就労継続支援B型事業所の現状と課題

近年、令和6年度報酬改定、令和7年10月の就労選択支援の創設、そして令和8年度の臨時応急的な報酬見直しと、就労継続支援B型事業所を取り巻く制度環境は大きく動いています。

事業所数や利用者数が増え続ける一方で、工賃の水準、職員の確保、サービスの質、そして新規参入の条件まで、運営者・利用者の双方に関わる論点が増えました。

本記事では、就労継続支援B型事業所の現状を最新データで整理し、抱えている課題、令和8年度報酬改定や就労選択支援の創設による変化、そして今後の展望まで、行政書士の視点から分かりやすくご説明したいと思います。

就労継続支援B型事業所とは?

就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに作業を行い、工賃の支払いを受ける障害福祉サービスです。一般就労や雇用契約による就労が難しい方の「働く場」「社会参加の場」として位置づけられ、利用期間に制限がない点が大きな特徴です。まずは制度の基本的な位置づけを確認しておきます。

制度の概要と対象者

就労継続支援B型は、障害者総合支援法第5条第15項に定める就労継続支援のうち、雇用契約を結ばない類型として整理されています。雇用契約を結ばないため最低賃金の適用はなく、利用者が行った作業に対して「工賃」が支払われます。

対象となるのは、一般就労やA型での雇用契約による就労が困難な方とされており、就労移行支援を利用したが一般就労に結びつかなかった方、50歳に達している方、障害基礎年金1級受給者を含む類型に該当する方などが対象として想定されています。障がい特性や体調に合わせて作業時間・通所頻度を調整できる柔軟さがあり、利用期間に制限がないため、「長く通える居場所」として活用されているケースも少なくありません。詳しい制度概要は就労継続支援B型の制度概要の解説記事もご参照ください。

A型・就労移行支援との位置づけの違い

同じ就労系サービスでも、A型は雇用契約を結ぶため最低賃金が適用されます。就労移行支援は原則2年の有期サービスで、一般就労を目指した訓練を行う位置づけです。

これに対してB型は、雇用契約なし・期間制限なしという点で、当事者の状態に応じた幅広い使い方ができるサービスとして整理されます。サービス全体の中で、もっとも「働き続けるための土台」を提供しやすい類型だと言えます。

就労継続支援B型事業所の現状|事業所数・利用者数・工賃の最新データ

就労継続支援B型は、障害福祉サービスの中でも利用者数が非常に多く、就労系サービスの中では事業所数・利用者数ともに最大規模となっています。ここでは事業所数・利用者数の推移、そして令和6年度実績の平均工賃まで、厚生労働省の一次資料に基づいて整理します。数字のうしろにある「計算方式の変更」にも触れていきます。

事業所数の推移

厚生労働省「社会福祉施設等調査」によれば、就労継続支援B型事業所の数は次のように推移しています。

調査年事業所数
令和元年(2019年)12,497
令和2年(2020年)13,355
令和3年(2021年)14,407
令和4年(2022年)15,588
令和5年(2023年)16,713
令和6年(2024年)17,973

(各年10月1日現在の事業所数/出典:厚生労働省「社会福祉施設等調査」)

令和5年から令和6年の1年間でも約1,300か所増加しており、平成27年(2015年)の9,698か所からは10年弱で約1.85倍となっています。

なお、厚生労働省は「令和5年度工賃(賃金)の実績について」(令和8年3月追記)で、令和5年度の工賃実績報告事業所数を15,159箇所から16,499箇所に修正しています。同じ「事業所数」でも、社会福祉施設等調査と工賃実績報告では集計対象や時点が異なるため、出典を確認したうえで数字を扱う必要があります。

利用者数の推移

利用者数も増加傾向です。社会福祉施設等調査の9月中の利用実人員ベースでは、就労継続支援B型の利用者数は令和5年(2023年)で461,003人、令和6年(2024年)で502,992人と、障害福祉サービスの中で最大規模となっています(出典:厚生労働省「社会福祉施設等調査の概況」)。

2019〜2024年の利用者数増加の背景としては、精神障がいや発達障がいのある方を含めた多様な就労支援ニーズの拡大が挙げられます。なお、令和6年度報酬改定は、2024年度以降の評価・運営に影響する制度変更として位置づけられるもので、それ以前の利用者増加を直接説明する要因とは別に整理する必要があります。

平均工賃の最新動向と算定方式の変更

厚生労働省「工賃(賃金)の実績について」によれば、就労継続支援B型事業所の全国平均工賃月額の推移は次のようになっています。

年度平均工賃月額(全国平均)
令和4年度17,031円
令和5年度22,649円(令和8年3月修正後/新算定方式)
令和6年度24,141円(対前年比106.6%/新算定方式)

