の令和7年10月以降から、就労継続支援B型の利用申請前に原則として就労選択支援を利用します。
希望に応じて利用できる方
新たに就労移行支援B型を利用する意向がある方の中で、以下に該当する方は希望に応じて就労選択支援を利用できます。
- 50歳に達している方
- 障害基礎年金1級を受給されている方
- 就労経験がある方
就労移行支援
新たに就労移行支援を利用する意向がある方は、希望に応じて就労選択支援を利用できます。
既に利用しており、支給決定の更新の意向がある方
既に就労系福祉サービス利用していて支給決定の更新の意向がある方は、どのサービスを利用しているかによって、就労選択支援を利用できる時期が異なります。
以下に、サービスごとに利用できる時期をご説明します。
就労継続支援A型・B型
既に就労継続支援A型又はB型を利用していて、支給決定の更新の意向がある方は、希望に応じて就労選択支援を利用できます。
就労移行支援
既に就労移行支援を利用していて、標準利用期間を超えて支給決定の更新の意向のある方は、支援体制の整備状況を踏まえつつ、令和9年4月以降、利用申請前に原則として就労選択支援を利用します。
標準利用期間を超えて利用する意向のある方のうち、面接や職場実習といった一般就労に向けた具体的な予定がある方等、就労移行支援事業所が明らかに就職可能性があると判断した方については、標準利用期間を超えて利用する場合であっても、就労選択支援の利用を原則としません。
(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第42回(R5.11.15)論点1参考資料①より)
就労選択支援はどこがやるの?
就労選択支援は「就労選択支援事業所」がおこないます。
就労選択支援の実施主体となる「就労選択支援事業所」となるには、以下のような要件が検討されています。
就労選択支援事業所の要件
障害者部会報告書では、就労選択支援の実施主体は以下のとおりとされています。
就労選択支援(仮称)の内容を踏まえれば、一般就労中の者や一般就労に移行する者を含めた障害者に対する就労支援について一定の経験・実績を有していること(注)のほか、・地域における就労系障害福祉サービス事業所を含めた就労支援機関等の状況・地域における企業等の障害者雇用の状況等について、適切に対象者へ情報提供できることを、実施主体に求めることを検討すべきである。
(注)例えば、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所、障害者就業・生活支援センター、自治体設置の就労支援センター、人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)による障害者職業能力開発訓練事業を行う機関等
障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第42回(R5.11.15)論点4より
以上のことをふまえて、以下の要件が検討されています。
- 障害者就労支援に一定の経験・実績を有している。
- 地域における就労支援に係る社会資源や雇用事例などに関する情報提供が適切にできる。
- 過去3年間において3人以上、通常の事業所に新たに障害者を雇用させている。
具体的には「以下にあげられている事業者と同等の障害者に対する就労支援の経験及び実績を有する」と都道府県等が認める事業者
- 就労移行支援事業所
- 就労継続支援事業所
- 障害者就業・生活支援センター事業の受託法人
- 自治体設置の就労支援センター
- 人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)による障害者職業能力開発訓練事業を行う機関
指定基準において、「就労選択支援事業者は、定期的に(自立支援)協議会に参画することとし、また、ハローワークへ訪問するなどして、地域における就労支援に係る社会資源や雇用事例などに関する情報収集に努め、収集した情報を利用者に提供することで、より的確な進路選択を行いやすくするように努めなければならない。」ことを規定することも検討されています。
(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第42回(R5.11.15)参考資料①より)
従事者の人員配置・要件
従事者の人員配置や要件に関しては以下の内容で検討されています。
- 就労選択支援事業所には、就労選択支援員を配置する。
- 就労選択支援員は、就労選択支援の利用者に対するサービス提供時間に応じた配置とする。
