障がいのある子を育てながら働く親にとって、療育や通院の付き添い、放課後や長期休暇の預け先は、今の働き方を続けられるかどうかに直結する問題です。在宅ワークやパートに切り替えるか、いったん仕事を辞めるかで迷っている方もいらっしゃると思います。

検索では「母親」という言葉がよく使われていますが、本記事で紹介する制度は、父親・母親のどちらも対象です。そのため、本文では「親」と書いています。

当サイトでは、障がい児の親に向いている職種をすすめることはしていません。本記事では、今の職場で働き方を変える、パートに切り替える、在宅ワークをする、いったん仕事を離れる、の4つの場合について、確かめたい制度と窓口を分かりやすくご説明したいと思います。仕事を続けるための制度の全体像は、障がい児の親の仕事|3つの壁と仕事を続けるための制度でまとめています。

仕事を辞めるか迷ったときに、先に確かめたい4つのこと

仕事を辞めるか迷ったときは、次の4つを先に確かめておくと、選べる働き方が見えやすくなります。

  1. 勤務先の制度(育児・介護の制度と、勤務先が独自に設けている制度)
  2. 子の状態が、介護休暇などの介護の制度の対象になり得るか
  3. 預け先の組み合わせで、どの時間帯が埋まるか
  4. 辞めた場合に変わること(雇用保険・保育所や学童・社会保険・手当)

放課後等デイサービスを利用する家庭では、働く母親の36.6%が週4日以下

はじめに、障がいのある子の親がどのように働いているかを、調査で確認しておきます。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査(令和7年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業、令和8年3月)では、放課後等デイサービス(以下、放デイ)を利用する子の保護者8,581人が回答しています。「週4日以下」で働いている人は、働いている母親6,057人では合わせて36.6%、働いている父親7,258人では合わせて1.6%でした。

PwCコンサルティングの調査(令和2年度障害者総合福祉推進事業、令和3年3月)は、全国児童発達支援協議会の加盟事業所などを利用する保護者1,495人のWeb調査です。働いている母親に、「学校やサービス事業所等からの帰宅時間により、母親の就労環境に影響が出ていますか」と尋ねています。「働く時間を短くせざるを得なかった」は、子の年齢層によって26.8%(7〜9歳、97人)から50.7%(0〜3歳、73人)でした。

どちらも障がい児支援のサービスを利用している家庭の調査で、障がいのある子の親全体に、そのまま当てはまるとは限りません。

勤務先の制度と、介護の制度の対象になるか

勤務先で使える制度は、次の3つに分けて確かめると整理しやすくなります。

  • 法律で事業主に義務づけられている制度(育児のための短時間勤務、子の看護等休暇、介護休暇など)
  • 事業主向けの指針で「望ましい」とされている配慮(義務ではない)
  • 勤務先が独自に設けている制度(就業規則で確認)

育児の制度は、子の年齢で順に対象外になります。一方、介護休暇や介護のための所定労働時間の短縮等の措置は、子の状態が「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」に当てはまる場合、子の年齢に関わらず対象になり得ます。判断基準の内容と使える制度は、障がい児の介護休暇・介護休業|親が使える6つの制度と条件でご説明しています。

預け先の組み合わせで埋まる時間

放デイは、学校の授業の終了後や休業日に通うサービスで、事業所ごとに提供時間が決まっています。学童(放課後児童クラブ)、日中一時支援、移動支援、ファミリー・サポート・センターなどを組み合わせると、埋まる時間帯が変わることがあります。

組み合わせは、障害児相談支援の相談支援専門員と一緒に考えることができます。サービスごとの時間と組み合わせ方は、障がい児の夏休みと仕事|放デイで埋まらない朝と夕方の預け先でご説明しています。

辞めた場合に変わること

辞めると決める前に、次の点も確かめておくと安心です。

  • 雇用保険の基本手当:離職の理由によって、給付制限の有無などが変わる
  • 保育所や学童:利用の要件に保護者の就労などが含まれ、退職すると要件が変わることがある(きょうだいの保育所を含む)
  • 社会保険:勤務先の健康保険・厚生年金保険の被保険者でなくなり、国民健康保険・国民年金や家族の扶養などへの切替えの手続が必要になる
  • 手当:所得制限のある手当は、世帯の収入が変わると支給の有無や額が変わることがある