(注)令和5年度以降は新算定方式に基づく集計のため、令和4年度以前と単純比較する際は注意が必要です。
(出典:厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」「令和5年度工賃(賃金)の実績について」(令和8年3月追記))

ここで注意しておきたいのは、令和5年度から平均工賃月額の算定方式が変わっている点です。

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定で、平均工賃月額の分母が「前年度の工賃支払対象者数」から「前年度の一日当たりの平均利用者数(=年間延べ利用者数÷年間開所日数)」に変更されました。これは、障がい特性などにより利用日数が少ない方を多く受け入れている事業所が、平均工賃の上で不利にならないよう配慮するための見直しです。

そのため、令和4年度17,031円と令和5年度22,649円を直接比較すると伸びが大きく見えますが、その一部は計算方式の変更によるものを含みます。令和8年度の臨時報酬改定はまさにこの「見かけの伸び」を受けて行われており、後述します。

就労継続支援B型事業所が抱える主な課題

事業所数・利用者数の増加が続く一方で、就労継続支援B型事業所は構造的な課題を複数抱えています。ここでは「経済(工賃)」「市場(競争)」「人材(職員)」「質(運営)」の4つの観点から整理します。

工賃の低さと事業所間・地域間の格差

令和6年度の全国平均工賃月額は24,141円と最近の中では高い水準ですが、フルタイムで働いた場合の最低賃金水準と比べれば依然として低く、生活費全体を工賃のみで賄うのは難しい水準です。

事業所による格差も大きく、月額数千円台にとどまる事業所がある一方で、5万円・10万円を超える高工賃事業所も存在します。都道府県別でも工賃には差があり、東京都など都市部で比較的高水準にある一方、地方で平均を下回る地域もあるなど、地域の産業構造や受注機会の違いが影響していると考えられます(出典:厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」)。

事業所数増加による利用者獲得競争の激化

事業所数は平成27年(2015年)の9,698か所から令和6年(2024年)の17,973か所まで、10年弱で約1.85倍に増えました。とくに営利法人が運営する事業所の参入が目立ち、地域によっては「事業所が増えすぎ」と評されることもあります。

利用者数も増えてはいるものの、地域によっては利用者確保が課題となる事業所もあると指摘されています。当事者・利用者の側でも、どの事業所を選ぶかが切実なテーマになっており、現場の悩みについては就労継続支援B型の利用者の悩みの関連記事も参考になります。

職員不足と人材定着の難しさ

障害福祉サービス全体で人材確保の難しさが指摘されており、就労系サービスでも日中活動を担う職員の不足感があるとされています(参考:独立行政法人福祉医療機構(WAM)による障害福祉サービス事業所の経営状況調査等)。福祉系職員の給与水準は他産業と比べて低い傾向にあり、サビ管・職業指導員・生活支援員といった専門職を安定的に確保することが難しい現場が多いと言われています。

職員の負担増加が離職につながり、それがさらなる職員不足を招くという悪循環も指摘されています。後述する処遇改善加算の拡充は、この構造への対応策のひとつと位置づけられます。

サービスの質の確保と運営の難しさ

利用者の障がいの種別・程度・本人の希望は非常に多様で、「一般就労を目指したい方」と「居場所としての通所を希望する方」が同じ事業所に在籍することも珍しくありません。

これに対応するため、平均工賃月額に応じた区分体系は、平成30年度報酬改定で7段階区分として導入され、令和3年度報酬改定でこれが8段階に細分化されるとともに、「利用者の就労や生産活動等への参加等」を一律に評価する報酬体系(いわゆる一律評価型)も新設されました。ただし、工賃連動型と一律評価型のいずれを選んでも、それぞれにメリットと注意点があり、事業所の運営方針とサービスの質をどう両立させるかは引き続き難しい論点となっています。

厚生労働省は令和7年(2025年)に、就労継続支援A型・B型に関するガイドラインを公表しており、不適切な運営事例や新規指定時の確認ポイントが示されています。収益性だけでなく、支援の質・生産活動の実態・工賃支払いの適正性が重視される方向性が明確になっています。

令和8年度報酬改定(臨時応急的見直し)がB型に与えた影響

令和8年度には、3年に1度の本格的な報酬改定を待たず、臨時応急的な見直しが実施されました。令和8年(2026年)2月18日に第53回障害福祉サービス等報酬改定検討チームで具体案が示され、B型に関わる主要項目は令和8年6月の制度改正として適用されています。この改定は新規参入の条件を変えるなど、就労継続支援B型の現状に直接影響する重要な内容です。

