「障がいのある家族のことで、どこに相談すればいいのか分からない」。そんなときに名前を目にするのが、基幹相談支援センターです。ただ、相談支援事業所との違いや、何をしてくれる所なのかは分かりにくい機関の一つです。

本記事では、法律の条文と厚生労働省の資料をもとに、役割、相談支援事業所との違い、設置義務の有無、全国の設置状況、探し方までを、できるだけ簡単にご説明したいと思います。

ひとことで言うと

基幹相談支援センターは、市町村が設ける、地域の障がいのある方の相談支援の中核となる機関です。

  • 障がいの種別を問わず、本人や家族からの相談を受けます
  • 地域の相談支援事業所に助言するなど、相談支援を後ろから支えます
  • 設置は、令和6年4月から市町村の「努力義務」です。令和7年4月時点で、全国の市町村の66%が設置しています

基幹相談支援センターとは?簡単に言うと「地域の相談支援の中核」

基幹相談支援センターは、障害者総合支援法第77条の2に定められた、地域の相談支援の中核的な役割を担う機関です。「基幹」とは物事の中心となる部分のことで、その名のとおり、地域の相談支援の中心となる役割が期待されています。ここでは、法律上の定義と、誰が設置・運営しているのかを確認します。

法律上の定義

障害者総合支援法は、基幹相談支援センターを次のように定めています。

基幹相談支援センターは、地域における相談支援の中核的な役割を担う機関として、次に掲げる事業及び業務を総合的に行うことを目的とする施設とする。 (障害者総合支援法第77条の2第1項)

ここでいう相談支援とは、障がいのある方や家族からの相談に応じ、情報の提供や助言、サービス利用の手助けなどを行うことです。センターは、一人ひとりの相談に応じるだけでなく、地域全体の相談支援の体制を支える役割もあわせ持っています。

誰が設置・運営しているのか

センターを設けるのは市町村です。市町村が自ら運営する「直営」のほか、業務を委託することも認められています(同条第3項)。委託を受けた者(社会福祉法人など)は、あらかじめ市町村長に届け出たうえでセンターを設置できます(同条第4項)。

人口の少ない町村では、近隣の市町村と共同で1か所のセンターを設ける「共同設置」も行われています。令和7年4月時点では、単独で設置している市町村が659、複数の市町村で共同設置している市町村が477、両方の形をとる市町村が16でした(厚生労働省「障害者相談支援事業の実施状況等について(令和7年調査)」)。

なお、委託を受けてセンターを設置した者(法人の場合はその役員)や職員には、その職を離れた後も含めて、業務で知った秘密を正当な理由なく漏らしてはならない守秘義務があります(同条第6項)。

基幹相談支援センターの4つの業務とできること

障害者総合支援法第77条の2第1項は、センターが総合的に行う業務を4つ挙げています。ここでは条文を平易な言葉に置き換え、本人・家族に向けた業務と、支援者や地域に向けた業務に分けて整理します。こう分けると、全体像がつかみやすくなります。

条文の4つの業務を簡単に言うと

4つの業務を表にまとめると、次のとおりです。

条文 簡単に言うと 主な相手
第1号 障がいのある方や家族からの相談に応じる(障害者相談支援事業)。成年後見制度の利用にかかる費用を、一定の条件のもとで補助する(成年後見制度利用支援事業) 本人・家族
第2号 身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・精神保健福祉法にもとづく、市町村の相談・情報提供・調査・指導・助言などの業務 本人・家族
第3号 地域の相談支援事業所(障害児相談支援を含む)で働く人から、事業の運営について相談を受け、助言や指導などを行う 支援者
第4号 協議会(同法第89条の3)を構成する関係機関どうしの連携を深める 地域

※「簡単に言うと」の欄は当サイトによる言い換えです。正確な内容は条文をご確認ください。

本人・家族に向けて:総合的な相談と権利擁護

センターは、障がいの種別を問わず、本人や家族からの相談を受け付けています。

第1号の障害者相談支援事業には、相談への対応だけでなく、虐待の防止や早期発見のための関係機関との連絡調整など、権利擁護のための援助も含まれます(障害者総合支援法第77条第1項第3号)。虐待の通報を受ける窓口は、障害者虐待防止法にもとづく「市町村障害者虐待防止センター」です(同法第32条)。同法は市町村がこの業務を委託できると定めており(第33条)、基幹相談支援センターが通報の受付などを担っている市町村もあります(例:大阪市)。