雇用保険と保育所・学童については、後の「一度仕事を離れてから、また働く」で詳しくご説明します。

今の職場で働き方を変える|短時間勤務・テレワーク・配置の相談

正社員を続けたい場合も、パートや契約社員として働いている場合も、まず今の職場で使える制度を確かめます。育児・介護休業法の制度はパートや契約社員にも適用されますが、制度ごとに対象外となる場合があります。ここでは、子の年齢で変わる制度と、勤務先と相談するときの手がかりを整理します。

育児の短時間勤務とテレワークの努力義務は3歳まで、柔軟な働き方の措置は小学校入学前まで

育児・介護休業法の育児の制度のうち、働き方に関わるものは、次のように子の年齢で対象が決まっています(令和8年10月時点)。

制度対象となる子の年齢内容・性質
育児のための短時間勤務3歳になるまで1日原則6時間の措置を含む。事業主の義務(労使協定で対象外となる場合がある)
テレワーク3歳になるまで事業主の努力義務(令和7年4月〜)
柔軟な働き方を実現するための措置3歳から小学校入学前まで事業主が5つ(始業時刻等の変更、テレワーク等、短時間勤務、休暇、保育施設の設置運営等)から2つ以上を用意し、労働者が1つを選ぶ(令和7年10月〜)
所定外労働の制限(残業の免除)小学校入学前まで労働者の請求による。事業の正常な運営を妨げる場合を除く(労使協定で対象外となる場合がある)

「3歳になるまで」は法律上「3歳に満たない子」、「小学校入学前まで」は「小学校就学の始期に達するまで」です(育児・介護休業法第23条第1項、第24条第2項、第23条の3、第16条の8)。

育児のための短時間勤務は、1日の所定労働時間が6時間以下の人は対象外です(同法施行規則第72条)。また、子が3歳を過ぎるとテレワークは努力義務の対象から外れますが、柔軟な働き方を実現するための措置として、勤務先がテレワーク等を用意している場合があります。

子の年齢を過ぎたら、介護の制度と指針の配慮を確かめる

子が小学校に入学すると、所定外労働の制限などの育児の制度は法律上の対象外になり、子の看護等休暇も小学校第3学年修了までです。その後も働き方を支える候補になるのが、介護の制度です。

子の状態が判断基準に当てはまる場合、次の制度は子の年齢に関わらず対象になり得ます。

  • 介護のための所定労働時間の短縮等の措置:短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護サービス費用の助成などから、勤務先が1つ以上を設けるもの。利用開始から連続する3年以上の期間で利用できます(育児・介護休業法第23条第3項。労使協定で対象外となる場合がある)
  • テレワーク:要介護状態の家族を介護する労働者がテレワークを選べるようにすることが、令和7年4月から事業主の努力義務です(同法第24条第4項)

子の介護に直面したことを申し出ると、勤務先は介護の制度を個別に知らせ、利用の意向を確認することとされています(同法第21条第4項)。また、両立指針は、次の対応を「望ましい」としています(第二の五の三(三)イ)。

労働者の子に障害がある場合や当該子が医療的ケアを必要とする場合であって、当該労働者が希望するとき 短時間勤務の制度や子の看護等休暇等の利用が可能な期間を延長すること。

これは義務ではないため、延長するかどうかは勤務先の判断によります。介護の制度の日数や申出の方法は、介護休暇・介護休業の解説記事をご覧ください。

就業規則の独自制度と、始業時刻・業務量の相談

法律の基準を上回る制度を、勤務先が独自に設けていることがあります。育児の制度が子の年齢で終わる場合も、就業規則で利用できる期間が延長されていないかを確認してみましょう。

勤務先と相談するときは、両立指針が意向への配慮の例に挙げている始業・終業の時刻、就業の場所、業務量、両立支援の制度の利用期間などが手がかりになります(第二の五の三(二))。

療育や通院で数時間だけ抜けたい場合は、時間単位の年次有給休暇も候補です。労使協定を結んでいる事業場では、年5日以内に限り、時間単位で取得できます(労働基準法第39条第4項)。

子のことを職場にどこまで伝えるかも、気になる点です。両立指針は、家族の介護に関する情報を職場で明らかにしたくない等の事情がある労働者から意向が示された場合、共有の範囲を必要最小限にするなどの配慮をすることとしています(第二の十三の四)。

パート・短時間の仕事に切り替える

正社員からパートに変わったり、勤務時間の短い仕事に移ったりすると、子と過ごす時間は確保しやすくなる場合があります。その一方で、使える制度や、収入に関わる基準が変わります。ここでは、切り替える前に確かめたい点を整理します。

