「農福連携」は、農業と福祉の分野で国が進めている取り組みです。令和6年(2024年)には食料・農業・農村基本法が改正され、農福連携の考え方が法律にも書き込まれました。
一方で、「就労継続支援A型・B型とどう関係するのか」「農作業をした人が受け取るのは工賃なのか賃金なのか」といった、障害福祉の制度の側からの疑問もあると思います。
本記事では、農福連携の定義と取り組み方を国の資料に沿って整理し、障害福祉サービスとの関係、背景と現状、メリットと課題、支援制度までを、わかりやすくご説明したいと思います。障害福祉の関係者の方、障がいのある方とご家族、農福連携に関心のある農業者の方に向けた記事です。
この記事のポイント
- 農福連携(のうふくれんけい)は、農業と福祉が連携し、障がいのある方などが農業の分野で活躍し、社会に参画していく取り組みです
- 取り組み方は、国の資料をもとに4つの形に整理できます。働く方が受け取るのは、就労継続支援B型では工賃、A型や農業者による雇用では賃金です
- 取り組む主体数は令和7年度末時点で8,949件です。一方で、通年の作業の確保や作業の教え方などの課題も国の資料で示されています
農福連携とは|読み方・定義と「等」に含まれる人
農福連携(のうふくれんけい)とは、農業と福祉が連携し、障がいのある方などが農業の分野で活躍し、社会に参画していく取り組みです。「農」と「福」を合わせた言葉で、「ノウフク」と表記されることもあります。ここでは、国の定義、「農福連携等」の「等」が指す人、法律での位置づけを順にご説明します。
国の定義
国は、農福連携を次のように定義しています。
農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現していく取組
(農林水産省「農福連携の推進」)
政府の「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)」(令和6年6月5日 農福連携等推進会議)にも、ほぼ同じ文言の定義が置かれています。
この定義には、「農業経営の発展」と「障がいのある方の自信や生きがい、社会参画」という2つの目的が、1つの文の中に並んでいます。農業の人手不足を補うことだけが目的ではなく、働く本人の社会参画もあわせて目指す取り組みだという点を押さえておくと、この後の説明が理解しやすくなります。
「農福連携等」の「等」に含まれる人
国の資料では、「農福連携等」という言葉も使われます。この「等」は、対象となる人と分野の広がりを表しています。
農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)は、「障害者のみならず、高齢者、生活困窮者、ひきこもりの状態にある者等の就労・社会参画支援、犯罪をした者等の立ち直り支援等にも対象を広げ」ると述べています。あわせて、分野についても「農業のみならず林業や水産業に広げる」としています。
農林水産省の交付金では、補助の対象となる取り組みの「対象者」が、次のように要件つきで定められています。
| 区分 | 交付金における対象者の要件(令和8年度) |
|---|---|
| 障害者 | 18歳以上の障害者 |
| 高齢者 | 要介護認定を受けた65歳以上の者 |
| 生活困窮者 | 就労に向けた支援計画(プラン)が作成されている者 |
| ひきこもりの状態にある者 | ひきこもり支援機関の確認を受けた者 |
| 犯罪をした者 | 刑務所出所者等(保護観察対象者又は更生緊急保護対象者)として、保護観察所長の確認を受けた者 |
出典:農林水産省「令和8年度農山漁村振興交付金 地域資源活用価値創出対策のうち 地域資源活用価値創出推進・整備事業(農福連携型)」
この表は、交付金の対象となる取り組みを判断するための定義です。農福連携に参加するための資格要件を定めたものではない点にご注意ください。
法律での位置づけ
令和6年5月に成立した改正食料・農業・農村基本法で、農福連携にあたる条文が新たに設けられました。第46条は次のとおりです。
(障害者等の農業に関する活動の環境整備)
第四十六条 国は、障害者その他の社会生活上支援を必要とする者の就業機会の増大を通じ、地域の農業の振興を図るため、これらの者がその有する能力に応じて農業に関する活動を行うことができる環境整備に必要な施策を講ずるものとする。
条文の「障害者その他の社会生活上支援を必要とする者」という書き方は、「農福連携等」の「等」の考え方と重なります。この条文により、国が環境整備の施策を講じることが法律で定められました。
農福連携の取り組み方|4つの形と障害福祉サービスとの関係
