はじめに

「障がいのある家族のことで誰に相談すればいいかわからない」「相談支援事業所に相談したけれど、もっと専門的な支援が必要らしい」――こうした場面で頼りになるのが、基幹相談支援センターです。
令和6年4月からは市町村の努力義務として位置づけが強化され、全国で設置が進んでいます。
本記事では、基幹相談支援センターの役割、相談支援事業所との違い、最新の設置状況、利用方法までを、わかりやすくご説明したいと思います。

基幹相談支援センターとは?

基幹相談支援センターは、地域における障がい相談支援の中核を担う機関です。個別の相談を受けるだけでなく、地域全体の相談支援体制を底上げする役割も持っています。ここではまず、法律上の位置づけと設置・運営の仕組みを見ていきます。

法律上の位置づけと目的

基幹相談支援センターは、障害者総合支援法第77条の2に規定された施設です。条文では「地域における相談支援の中核的な役割を担う機関」として、次の4つの事業・業務を総合的に行うことを目的とすると定められています。

障害者相談支援事業・成年後見制度利用支援事業
身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・精神保健福祉法に基づく相談等の業務
地域の相談支援事業者への助言・指導等
(自立支援)協議会(地域の障がい福祉関係者が課題を共有し、サービス基盤の整備を進める協議の場)に係る関係機関等の連携の緊密化

平成24年4月の障害者自立支援法等の改正で位置づけられて以降、地域の相談支援の要として整備が進められてきました(出典:厚生労働省: 基幹相談支援センターについて)。

設置主体と運営形態

基幹相談支援センターの設置主体は市町村です。市町村が直営で運営することも、一般相談支援事業者または特定相談支援事業者に業務を委託することもできます(障害者総合支援法第77条の2第2項・第3項)。
委託の場合は、地域の社会福祉法人・社会福祉協議会・特定非営利活動法人(NPO法人)などが受託するケースが多く見られます。令和7年調査では、委託により設置している基幹相談支援センターが85%(1,234か所)を占めており、運営主体の内訳は社会福祉法人が59%(856か所)、地方公共団体が20%(291か所)、特定非営利活動法人が10%(140か所)などとなっています。
複数の市町村が共同で設置することも認められており、人口規模が小さい自治体では広域での共同設置が選択肢となります。運営形態は地域の実情によって柔軟に決められるため、設置場所も市町村役所内、公共施設内、福祉サービス事業所内などさまざまです。

基幹相談支援センターの主な機能と関連する取組

基幹相談支援センターは、厚生労働省資料で示された業務内容に沿って整理すると、地域の中核的な役割として大きく3つの柱の取組を行います。これは前述の法第77条の2第1項に定められた事業を、地域の実情に応じて具体化したものです。さらに、地域の実情に応じて担われる関連機能として、地域移行・地域定着の促進や権利擁護・虐待防止の取組も重要な位置を占めます。それぞれ順にご説明します。

①総合的・専門的な相談支援の実施

障がいの種別を問わず、当事者やご家族からの幅広い相談に応じる、ワンストップの相談窓口としての役割です。
身体障がい・知的障がい・精神障がい・発達障がい・難病など、対象となるすべての方が相談できます。日常生活の困りごとから障がい福祉サービスの選び方まで、内容を問わずに最初の窓口になるのが特徴です。
また、地域の相談支援事業者だけでは対応が難しい複雑な事例(困難事例)についても、専門的な助言や協働支援を行います。困難事例への対応は、基幹相談支援センターに期待される代表的な役割です。

②地域の相談支援体制の強化

地域の相談支援事業者の人材育成や、支援の質の向上を図る業務です。
具体的には、相談支援従事者を対象とした研修会の企画・運営、事業所訪問による専門的助言、日常的な事例検討会の開催などを行います。相談支援従事者研修の実習受入も担います。
また、学校や企業、地域包括支援センター、生活困窮者自立相談支援機関、こども家庭センターなどとの情報の収集・提供や連携、障がいのある方への専門的助言も、体制強化の重要な要素として位置づけられています。

③自治体と協働した協議会の運営による地域づくり

(自立支援)協議会の事務局を担い、地域の関係機関との連携緊密化を進める業務です。
協議会では、地域の相談支援事業者・身体障害者相談員・知的障害者相談員・民生委員、高齢分野・児童分野・保健医療・教育・就労分野などの相談機関と連携会議を開催し、地域の支援ネットワークを強化します。
地域課題の抽出や解決に向けた協議の場として、市町村全体の障がい福祉施策の充実につなげる中心的な役割を担います。