成年後見制度利用支援事業は、成年後見制度を利用する際の費用を、一定の条件のもとで補助する事業です(障害者総合支援法第77条第1項第4号)。

支援者・地域に向けて:相談支援事業所のバックアップと協議会

第3号と第4号は、令和4年の法改正(令和6年4月施行)で新たに加わった業務です。厚生労働省の「相談支援業務に関する手引き」(令和6年3月)は、この2つを基幹相談支援センターの「中核をなす業務」と位置づけています。

どちらも、個別の相談に直接応じるというより、地域の相談支援事業所や支援の仕組みに働きかける「後方支援」です。相談支援専門員への助言や事例検討、研修の企画などが、その例です。

第4号の協議会は、関係機関や関係団体、障がいのある方とその家族、福祉・医療・教育・雇用の関係者などで構成され、地方公共団体が置くよう努めることとされている会議体です(同法第89条の3)。「自立支援協議会」とも呼ばれます。センターは、協議会を通じて地域の課題を共有し、仕組みづくりにつなげる役割を担います。

なお、厚生労働省のページは、センターの事業内容を「総合的・専門的な相談支援の実施」「地域の相談支援体制の強化の取組」「自治体と協働した協議会の運営等による地域づくりの取組」の3つに整理しています。以前の厚生労働省の概要資料では、施設や病院からの地域移行・地域定着の促進や、権利擁護・虐待防止も、センターの役割として示されていました。

相談支援事業所との違い|3つの相談窓口を比較

基幹相談支援センターと相談支援事業所の違いが分かりにくいのは、「相談支援事業所」と呼ばれる窓口が、役割の違う複数の事業を行っているためです。ここでは、基幹相談支援センター、市町村から委託を受けて行う相談(障害者相談支援事業)、サービス等利用計画を作る指定特定相談支援事業所の3つを比べます。相談支援事業所の種類については、相談支援事業所の解説記事もあわせてご覧ください。

3つの窓口の比較表

根拠となる条文と、主な役割を並べると次のようになります。

項目 基幹相談支援センター 障害者相談支援事業(いわゆる委託相談) 指定特定相談支援事業所(計画相談)
根拠 障害者総合支援法第77条の2 同法第77条第1項第3号(市町村の地域生活支援事業) 同法第5条第19項(特定相談支援事業)
実施する者 市町村(直営または委託) 市町村(相談支援事業者などへの委託も可) 市町村長の指定を受けた事業者
主な相手 本人・家族に加え、地域の相談支援事業所などの支援者 地域の障がいのある方や家族、介護を行う方など 障害福祉サービスなどを利用する方
主な内容 総合的・専門的な相談、相談支援事業所への助言、協議会を通じた連携の促進 情報の提供や助言、権利擁護のための援助など サービス等利用計画の作成と、利用開始後の見直し(モニタリング)
費用 市町村の案内で確認(無料と案内している例:笠間市) 市町村の案内で確認 利用者の負担なし

※「委託相談」は、市町村から委託を受けた事業所が行う一般的な相談(障害者相談支援事業)を指す通称です。1つの法人が、委託相談と計画相談の両方を行っていたり、基幹相談支援センターを兼ねていたりする場合もあります。

相談の「入口」はどこか

厚生労働省の手引きは、市町村から委託を受けて行う障害者相談支援事業の役割を、次のように整理しています。計画相談支援の対象にならない事例などにも継続して対応し、アウトリーチ(掘り起こし)も含めて、「住民の相談の入口として広く間口をもって対応する必要がある」というものです。

一方で、基幹相談支援センターも第1号の業務として、本人や家族からの相談を直接受けています。どの窓口がどこまでを担うかは、市町村によって体制がさまざまです。最初に相談した窓口から、より適した窓口につないでもらえる場合もあります。

こんなときはどこに相談する?