正社員からパートに変える前に確かめること

同じ勤務先で正社員からパートに変える場合は、次の点を確かめておくと、変えた後の働き方を見通しやすくなります。

  • 3歳未満の子を育てている場合、1日の所定労働時間が6時間以下になると、育児のための短時間勤務の対象外になる(育児・介護休業法施行規則第72条)
  • 子の看護等休暇や介護休暇は、週の所定労働日数が2日以下の人などは、労使協定で対象外とされる場合がある。継続雇用期間6か月未満の人を労使協定で除外する仕組みは、令和7年4月に廃止された
  • 有期雇用になる場合、介護休業には労働契約の期間に関する要件がある(契約が更新される場合は、更新後の契約で判断する)
  • 正社員に戻る道があるか

正社員に戻る道について、パートタイム・有期雇用労働法第13条は、正社員の募集内容をパートなどにも周知する、転換のための試験制度を設けるなど、正社員への転換を推進する措置のいずれかを講じることを事業主に求めています。いずれも正社員への転換の機会を設けるための措置なので、勤務先がどの措置を設けているかを確認しておきます。

パートへの変更を自分から希望したのではなく、勤務先から持ちかけられた場合は、後の「退職をすすめられたり、不利益な扱いを受けたりしたとき」もあわせてご覧ください。

収入が変わると、社会保険・扶養・手当の基準がそれぞれ変わる

働く時間を減らして収入が変わると、次のような基準に関わることがあります。基準はそれぞれ別の制度で決まっていて、一つの金額だけで判断できるものではありません。

項目主な基準確認先
勤務先の健康保険・厚生年金保険への加入(短時間労働者の場合)週の所定労働時間20時間以上、学生でないことなど。厚生年金保険の被保険者数51人以上の企業などが対象で、令和9年10月から36人以上に広がる。所定内賃金が月額8.8万円以上という賃金の要件は、令和8年10月1日施行の改正で撤廃(健康保険法第3条・厚生年金保険法第12条)勤務先、日本年金機構
配偶者の健康保険の被扶養者年間収入130万円未満(60歳以上の人などは180万円未満)で、同一世帯の場合は被保険者の年間収入の2分の1未満など。令和8年4月から、給与収入のみの場合は、労働条件通知書などで労働契約上の賃金から見込まれる年間収入によって判定する取扱い配偶者が加入する健康保険
税の配偶者控除・配偶者特別控除社会保険の被扶養者とは別の基準国税庁、税務署
手当の所得制限特別児童扶養手当・児童扶養手当などは、所得によって支給の有無や額が変わる。基準は手当ごと・年度ごとに異なるお住まいの市区町村

表の「短時間労働者」は、1週間の所定労働時間または1か月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3未満の人です(日本年金機構)。

個別の判断は、社会保険労務士や税理士などの専門家に確認することをおすすめします。手当の所得制限と働き方の関係は、障がい児のシングルマザーの仕事|収入で変わる3つの手当と支援で説明しています。

勤務時間を、放デイや学童の時間と合わせる

パートの仕事を探すときは、勤務時間が預け先の時間と重なるかを確かめます。前述の三菱UFJリサーチ&コンサルティングの事業所調査では、長期休暇中の放デイの実際のサービス提供の開始は10時台が42.0%、9時台が35.9%、終了は17時台が36.9%、16時台が35.2%でした。

学童(放課後児童クラブ)の開所時間は、小学校の授業の休業日は1日8時間以上を原則とし、保護者の労働時間などを考慮して事業所ごとに定めるとされています(放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準第18条)。朝と夕方の時間の埋め方は、夏休みの預け先の解説記事でご説明しています。

在宅で働く|雇われて働くか、業務委託かで使える制度が変わる

在宅ワークには、大きく分けて、会社に雇われて自宅で働く場合(テレワーク)と、会社などから仕事を請け負って自宅で働く場合(業務委託。フリーランス)の2つがあります。同じ在宅ワークでも、どちらかによって、使える休暇や保険、トラブルのときに頼れる仕組みが変わります。

会社に雇われて在宅で働く(テレワーク)

会社に雇われて在宅で働く場合は、労働者として、育児・介護休業法の制度や年次有給休暇の対象になります。雇用保険や、勤務先の健康保険・厚生年金保険にも、要件を満たせば加入します。