- 就労選択支援員の人員配置は、就労移行支援事業所における就労支援員の人員配置基準等を参考にする。(就労移行支援における就労支援員の人員配置基準は、その員数の総数が、常勤換算方式によって、利用者の数を15で割った数以上とされています)
- 就労移行支援または就労継続支援と一体的に就労選択支援を実施する場合は、就労移行支援等の職員(就労移行支援等の利用定員の枠内に限る)及び管理者が兼務できる。
- 就労選択支援は短期間のサービスであり、個別支援計画の作成は不要であるため、サービス管理責任者の配置は求めない。
就労選択支援員養成研修
障がいのある方ご本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるように、就労選択支援の質を担保する必要があります。
そのため、就労選択支援員の要件として「就労選択支援員養成研修」を令和7年度からの開始に向けて検討を進められています。
ただし、養成研修開始当初は十分な研修機会が得られない可能性があることを踏まえ、
経過措置として養成研修開始から2年以内に受講を修了すればよい。※就労選択支援員養成研修開始から2年間は、基礎的研修又は基礎的研修と同等以上の研修の修了者を就労選択支援員とみなす。
就労選択支援員養成研修の受講要件
就労選択支援員養成研修の受講要件としては、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構等が実施する基礎的研修(令和7年度開始予定)を修了していることや就労支援に関して一定の経験を有していることを要件とすることを検討されています。
基礎的研修の実施状況を踏まえ、当面の間(令和9年度末までを想定)は、現行の就労アセスメントの実施等について一定の経験を有し、基礎的研修と同等以上の研修の修了者でも受講可能とすることも検討されています。
*基礎的研修と同等以上の研修については、以下を想定されています。
- 就業支援基礎研修
- 就業支援実践研修
- 就業支援スキル向上研修
- 職場適応援助者養成研修
- 障害者就業・生活支援センター就業支援担当者研修
- 障害者就業・生活支援センター就業支援スキル向上研修
- 障害者就業・生活支援センター主任就業支援担当者研修
- サービス管理責任者指導者養成研修専門コース別研修(就労支援コース)
(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第42回(R5.11.15)論点6参考資料①より)
就労系障害福祉サービスの現状の課題
現状では、就労系障害福祉サービスを利用したいと思っている方の「働く能力」や「適性」を客観的に評価して、どのような仕事を選択するかや就労を支援するための具体的な内容に活用する手法等が確立されていません。
そのため、障がいのある方ご本人やその支援者が、障がいのある方が「どんな仕事をどれくらいできるか」といった「就労能力」や「一般就労の可能性」について十分に把握できていないケースがあります。
そうなると、適切な障害福祉サービスに繋げられていない可能性もあります。
例えば、就労移行支援を利用するのが最適な方が就労継続支援A型を利用されているようなケースです。
一旦、就労継続支援A型・B型の利用が始まると、固定されてしまいやすいという傾向があります。
障がいのある方ご本人の立場に立ち、次のステップを促す支援者がいるかどうかで、職業生活や人生が大きく左右されてしまいます。
そのため、障がいのある方を「適切な障害福祉サービスに繋げること」と「次のステップに支援すること」が課題となっています。
※「就労選択支援」と「就労移行支援」の違いに関しては『「就労選択支援」と「就労移行支援」の違い』で詳しくご説明していますのでご参照下さい。
就労選択支援の具体的なサービス内容
それでは、就労選択支援とは具体的にどのようなサービスを提供するのかをみてみましょう。
【支援内容1】強みや特性の整理
作業場面等を活用した状況把握を行います。
利用者ご本人の強みや特性、利用者の望む方向に進む上で課題となること等について、支援者と利用者が協同して整理します。
【支援内容2】自己理解を促す
利用者ご本人と協同して、自分に合った働き方を実現したり、働く上での課題改善等に向けて、どんな方法で、何に取り組むのか、どこで取り組むかについて、利用者ご本人の自己理解を促すことを支援します。
【支援内容3】アセスメントの結果の活用
アセスメント結果は、利用者ご本人やご家族、関係者等と共有して、その後の就労支援等に活用できるようにします。