関連する取組①:地域移行・地域定着の促進

長く施設や精神科病院で暮らしていた方が、地域での生活へ移行するための支援です。法令上の中核業務に加えて、地域の実情に応じて担われる重要な関連機能として位置づけられています。
入所施設や精神科病院などへの働きかけを行い、グループホーム、一人暮らし、ご家族との生活など、ご本人が希望する暮らしのイメージを具体化するサポートを担います。
移行後も生活が安定して継続できるよう、関係機関と連携した地域定着の支援を行います。重度化・高齢化や「親亡き後」を見据えた緊急時の対応にも、地域生活支援拠点等と連携して取り組みます。

関連する取組②:権利擁護・虐待防止

障がいのある方の権利を守るための取組です。地域の実情に応じて、基幹相談支援センターが担うことが期待される関連機能の一つです。
成年後見制度利用支援事業を実施し、判断能力に支援が必要な方が制度を利用しやすくなるよう、相談や手続きの支援を行います。
虐待防止についても、地域によっては基幹相談支援センターが市町村障害者虐待防止センター等と連携し、相談窓口を兼ねる場合があります。ただし、障害者虐待防止法上の通報・届出の制度的窓口は、市町村障害者虐待防止センター(法第32条)および都道府県障害者権利擁護センター(法第36条)です。緊急時の通報については、お住まいの市町村が設置する障害者虐待防止センター等の窓口にもご確認ください。

基幹相談支援センターと相談支援事業所の違い

「基幹相談支援センター」と「相談支援事業所」は名前が似ているため混同されがちですが、役割は明確に異なります。ご家族や当事者の方から「どちらに相談すればいいの?」という質問をいただくことも多いため、ここで違いを整理してご説明します。

役割の違いを比較表でチェック

両者の主な違いを目安として表にまとめました。
比較項目基幹相談支援センター相談支援事業所法的位置づけ障害者総合支援法 第77条の2同法 第5条 等設置主体市町村(委託可)民間事業者(都道府県・市町村の指定)主な対象地域全体の相談支援体制個別の障がいのある方主な業務中核的な相談支援、地域支援、人材育成、地域づくりサービス等利用計画の作成、モニタリングなど役割のイメージ地域の司令塔・専門バックアップ個別の相談・計画作成の窓口
相談支援事業所は個別の利用者ごとに障がい福祉サービスの利用計画(サービス等利用計画)を作成し、定期的なモニタリングを行うのが中心的な業務です。一方で基幹相談支援センターは、個別の相談にも対応しますが、地域全体の相談支援を底上げする役割を強く担います。

どんなときにどちらを利用すればいい?

実際に相談したいときの使い分けの目安をご紹介します。
相談支援事業所が向いているケース

障がい福祉サービスの利用計画(サービス等利用計画)を作りたい
すでに利用中のサービスについて見直したい
どのサービスが自分に合うか具体的に相談したい

基幹相談支援センターが向いているケース

どこに相談すればいいかわからない
相談支援事業所では対応が難しいと言われた
成年後見制度の利用など、専門的な対応が必要
入院・入所中で、地域での生活に移りたい

両者は対立するものではなく、連携して地域の相談支援体制を支えています。まず最寄りの相談支援事業所に相談し、必要に応じて基幹相談支援センターにつないでもらう、という流れも一般的です。

基幹相談支援センターの設置状況と最新動向

ここからは、基幹相談支援センターをめぐる最新動向をご紹介します。令和6年4月の制度改正で位置づけが大きく強化され、全市町村への整備に向けた動きが進んでいます。

全国の設置状況(令和7年4月時点)

厚生労働省「障害者相談支援事業の実施状況等について(令和7年調査)」によると、令和7年4月時点で、基幹相談支援センターは全国で1,457か所に設置されています。設置している市町村は1,152で、全市町村に占める割合は66%です。
このうち、市町村から委託を受けて運営されているセンターは85%(1,234か所)を占めており、社会福祉法人やNPO法人などが受託している実態がうかがえます。
[画像挿入推奨: 基幹相談支援センター設置率の推移を示すグラフ(令和2年45%→令和3年50%→令和6年60%→令和7年66%)]
設置率の推移を見ると、令和2年4月時点で45%(778市町村)、令和3年4月時点で50%(873市町村)、令和6年4月時点で60%(1,045市町村)と、毎年着実に増加しています(出典:厚生労働省: 障害者福祉の統計情報より)。

