はじめに
「相談支援事業所」という言葉を耳にされた方の中には、「どんな相談ができるところなのだろう」「自分や家族も使えるのか」「どこで探せばよいのか」と疑問を抱かれる方も多いのではないでしょうか。
障害福祉サービスは制度が複雑で、すべてを当事者やご家族が独力で調べるのは大きな負担となります。その入口として位置づけられているのが、相談支援事業所です。
本記事では、相談支援事業所の3つの種類と支援内容、基幹相談支援センターとの違い、利用までの流れと費用、事業所の探し方・選び方について、令和7年3月末時点の最新データを踏まえながら、わかりやすくご説明したいと思います。
相談支援事業所とは?
相談支援事業所は、障がいのある方やそのご家族が、地域での暮らしや福祉サービスの利用に関する相談ができる機関です。本セクションでは、まず相談支援事業所がどのような事業所として法律に位置づけられているのかという定義と、実際にどのような場面で相談できるのかという利用シーンの2つの観点から整理します。
相談支援事業所の定義
相談支援事業所とは、障害者総合支援法等に基づき指定を受け、障がいのある方やご家族の生活全般に関する相談に応じる機関です。
その役割は、福祉サービスの利用案内、サービス等利用計画の作成、地域生活への移行支援など多岐にわたります。
厚生労働省の調査によると、令和7年3月末時点で全国の指定特定相談支援事業所と指定障害児相談支援事業所はあわせて12,861事業所、相談支援専門員は29,821人が配置されています(出典:厚生労働省「障害者相談支援事業の実施状況等について(令和7年調査)」)。
[画像挿入推奨: 相談支援事業所の概念図(運営者の手元素材または厚労省パンフから引用)]
どんなときに相談できる?
相談支援事業所では、ご本人やご家族が抱える幅広い悩みに対応します。具体的には、次のような場面で相談することができます。
どんな福祉サービスがあるのか分からず、何から始めればよいか整理したいとき
障害福祉サービスを利用したいが、申請の手続きや書類の書き方がわからないとき
障害者支援施設や精神科病院から地域生活に移行したいとき
ひとり暮らしや単身生活で、緊急時の連絡先や支援体制を整えたいとき
進学・就職・住まいなど、将来の生活設計について不安を感じているとき
これらは一例ですが、福祉サービスの利用を前提としない段階の相談にも対応してもらえる点が特徴です。「自分の悩みは相談支援事業所の対象になるのだろうか」と迷う段階から、一度問い合わせをしてみるとよいでしょう。
相談支援事業所の3つの種類と支援内容
相談支援事業所は、根拠法令と支援内容によって、「一般相談支援事業」「特定相談支援事業」「障害児相談支援事業」の3つに分類されます。これらの事業所は、「基本相談支援」「地域相談支援」「計画相談支援」「障害児相談支援」の4種類の支援を、それぞれの組み合わせで提供します。本セクションでは、3つの事業の指定主体・支援内容・対象者の違いを順に整理します。
一般相談支援事業(基本相談支援+地域相談支援)
一般相談支援事業は、都道府県等(都道府県・指定都市・中核市)の指定を受けた事業所が運営する相談支援事業で、「基本相談支援」と「地域相談支援」の両方を行います。令和7年3月末時点で、全国に3,785事業所が指定されています(出典:厚生労働省「障害者相談支援事業の実施状況等について(令和7年調査)」)。
基本相談支援は、障がいのある方やそのご家族からの相談に応じ、必要な情報の提供や助言、関係機関との連絡調整を行う、相談支援の土台となる業務です。
地域相談支援は、さらに「地域移行支援」と「地域定着支援」の2つに分かれます。
地域移行支援は、障害者支援施設や精神科病院等に入所・入院している方が地域生活に移行できるよう、住居の確保や同行支援を行う支援です。
地域定着支援は、ひとり暮らしの方や、家族と同居していても緊急時の支援が見込めない方等を対象に、24時間の連絡体制を整え、緊急時に訪問・対応を行う支援です。
特定相談支援事業(基本相談支援+計画相談支援)
特定相談支援事業は、市町村の指定を受けた事業所が運営する相談支援事業で、「基本相談支援」と「計画相談支援」の両方を行います。
日常的な相談先として身近なのが、この特定相談支援事業所です。障害福祉サービスを利用するためには、原則として「サービス等利用計画」を作成する必要がありますが、その計画づくりを担うのが特定相談支援事業所の重要な役割です。
計画相談支援は、「サービス利用支援」と「継続サービス利用支援」に分かれます。サービス利用支援は、障害福祉サービス又は地域相談支援の利用前にアセスメント(本人の状況や希望の聞き取り)を行い、サービス等利用計画案を作成する業務です。継続サービス利用支援は、サービス利用開始後に定期的にモニタリングを行い、計画の見直しを実施する業務を指します。