相談内容ごとの窓口の目安は、次のとおりです。

  • サービス等利用計画を作ってほしい:指定特定相談支援事業所
  • どこに相談すればいいか分からない:市町村の障がい福祉担当窓口、委託相談の事業所、基幹相談支援センター
  • 今の相談支援事業所に不安がある、複雑な事情がある:基幹相談支援センター、市町村の障がい福祉担当窓口
  • 働くことについて相談したい:障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)、地域障害者職業センター

あくまで目安であり、実際の役割分担は市町村ごとに異なります。

基幹相談支援センターに設置義務はある?努力義務と根拠法

結論から言うと、基幹相談支援センターの設置は市町村の「義務」ではなく「努力義務」です。令和6年4月の法改正で、それまでの「設置することができる」から一歩進みました。令和7年4月時点で設置している市町村は、全体の3分の2ほどです。ここでは、条文の変化と努力義務の意味、全国の設置状況、今後の見通しを順にご説明します。

「設置することができる」から「設置するよう努める」へ

基幹相談支援センターは、平成24年4月1日に施行された障害者自立支援法などの改正(相談支援の充実)で制度化されました。当初、設置は市町村の判断に委ねられていましたが、令和4年の法改正(令和4年法律第104号)により、令和6年4月1日から次のように改められています。

項目 令和6年3月まで 令和6年4月から
設置(第77条の2第2項) 市町村は、基幹相談支援センターを設置することができる。 市町村は、基幹相談支援センターを設置するよう努めるものとする。
業務(第77条の2第1項) 障害者相談支援事業、成年後見制度利用支援事業、3つの福祉法にもとづく相談などの業務 左記に加え、相談支援事業所などへの助言・指導(第3号)と、協議会を構成する関係機関の連携の促進(第4号)

また現行法は、都道府県が市町村に対し、設置の促進や適切な運営のために広域的な見地から助言その他の援助を行うよう努めることも定めています(第77条の2第7項)。

努力義務とは何か

努力義務とは、法律で「そうするよう努めなければならない」と求められているものの、実行しなかった場合の罰則は設けられていない義務のことです。第77条の2第2項も「設置するよう努めるものとする」という書き方で、設置するかどうかは、最終的には各市町村の判断に委ねられています。

ただし、国は障害福祉計画の基本指針で、各市町村での設置を目標に掲げてきました。努力義務化によって、設置を後押しする方向がより明確になったと言えます。人口の少ない町村では、近隣と共同で設置する方法もとられています。

全国の設置状況(令和7年4月時点)

厚生労働省の調査によれば、令和7年4月時点でセンターを設置している市町村は1,152で、全市町村の66%です。センターの数は全国で1,457か所です。設置市町村の割合は、次のように増えてきました。

時点 設置市町村数 全市町村に占める割合
平成24年4月 156 9%
平成30年4月 650 37%
令和2年4月 778 45%
令和5年4月 973 56%
令和7年4月 1,152 66%

出典:社会保障審議会障害者部会 第114回資料(令和3年7月16日)、厚生労働省「障害者相談支援事業の実施状況等について」(令和5年調査・令和7年調査)

1,457か所の運営の形は、市町村の直営が223か所(15%)、委託が1,166か所(80%)、直営と委託の併用が68か所(5%)です。運営主体は、社会福祉法人856か所(59%)、地方公共団体291か所(20%)、特定非営利活動法人140か所(10%)などです。この割合は全1,457か所に占めるもので、地方公共団体には直営のセンターも含まれます。

今後の見通し

令和7年4月時点の回答では、未設置の589市町村のうち、令和7年度中に設置予定が27、令和8年度中に設置予定が183、設置予定なしが379でした(同調査)。

国の第8期障害福祉計画(令和9〜11年度)の基本指針(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第4号)の概要では、成果目標「相談支援体制の充実・強化等」として「各市町村において、基幹相談支援センターを設置等」が示されています。あわせて、相談支援体制の地域診断を行ったうえで体制を強化し、令和11年度末までに「のぞまないセルフプラン」の件数をゼロとする目標が新たに示されました。のぞまないセルフプランとは、身近な地域に相談支援事業所がないために、やむを得ず作成されるセルフプラン(本人や家族などが自ら作るサービス等利用計画)のことです。

基幹相談支援センターの探し方と相談の流れ

センターの名称は、「浜松市障がい者基幹相談支援センター」「笠間市基幹相談支援センター」のように市町村ごとに異なり、窓口の場所もさまざまです。ここでは、センターの探し方と相談の流れ、地域にセンターがない場合の相談先をご紹介します。

お住まいの地域のセンターを探す方法

センターを探すには、次の方法があります。

窓口は、市町村役所内が359か所(25%)、公共施設内が330か所(23%)で、そのほかの場所にある場合もあります(同調査)。最新の連絡先は、市町村のホームページなどでご確認ください。