農福連携の進め方は1つではありません。国の「農福連携ガイドブック」(令和8年3月、法務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省)は、農業者と障害者就労施設のそれぞれが取り組む段階を示しています。ここでは、このガイドブックの区分をもとに当サイトで4つの形に整理し、障害福祉サービスとの関係をあわせてご説明します。
| 取り組みの形 | 概要 | 働く方が受け取るもの |
|---|---|---|
| 農作業の請負(施設外就労) | 障害者就労施設が農業者から農作業を請け負い、農場で作業する | B型は工賃、A型は賃金(いずれも施設から支払われる) |
| 農業者による雇用 | 農業者が障がいのある方と雇用契約を結ぶ | 賃金(農業者から支払われる) |
| 障害者就労施設の農業参入 | 障害者就労施設が自ら農地を確保し、農業生産を行う | B型は工賃、A型は賃金 |
| ユニバーサル農園 | 障がいの有無や世代を超えた多様な人が、農業体験を通じて交流・参画する場 | 就労に限らない(農業体験の場) |
※「障害者就労施設」は、ガイドブックなど国の資料で使われている用語です。
農作業の請負(施設外就労)
ガイドブックは、農業者が取り組む段階として、まず「知る」、次に「農作業の請負(施設外就労)」を置いています。施設外就労について、ガイドブックは次のように説明しています。
施設外就労とは、障害者就労施設が農業者と農作業の請負契約を締結し、農業者の農場に通って農作業を実施するものです
障害者への作業指示等は、支援スタッフが行います
(「農福連携ガイドブック」p.9)
この形では、働く方と契約関係にあるのは障害者就労施設です。農業者が働く方を雇用したり、直接指示を出したりするわけではありません。農業者は、請け負ってもらった作業の対価を施設に支払います。
相手の施設を探す方法として、ガイドブックは、施設と直接交渉する、都道府県・市町村・JA等から紹介を受ける、地域の共同受注窓口を活用する、の3つを挙げています。
農業者が福祉事業所に作業を頼むときの手順や、事業所の側から見た施設外就労の要件については、別記事で扱う予定です。
農業者による障がいのある方の雇用
ガイドブックでは、農業者が取り組む次の段階として「障害者の雇用」が示されています。農業者(農家や農業法人など)が、障がいのある方と雇用契約を結ぶ形です。
雇用契約を結ぶため、働く方が受け取るのは賃金です。最低賃金も原則として適用されます。雇用する場合に使える助成金は、後の「使える支援制度と相談窓口」でご紹介します。
企業が障がいのある方の雇用のために設けた特例子会社が、農業に取り組む例もあります。国の主体数の集計では、特例子会社等は「障害者就労施設等」の区分に含めて数えられています。
障害者就労施設の農業参入
ガイドブックは、障害者就労施設の側の段階として「農業参入」を示しています。社会福祉法人やNPO法人などが運営する障害者就労施設が、自ら農業生産を行う形です。
ガイドブックには「障害者就労施設が自ら農業生産を行う場合は、農地の確保が必要です。」とあります。あわせて、農地の権利を取得する場合には、原則として、農地法に基づく市町村の農業委員会の許可を受ける必要があると説明しています。生産した農産物の販売収入は、施設の生産活動の収入となり、工賃・賃金の原資になります。
ユニバーサル農園
ガイドブックは、ユニバーサル農園を次のように説明しています。
障害者のみならず、生活困窮者、ひきこもりの状態にある者、犯罪をした者等の子どもから高齢者までの世代や障害の有無を超えた多様な者を対象として、農業体験活動を通じた交流・参画の場を提供
(「農福連携ガイドブック」p.44)
就労の場というより、農業体験を通じて地域の多様な人が関わる場として位置づけられています。
就労継続支援A型・B型との関係|工賃と賃金
ガイドブックが障害者就労施設として説明しているのが、障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスの就労継続支援A型・B型です。働く方が受け取るお金の呼び方は、雇用契約の有無によって異なります。
| 項目 | 就労継続支援B型 | 就労継続支援A型 | 農業者による雇用 |
|---|---|---|---|
| 雇用契約 | 結ばない | 結ぶ | 結ぶ |
| 受け取るもの | 工賃 | 賃金(最低賃金は原則として適用) | 賃金(最低賃金は原則として適用) |
| 全国平均(令和6年度) | 月額24,141円 | 月額91,451円 | ― |