その過程の結果として、就労系障害福祉サービスの活用を含めた進路について利用者が選び、決定していくことを支援します。
そのため、就労選択支援は就労の可否を判断したり、どの就労系障害福祉サービスを利用するかの振り分けを行うものではありません。
【支援内容4】情報提供、助言・指導等
支援の実施前後において、利用者の選択肢の幅を広げ、的確な選択につながるよう、地域における雇用事例や就労支援に係る社会資源等に関する情報提供、助言・指導等を行います。
【支援内容5】雇用支援機関との連携、連絡調整
就労選択支援利用後の就労支援等において、アセスメント結果が効果的に活用されるよう、就労選択支援事業所は計画相談支援事業所や市町村、ハローワーク等の雇用支援機関との連携、連絡調整を行います。
就労選択支援の期待される効果
就労選択支援のサービスを提供することで、どういった効果が期待されるのかをご説明します。
【期待される効果1】専門的な支援
専門的な研修を修了した就労支援の経験・知識を有する人材の配置により、就労に関するアセスメントに関し、専門的な支援を受けることが可能となります。
【期待される効果2】自己理解の促進
本人の就労能力や適性、ニーズや強み、本人が力を発揮しやすい環境要因、職業上の課題、就労に当たっての支援や配慮事項等を本人と協同して整理することで、本人の自己理解を促進することが可能となります。
【期待される効果3】適切な進路の選択
本人と協同して整理した内容や地域の企業等の情報を基に、関係機関と連携することにより、本人にとって、より適切な進路を選択することが可能となります。
また、就労継続支援A型・B型利用開始後も、本人の希望に応じて就労選択支援を受けることができ、就労ニーズや能力等の変化に応じた選択が可能となります。
就労選択支援ができると変わること
それでは具体的に就労継続支援A型と就労選択支援B型の現状の課題と、就労選択支援が出来る事でその課題をどのように解決できるイメージなのかをみてみましょう。
就労継続支援A型のケース
現状の就労継続支援A型では以下のような課題があります。
その課題を、就労選択支援を利用することで、以下のように解決することを目指しています。
就労継続支援A型の課題
- 申請段階でサービスを選択する必要があるが、選択する上での情報把握や、自己理解を進めにくい。
- 就労する事業所が決まった上で、就労する事業所がアセスメントを実施するため、他の選択肢を持ちにくい。
- 就労ニーズや能力等に変化があっても、他の選択肢を積極的に検討する機会が限られている。
就労継続支援A型の課題の改善イメージ
- サービス開始前に、自身の強みや課題、配慮事項等を整理する機会が得られ、本人にとってより適切な就労・障害福祉サービスの選択が可能となる。
- 就労する事業所とアセスメントに係る事業所が異なるので、本人が自由に選択しやすくなる。
- サービス開始後も、希望に応じて就労選択支援を受けることで、就労ニーズや能力等の変化に応じた選択が可能となる。
(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第42回(R5.11.15)参考資料④より)
就労継続支援B型のケース
現状の就労継続支援B型では以下のような課題があります。
それを就労選択支援ができることで、以下のように解決することを目指しています。
就労継続支援B型の課題
- 実施主体や人材の面で、専門的な支援体制の整備が必ずしも十分に行われていない。
- アセスメントにより整理した情報を、その後の本人の働き方や就労先の選択に関する支援に十分つなげられていない。
- 就労ニーズや能力等に変化があっても、他の選択肢を積極的に検討する機会は限られている。
就労継続支援B型の課題の改善イメージ
- 都道府県等による事業所指定、就労支援について一定の経験等を有する人材や研修を通じて育成した人材の配置により、専門的な支援を受けることが可能となる。
- 就労能力や適性、本人のニーズや強み、職業上の課題、就労に当たっての支援や配慮事項といった本人と協同して整理した内容や地域の企業等の情報を基に、関係機関と連携する⇒本人にとって、より適切に就労・障害福祉サービスを選択することが可能となる。
- B型利用後も、希望に応じて新たなサービスを受けることができ、就労ニーズや能力等の変化に応じた選択が可能となる。
(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第42回(R5.11.15)参考資料③より)
就労選択支援の対象者