相談できる人・内容と相談の流れ

障害者相談支援事業は、法律上、本人のほか、障がいのある子どもの保護者や、介護を行う方からの相談にも応じる事業とされています(障害者総合支援法第77条第1項第3号)。相談内容の例は次のとおりです。

  • どんな障害福祉サービスが使えるか知りたい
  • 利用しているサービスや事業所のことで困っている
  • 親亡き後など、家族の将来が心配
  • 成年後見制度の利用を考えている

相談は、電話や来所のほか、自宅などへの訪問で受けるセンターもあります(例:笠間市)。話を聞いたうえで、必要に応じて相談支援事業所や関係機関につなぎます。受付時間や相談の方法はセンターによって異なるため、事前に確認しておくと安心です。

障がいのある子を育てながら働く親が使える勤務先の制度や福祉サービスは、障がい児の親の仕事|3つの壁と仕事を続けるための制度でまとめています。

地域にセンターがない場合

令和7年4月時点で、34%の市町村にはまだセンターがありません。ただし、障害者相談支援事業は、法律上、市町村が行うものとされています(障害者総合支援法第77条第1項)。センターがない市町村でも、市町村の障がい福祉担当窓口が最初の相談先になり、市町村から委託を受けた相談支援事業所が相談の入口を担っていることもあります。共同設置の地域では、近隣の市町村のセンターが担当している場合もあります。

よくある質問

ここでは、基幹相談支援センターについて迷いやすい点を4つ取り上げます。費用や手続などの細かな運用は市町村によって異なるため、個別の状況はお住まいの市町村のホームページなどでご確認ください。

Q1. 相談に費用はかかりますか?

センターでの相談は市町村の事業として行われており、費用の扱いは市町村の案内で確認できます。例えば笠間市は、センターでの相談を無料と案内しています。サービス等利用計画を作る計画相談支援には、利用者の負担はありません(計画の作成に通常要する費用の額が給付される仕組みのため。障害者総合支援法第51条の17第2項)。ただし、障害福祉サービスそのものを利用する場合は、所得に応じた月額の負担上限額の範囲で自己負担が生じることがあります。

Q2. 地域包括支援センターとの違いは?

地域包括支援センターは、介護保険法(第115条の46)に定められた機関で、主に高齢者の介護・福祉・健康などの相談に応じています。基幹相談支援センターは、障害者総合支援法にもとづき、障がいのある方の相談支援を担います。障がいのある方が高齢になった場合などには、両方の機関が連携して対応することもあります。

Q3. どんな専門職が働いていますか?

厚生労働省の手引きは、センターの主たる人材として主任相談支援専門員を想定しています。主任相談支援専門員は、相談支援従事者現任研修の修了後に3年以上の実務経験があるなどの要件を満たし、主任相談支援専門員研修を修了した相談支援専門員です(要件の細部は都道府県の研修案内で確認できます)。確保が難しい地域では、相談支援専門員である社会福祉士や精神保健福祉士、保健師(障がい福祉分野の実務経験がある方)を配置することも考えられる、とされています。

Q4. 担当の相談支援専門員を変えたいときも相談できますか?

指定特定相談支援事業所は、利用する方が選んで契約する事業所で、別の事業所に変えることもできます。変更するときは、市町村に届出書を出す手続がとられています(例:奈良市の「計画相談支援・障害児相談支援依頼(変更)届出書」)。また、基幹相談支援センターは相談支援事業所への助言を業務としているため、担当者との関係に悩んでいるときの相談先の一つにもなります。相談支援専門員選びで気をつけたい点は、相談支援専門員の選び方に関する記事でも取り上げています。

まとめ

本記事のポイントを3つに整理します。

  • 基幹相談支援センターは、障害者総合支援法第77条の2に定められた、地域の相談支援の中核となる機関です。本人・家族の相談に応じるほか、相談支援事業所を後方から支え、協議会を通じて地域の仕組みづくりを担います。
  • サービス等利用計画の作成は、主に指定特定相談支援事業所が担います。相談の入口は、市町村の窓口、委託相談の事業所、基幹相談支援センターなど、市町村によって体制が異なります。
  • 設置は令和6年4月から市町村の努力義務です。令和7年4月時点で66%の市町村が設置しており、さらに183市町村が令和8年度中の設置を予定していると回答していました。

制度や運用は今後も見直される可能性があります。最新の情報は、厚生労働省や、お住まいの市町村のホームページでご確認ください。

主な参考資料

※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。

よこぜき行政書士事務所