| 利用・就職の手続き | 市区町村の支給決定(新たに利用する場合は、原則として事前に就労選択支援を利用) | 市区町村の支給決定 | 求人への応募など |
出典:厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」
全国平均は、厚生労働省の所定の算定方式による平均です。B型は「1日当たりの平均利用者数」を分母にしているため、利用者一人ひとりが受け取った月額の単純平均とは必ずしも一致しません。また、農作業に限らず、すべての作業を含む集計です。
最低賃金には、最低賃金法第7条にもとづき、都道府県労働局長の許可を受けた場合の減額の特例があります。そのため「原則として適用」と書いています。
農林水産省「農福連携をめぐる情勢」(令和7年2月)によると、令和4年度に農福連携に取り組んでいたのは、A型703事業所、B型3,017事業所です。国保連データ(令和5年3月実績)の全国の事業所数(A型4,414、B型16,187)に対する割合は、それぞれ15.93%、18.64%とされています。
なお、令和7年10月から、B型を新たに利用する場合は、原則として事前に就労選択支援を利用する仕組みになりました。50歳以上の方、障害基礎年金1級を受給している方などの例外があります。A型についても、新たに利用する場合は、令和9年4月から原則として事前に就労選択支援を利用する仕組みになる予定です。
B型・A型の仕組みは就労継続支援B型とは、就労継続支援A型とはで、就労選択支援は就労選択支援とはでご説明しています。障がいのある方が農福連携の現場で働く方法については、別記事で扱う予定です。
「農園型障害者雇用」との違い
企業が、自社とは別の事業者が用意した農園などの就業場所で、障がいのある方を雇用して働いてもらう形があります。いわゆる「障害者雇用ビジネス」と呼ばれるものです。農園で働く点は同じでも、農業者と福祉事業所が連携する形とは仕組みが異なります。
厚生労働省の第141回労働政策審議会障害者雇用分科会(令和8年8月31日)に、この仕組みに関する事務局資料が提出されました。資料では、「就業障害者数」が令和7年10月末に約11,100人となったこと、就業場所221カ所のうち農園が153カ所であることが示されています。あわせて、事業開始の届出や報告の仕組みなどが論点として示されています。令和8年9月時点では、審議会で検討されている段階です。詳しくは別記事で扱う予定です。
農福連携が進められている背景と現状
農福連携が国の施策として進められている背景には、農業の担い手の減少と、障がいのある方の働く場を広げる必要性という2つの流れがあります。ここでは統計で現状を確認したうえで、国の取り組みの経緯と、取り組む主体数の推移をご説明します。
農業の担い手の減少と荒廃農地
農業の担い手は減っています。「2025年農林業センサス」(令和7年2月1日現在)によると、個人経営体の基幹的農業従事者(自営農業を主な仕事としている世帯員)は103万6千人でした。5年前に比べて32万7千人、24.0%減っており、平均年齢は67.7歳です。
耕作されない農地も課題です。荒廃農地とは、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地をいいます。農林水産省「荒廃農地の現状と対策」(令和8年2月)によると、令和6年度の荒廃農地は25.7万haです(令和7年3月31日現在)。そのうち、再生利用が可能なものは9.8万haとされています。
担い手をどう確保し、農地をどう維持していくかは、農業分野の大きな課題です。
障がいのある方の就労の状況
ハローワークで仕事を探す障がいのある方の申込みは、前年度より増えています。厚生労働省「令和7年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況等」によると、障がいのある方の新規求職申込件数は278,136件で、前年度より3.7%増えました。就職件数は115,178件で、前年度より0.4%減っています。この就職件数には、就労継続支援A型事業所への就職も含まれます。厚生労働省は、減少の理由として、A型事業所への就職件数が前年度より減ったことなどを挙げています。
また、「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」(令和7年6月1日現在)によると、民間企業で雇用されている障がいのある方は70万4,610.0人、実雇用率は2.41%でした。この人数は雇用率を計算するための人数です。障がいの程度や労働時間に応じて、1人を2人や0.5人と数える算定をしているため、実人数とは異なります。