就労選択支援は誰が利用できるのでしょうか。
2023年6月の障害者部会で示された省令の具体的内容案において、就労選択支援の対象者は以下のとおりとされています。
- 新たに就労継続支援又は就労移行支援を利用する意向がある障害者
- 既に就労継続支援または就労移行支援を利用しており、支給決定の更新の意向がある障害者
新たに利用する意向がある障害者
新たに利用する意向がある障害者というのは、就労系福祉サービス(就労継続支援または就労移行支援)を利用していない方です。
以下の方々も、的確で合理的な進路選択に資するアセスメント結果に基づき、適切なサービスにつなげる必要があることから就労選択支援の対象となります。
- ハローワークから就労継続支援A型を紹介された方
- すぐに稼ぎたいという意向がある方
- 経済的に困窮している方
- ひきこもりの状態にある方
特別支援学校在学者
特別支援学校在学者も就労選択支援を利用できる対象となります。
特別支援学校以外の高校及び大学等の在学生も同様に、在学中の利用を可能とすることも検討されています。
この後でご説明しますように、学校在学者の場合、就労継続支援B型の利用の意向が決まった後に、就労アセスメントを実施する事例が一定程度あるといった課題があるため、学校在学者向けに就労選択支援の利用ルールが検討されています。
既に利用しており、支給決定の更新の意向がある障害者
既に就労系福祉サービス(就労継続支援または就労移行支援)を利用していて、引き続きサービスを利用する意向がある障害者の方です。
但し、既に就労移行支援を利用しており、標準利用期間を超えて利用する意向のある方のうち、面接や職場実習といった一般就労に向けた具体的な予定がある方等、就労移行支援事業所が明らかに就職可能性があると判断した方については、標準利用期間を超えて利用する場合であっても、就労選択支援の利用を原則としないことを検討されています。
(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第42回(R5.11.15)参考資料⑤より)
特別支援学校における取扱い
現行、本人及び関係者等において就労継続支援B型の利用の意向が決まった後に、就労アセスメントを実施する事例が一定程度あります。
そのため、就労選択支援の実施の際には、形骸化を防止する仕組みが必要になります。
より効果的な就労選択に資するアセスメントを実施するため、以下の点を検討されています。
- 3年生以外の特別支援学校高等部の各学年で実施することを可能とする
- 在学中に複数回実施することを可能とする
- 職場実習のタイミングでの就労選択支援も実施可能とする
(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第42回(R5.11.15)論点2参考資料①より)
就労選択支援のサービスを提供する上での注意点
就労選択支援のサービスを提供するにあたっては、以下の課題を解決するための事項が検討されています。
中立性の確保
就労選択支援の実施主体等については、適切かつ効果的な事業運営を確保するため、以下の観点から地域における一定の支援体制の確保に留意しつつ検討すべきとされています。
障害福祉サービス事業者等からの利益収受の禁止
障害福祉サービス事業者等からの利益収受の禁止をはじめとした中立性の確保に留意して検討すべきとされています。
就労選択支援の中立性を確保するために、以下の点について報酬告示や指定基準に規定することを検討されています。
- 自法人が運営する就労系障害福祉サービス等へ利用者を誘導しない仕組み(介護保険の居宅介護支援における特定事業所集中減算等を参考とした仕組み)
- 必要以上に就労選択支援サービスを実施しない仕組み(本来の主旨と異なるサービス提供の禁止)
- 障害福祉サービス事業者等からの利益収受の禁止
(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第42回(R5.11.15)論点5参考資料より)
多機関連携によるケース会議
支援の質と中立性の確保を図るため、地域の関係機関とケース会議を開催すること等により、支援を通じて把握した情報や関係機関が有している情報を相互に共有することとすべきとされています。
例えば、就労面以外の支援に関する情報や主治医からの情報などを相互に共有することです。
障がいのある方ご本人へ提供する情報に偏りや誤りがないようにするための仕組みとして「多機関連携によるケース会議」が検討されています。
多機関連携によるケース会議では、以下のような内容が想定されています。