障害児相談支援事業(障害児支援利用援助・継続障害児支援利用援助)
障害児相談支援事業は、児童福祉法に基づき市町村の指定を受けた事業所が運営する相談支援事業で、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの障害児通所支援を利用する障がい児とそのご家族を対象とします。
提供される支援は、「障害児支援利用援助」と「継続障害児支援利用援助」の2つです。
障害児支援利用援助は、障害児通所支援の利用を希望する子どもとそのご家族に対し、アセスメントを行い「障害児支援利用計画案」を作成する業務です。支給決定後は、関係事業者との連絡調整を経て、正式な障害児支援利用計画を作成します。
継続障害児支援利用援助は、計画作成後に定期的にモニタリングを実施し、必要に応じて計画の見直しを行う業務です。
相談支援事業所と基幹相談支援センターの違い
「相談支援事業所」と混同されやすいのが、「基幹相談支援センター」です。両者はいずれも障がいのある方の相談に応じる機関ですが、役割と立ち位置に明確な違いがあります。本セクションでは、両者の違いと、どちらに相談すればよいかの目安を整理します。
役割の違い
相談支援事業所と基幹相談支援センターの主な違いは、次のとおりです。
比較項目相談支援事業所基幹相談支援センター主な役割個別の相談・サービス等利用計画作成地域の相談支援の中核・連携機関設置主体民間法人(社会福祉法人・NPO法人・営利法人等)市町村(直営または委託)設置の位置づけ指定制度に基づく市町村の努力義務(令和6年4月1日施行)。令和7年3月末時点で1,152市町村・1,457箇所、全体の約66%が設置主な対象個別の利用者・ご家族個別ケースに加え、地域の相談支援事業所間の連携や人材育成
相談支援事業所は個別の相談に対応する「最前線」、基幹相談支援センターは地域の相談支援体制をまとめる「中核」、と整理すると分かりやすいでしょう。
どちらに相談すればよい?
実際の場面では、次のような目安で使い分けるとよいでしょう。
どんな福祉サービスを利用すべきかを相談したい・サービス等利用計画を作成したい場合
→ まずは特定相談支援事業所(計画相談支援)を探す
どこに相談すればよいかが分からない・複合的で困難なケースの場合
→ 基幹相談支援センターまたは市町村の障害福祉課窓口
なお、基幹相談支援センターの詳しい役割は別記事で解説しています。あわせてお読みいただくと、地域の相談支援体制の全体像がより理解しやすくなるかと思います。
詳しくは基幹相談支援センターとはの解説記事をご参照ください。
相談支援事業所の利用までの流れと費用
相談支援事業所を実際に利用する際に、多くの方が気にされるのは「手続きはどう進めるのか」「費用はいくらかかるのか」という2点です。本セクションでは、利用開始までの5つのステップ、費用の仕組み、そして「セルフプラン」という選択肢について整理します。
利用開始までの5ステップ
ここでは、最も身近な利用形態である障害福祉サービスの計画相談支援(特定相談支援事業所)を例に、ご説明します。
市区町村の障害福祉課窓口へ申請 … 障害福祉サービスの利用申請を行います。窓口で「サービス等利用計画案提出依頼書」を受け取り、相談支援事業所のリストの案内を受けます。
相談支援事業所と契約 … 利用したい事業所を選び、利用契約を結びます。
アセスメント(自宅訪問等での聞き取り) … 相談支援専門員がご自宅等を訪問し、生活状況・ご本人やご家族の希望・解決すべき課題を丁寧に聞き取ります。
サービス等利用計画案の作成・提出 … 聞き取った内容をもとに、相談支援専門員がサービス等利用計画案を作成し、市区町村に提出します。市区町村は計画案を踏まえて支給決定を行い、受給者証を発行します。
サービス利用開始とモニタリング … 受給者証に基づきサービス事業所と契約し、利用が始まります。利用開始後は、相談支援専門員が定期的にモニタリング(計画の見直し)を行います。
なお、障害児相談支援や地域相談支援を利用する場合は、申請先や給付決定の流れが一部異なります。詳細はお住まいの市区町村窓口でご確認ください。
[画像挿入推奨: 利用開始までの5ステップを示すフロー図]
利用料金は原則無料
計画相談支援および障害児相談支援の利用料金は、利用者の自己負担はありません。これらの支援に係る費用は、市町村から相談支援事業所に対して給付費(計画相談支援給付費・障害児相談支援給付費)として支払われる仕組みになっているためです。
地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)も同様に、利用者の自己負担は発生しません。ただし、外出時の交通費や食事代など、サービス提供に伴う実費は自己負担となる場合があります。