こうした状況のなかで、一人ひとりが選べる働く場を広げていくことが課題になっています。
国の取り組みの経緯|いつから始まったか
国の計画では、平成28年(2016年)6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」に、農福連携の推進が盛り込まれました。その後の主な動きは次のとおりです。
| 時期 | 主な動き |
|---|---|
| 平成28年(2016年)6月 | 「ニッポン一億総活躍プラン」(閣議決定)に農福連携の推進が盛り込まれる |
| 平成31年(2019年)3月 | ノウフクJAS(日本農林規格)が制定される |
| 令和元年(2019年)6月 | 農福連携等推進会議が「農福連携等推進ビジョン」を取りまとめる |
| 令和2年(2020年)3月 | 「農福連携等応援コンソーシアム」が設立される |
| 令和6年(2024年)5月 | 改正食料・農業・農村基本法が成立し、第46条が設けられる |
| 令和6年(2024年)6月5日 | 「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)」が決定される |
ビジョンには、11月29日を「ノウフクの日」に設定し、農福連携等応援コンソーシアムに参画する関係団体や企業等が協働して取り組むことも書かれています。
農福連携等推進ビジョンと取り組む主体数
農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)は、農福連携等に取り組む主体数を「令和12年度末までに1万2千以上」とする目標を掲げています。地域協議会に参加する市町村数は「200以上」が目標です。取り組む主体数は、次のように増えています。
| 年度(各年度末時点で把握した数) | 農福連携等に取り組む主体数 |
|---|---|
| 令和元年度(2019年度) | 4,117 |
| 令和2年度(2020年度) | 4,571 |
| 令和3年度(2021年度) | 5,509 |
| 令和4年度(2022年度) | 6,343 |
| 令和5年度(2023年度) | 7,179 |
| 令和6年度(2024年度) | 8,277 |
| 令和7年度(2025年度) | 8,949 |
出典:農林水産省「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)におけるKPIについて(令和7年度末)」、「農福連携をめぐる情勢」(令和8年8月)
令和7年度末の8,949件の内訳は、農林水産業経営体等が4,140、障害者就労施設等(A型・B型・特例子会社等)が4,410、ユニバーサル農園等(高齢者施設・矯正施設・特別支援学校などを含む)が399です。項目によって、令和5〜7年度のいずれかの年度に取り組んでいた数を集計しています。地域協議会に参加する市町村数は、令和7年度末で158です。
農福連携のメリット|農業者・福祉事業所・働く本人
農福連携の効果は、農業者、福祉事業所、働く本人の立場ごとに異なります。ここでは、国の資料が引用している一般社団法人日本基金「農福連携に関するアンケート調査結果」(令和5年3月17日。令和4年度に実施)の数値を中心にご紹介します。いずれも、農福連携に取り組み、調査に回答した事業者の割合です。
農業者にとってのメリット
同調査では、農福連携に取り組んだ農業経営体の77.3%(n=395)が、収益性の向上に効果が「あり」と回答しています。
国の農福連携ガイドブックは、同じ調査から、約6割が「人材として、障害者等が貴重な戦力になっている」「営業等の別の仕事に充てる時間が増えた」と回答したことも紹介しています。
人手のかかる作業を施設外就労で請け負ってもらうことで、農業者がほかの仕事に時間を使えるようになった、という効果がうかがえます。
一方で、「品質の向上や収量の増加につながった」という回答は31.6%でした(n=424)。これらは取り組んでいる経営体の回答であり、取り組めば収益が上がることを約束するものではありません。
福祉事業所にとってのメリット
同調査では、農福連携に取り組んだ障害者就労施設の87.5%(n=776)が、取り組みによるプラスの効果が「あり」と回答しています。
ガイドブックによると、約6割の施設が「過去5年間の賃金・工賃が増加した」と回答しています。ただし、同じ設問(n=770)では、「変わらない」が29.2%、「減少」が12.3%でした。
施設にとって農作業の請負は、利用者の方が取り組める仕事を確保する方法の1つです。