前述のとおり、3歳未満の子を育てる労働者や、要介護状態の家族を介護する労働者がテレワークを選べるようにすることは、事業主の努力義務です(育児・介護休業法第24条第2項・第4項)。義務ではないため、テレワークができるかどうかは勤務先の制度によります。

在宅勤務中に子の通院などで仕事を中断する時間(中抜け時間)の扱いも、勤務先のルールで確かめておきます。厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(令和3年3月改定)は、中抜け時間を把握する場合の例を挙げています。休憩時間として扱い終業時刻を繰り下げる方法や、時間単位の年次有給休暇として扱う方法です。

業務委託で在宅で働く(フリーランス)

育児・介護休業法の休暇や雇用保険は、雇われて働く人(労働者)のための制度です。業務委託で働く場合は、フリーランス法などの取引のルールが関わります。ただし、契約の形式や名称にかかわらず、働き方の実態から労働関係法令上の「労働者」に当たるかが判断されます(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」)。

令和6年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス法)は、発注者に、フリーランスの育児や介護との両立への配慮を求めています(第13条)。対象になるのは、従業員を使用しない個人などのフリーランスが、従業員を使用する事業者などから業務委託を受ける場合です(第2条)。

業務委託の期間発注者に求められること
6か月以上の継続的な業務委託フリーランスからの申出に応じて、育児介護等と両立しながら業務に従事できるよう、必要な配慮をしなければならない(第13条第1項、同法施行令第3条)
それ以外の業務委託同じ配慮をするよう努めなければならない(第13条第2項)

厚生労働省の指針(令和6年厚生労働省告示第212号)は、「育児」を小学校就学の始期に達するまでの子の養育としています。「介護」は、要介護状態(負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態)にある家族の介護その他の世話です。小学生以上の障がいのある子のケアは、要介護状態に当たる場合に配慮の対象になります。

配慮の例として、指針は、子の急病などで作業時間が確保できないときに納期を短期間繰り下げることや、介護のために特定の曜日はオンラインで働けるよう調整することを挙げています。配慮ができない場合は、その旨と理由を分かりやすく説明することとしています。

在宅で働く時間帯と、子が家にいる時間帯

在宅で働く場合も、仕事をする時間帯に子が家にいるかどうかで、必要な預け先や家族の協力は変わります。

雇われて働くテレワークでは、勤務時間中に子の世話をどう扱うかは勤務先のルールによるため、事前に確認しておきます。業務委託の場合も、納期や打合せの時間を、子の通院や療育の予定と合わせて考えておくと、発注者に配慮を申し出るときにも伝えやすくなります。

「在宅で簡単に稼げる」とうたう勧誘に注意

在宅ワークを探すときは、「簡単に稼げる」とうたう勧誘にも注意が必要です。

国民生活センターは、「いいね」を押すだけで稼げるというSNS広告から始まり、最初に少額の報酬を受け取った後、振込みや違約金を求められて合計20万円を支払った事例を紹介しています。そのうえで、簡単に稼げることを強調する広告は詐欺の可能性があるため、うのみにしないよう注意を呼びかけています(国民生活センター「簡単なタスクで稼げるとうたう副業トラブルに注意!」2025年2月13日公表)。

困ったときは、お住まいの自治体の消費生活センター等に相談できます(消費者ホットライン「188」)。なお、当サイトでは特定の在宅ワークのサービスを紹介していません。

一度仕事を離れてから、また働く

子の状態や預け先の事情によっては、一度仕事を離れることを選ぶ場合もあります。ここでは、辞める前に確かめておきたい雇用保険と保育所・学童の扱いと、また働くときに使える公的な窓口を整理します。

退職する前に、雇用保険の扱いを確かめる

雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)は、離職の理由によって扱いが変わります。ハローワークの「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」には、次のような場合が挙げられています。

区分挙げられている例(要旨・抜粋)
特定受給資格者事業主が法令に違反し、子の養育や家族の介護を行う労働者の雇用の継続等を図るための制度の利用を不当に制限したこと、またはそれらの制度の利用の申出・利用を理由として不利益な取扱いをしたために離職した者/事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度等に応募して離職した場合を除く) など
特定理由離職者(正当な理由のある自己都合による離職)常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者 など

どれに当たるかは、ハローワークが個別に判断します。

正当な理由のない自己都合による離職の場合は、基本手当に給付制限があります。退職日が令和7年4月1日以降の場合、給付制限は原則1か月です(退職日から遡って5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けた場合などは3か月。厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」)。