セルフプランという選択肢
相談支援事業所を利用せず、ご本人またはご家族が自身でサービス等利用計画を作成して市区町村に提出する方式を「セルフプラン」と呼びます。
厚生労働省の調査(令和7年3月末時点)によると、計画相談支援におけるセルフプラン率は16.4%にとどまっており、多くの方は相談支援事業所を経由してサービス等利用計画を作成しています。セルフプランは制度上認められた選択肢ですが、相談支援専門員によるサービス事業所との連絡調整やモニタリングといった継続的な支援は受けられない点に留意が必要です。
ご家族のサポート体制や情報収集に自信のある方を除き、まずは特定相談支援事業所への相談を検討するのが現実的でしょう。
相談支援事業所の探し方と選び方
お住まいの地域で相談支援事業所を探す方法と、複数の事業所のなかから自分に合った事業所を選ぶ際のチェックポイントを整理します。なお、相談支援事業所は地域や対象障がい種別によって対応範囲が異なるため、事前確認が大切です。
探し方の3つの方法
相談支援事業所は、次の3つの方法で探すことができます。
市区町村の障害福祉課窓口で相談する … 最も確実な方法です。お住まいの地域で対応可能な事業所のリストを受け取れます。
基幹相談支援センターに連絡する … 設置されている自治体の場合、地域の相談支援事業所の状況を把握しているため、状況に応じた紹介が受けられます。
インターネットで検索する … 「お住まいの市区町村名+相談支援事業所」で検索すると、自治体ホームページの一覧や事業所サイトが見つかります。
事業所によって対応可能な障がい種別(身体・知的・精神・難病等・障がい児)や対応エリアが定められていることが多いため、事前に確認のうえ問い合わせることをお勧めします。
選び方の4つのチェックポイント
複数の選択肢の中から事業所を選ぶ際には、次の4つのポイントを確認するとよいでしょう。
対応可能な障がい種別・年齢層 … 発達障がい、知的障がい、精神障がい、身体障がいなど、得意とする障がい種別が事業所ごとに異なります。
対応エリア … ご本人の生活圏に対応しているかを確認します。
相談支援専門員との相性 … 長期的な伴走関係になるため、初回の問い合わせや見学時の対応を見極めることが重要です。
地域とのつながり・情報量 … 地域内のサービス事業所や医療機関との連携実績がある事業所は、紹介できる選択肢の幅が広がります。
なお、契約後に担当者と合わないと感じた場合は、事業所内での担当者変更や、別事業所への変更も可能です。相談支援専門員との関係性については、相談支援専門員との関わり方を解説した記事もあわせてご参照ください。
よくある質問
最後に、相談支援事業所の利用にあたってよくいただく3つの質問にお答えします。
Q1. 障害者手帳がなくても利用できますか?
障害者手帳がなくても、政令で定められた難病等(令和7年4月1日時点で376疾病)に該当する方は、必要な障害福祉サービスや相談支援を利用できる場合があります。詳細はお住まいの市区町村の障害福祉課窓口でご確認ください。
制度の全体像については障害者総合支援法とはの解説記事もご参照ください。
Q2. 相談支援専門員と相性が合わなかったら担当者を変えられますか?
担当者の変更は可能です。まずは事業所内で他の相談支援専門員への変更を相談する、または別の相談支援事業所への変更を検討することができます。長期的な信頼関係が大切となる支援ですので、無理に我慢する必要はありません。
Q3. 就労系サービスを使うときは、就労選択支援との関係はどうなりますか?
令和7年10月1日に施行された就労選択支援制度により、就労継続支援B型を新規利用する方は、原則として事前に就労選択支援を経由する仕組みとなりました(50歳以上、障害基礎年金1級受給者等の例外あり)。サービス等利用計画の作成にあたっては、相談支援事業所と就労選択支援事業所が連携して支援を進めることになります。
まとめ
相談支援事業所は、障がいのある方やそのご家族の地域生活全般を支える、身近な相談窓口です。一般相談支援・特定相談支援・障害児相談支援の3つの事業に分かれ、それぞれが基本相談支援・地域相談支援・計画相談支援・障害児相談支援を組み合わせて提供しています。
利用料金は原則として無料で、お住まいの市区町村の障害福祉課、または基幹相談支援センターを起点に相談を進めることができます。
なお、制度は法改正により内容が変わる可能性があるため、最新情報は厚生労働省のサイトや市区町村窓口でご確認ください。本記事が、最初の一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。
※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。
よこぜき行政書士事務所