令和6年4月の努力義務化と整備目標

設置率が伸びている背景には、令和4年法律第104号(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律)による法改正があります。
もともと基幹相談支援センターには設置義務は課されておらず、「設置することができる」という任意規定にとどまっていました。それが令和6年4月1日からは「設置するよう努めるものとする」と表現が強化され、市町村の努力義務として位置づけられました(障害者総合支援法第77条の2第2項)。
さらに、第7期障害福祉計画(令和6〜8年度)に係る国の基本指針では、「令和8年度末までに、各市町村において、基幹相談支援センターを設置(共同設置を含む)するとともに、地域の相談支援体制の強化を図るための体制を確保することを基本とする」とされました。
令和7年4月時点で設置率は66%まで進んでおり、目標の令和8年度末まで残された期間で、未設置市町村でも整備に向けた取り組みが急がれています。多くの市町村で人材確保や財源確保の課題はあるものの、全市町村整備に向けた動きが進んでいます。

基幹相談支援センターの利用方法

基幹相談支援センターは、障がいのある方ご本人だけでなく、ご家族や支援者の方も相談できます。ここでは、相談できる内容と相談の流れを具体的にご説明します。

相談できる内容の例

基幹相談支援センターでは、障がいに関わるさまざまな相談に対応します。代表的な相談内容は次のとおりです。

どんな障がい福祉サービスが利用できるかわからない
どの相談窓口や事業所に相談すればよいかわからない
利用中のサービスや支援に不満や不安がある
障がいのあるご家族の将来(親亡き後など)が心配
入院・入所中だが、地域での生活に戻りたい
成年後見制度の利用を検討したい

相談内容によっては、専門の相談支援事業所や障害者就業・生活支援センター、医療機関、行政の窓口など、より適切な機関につないでもらえます。
なお、障害者虐待に関する通報・届出については、お住まいの市町村が設置する障害者虐待防止センターが制度上の窓口となります。基幹相談支援センターが虐待防止センターを兼ねている自治体もありますので、緊急時はあわせて市町村の障がい福祉担当窓口にご確認ください。

相談の流れ

相談方法は、お住まいの地域のセンターによって異なりますが、おおむね次のような入り口があります。

直接窓口を訪問:営業時間内に窓口で相談
電話で相談:多くのセンターで電話相談を受付。緊急時の対応を24時間体制で行っているセンターもあります
他機関を経由:すでに利用中の相談支援事業所や医療機関、行政窓口などからつないでもらう

なお、基幹相談支援センターが設置されていない市町村もまだあります。市町村によっては、委託相談支援事業所が中核的な相談機能の一部を担っているケースもあります。詳しくはお住まいの市町村の障がい福祉担当窓口にご確認ください。

よくある質問

最後に、基幹相談支援センターについてよく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 自分の住む市町村に設置されていない場合は?

令和7年4月時点で、設置率は全国で66%です。ご自身が住む市町村にまだ設置されていない場合は、まず市町村の障がい福祉担当窓口にお問い合わせください。市町村が委託している相談支援事業所が、中核的な相談支援機能の一部を担っているケースもあります。

Q2. 相談料はかかる?

基幹相談支援センターでの相談自体は、原則として無料です。市町村が実施する障害者相談支援事業の一環として運営されているため、ご家族や周囲の方からの相談も費用負担なく利用できます。
また、相談の結果、障がい福祉サービスの利用に進む場合に、相談支援事業所がサービス等利用計画を作成する「計画相談支援」についても、利用者負担はありません(費用は市町村から事業所へ支払われる仕組みです)。
ただし、計画に基づいて居宅介護・就労系サービス・施設入所支援などの障害福祉サービス本体を利用する場合は、所得区分に応じた月額負担上限の範囲で自己負担が生じることがあります(生活保護世帯・市町村民税非課税世帯は負担上限0円)。

Q3. どんな人が働いているの?

基幹相談支援センターには、地域における相談支援の中核的な役割を担えるよう、専門性の高い職員が配置されています。具体的には、相談支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、保健師、主任相談支援専門員などです。
主任相談支援専門員は、相談支援専門員を指導する立場の上位資格で、地域の人材育成にも関わります。基幹相談支援センターの中核を担う人材として、平成30年度から制度的に位置づけられています。

まとめ

基幹相談支援センターは、地域の相談支援の中核を担う機関として、個別の相談から地域全体の体制整備まで幅広い役割を担っています。令和6年4月からは市町村の努力義務として位置づけが強化され、令和7年4月時点で全国の設置率は66%まで進みました。令和8年度末までの全市町村整備に向けた動きが続いています。
「どこに相談すればいいかわからない」というときは、まずお住まいの市町村にある基幹相談支援センター、または市町村の障がい福祉担当窓口にご相談ください。制度や運用は今後も改正される可能性があるため、最新情報は厚生労働省サイトや自治体ホームページでご確認いただくことをおすすめします。

※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。

よこぜき行政書士事務所