また、基本手当を受けるには、すぐに働ける状態で求職活動をしていることが必要です。病気やけが、妊娠、出産、育児などのため、引き続き30日以上働けない場合は、受給期間の延長を申請できます。原則1年の受給期間に、働けない日数を加える仕組みで、加えられるのは最長3年です。基本手当を受け取れる期間の枠が延びるもので、所定給付日数(受け取れる日数)が増えるわけではありません。

このうち「育児」は、3歳未満の乳幼児の育児に限られます(厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領」50271)。3歳以上の子の介護・看護のために働けない場合は、雇用保険法施行規則第30条第2号の「管轄公共職業安定所の長がやむを得ないと認めるもの」に当たるかどうかで判断されます。同じ要領は、これに当たる例として「常時本人の介護を必要とする場合の親族の疾病、負傷若しくは老衰又は障害者の看護」や、小学校入学前の子が病気やけがをした場合の看護を挙げています。子の状態がこれに当たるかは、ハローワークが個別に判断します。必要な書類とあわせて、退職の前に確認しておくと安心です。

保育所・学童の利用の要件が変わることがある

子やきょうだいが保育所などを利用している場合、利用の根拠となる「保育の必要性」は、保護者の就労などで認定されています。子ども・子育て支援法施行規則第1条の5は、保護者のいずれもが該当する必要がある事由を定めています。1か月に48時間から64時間までの範囲で市町村が定める時間以上働くことを常態とすることや、求職活動を継続的に行っていることのほか、「同居の親族(長期間入院等をしている親族を含む。)を常時介護又は看護していること」も挙げられています(同条第4号)。

退職すると、認定の事由が変わります。求職活動を理由とした場合に利用を続けられる期間のほか、障がいのある子の介護・看護を理由として、きょうだいの保育所の利用を続けられるかどうかも、お住まいの市区町村に確認しておきます。「常時」に当たるかの判断や必要な書類は、市区町村によって異なることがあります。

学童(放課後児童クラブ)の対象は、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学生などです。実施要綱は、「保護者が労働等」には保護者の疾病や介護・看護、障害なども含まれるとしています。扱いは市区町村によって異なるため、あわせて確認しておくと安心です。

また働くときの公的な窓口

また働くときは、ハローワークのほか、子育てと両立しやすい仕事探しを支援する窓口や、職業訓練があります。

  • マザーズハローワーク・マザーズコーナー:東京労働局は「仕事と子育ての両立を目指す方々の就職支援を行う専門施設・窓口」と案内しています。同局の案内では、予約担当制の職業相談、キッズコーナー、残業少なめ・週休2日制など両立がしやすい求人の紹介などを行っています。所在地は厚生労働省の設置箇所一覧で確認でき、サービスの内容は施設ごとにご確認ください
  • ハロートレーニング(公的職業訓練):就職に必要な職業スキルや知識を習得するための訓練で、離職者向けの訓練は受講料が無料です(テキスト代等は自己負担)。雇用保険を受給できない人も、支給要件をすべて満たせば職業訓練受講給付金(月額10万円)を受けられます(厚生労働省)

ひとり親家庭の就業支援の窓口は、障がい児のシングルマザーの仕事|収入で変わる3つの手当と支援で説明しています。

退職をすすめられたり、不利益な扱いを受けたりしたとき

制度の利用を申し出たことをきっかけに、退職やパートへの変更をすすめられることもあります。ここでは、育児・介護休業法と両立指針が、どのような扱いを不利益な取扱いとしているかと、相談先を確認します。

制度の利用を理由とする、正社員からパートへの変更の強要も不利益な取扱いの例

育児・介護休業法は、育児休業・介護休業・子の看護等休暇・介護休暇・短時間勤務などの申出や利用を理由とする解雇その他不利益な取扱いを、制度ごとに禁止しています(第10条、第16条、第16条の4、第16条の7、第23条の2など)。

両立指針は、不利益な取扱いとなる行為の例として、次のものを挙げています(第二の十一(二)ニ)。

退職又はいわゆる正規雇用労働者をパートタイム労働者等のいわゆる非正規雇用労働者とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。

さらに、勧奨退職やパートなどへの労働契約内容の変更は、「労働者の表面上の同意を得ていたとしても、これが労働者の真意に基づくものでないと認められる場合には」、この強要に該当するとしています(同(三)ロ)。