平均工賃月額の区分基準引上げと配慮措置

最大の論点は、平均工賃月額の区分基準の引上げです。

  • 区分(一)〜(六)の下限を原則3,000円引き上げ
  • 令和6年度の計算方式変更で全国平均工賃月額が約6,000円上昇したことを受け、その半分にあたる3,000円分を上乗せ

このまま適用すると、報酬区分が下がってしまう事業所が出るため、同時に次の配慮措置が設けられました。

  • 対象外事業所の設定:令和6年度の改定前後で区分が上がっていない事業所は、本見直しの対象外
  • 中間的区分(A)〜(F)の新設:区分の引上げで報酬単価が減少する事業所には、新たな中間区分が設けられ、減収幅を3%程度に抑制
  • 区分七・区分八の基準は据え置き:下位の区分七・区分八の基準は据え置きとなり、現行どおりの基本報酬を算定可能

令和7年度実績に基づく届出については、4月届出と6月見直し分を同時提出できる扱いも示されています(出典:厚生労働省・こども家庭庁「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」令和8年2月)。

「全事業所で工賃区分が3,000円引き上げられる」と受け止めると誤解を招きやすく、対象外事業所や中間区分の存在まで含めて理解することが重要です。

新規指定事業所への基本報酬引下げ

もう一つの大きなポイントが、新規指定事業所への基本報酬引下げです。

  • 原則として令和8年6月以降に新規指定を受ける就労継続支援B型事業所の基本報酬を1000分の984(▲1.6%)に引下げ
  • 既存の事業所には影響なし(従来どおり)
  • 令和9年度の本格報酬改定までの暫定的な措置

ただし、地域のサービス供給状況や、医療的ケア・重度障害者等の受入れ状況に応じて、従前の報酬単位を算定できる配慮措置も示されています。「令和8年6月以降の新規B型は一律で引下げ」と読まれないよう、自事業所の予定地域・受入れ予定の利用者層に応じて、配慮措置の適用可能性を個別に確認することが重要です。

同様の引下げは、児童発達支援(1000分の988)、放課後等デイサービス(1000分の982)、共同生活援助(1000分の972)にも適用されました。いずれも収支差率が高く事業所が急増している類型に対する応急的措置です。

これから新規開設を検討している法人にとっては、当初の事業計画や収支シミュレーションの前提を見直す必要が出てくるレベルの改定です。

処遇改善加算の障害福祉従事者全体への拡大

職員不足への対応として、処遇改善加算も拡充されました。対象範囲と賃上げ規模を、対象別に整理すると次のとおりです。

  • 障害福祉従事者全体を対象に、月額1.0万円相当(約3.3%相当)の処遇改善
  • 福祉・介護職員については、生産性向上・協働化等に取り組む事業所で月額0.3万円相当(約1.0%相当)の上乗せ
  • 福祉・介護職員については、定期昇給分(0.6万円)を含めて最大月額1.9万円相当(約6.3%)の賃上げが想定される

1.0万円相当は対象が拡大されて障害福祉従事者全体に及ぶ一方、0.3万円の上乗せや最大1.9万円相当の試算は福祉・介護職員についての説明であり、対象範囲が異なる点に注意が必要です。令和8年度は臨時改定の性格が強いため、一定の経過的な算定要件が設けられています(詳細は厚生労働省・こども家庭庁「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」をご確認ください)。

職員確保・定着の難しさという課題に対する直接の制度的対応として、今回の改定の中でも実務インパクトの大きい部分です。

就労選択支援の創設(令和7年10月施行)がB型に与える変化

令和7年10月1日には、新しい障害福祉サービスとして就労選択支援が施行されました。これは就労継続支援B型の利用の入り口にも関わるため、現状を理解するうえで欠かせない論点です。

B型利用前のアセスメント原則化と例外

就労選択支援は、ご本人の希望と能力に応じた就労支援を選択できるよう、就労アセスメントを行うサービスです。

令和7年10月以降、就労継続支援B型を新たに利用する場合には、原則として事前に就労選択支援を利用する仕組みとなりました。ただし、すでに利用中の方には影響しません。例外として、50歳に達している方、障害基礎年金1級を受給されている方のほか、就労経験があり年齢・体力面から一般企業での雇用が困難な方、近隣に就労選択支援事業所がない場合、待機期間が長期化する場合などの扱いも示されています。詳しくは、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口にご確認ください。就労選択支援を実施する就労選択支援事業所の役割や仕組みについては、別記事で詳しくご説明しています。