農業参入の形をとる場合は、生産から販売までを自ら組み立てることになります。農産物の販売収入が工賃・賃金の原資になる点も、施設にとっての意味の1つです。
働く本人にとってのメリット
同調査では、障害者就労施設の80.5%(n=549)が、利用者について「体力がついて長い時間働けるようになった」と回答しています。ガイドブックは、約6割が「利用者の表情が明るくなった」と回答したことも紹介しています。「コミュニケーション力が高まった」という回答は46.5%でした(n=649)。
これらは施設が利用者の様子について回答したもので、利用者本人に尋ねた調査ではありません。また、この調査だけで、医学的な効果や農作業との因果関係が確かめられたわけではありません。
働く本人にとっては、屋外での作業や、種まきから出荷の準備までの多様な工程が、仕事の選択肢の1つになります。農作業が合うかどうかは一人ひとり異なるため、本人が選べることが前提です。
なお、工賃・賃金は事業所の生産活動の収入などによって決まるため、農作業に取り組めば工賃が上がるとは限りません。
農福連携のデメリット・課題
農福連携には課題もあります。同じ調査では、取り組んでいる事業者の側から課題も挙げられています。ここでは、立場ごとの課題と、国のビジョンが示す課題をご説明します。うまくいかない理由を障がいの特性に結びつけるのではなく、仕組みの側の課題として整理します。
農業者側の課題
同調査で、農業経営体が「障がい者等を受け入れる上での課題」(n=422、複数回答)として挙げた主な項目には、次のものがあります(農林水産省「農福連携をめぐる情勢」令和8年8月)。
- 労働時間と農作業の調整等、スケジュールの調整
- 通年で働いてもらうための作業の創出
- 農作業の手順や技術を教えること
- ほ場でのトイレ・休憩所の確保
- 農作業中の障がい者等の健康・安全管理
- コミュニケーション
農作業は季節によって作業量が大きく変わります。繁忙期だけでなく、1年を通じて頼める作業をどう用意するかが課題になりやすいことがうかがえます。
作業の教え方も課題に挙がっています。国の交付金には、作業マニュアルの作成に取り組む場合の加算も設けられています。トイレや休憩所など、受け入れる側の環境づくりについても、休憩所・トイレの整備や移動式トイレの導入が交付金の支援の対象とされています。
福祉事業所・働く本人の側の課題
障害者就労施設が「農福連携を進める上での課題」(n=808、複数回答)として挙げた主な項目には、次のものがあります。
- 販路の確保
- 障がい者等の適性に応じた作業の創出
- 農産物等の安定生産
- 農作業中のトイレの確保
- 通年で農作業等の創出
- 農業技術の習得
販路の確保や農産物の安定生産、農業技術の習得が上位に挙がっていることから、施設が自ら生産・販売に取り組む場面での課題が大きいことがうかがえます。
施設外就労では、作業量や作業日が農業者の側の都合や天候に左右されることがあります。工賃・賃金を安定させるには、年間を通じた作業の組み立てが必要になります。農場までの移動や、屋外作業の負担も考える必要があります。
また、施設外就労では支援スタッフが利用者と一緒に農場へ出向きます(ガイドブック p.9)。施設に残る利用者の支援と、農場での支援をどう両立させるかも、施設にとっての課題になります。
働く本人にとっては、農作業が自分に合うかどうかを確かめられることが大切です。どの作業が合うかは障がいの種類で決まるものではなく、本人の意向や体力、これまでの経験によって異なります。
国が挙げる課題
令和元年に取りまとめられた農福連携等推進ビジョンは、農福連携等の課題として「知られていない」「踏み出しにくい」「広がっていかない」を掲げていました。
2024改訂版は、この間の「認知度の向上」「取組のきっかけと定着」「取組の拡大と成長」の取り組みを振り返り、取組主体が令和元年度末の4,117件から令和4年度末の6,343件へと増えた一方で、これらの課題の解決に引き続き取り組む必要があるとしています。
そのうえで、新たなアクションとして「地域で広げる」「未来に広げる」「絆を広げる」の3本柱を掲げています。それぞれ、点的な取組から地域への広がりへ、未来の担い手の育成と新たな価値の発信、ユニバーサル農園の拡大と「農」「福」の広がりへの発展、という方向性が示されています。
デメリット・課題と、うまくいかないときの対策については、別記事で詳しく扱う予定です。
使える支援制度と相談窓口
農福連携には、国の交付金や雇用に関する助成金などの支援制度があります。制度の名称や内容は年度ごとに変わるため、ここでは令和8年度の制度を中心に概要をご紹介します。あわせて、相談窓口と専門人材についてもご説明します。