- 多機関連携によるケース会議において把握した本人の意向、関係機関の見解等を踏まえてアセスメント結果を作成する。
- (自立支援)協議会の就労支援部会等を定期的に活用する。
- オンライン会議等の活用も可能とする。
他機関が実施した同様のアセスメントの取扱い
就労移行支援以外の障害者就業・生活支援センターや特別支援学校等においても就労選択支援と同様のアセスメントが実施されている場合があります。
障がいのある方ご本人の負担を軽減する観点から、就労選択支援で行う作業場面等を活用した状況把握と同様のアセスメントが既に実施されている場合、就労選択支援事業者は、同様のアセスメントを活用できることとし、新たに作業場面等を活用した状況把握を実施せずともよいということを検討されています。
同様のアセスメント結果の中に、障害の種類及び程度、就労に関する意向及び経験、就労するために必要な配慮及び支援、適切な作業の環境等の項目が含まれている場合は、就労選択支援事業所は、同様のアセスメントを活用して下記①~③の取組を実施できることが検討されています。
その際、同様のアセスメントを実施した関係機関に対し、「多機関連携によるケース会議」への参加等の協力を要請することも検討されています。
- ①多機関連携によるケース会議
- ②アセスメント結果の作成
- ③事業者等との連絡調整
同様のアセスメントとは、以下に掲げるもののうち、原則1年以内に実施したものを想定されています。
- 障害者就業・生活支援センター、障害者職業センター、就労系障害福祉サービス事業所等が直近に実施した職業的なアセスメント
- 特別支援学校によるアセスメント実習評価
※本人の置かれている環境に変化があった場合、疾病、事故等による本人自身の能力や機能が大きく変化した場合、障害福祉サービスの利用を経て、就労能力や就労に関する意向等が大きく変化した場合は、同様のアセスメントから1年経過してない場合でも改めてアセスメントを実施する。
計画相談事業との連携・役割分担
第130回社会保障審議会障害者部会報告書では、以下のように記されています。
就労系以外の障害福祉サービスを併せて利用する者もいることなどを踏まえ、就労選択支援(仮称)を含めたサービス等利用計画案の作成から、就労系障害福祉サービスの支給決定後のモニタリング等までを含めた一連の流れにおいて、計画相談支援事業所が利用者のためのケアマネジメント全体を担う役割を果たすものであることを踏まえた上での連携の在り方として、就労選択支援(仮称)において本人と協同して作成するアセスメント結果等の情報を、その後の計画相談支援においてサービス等利用計画案の作成にあたって踏まえることや、就労選択支援(仮称)の実施主体からの助言等を参考にすることを検討すべきである。
第130回社会保障審議会障害者部会(R4.5.27)
つまり就労選択支援事業所と相談支援事業所の連携に関してです。
上記を踏まえて、就労選択支援事業所と計画相談支援事業所は、以下のように連携することが検討されています。
就労選択支援利用前
- 就労選択支援の支給決定に係るサービス等利用計画案の作成(計画相談)
- 就労選択支援利用までに把握している情報の提供(計画相談→就労選択)
就労選択支援利用期間中
- 多機関連携によるケース会議への参加(計画相談側の参加)
- アセスメント結果等の情報の伝達(就労選択→計画相談)
就労選択支援利用後
- アセスメント結果を踏まえたサービス等利用計画案の作成(計画相談)
- モニタリング実施時及び支給決定更新時における就労選択支援の情報提供及び意向確認(計画相談)
(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第42回(R5.11.15)参考資料②より)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
令和7年(2025年)に導入される就労選択支援は、障がいのある人々が自分に合った働き方を選択できるように「一人ひとりに合わせた就労支援を提供する制度」だということをご理解いただけたと思います。
今まで以上に、障がいのある方々一人ひとりが持つ能力を最大限に活かして、社会に貢献できるような就業の実現が期待されます。
一人ひとりの潜在能力を引き出して社会全体の利益に繋げることで、企業や地域社会にも新たな価値が生まれると思います。
障がいの有無に関わらず、すべての人がその能力を発揮できる公平な機会が提供されるためにも、就労選択支援制度が活用されるようになると良いと思います。