就労選択支援員の養成研修と経過措置

就労選択支援事業所には、就労選択支援員の配置が求められます。就労選択支援員になるには、原則として就労選択支援員養成研修の修了が必要です。

ただし、令和10年(2028年)3月31日までの経過措置として、障害者の就労支援に関する基礎的研修、就業支援基礎研修(就労支援員対応型)、訪問型職場適応援助者養成研修、サービス管理責任者研修専門コース別研修(就労支援コース)、相談支援従事者研修専門コース別研修(就労支援コース)のいずれかの修了者は、養成研修を受講できることとされています。

B型事業所を運営する法人にとっても、自法人の人材育成計画にこの経過措置を組み込むかどうかは検討すべき論点です。

就労継続支援B型事業所の今後の展望

ここまで整理してきた課題に対し、制度面・運用面でいくつかの対応が進められています。「工賃向上」「職員定着」「地域連携」の3つの視点から、今後の展望を整理します。

工賃向上策と障害者優先調達推進法・共同受注窓口の活用

工賃向上のためには、単価の低い軽作業からの脱却と、安定した受注先の確保が課題です。ここで活用できる制度ツールとして、国・自治体に優先調達の努力義務を課す障害者優先調達推進法と、複数の事業所が連携して企業や自治体からの仕事を受ける共同受注窓口があります。

国や地方公共団体は毎年度、調達方針を策定し、就労支援施設等からの物品や役務の調達を進めることが求められています。共同受注窓口を活用すれば、一事業所では受けきれない規模の仕事も工程分割で受注できる可能性が広がります。

職員定着・処遇改善の方向性

職員不足への直接対応としては、前述の処遇改善加算の拡充が大きな柱です。これに加え、ICT・記録システムの活用による業務効率化、研修体系の整備、キャリアパスの明確化など、職員が長く働ける環境を整える取り組みが各事業所で広がっています。

多様な作業領域と地域連携(農福連携など)

軽作業中心の受注構造から脱却するうえで注目されているのが、農業分野との連携である農福連携や、地域企業との工程分割による受注、不用品の引取・販売など、新しい作業領域への展開です。地域の事情に応じて多様な作業を組み合わせることで、利用者の希望や特性に合った働き方の選択肢が広がっていきます。

よくある質問

ここでは、就労継続支援B型の現状と課題に関連して、検索でよく見かける疑問を3つに絞ってお答えします。

既存のB型事業所も令和8年度改定で報酬が下がりますか?

令和8年6月以降の新規指定事業所への基本報酬引下げ(1000分の984)については、既存事業所は対象外です。一方、平均工賃月額の区分基準引上げについては、令和6年度改定で区分が上がっていない事業所や区分七・区分八の事業所は対象外とされ、区分が下がる場合は中間区分(A)〜(F)で減収幅を3%程度に抑える配慮措置が設けられています。

B型を新規に利用するときは必ず就労選択支援を受けるのですか?

令和7年10月以降、B型を新たに利用する方は原則として事前に就労選択支援を受ける仕組みです。ただし、50歳に達している方、障害基礎年金1級を受給されている方、就労経験があり年齢・体力面から一般企業雇用が困難な方、近隣に就労選択支援事業所がない場合などの例外があります。詳しくは、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口にご確認ください。

工賃の高い事業所と低い事業所では何が違うのですか?

一般に、受注している作業の単価、生産活動の収支構造、目標工賃達成指導員などの加算取得状況、利用者の特性や就労時間のばらつきなどが影響していると整理されています。事業所ごとの方針や得意分野によって、工賃水準には大きな差が生じます。

まとめ

ここまで、就労継続支援B型事業所の現状と課題を、最新データと制度動向の両面から整理してきました。

事業所数・利用者数の増加が続く一方で、工賃の水準、職員の確保、サービスの質、新規参入の条件と、論点は積み重なっています。令和7年10月施行の就労選択支援、令和8年度の臨時応急的な報酬見直しによって、新規利用者の入り口、新規開設の経営条件、職員の処遇という3つの面で、構造的な変化が生じています。

事業所運営者にとっては、新規指定/既存指定の扱いの違い、区分基準引上げの配慮措置、処遇改善加算の対象拡大といった改定の細部を踏まえた経営判断が、令和9年度の本格報酬改定までの期間に必要となります。利用者やご家族にとっては、就労選択支援を経由した利用導線や、事業所選びの選択肢の広がりを踏まえて、ご本人に合った事業所を吟味することがより重要になっていきます。

これからも厚生労働省・こども家庭庁の一次情報を確認しながら、自分たちの立場に置き換えて読み解いていく姿勢が、今まで以上に求められる局面です。


※本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。

よこぜき行政書士事務所