農林水産省の交付金(令和8年度)
令和8年度の交付金は、「農山漁村振興交付金 地域資源活用価値創出対策のうち 地域資源活用価値創出推進・整備事業(農福連携型)」です。主な内容は次のとおりです。
| 事業 | 主な内容 | 交付率・上限 |
|---|---|---|
| 農福連携支援事業(ソフト) | 生産・加工・販売技術の習得のための研修、分業体制の構築・作業マニュアルの作成、ユニバーサル農園の初期運営など | 定額(上限300万円(年標準額150万円)、整備事業を経営支援で取り組む場合は上限600万円(年標準額300万円)、作業マニュアルの作成等に取り組む場合は初年度において40万円加算可能)。支援期間は最大2年間。このほか自主取組期間1年間があり、事業実施期間は3年間 |
| 地域資源活用価値創出整備事業(農福連携型)(ハード) | 農林水産物生産施設、加工・販売施設、休憩所・トイレなどの整備 | 1/2(上限:高度経営1,000万円、簡易整備200万円、経営支援2,500万円、介護・機能維持400万円)。事業期間は上限2年 |
出典:農林水産省「令和8年度農山漁村振興交付金 地域資源活用価値創出対策のうち 地域資源活用価値創出推進・整備事業(農福連携型)」
事業を行うのは、法人や地域協議会などです。資料には「個人に対する助成はできません」と明記されています。
令和8年度は、当初公募(令和8年1月23日〜2月12日)に加えて、追加公募(令和8年6月15日〜7月2日)が行われました。採択は審査によるため、応募すれば交付されるものではありません。申請の要件は、その年度の公募要領でご確認ください(農林水産省「農福連携に関する支援制度」)。
交付金の詳しい内容と申請の流れは、別記事で扱う予定です。
障がいのある方を雇用する場合の助成金
農業者が障がいのある方を雇用する場合、雇用に関する助成金の対象になり得ます。例として、厚生労働省の「特定求職者雇用開発助成金」や、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の「障害者作業施設設置等助成金」があります。後者は、障がいのある方が作業しやすいように配慮した施設・設備を整備する場合の助成金です。
支給の要件や金額は、コースや年度によって異なります。最新の要件は厚生労働省・JEEDの資料でご確認ください。なお、雇用関係の助成金の申請手続きの代行は、社会保険労務士の業務です。
ノウフクJAS
ノウフクJASは、「障害者が生産行程に携わった食品及び観賞用の植物の日本農林規格」の通称です。平成31年(2019年)3月に制定されました。
令和6年4月18日の改正で、観賞用の植物が新たに規格として追加されています。認証を受けた事業者は、商品に格付の表示(JASマーク)を示すことができます。
相談窓口と専門人材
ガイドブックによると、各都道府県は、農福連携に関する相談を一元的に受け付けるワンストップ窓口を設けています。都道府県ごとの窓口は、ノウフクWEBの「農福連携の都道府県相談窓口」で確認できます。
施設外就労の相手を探す場合は、複数の障害者就労施設等の受注をあっせん・仲介する、地域の共同受注窓口も選択肢になります。
現場で農福連携を実践する手法を助言する専門人材として、「農福連携技術支援者」がいます。農林水産省の研修、または国の基準プログラムに準拠した都道府県の研修を修了し、必要な知識と技術を身につけたと認められた人が、研修修了者として認定されます。令和7年度末までに、全国で1,195名が認定されています(農林水産省「農福連携をめぐる情勢」令和8年8月)。農林水産省は「国家資格ではありません」と明記しています。研修の内容は、別記事で扱う予定です。
よくある質問
農福連携について、よく寄せられる質問にお答えします。制度の詳細は、本文の該当箇所もあわせてご覧ください。
Q1. 農福連携の読み方は?
「のうふくれんけい」と読みます。農業の「農」と福祉の「福」を合わせた言葉です。国の資料や関係団体の取り組みでは、カタカナで「ノウフク」と表記されることもあります(ノウフクJAS、ノウフク・アワードなど)。
Q2. 農福連携はいつから始まったのですか?
国の計画では、平成28年(2016年)6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」に農福連携の推進が盛り込まれました。令和元年(2019年)6月に「農福連携等推進ビジョン」が取りまとめられ、令和6年(2024年)には食料・農業・農村基本法の改正で第46条が設けられています。
Q3. 農福連携の対象者は?「農福連携等」の「等」とは誰を指しますか?