ただし、禁止される不利益な取扱いは、制度の申出や利用などとの間に「因果関係がある行為」とされています(同(一))。本人の真意に基づいて自分から希望した変更は、この強要には当たりません。

勤務先の相談窓口と、都道府県労働局

事業主には、職場での制度の利用に関する言動によって就業環境が害されることのないよう、相談に応じて適切に対応するための体制の整備などの措置が義務づけられています(育児・介護休業法第25条)。まずは、勤務先の相談窓口を確認します。

勤務先とのあいだで解決しない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。都道府県労働局長による助言・指導・勧告(第52条の4)や、紛争調整委員会による調停(第52条の5)の仕組みがあります。利用を断られた場合の相談先は、介護休暇・介護休業の解説記事でもご説明しています。

個別の紛争について法的な判断が必要な場合は、弁護士へのご相談をおすすめします。

よくある質問

障がいのある子を育てる親の働き方について、よくある質問にお答えします。

Q1. 障がい児の親に向いている仕事や在宅ワークはありますか?

当サイトでは、特定の職種や在宅ワークをすすめることはしていません。子の状態や年齢、預け先、家族の状況によって、働ける時間帯が家庭ごとに大きく異なるためです。本記事で紹介した調査で分かるのは、働いているかどうか、働く日数、雇用形態、就労への影響までです。まずは、勤務先の制度と預け先の組み合わせで、どの時間帯なら働けるかを確かめてみてください。

Q2. 子の看護等休暇は、療育の付き添いにも使えますか?

子の看護等休暇の取得理由は、病気やけがをした子の世話、予防接種・健康診断、感染症による学級閉鎖等に伴う世話、入園(入学)式・卒園式への参加です(育児・介護休業法第16条の2第1項。小学校第3学年修了まで)。解釈通達は、病気やけがをした子の世話に「病院への付添い等も含まれる」としています。療育施設への付き添いについては、介護休暇(子の状態が判断基準に当てはまる場合。通院等の付添いにも使える)や時間単位の年次有給休暇、勤務先の独自制度もあわせて確かめておくと安心です。

Q3. パートや契約社員でも、介護休暇や子の看護等休暇は使えますか?

パートや契約社員も対象です。解釈通達は、子の看護等休暇と介護休暇について、期間を定めて雇用される人に育児休業・介護休業と異なり別途の要件を課していないとしています。ただし、日々雇用される人は対象外で、週の所定労働日数が2日以下の人などは、労使協定で対象外とされる場合があります。継続雇用期間6か月未満の人を労使協定で除外する仕組みは、令和7年4月に廃止されました。介護休暇は、子の状態が判断基準に当てはまる場合に使えます。

Q4. 働く時間を増やして収入が増えると、手当は止まりますか?

特別児童扶養手当や児童扶養手当などには所得制限があり、所得によって支給が止まったり、額が変わったりすることがあります。基準は手当ごと・年度ごとに異なるため、お住まいの市区町村で確認してください。手当の所得制限と働き方の関係は、障がい児のシングルマザーの仕事|収入で変わる3つの手当と支援で説明しています。

まとめ

障がいのある子を育てながら働き方を見直すときは、職種から考える前に、「どの時間帯を、どの制度とサービスで確保できるか」を確かめておくことが役に立ちます。

  • 辞める前に:勤務先の制度、介護の制度の対象になるか、預け先の組み合わせ、辞めた場合に変わることを確かめる
  • 今の職場で:法律上、育児の短時間勤務とテレワークの努力義務は3歳まで、柔軟な働き方を実現するための措置は小学校入学前まで。その後は、判断基準に当てはまる場合の介護の制度と、勤務先独自の制度が候補
  • パートに切り替えるとき:1日の所定労働時間が6時間以下だと、育児のための短時間勤務(3歳未満の子)の対象外。社会保険・扶養・手当の基準はそれぞれ別
  • 在宅で働くとき:雇われて働くか業務委託かで、使える制度が変わる
  • 制度の申出や利用を理由に、退職やパートへの変更を強要されたとき:両立指針が不利益な取扱いの例に挙げている。相談先は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)

制度の全体像は、障がい児の親の仕事|3つの壁と仕事を続けるための制度でまとめています。制度は改正されることがあるため、最新の情報は厚生労働省のサイトや勤務先の就業規則、お住まいの市区町村でご確認ください。

参考資料

本記事で参照した主な一次情報です。

※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。

よこぜき行政書士事務所