障がいのある方に加えて、高齢者、生活困窮者、ひきこもりの状態にある方、犯罪をした方の立ち直り支援などにも対象が広げられています(農福連携等推進ビジョン)。交付金では、区分ごとに要件が定められています(本文の表をご覧ください)。
Q4. 農福連携等推進ビジョンとは何ですか?
政府の農福連携等推進会議が令和元年(2019年)6月に取りまとめた、農福連携を進めるための方針です。令和6年(2024年)6月5日に改訂され、取り組む主体数を令和12年度末までに1万2千以上にするなどの目標と、「地域で広げる」「未来に広げる」「絆を広げる」の3本柱の新たなアクションが掲げられています。
Q5. 農福連携は厚生労働省と農林水産省のどちらの施策ですか?
複数の省庁が関わっています。農福連携ガイドブック(令和8年3月)は、法務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省の4省の連名です。交付金は農林水産省、就労継続支援A型・B型などの障害福祉サービスは厚生労働省の制度です。
Q6. 農福連携技術支援者は国家資格ですか?
国家資格ではありません。農林水産省は「農福連携技術支援者(農林水産省認定)は、国家資格ではありません。」と明記しています。農林水産省の研修、または国の基準プログラムに準拠した都道府県の研修を修了した人を、農林水産省が研修修了者として認定する仕組みです。農林水産省が実施する研修の受講は無料ですが、研修にかかる交通費・宿泊費は、受講者または所属組織の負担です。
Q7. 農業の仕事をしたい障がいのある方は、どこに相談すればよいですか?
農作業に取り組んでいる就労継続支援事業所を探す方法と、農業法人などの求人に応募する方法があります。事業所で農作業をしているかどうかは事業所ごとに異なるため、見学で確かめると安心です。相談先には、市区町村の障害福祉の窓口、相談支援事業所、ハローワークがあります。B型を新たに利用する場合は、原則として事前に就労選択支援を利用します。
まとめ
本記事の要点を整理します。
- 農福連携(のうふくれんけい)は、農業と福祉が連携し、障がいのある方などが農業の分野で活躍し、社会に参画していく取り組みです
- 取り組み方は、国の資料をもとに、農作業の請負(施設外就労)、農業者による雇用、障害者就労施設の農業参入、ユニバーサル農園の4つに整理できます
- 働く方が受け取るのは、B型では工賃、A型や農業者による雇用では賃金です
- 取り組む主体数は令和7年度末時点で8,949件に増えた一方、通年の作業の確保や教え方などの課題もあります
農業者の方は都道府県のワンストップ窓口、福祉事業所の方は共同受注窓口や自治体の窓口から情報を集めることができます。農業の仕事をしたい方は、相談支援事業所などで農作業に取り組む事業所について聞くことができます。
交付金など制度の内容は年度ごとに変わるため、最新の情報は農林水産省・厚生労働省のサイト等でご確認ください。
参考資料
本記事で引用した主な一次情報は、次のとおりです。
- 農林水産省「農福連携の推進」
- 農福連携等推進会議「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)」(令和6年6月5日)
- 法務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省「農福連携ガイドブック」(令和8年3月)
- 農林水産省「農福連携をめぐる情勢」(令和8年8月)、同(令和7年2月)
- 農林水産省「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)におけるKPIについて(令和7年度末)」
- 農林水産省「令和8年度農山漁村振興交付金(農福連携型)」
- 一般社団法人日本基金「農福連携に関するアンケート調査結果」(令和5年3月17日)
- 農林水産省「2025年農林業センサス結果の概要(確定値)」
- 農林水産省「荒廃農地の現状と対策」(令和8年2月)
- 厚生労働省「令和7年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況等」
- 厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」
- 厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」
- 厚生労働省第141回労働政策審議会障害者雇用分科会 資料1(令和8年8月31日)
- 農林水産省「農福連携技術支援者育成研修」に関する報道発表(令和8年4月28日)
- e-Gov法令検索:食料・農業・農村基本法
※ 本記事は行政書士 横関のプロフィールが運営する障がいビズが発信しています。
よこぜき行政書士事務所


